「あ? この水……」
武装錬金を解除した火渡は、己の掌に僅かに溜まった水を見つめながら呟いた。
地獄の焔にも似たる彼の炎を消すにはあまりにも頼りなさ過ぎ、また遅過ぎたスプリンクラーの水。
しかし、その水は火渡にある違和感を覚えさせていた。それが何なのかは理解出来ずにいたが。
掌から眼を離し、前方に眼を遣る。
違和感と言えば、視線の遥か先に倒れ伏す男もまたそうだ。
大戦士長ウィンストンが畏怖し、防人の拳を物ともせず、戦士長サムナーを一蹴した
ヴァチカンの聖堂騎士(パラディン)
四十年近くの長きに渡り錬金戦団を震え上がらせてきた、あの第13課(イスカリオテ)の
アレクサンド・アンデルセン神父がこうも簡単に斃されるものなのであろうか。
防御も反撃もせぬままに。呆気無さ過ぎる。まるで人形か何かのようだった。
「へっ!」
火渡は転がる黒焦げの焼死体を鼻でせせら笑う事で、努めて違和感を振り払おうとする。
地獄の焔にも似たる彼の炎を消すにはあまりにも頼りなさ過ぎ、また遅過ぎたスプリンクラーの水。
しかし、その水は火渡にある違和感を覚えさせていた。それが何なのかは理解出来ずにいたが。
掌から眼を離し、前方に眼を遣る。
違和感と言えば、視線の遥か先に倒れ伏す男もまたそうだ。
大戦士長ウィンストンが畏怖し、防人の拳を物ともせず、戦士長サムナーを一蹴した
ヴァチカンの聖堂騎士(パラディン)
四十年近くの長きに渡り錬金戦団を震え上がらせてきた、あの第13課(イスカリオテ)の
アレクサンド・アンデルセン神父がこうも簡単に斃されるものなのであろうか。
防御も反撃もせぬままに。呆気無さ過ぎる。まるで人形か何かのようだった。
「へっ!」
火渡は転がる黒焦げの焼死体を鼻でせせら笑う事で、努めて違和感を振り払おうとする。
クソ神父は死んだ。俺がブッ殺した。
(ホントウニ? ホントウニシンダノカ? タシカニコロセタノカ?)
(ホントウニ? ホントウニシンダノカ? タシカニコロセタノカ?)
何てこたァ無え。ホムンクルス以下の雑魚じゃねえか。ウィンストンのオッサン、野郎を買い被り過ぎだぜ。
(コンナハズハナイ。アノバケモノガアレクライデシヌワケガナインダ)
(コンナハズハナイ。アノバケモノガアレクライデシヌワケガナインダ)
さて、任務は完了。こんな国なんてとっととオサラバだ。ああ、日本食が食いてえ。
(オレハニホンニカエレルダロウカ。イキテ、イキテカエレルノダロウカ)
(オレハニホンニカエレルダロウカ。イキテ、イキテカエレルノダロウカ)
嫌な汗が背中を伝い、勝利を掴んだ割には優れない顔色のまま、火渡が千歳の方を振り返った。
まるで子供のような笑顔を浮かべ、胸を張って己の勝ちを誇る。
そうするには最大限の努力が必要だったが。
悠々と時間を掛けて千歳の元に歩み寄った火渡は、しゃがみ込んでいる彼女にそっと
手を伸ばした。
先程の悪鬼羅刹の如き闘い振りを生み出したものとは思えない、優しげな手だ。
「待たせたな、千歳。さあ、防人の野郎のとこに戻ろうぜ」
千歳は涙に潤む眼で、差し伸べられた手を始めとして火渡の身体を見回す。
「だ、大丈夫? 火渡君……。どこも、何ともない?」
「あんな野郎のなまくら銃剣じゃ、この俺様に傷ひとつ付けられねえっつーの。誰の心配
してんだよ、オマエ」
いつも通りの火渡の軽口。
彼の無事と闘いの終結を確信した千歳はホッと胸を撫で下ろし、顔をほころばせて、
向けられた手を取ろうとした。
まるで子供のような笑顔を浮かべ、胸を張って己の勝ちを誇る。
そうするには最大限の努力が必要だったが。
悠々と時間を掛けて千歳の元に歩み寄った火渡は、しゃがみ込んでいる彼女にそっと
手を伸ばした。
先程の悪鬼羅刹の如き闘い振りを生み出したものとは思えない、優しげな手だ。
「待たせたな、千歳。さあ、防人の野郎のとこに戻ろうぜ」
千歳は涙に潤む眼で、差し伸べられた手を始めとして火渡の身体を見回す。
「だ、大丈夫? 火渡君……。どこも、何ともない?」
「あんな野郎のなまくら銃剣じゃ、この俺様に傷ひとつ付けられねえっつーの。誰の心配
してんだよ、オマエ」
いつも通りの火渡の軽口。
彼の無事と闘いの終結を確信した千歳はホッと胸を撫で下ろし、顔をほころばせて、
向けられた手を取ろうとした。
だが、華やいだ千歳の顔はすぐに曇る事になる。
「ひ、火渡君……?」
「あ?」
彼女の表情を訝しんでいた火渡もすぐに自身の両手、そして目視し得る限りの身体各部位の
異常に気づいた。
あのスプリンクラーの水を浴びた全身が、僅かに金色の鈍い輝きを放っているのだ。
仄明るい発光体と化している火渡を驚愕の眼差しで見つめる千歳。
「これは……」
この不可思議な現象に、胸の内の違和感が再び膨れ上がる火渡。
「何だ……?」
「ひ、火渡君……?」
「あ?」
彼女の表情を訝しんでいた火渡もすぐに自身の両手、そして目視し得る限りの身体各部位の
異常に気づいた。
あのスプリンクラーの水を浴びた全身が、僅かに金色の鈍い輝きを放っているのだ。
仄明るい発光体と化している火渡を驚愕の眼差しで見つめる千歳。
「これは……」
この不可思議な現象に、胸の内の違和感が再び膨れ上がる火渡。
「何だ……?」
その時――
火渡が背を向けた、廊下の遥か向こうからくぐもった声が聞こえてきた。
聞こえてくる訳が無い声が。聞こえてくるのではないかと恐れていた声が。
聞こえてくる訳が無い声が。聞こえてくるのではないかと恐れていた声が。
「やってくれたなァ……」
「!?」
額に背中に冷汗がドッと噴き出し、火渡は弾かれるように後ろを振り向いた。
伏臥していた筈のアンデルセンの焼死体が、いつの間にか壁に寄り掛かる形で座っている。
火渡と同様に薄い金色の輝きを放ちながら。
やがて“それ”はコマ落としのような不自然さで、全身をガクガクと不気味に震わせ始めた。
焼死体の特徴である縮んだ肉体は少しずつ膨らみ、黒焦げの炭化部分がひび割れ、そこから
剥き出しの赤い筋肉が覗く。
震えはまるで瘧を患ったかのようにどんどん大きくなっている。
面積を広めつつあるひび割れの中では、海岸に打ち寄せる波のように再生された皮膚が
筋肉の上を走り、包み込む。
萎んだ眼球は徐々に水分を含んで潤いを増し、白く濁った瞳孔は黒い輝きを取り戻していく。
その眼が前方の火渡と千歳を捉えると、未だ総身を黒い炭に覆われたアンデルセンは
ゆっくりと、実にゆっくりと立ち上がった。
二人が見つめる中、アンデルセンはまるで静寂をまとうように佇立し、微動だにしない。
額に背中に冷汗がドッと噴き出し、火渡は弾かれるように後ろを振り向いた。
伏臥していた筈のアンデルセンの焼死体が、いつの間にか壁に寄り掛かる形で座っている。
火渡と同様に薄い金色の輝きを放ちながら。
やがて“それ”はコマ落としのような不自然さで、全身をガクガクと不気味に震わせ始めた。
焼死体の特徴である縮んだ肉体は少しずつ膨らみ、黒焦げの炭化部分がひび割れ、そこから
剥き出しの赤い筋肉が覗く。
震えはまるで瘧を患ったかのようにどんどん大きくなっている。
面積を広めつつあるひび割れの中では、海岸に打ち寄せる波のように再生された皮膚が
筋肉の上を走り、包み込む。
萎んだ眼球は徐々に水分を含んで潤いを増し、白く濁った瞳孔は黒い輝きを取り戻していく。
その眼が前方の火渡と千歳を捉えると、未だ総身を黒い炭に覆われたアンデルセンは
ゆっくりと、実にゆっくりと立ち上がった。
二人が見つめる中、アンデルセンはまるで静寂をまとうように佇立し、微動だにしない。
「ハァアアア!!」
突如、アンデルセンは片足を上げると、裂帛の気合いと共に床を大きく踏み鳴らした。
地響きにも似た振動に、火渡と千歳の鼓動がリズムを狂わせる。
そして、それと同時に彼を覆っていた漆黒がバラバラと音を立てて崩れ散り、中からは
無傷らしき肉体が姿を現した。
何故か法衣までもが再生されている。
彼は、アンデルセン神父は、この闘いの場に降り立った瞬間とまったく同じ姿に立ち戻っていた。
再生(リジェネレーション)が起こす奇跡。
眼前で展開されるこの世のものとは思えぬ光景に、火渡も千歳も慄然としたまま動けない。
「あ、あの野郎、マジで不死身なのかよ……」
しかし、まったくの無傷、まったくの同じ姿とは違っていた。
よく見ると、法衣に包まれていない顔や首筋には治癒し切れていない火傷が点在している。
おそらくはその法衣の下の肉体も同様なのだろう。
「……」
アンデルセンは指先で火傷を撫でると、無言で眉を顰めた。
不死身かと思われていた神父のその動作、表情の変化は、火渡にも見て取れた。
そして、確信する。
この世に不死身なんてものはない。
現に眼の前の再生者ですら確実にダメージを受けている。
殺せない訳が無い。
「ヘッ、面白え! なら死ぬまで焼き尽くしてやるだけだぜ!」
再度、武装錬金を発動させようと、火渡は核鉄を握り締める。
地響きにも似た振動に、火渡と千歳の鼓動がリズムを狂わせる。
そして、それと同時に彼を覆っていた漆黒がバラバラと音を立てて崩れ散り、中からは
無傷らしき肉体が姿を現した。
何故か法衣までもが再生されている。
彼は、アンデルセン神父は、この闘いの場に降り立った瞬間とまったく同じ姿に立ち戻っていた。
再生(リジェネレーション)が起こす奇跡。
眼前で展開されるこの世のものとは思えぬ光景に、火渡も千歳も慄然としたまま動けない。
「あ、あの野郎、マジで不死身なのかよ……」
しかし、まったくの無傷、まったくの同じ姿とは違っていた。
よく見ると、法衣に包まれていない顔や首筋には治癒し切れていない火傷が点在している。
おそらくはその法衣の下の肉体も同様なのだろう。
「……」
アンデルセンは指先で火傷を撫でると、無言で眉を顰めた。
不死身かと思われていた神父のその動作、表情の変化は、火渡にも見て取れた。
そして、確信する。
この世に不死身なんてものはない。
現に眼の前の再生者ですら確実にダメージを受けている。
殺せない訳が無い。
「ヘッ、面白え! なら死ぬまで焼き尽くしてやるだけだぜ!」
再度、武装錬金を発動させようと、火渡は核鉄を握り締める。
「武装錬金! ブレイズオブグローリー!」
無反応である。
どういう事であろう。
核鉄は火渡の掌中で音も立てず、その形を保ったままだ。
その代わりに、火渡の身体から放たれている光が輝きを増している。
「なっ、何だよ……! どうなってんだ!?」
“武装錬金が発動しない”
絶対に起こり得る筈の無い、またこれまで経験した事の無い事態に、火渡は色を失った。
アンデルセンはその様子を眺めながら、堪えきれないように白い歯を見せている。
「それが“聖水”の味だ、異端者」
蔑みを含んだ声を投げ掛けながら、袖をポンとひとつ払い、元は己の肉体の一部であった
炭の塊を落とす。
「屋上の貯水槽に聖アウグスティヌスの金十字架を投げ込んでおいた。今やこのビルは
巨大な聖水瓶だ……」
何の役にも立たないと思われた遅過ぎるスプリンクラーはその実、しっかりと役割を果たしていた。
アンデルセンの再生を後押しし、火渡の能力さえも封じるという形で。
いや、それだけではない。
聖職者はその力を増し、邪悪なる者はその力を失う。
聖水によって浄化されたこの場は、アンデルセンのホームグラウンドそのものだ。
これ以降も周囲のすべてが彼に味方するだろう。
「最早、貴様らの陳腐な魔術なんぞ何の意味も持たん」
どういう事であろう。
核鉄は火渡の掌中で音も立てず、その形を保ったままだ。
その代わりに、火渡の身体から放たれている光が輝きを増している。
「なっ、何だよ……! どうなってんだ!?」
“武装錬金が発動しない”
絶対に起こり得る筈の無い、またこれまで経験した事の無い事態に、火渡は色を失った。
アンデルセンはその様子を眺めながら、堪えきれないように白い歯を見せている。
「それが“聖水”の味だ、異端者」
蔑みを含んだ声を投げ掛けながら、袖をポンとひとつ払い、元は己の肉体の一部であった
炭の塊を落とす。
「屋上の貯水槽に聖アウグスティヌスの金十字架を投げ込んでおいた。今やこのビルは
巨大な聖水瓶だ……」
何の役にも立たないと思われた遅過ぎるスプリンクラーはその実、しっかりと役割を果たしていた。
アンデルセンの再生を後押しし、火渡の能力さえも封じるという形で。
いや、それだけではない。
聖職者はその力を増し、邪悪なる者はその力を失う。
聖水によって浄化されたこの場は、アンデルセンのホームグラウンドそのものだ。
これ以降も周囲のすべてが彼に味方するだろう。
「最早、貴様らの陳腐な魔術なんぞ何の意味も持たん」
自分に向けられた言葉が聞こえていないのか、アンデルセンを睨みつける火渡は渾身の力を込めて
核鉄を握り、低く呟いている。
「動けよ……!」
核鉄を握り締める手に、更なる力が加えられた。
噛み締めた歯に小さくひび割れが走り、額には血管が浮かび上がる。
「動きやがれ……!」
「ククククク、無駄だ。諦めろ……」
アンデルセンには不可能な武装錬金発動に固執する火渡が滑稽に見えるのだろう。
何とも愉快と言わんばかりにせせら笑う。
核鉄を握り、低く呟いている。
「動けよ……!」
核鉄を握り締める手に、更なる力が加えられた。
噛み締めた歯に小さくひび割れが走り、額には血管が浮かび上がる。
「動きやがれ……!」
「ククククク、無駄だ。諦めろ……」
アンデルセンには不可能な武装錬金発動に固執する火渡が滑稽に見えるのだろう。
何とも愉快と言わんばかりにせせら笑う。
やがて核鉄にある変化が生じた。
火渡を縛る聖なる光に抗うように、強く輝き始めたのだ。
火渡を縛る聖なる光に抗うように、強く輝き始めたのだ。
「ウオオオオオオオオオオ!! しゃらくせえってんだァアアアアアアアアアアア!!」
掌握、決意、そして咆哮。
武装錬金発動の根幹を成すそれらは、錬金の戦士であるならば誰しもが行う事だ。
火渡もそれをしただけに過ぎない。
しかし、その強さと密度は、これまでのどの闘いの場面をも大きく上回るものだった。
戦士としての生涯で最強の敵。最悪の窮地。
それが故にもたらされた最高の闘争本能。
武装錬金発動の根幹を成すそれらは、錬金の戦士であるならば誰しもが行う事だ。
火渡もそれをしただけに過ぎない。
しかし、その強さと密度は、これまでのどの闘いの場面をも大きく上回るものだった。
戦士としての生涯で最強の敵。最悪の窮地。
それが故にもたらされた最高の闘争本能。
火渡の声に反応して、核鉄が火花と電光を散らしながら細かく震え始めた。
展開される核鉄から発せられた閃光が、もうひとつの光を打ち消してゆく。
閃光の眩さが極限に達し、千歳とアンデルセンの眼を刺した時、火渡の全身からオーラの如く
業火が立ち昇った。
再び“ブレイズオブグローリー”が発動されたのである。
展開される核鉄から発せられた閃光が、もうひとつの光を打ち消してゆく。
閃光の眩さが極限に達し、千歳とアンデルセンの眼を刺した時、火渡の全身からオーラの如く
業火が立ち昇った。
再び“ブレイズオブグローリー”が発動されたのである。
とはいえ、その代償は大きい。
ぜえぜえと大きく息を切らし、身体を支える足元はまったくおぼつかない。
顔面は滝のような汗が流れ落ち、流れ落ちる端から己の炎で蒸発していく。
まさに“立っているのがやっと”という表現しか見つからない。
神に逆らうその執念は闘いに必要な条件は取り戻したものの、闘いに必要な生命力を
ごっそりと削り取っていった。
それでも、この苦境においても、火渡にとっては“ただそれだけの事”だった。
あれだけ攻撃しても振り出しに戻された。
それも地形効果のオマケ付きだ。
こちとら武装錬金を発動させるだけで体力のほとんどを使っちまってんだぞ。
これ以上、使い続けてたら死ぬかもしれねえな。
けどよ――
それがなんだ?
ああ、ただそれだけの話だろ?
何か闘いに影響があるのか?
「さあ、来な……!」
アンデルセンを射抜く火渡の眼光は鋭さを失っていない。
創造者の生命そのものを糧に燃え盛る紅蓮の炎。
それに照らされたアンデルセンの面持ちは、意外な程に神妙だ。
「ほう……。我が聖水を浴びても尚、異端の力を行使するか。どうやら少しばかり貴様を
見くびっていたようだな。ならば……――」
あの響き渡る高笑いも、あの口角を吊り上げた狂気の微笑も、既に無い。
唇を真一文字に結んだアンデルセンは懐から二本の銃剣を取り出し、逆手に握り締めた。
「――こちらもすべての力を以って相手をしてやろう。油断も、余裕も、お遊びも、一切無しだ。
完璧に殺す。完全に殺す。完膚無きまでに殺す。殺し尽くしてやるぞ……」
ぜえぜえと大きく息を切らし、身体を支える足元はまったくおぼつかない。
顔面は滝のような汗が流れ落ち、流れ落ちる端から己の炎で蒸発していく。
まさに“立っているのがやっと”という表現しか見つからない。
神に逆らうその執念は闘いに必要な条件は取り戻したものの、闘いに必要な生命力を
ごっそりと削り取っていった。
それでも、この苦境においても、火渡にとっては“ただそれだけの事”だった。
あれだけ攻撃しても振り出しに戻された。
それも地形効果のオマケ付きだ。
こちとら武装錬金を発動させるだけで体力のほとんどを使っちまってんだぞ。
これ以上、使い続けてたら死ぬかもしれねえな。
けどよ――
それがなんだ?
ああ、ただそれだけの話だろ?
何か闘いに影響があるのか?
「さあ、来な……!」
アンデルセンを射抜く火渡の眼光は鋭さを失っていない。
創造者の生命そのものを糧に燃え盛る紅蓮の炎。
それに照らされたアンデルセンの面持ちは、意外な程に神妙だ。
「ほう……。我が聖水を浴びても尚、異端の力を行使するか。どうやら少しばかり貴様を
見くびっていたようだな。ならば……――」
あの響き渡る高笑いも、あの口角を吊り上げた狂気の微笑も、既に無い。
唇を真一文字に結んだアンデルセンは懐から二本の銃剣を取り出し、逆手に握り締めた。
「――こちらもすべての力を以って相手をしてやろう。油断も、余裕も、お遊びも、一切無しだ。
完璧に殺す。完全に殺す。完膚無きまでに殺す。殺し尽くしてやるぞ……」