―――そして、ダブルスの試合が終わった頃になって。
「いやあ、よかった!今病院から連絡があってな。眞白の怪我は大したことはなかった。脳挫傷と脊椎損傷、後はちょっと
全員の骨という骨が軒並み粉砕して身体中がありえない方向に折れ曲がって、更にそれが内臓や皮膚を突き破って、出血量
が3000ccを超えちゃっただけだとさ!」
蒔絵の報告を聞き、久瀬北の面々にほっとした笑顔が浮かぶ。この程度の怪我ならば、一週間もすれば完治するだろう。
ちなみにダブルスの山雀(やまがら)・梟宇(きよう)VS紅州青州(こうしゅう・せいしゅう)兄弟は、いちいち書く
までもない普通の試合であり、普通に久瀬北が負けたので割愛させていただく。
まあ一応触りだけ書いておくと、グラウンドにクレーターができたり照明が吹っ飛んだり観客に5名の重軽傷者が出たり
山雀がフェンスにめり込んだり梟宇が観客席にめり込んだり紅州が色々めり込んだり青州がとにかくめり込んだりした
挙句、試合終了後に4人とも血塗れで担架で病院に運ばれていった程度だ。
このくらいは全国レベルでは当たり前のことである。
―――そして迎えたS3.川末VS王華学園卓球部部長・相馬!
その甘いマスクで女性から圧倒的な人気を誇る彼が甲子園を一瞥しただけで、観客席にいた女性の99.1%が恍惚の余り
失神した。
「川末が来たか…だが、スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーとなった君であろう
と、今の僕の相手ではない!」
「ハッタリやない…今の相馬さんはホンマに強いで!川末ちゃんは確かにスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・
グレート・オールラウンダーとして覚醒した…せやけど、相馬さんは更に別次元におる…!」
「そんな…スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーの川末さんが勝てないなんて、
そんなはずない!」
「いや、藍川。確かにスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーの力は絶大だ…しかし、
それすらも覆すのが、王華学園卓球部最強の男、相馬だ…!」
「いやあ、よかった!今病院から連絡があってな。眞白の怪我は大したことはなかった。脳挫傷と脊椎損傷、後はちょっと
全員の骨という骨が軒並み粉砕して身体中がありえない方向に折れ曲がって、更にそれが内臓や皮膚を突き破って、出血量
が3000ccを超えちゃっただけだとさ!」
蒔絵の報告を聞き、久瀬北の面々にほっとした笑顔が浮かぶ。この程度の怪我ならば、一週間もすれば完治するだろう。
ちなみにダブルスの山雀(やまがら)・梟宇(きよう)VS紅州青州(こうしゅう・せいしゅう)兄弟は、いちいち書く
までもない普通の試合であり、普通に久瀬北が負けたので割愛させていただく。
まあ一応触りだけ書いておくと、グラウンドにクレーターができたり照明が吹っ飛んだり観客に5名の重軽傷者が出たり
山雀がフェンスにめり込んだり梟宇が観客席にめり込んだり紅州が色々めり込んだり青州がとにかくめり込んだりした
挙句、試合終了後に4人とも血塗れで担架で病院に運ばれていった程度だ。
このくらいは全国レベルでは当たり前のことである。
―――そして迎えたS3.川末VS王華学園卓球部部長・相馬!
その甘いマスクで女性から圧倒的な人気を誇る彼が甲子園を一瞥しただけで、観客席にいた女性の99.1%が恍惚の余り
失神した。
「川末が来たか…だが、スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーとなった君であろう
と、今の僕の相手ではない!」
「ハッタリやない…今の相馬さんはホンマに強いで!川末ちゃんは確かにスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・
グレート・オールラウンダーとして覚醒した…せやけど、相馬さんは更に別次元におる…!」
「そんな…スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーの川末さんが勝てないなんて、
そんなはずない!」
「いや、藍川。確かにスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーの力は絶大だ…しかし、
それすらも覆すのが、王華学園卓球部最強の男、相馬だ…!」
―――さて、P2!愛読者(略
スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダー。それは全国大会一回戦でついに明らかに
なった、川末本来の卓球スタイルである。
小学生時代はこのスタイルで無敵を誇った川末だが、小学生最後の試合で、彼は対戦相手を殺めてしまう。その業で
川末は己を縛りつけ、スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーとしての力を封印
し、カットマンとして卓球を続けていた。
しかし一回戦の相手、外道学園のあまりの外道っぷり(喧嘩の相手を必要以上にブチのめす・ヤキを入れてやった教師
は二度と学校に出てこない・不味い店で金を払わないのもしょっちゅう・斗貴子さんを萌えないと侮辱する)に、ついに
川末は封印を解いた!
その力はまさに神域!人の皮を被った悪魔としか言いようのない外道学園のクソ野郎共を、全員文字通りの意味で地獄へ
叩き落した。
だが、試合中の事とはいえ殺人は殺人。偶然にも観客席には裁判官・御剣検事・成歩堂弁護士が揃っていたので、急遽
裁判が行われた。
結果、川末は無罪。「斗貴子さんを侮辱するような奴は死んで当然」という成歩堂の主張は満場一致で認められた。御剣
検事、そして被害者の親族も「それじゃあ仕方ないな」と納得。斗貴子さんは偉大なバトルヒロインである。
斗貴子さんを侮辱するという行為に対しては、殺人すら許されるのだとイタリアンギャングも言っていた。
まあ、筆者はまひろの方が好きなんだけどね。だって斗貴子さんより断然可愛いじゃないか。
―――三日後、兵庫県某所で臓物と脳漿をブチ撒けた男の死体が発見された。男はサマサという名でしょーもないSSを
書いていたという事実が警察の捜査によって判明したが、犯人は結局見つからなかった。
余談であるが、昨年(2016年夏)公開された映画版P2!第三作目<戦慄!黄金卓球闘士>では、最強と噂される
乙女座の黄金卓球闘士・チャカを相手にスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーの
川末は圧勝。しかもチャカの呪い(タマキンがムレる・タマキンの位置が直しても直しても気になる・皮に毛が絡まる)
を受け、実力の半分も発揮出来ない状態だったにも関わらずだ。
そして川末が倒れ付すチャカに向けて放ったセリフ「タマキンを気にして卓球に勝てるか!」を聞いた観客は皆一様に
スタンディングオベーションをしたとかしないとか。なおこのセリフは2016年度流行語大賞を受賞した。
―――思いのほか長くなったが、とにかくスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダー
はそんぐらい、とてつもなく凄いのだ!
だが!その川末ですらも、相馬には勝てないのか!?しかし―――
「そうだな…如何にスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーとなった僕でも、あなた
には勝てまい…」
そう言いながらも、川末の口元には笑みが浮かんでいる―――それは、切札(ジョーカー)を隠し持つ勝負師の笑みだ。
「あなたに勝てるとしたら…この男だけだ!」
川末はオーダー表を取り出し、S3の自分の名前の部分をライターで炙り出した。
「こんな時のために、炙り出し文字にしておいて正解だったようだな…」
「な…まさか!」
相馬はそこに現れた名前を見て絶句した。その名は―――
「そう…岩熊(いわくま)さんだ!」
岩熊―――最高のプレイヤーと称されながら、腕の故障により再起不能となった久瀬北の元・部長―――
そして相馬にとって、最高のライバルだった男だ。
「彼ならば…最強のプレイヤーである、あなたにも勝てるはずだ!」
「馬鹿な!あいつの右腕はもう…いや、そもそも奴はこの場にすらいないんだぞ!それを―――」
言いかけて、相馬は気付いた。バックスクリーンの上に、いつの間にか一人の男が立っていることに。
太陽を背にしてガイナ立ち(腕組みして仁王立ち。ガイナックスのロボアニメ・特にガンバスター参照)をする威風堂々
としたその筋骨隆々な男は、そのままの姿勢で大ジャンプし、卓球台の上に降り立った。
「待たせたのお…皆!」
「岩熊さん!」
そう―――それはドイツ(多分)にいるはずの岩熊その人だった!
誰もが岩熊の元に駆け寄ろうとするのを、岩熊は制した。
「色々と積もる話もあろうが…今は試合の方が大事じゃ。すまんな、川末…お前の出番、わしがもらうぞ」
「ええ…任せましたよ、岩熊さん」
「ちょ、ちょっと君たち!無茶言うんじゃない。今さらオーダー表を書き換えだなんて…」
抗議しようとする審判。だがそれを、相馬が抑えた。
「僕なら構わん…望むところだ」
「む…そ、そうか…まあ、両者合意ならいいだろう」
あっさり引き下がる審判。ちなみにリアルで同じことをやった場合、もれなく退場になるのでご注意を。
そして、向かい合う二人。
「まさか、お前と再び戦うことになるとはな…」
「全く、腐れ縁ということかのお…」
「フ、言ってくれるな…だが岩熊、その砕けた右腕でどこまで戦える?言っておくが、今の僕はお前が知っている頃とは
レベルが違う。あの頃よりも僕は100倍強い…例えその腕が完治していたとしても、お前に勝ち目はないぞ!」
自信を漲らせる相馬。だが岩熊もまた、臆することなく豪快に笑う。
「はっはっは。確かにな、相馬。今のお前さん相手じゃ、わしが全盛期の力を取り戻していたとしても、勝負にもならん
じゃろう。まして、実を言うとわしの右腕は、さっぱり治っておらん…黒男先生もゴッドハンド先生もK先生も、みんな
サジを投げちまうほど、その怪我は絶望的なもんじゃった…しかし」
岩熊は、ゆっくりとラケットを構えた―――右手ではなく、左手で。
「何だと…?」
それを見た相馬は顔を険しくする。
「貴様…僕を侮辱するためにここに来たのか!?利き腕が使えないからといって、よりによって左だと!?そんな苦し紛れ
の付け焼刃が、僕に通じるとでも…」
「そう…付け焼刃じゃ。だが…」
瞬間、相馬のすぐ横を何かが超高速で突き抜けていった。ほぼ同時に轟音が響き渡り、観客席の一部が破壊された。
それを為したのは―――ピンポン玉。そしてそれを放ったのは―――岩熊。
ラケットを振って、ボールを撃ち出す。その一連の動きは、その場の誰にも見切ることができなかった。
「バ…バカな…!」
「例え付け焼刃でも、死ぬ気で鍛えれば業物になる。これが今のわしじゃ」
岩熊はラケットを振り抜いた姿勢のまま、
「相馬、お前さんだけじゃあない。わしもまた、あの頃よりも…100倍強い!」
―――果たして岩熊は、如何にしてこれほどの力を手にしたのか?
以下、岩熊の回想である。
ヤーさんのベンツを左手だけで持ち上げて組に殴りこみ、壊滅させる岩熊。
ドーバー海峡を左手だけで泳ぎ切る岩熊。
キリマンジャロを左手だけで登頂する岩熊。
塩漬けから蘇った原始人を左手だけで倒す岩熊。
左手だけで逆立ちしつつフルマラソンに出場し、2時間を切る驚異的なタイムで優勝する岩熊。
彼はかくも過酷な試練を乗り越え、レフティ(左利きプレイヤー)として生まれ変わったのだ!
スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダー。それは全国大会一回戦でついに明らかに
なった、川末本来の卓球スタイルである。
小学生時代はこのスタイルで無敵を誇った川末だが、小学生最後の試合で、彼は対戦相手を殺めてしまう。その業で
川末は己を縛りつけ、スーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーとしての力を封印
し、カットマンとして卓球を続けていた。
しかし一回戦の相手、外道学園のあまりの外道っぷり(喧嘩の相手を必要以上にブチのめす・ヤキを入れてやった教師
は二度と学校に出てこない・不味い店で金を払わないのもしょっちゅう・斗貴子さんを萌えないと侮辱する)に、ついに
川末は封印を解いた!
その力はまさに神域!人の皮を被った悪魔としか言いようのない外道学園のクソ野郎共を、全員文字通りの意味で地獄へ
叩き落した。
だが、試合中の事とはいえ殺人は殺人。偶然にも観客席には裁判官・御剣検事・成歩堂弁護士が揃っていたので、急遽
裁判が行われた。
結果、川末は無罪。「斗貴子さんを侮辱するような奴は死んで当然」という成歩堂の主張は満場一致で認められた。御剣
検事、そして被害者の親族も「それじゃあ仕方ないな」と納得。斗貴子さんは偉大なバトルヒロインである。
斗貴子さんを侮辱するという行為に対しては、殺人すら許されるのだとイタリアンギャングも言っていた。
まあ、筆者はまひろの方が好きなんだけどね。だって斗貴子さんより断然可愛いじゃないか。
―――三日後、兵庫県某所で臓物と脳漿をブチ撒けた男の死体が発見された。男はサマサという名でしょーもないSSを
書いていたという事実が警察の捜査によって判明したが、犯人は結局見つからなかった。
余談であるが、昨年(2016年夏)公開された映画版P2!第三作目<戦慄!黄金卓球闘士>では、最強と噂される
乙女座の黄金卓球闘士・チャカを相手にスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーの
川末は圧勝。しかもチャカの呪い(タマキンがムレる・タマキンの位置が直しても直しても気になる・皮に毛が絡まる)
を受け、実力の半分も発揮出来ない状態だったにも関わらずだ。
そして川末が倒れ付すチャカに向けて放ったセリフ「タマキンを気にして卓球に勝てるか!」を聞いた観客は皆一様に
スタンディングオベーションをしたとかしないとか。なおこのセリフは2016年度流行語大賞を受賞した。
―――思いのほか長くなったが、とにかくスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダー
はそんぐらい、とてつもなく凄いのだ!
だが!その川末ですらも、相馬には勝てないのか!?しかし―――
「そうだな…如何にスーパー・ウルトラ・ミラクル・スペシャル・グレート・オールラウンダーとなった僕でも、あなた
には勝てまい…」
そう言いながらも、川末の口元には笑みが浮かんでいる―――それは、切札(ジョーカー)を隠し持つ勝負師の笑みだ。
「あなたに勝てるとしたら…この男だけだ!」
川末はオーダー表を取り出し、S3の自分の名前の部分をライターで炙り出した。
「こんな時のために、炙り出し文字にしておいて正解だったようだな…」
「な…まさか!」
相馬はそこに現れた名前を見て絶句した。その名は―――
「そう…岩熊(いわくま)さんだ!」
岩熊―――最高のプレイヤーと称されながら、腕の故障により再起不能となった久瀬北の元・部長―――
そして相馬にとって、最高のライバルだった男だ。
「彼ならば…最強のプレイヤーである、あなたにも勝てるはずだ!」
「馬鹿な!あいつの右腕はもう…いや、そもそも奴はこの場にすらいないんだぞ!それを―――」
言いかけて、相馬は気付いた。バックスクリーンの上に、いつの間にか一人の男が立っていることに。
太陽を背にしてガイナ立ち(腕組みして仁王立ち。ガイナックスのロボアニメ・特にガンバスター参照)をする威風堂々
としたその筋骨隆々な男は、そのままの姿勢で大ジャンプし、卓球台の上に降り立った。
「待たせたのお…皆!」
「岩熊さん!」
そう―――それはドイツ(多分)にいるはずの岩熊その人だった!
誰もが岩熊の元に駆け寄ろうとするのを、岩熊は制した。
「色々と積もる話もあろうが…今は試合の方が大事じゃ。すまんな、川末…お前の出番、わしがもらうぞ」
「ええ…任せましたよ、岩熊さん」
「ちょ、ちょっと君たち!無茶言うんじゃない。今さらオーダー表を書き換えだなんて…」
抗議しようとする審判。だがそれを、相馬が抑えた。
「僕なら構わん…望むところだ」
「む…そ、そうか…まあ、両者合意ならいいだろう」
あっさり引き下がる審判。ちなみにリアルで同じことをやった場合、もれなく退場になるのでご注意を。
そして、向かい合う二人。
「まさか、お前と再び戦うことになるとはな…」
「全く、腐れ縁ということかのお…」
「フ、言ってくれるな…だが岩熊、その砕けた右腕でどこまで戦える?言っておくが、今の僕はお前が知っている頃とは
レベルが違う。あの頃よりも僕は100倍強い…例えその腕が完治していたとしても、お前に勝ち目はないぞ!」
自信を漲らせる相馬。だが岩熊もまた、臆することなく豪快に笑う。
「はっはっは。確かにな、相馬。今のお前さん相手じゃ、わしが全盛期の力を取り戻していたとしても、勝負にもならん
じゃろう。まして、実を言うとわしの右腕は、さっぱり治っておらん…黒男先生もゴッドハンド先生もK先生も、みんな
サジを投げちまうほど、その怪我は絶望的なもんじゃった…しかし」
岩熊は、ゆっくりとラケットを構えた―――右手ではなく、左手で。
「何だと…?」
それを見た相馬は顔を険しくする。
「貴様…僕を侮辱するためにここに来たのか!?利き腕が使えないからといって、よりによって左だと!?そんな苦し紛れ
の付け焼刃が、僕に通じるとでも…」
「そう…付け焼刃じゃ。だが…」
瞬間、相馬のすぐ横を何かが超高速で突き抜けていった。ほぼ同時に轟音が響き渡り、観客席の一部が破壊された。
それを為したのは―――ピンポン玉。そしてそれを放ったのは―――岩熊。
ラケットを振って、ボールを撃ち出す。その一連の動きは、その場の誰にも見切ることができなかった。
「バ…バカな…!」
「例え付け焼刃でも、死ぬ気で鍛えれば業物になる。これが今のわしじゃ」
岩熊はラケットを振り抜いた姿勢のまま、
「相馬、お前さんだけじゃあない。わしもまた、あの頃よりも…100倍強い!」
―――果たして岩熊は、如何にしてこれほどの力を手にしたのか?
以下、岩熊の回想である。
ヤーさんのベンツを左手だけで持ち上げて組に殴りこみ、壊滅させる岩熊。
ドーバー海峡を左手だけで泳ぎ切る岩熊。
キリマンジャロを左手だけで登頂する岩熊。
塩漬けから蘇った原始人を左手だけで倒す岩熊。
左手だけで逆立ちしつつフルマラソンに出場し、2時間を切る驚異的なタイムで優勝する岩熊。
彼はかくも過酷な試練を乗り越え、レフティ(左利きプレイヤー)として生まれ変わったのだ!
「そういうことか、岩熊…ならば僕も遠慮はしない。全力でいかせてもらおう!」
相馬はパチン!と指を鳴らした。
「来いぃぃぃぃぃっ!トロンベ…じゃなくてロシナンテェェェェェッッ!」
瞬間―――ヒヒィィィィィィン!と嘶きながら、試合場に一頭の巨大な馬が乱入してきた。
その名はロシナンテ。初登場時は可愛いお馬さんだった彼も寄るインフレの波に飲まれ、今では黒王か松風かといわん
ばかりの堂々たる風格を醸し出している。一体何を喰ったんだ、お前は。
そんなロシナンテの背に跨る相馬。
「これが僕の最終戦闘態勢だ!さあ、行くぞ岩熊!」
「おう!こんかい、相馬!」
二人は笑みすら浮かべ、勝負を開始する。…一応言っておくが、馬に乗ったまま卓球をするのはルール違反以前に人と
しての問題です。だがそんな野暮なことをおっしゃるKYなお方は、この場には誰一人としていなかった。
―――その後の試合は、どれだけ言葉を重ねても表現できるものではない。
荘厳…神聖…究極…それら全てが単なる陳腐な言語の羅列に過ぎないと思い知らされる、そんな凄まじい死闘だった。
そして―――セットカウント2-2。迎えた最終セット。
既に二人の身体は、見る影もなくズタボロだった。全身から出血し、ペンキで塗りたくったかのように真っ赤な姿。
両手はあちこちがありえない方向に折れ曲がり、爪など全て剥がれ落ちている。
最も酷いのはその顔だった。両者ともにアンパンヒーローの如く腫れ上がり、歯はあちこちが欠けている。瞼はもはや
完全に目を塞ぎ、本来の役目を果たしていない。
だが、そんな無残な姿を見ても、誰一人として、彼らを醜いとは思わなかった。それどころか―――
「…なんて…」
見守るヒロムの目から、涙が溢れ出す。その他大勢の皆さんも同様だった。
「なんて…美しいんだろう…!」
一種崇高な空気が流れる中、相馬と岩熊は顔を見合わせた。もはや表情など分からないが、何故かお互いには分かった。
ああ―――いい笑顔だな、と。
「さあ…そろそろ勝負をつけるか、岩熊」
「そうじゃのお…わしの全てをこの一撃にかけよう!」
両雄は空中高く飛び上がり、練りに練り上げたオーラの全てをラケットに込め、最終最後の奥義を繰り出す!
「はああああああっ!銀河終焉(アポカリュプシス)!」
溢れ出す、相馬のオーラ。それは地球全土を包み込み、あらゆる地域で天変地異を引き起こした。
「うおおおおおおっ!邪神王降臨(サモン・アザトース)!」
人間として許された領域を遥かに越えた岩熊のオーラ。それは別次元への扉すら開き、邪悪なる神々を呼び覚ます。
二つの力はぶつかり合い、共鳴し、反発し、融合し、そして、宇宙そのものを消し飛ばした―――!
(一応言っときますが、あくまでイメージ映像です。実際には爆心地である甲子園の半径百Kmが灰燼と帰した程度です
ので、皆さんご安心を)
「ふ…やるな…岩熊…」
―――真っ白に燃え尽きた相馬が、崩れ落ちていく。
「お前こそ…僕の…ライバル…」
「…ほんまに、のお…」
―――まったく同じタイミングで、岩熊も全身から人体が発するとは思えない音を立てて、倒れ付す。
「相馬…お前がおったから…わしは…ここまで来れた…」
シーンと静まり返った会場。その静寂を打ち破り、審判が高々と宣言する。
「この試合―――両者、勝利!」
どう考えても現実的にはありえない判定を下した審判だったが、彼を非難するものはいない。
この素晴らしい試合を為した二人。敗者など、どこにも存在しないのだ。
まさに審判、nice judge. 中に誰もいないじゃないですか。
言葉様、僕はあなたについていきます。
それはともかく、両校ともに2勝1敗1分けというわけの分からんスコアで迎えた最終戦。ついに!満を持して!
主人公・藍川ヒロムの出陣である!
「藍川…戦う前に一つ言っておく!」
川末がヒロムの肩に手をやって語りかける。
「お前は最後の戦いを勝ち抜くためには最終奥義を会得せねばならないと思っているようだが…別になくても勝てる」
「な、何ですって!?」
いきなり明かされた真実に驚愕するヒロム。
「そしてお前の両親は痩せてきたのでウチの病院に入院させておいた…後はお前が勝つだけだな、ふふふ…」
「はい…分かっています。それはそうと僕もあなたに言っておくことがあります…僕には超人的な動体視力があると
思っていましたが、別にそんなことはありませんでした!」
「そうか…さあ、勝って来い、藍川!」
「ええ、行ってきます!」
ヒロムはまっすぐに、目の前にいきなり現れた石段を昇っていく。
(ようやく僕は登り始めたばかりだから…この果てしなく遠い卓球坂を!)
相馬はパチン!と指を鳴らした。
「来いぃぃぃぃぃっ!トロンベ…じゃなくてロシナンテェェェェェッッ!」
瞬間―――ヒヒィィィィィィン!と嘶きながら、試合場に一頭の巨大な馬が乱入してきた。
その名はロシナンテ。初登場時は可愛いお馬さんだった彼も寄るインフレの波に飲まれ、今では黒王か松風かといわん
ばかりの堂々たる風格を醸し出している。一体何を喰ったんだ、お前は。
そんなロシナンテの背に跨る相馬。
「これが僕の最終戦闘態勢だ!さあ、行くぞ岩熊!」
「おう!こんかい、相馬!」
二人は笑みすら浮かべ、勝負を開始する。…一応言っておくが、馬に乗ったまま卓球をするのはルール違反以前に人と
しての問題です。だがそんな野暮なことをおっしゃるKYなお方は、この場には誰一人としていなかった。
―――その後の試合は、どれだけ言葉を重ねても表現できるものではない。
荘厳…神聖…究極…それら全てが単なる陳腐な言語の羅列に過ぎないと思い知らされる、そんな凄まじい死闘だった。
そして―――セットカウント2-2。迎えた最終セット。
既に二人の身体は、見る影もなくズタボロだった。全身から出血し、ペンキで塗りたくったかのように真っ赤な姿。
両手はあちこちがありえない方向に折れ曲がり、爪など全て剥がれ落ちている。
最も酷いのはその顔だった。両者ともにアンパンヒーローの如く腫れ上がり、歯はあちこちが欠けている。瞼はもはや
完全に目を塞ぎ、本来の役目を果たしていない。
だが、そんな無残な姿を見ても、誰一人として、彼らを醜いとは思わなかった。それどころか―――
「…なんて…」
見守るヒロムの目から、涙が溢れ出す。その他大勢の皆さんも同様だった。
「なんて…美しいんだろう…!」
一種崇高な空気が流れる中、相馬と岩熊は顔を見合わせた。もはや表情など分からないが、何故かお互いには分かった。
ああ―――いい笑顔だな、と。
「さあ…そろそろ勝負をつけるか、岩熊」
「そうじゃのお…わしの全てをこの一撃にかけよう!」
両雄は空中高く飛び上がり、練りに練り上げたオーラの全てをラケットに込め、最終最後の奥義を繰り出す!
「はああああああっ!銀河終焉(アポカリュプシス)!」
溢れ出す、相馬のオーラ。それは地球全土を包み込み、あらゆる地域で天変地異を引き起こした。
「うおおおおおおっ!邪神王降臨(サモン・アザトース)!」
人間として許された領域を遥かに越えた岩熊のオーラ。それは別次元への扉すら開き、邪悪なる神々を呼び覚ます。
二つの力はぶつかり合い、共鳴し、反発し、融合し、そして、宇宙そのものを消し飛ばした―――!
(一応言っときますが、あくまでイメージ映像です。実際には爆心地である甲子園の半径百Kmが灰燼と帰した程度です
ので、皆さんご安心を)
「ふ…やるな…岩熊…」
―――真っ白に燃え尽きた相馬が、崩れ落ちていく。
「お前こそ…僕の…ライバル…」
「…ほんまに、のお…」
―――まったく同じタイミングで、岩熊も全身から人体が発するとは思えない音を立てて、倒れ付す。
「相馬…お前がおったから…わしは…ここまで来れた…」
シーンと静まり返った会場。その静寂を打ち破り、審判が高々と宣言する。
「この試合―――両者、勝利!」
どう考えても現実的にはありえない判定を下した審判だったが、彼を非難するものはいない。
この素晴らしい試合を為した二人。敗者など、どこにも存在しないのだ。
まさに審判、nice judge. 中に誰もいないじゃないですか。
言葉様、僕はあなたについていきます。
それはともかく、両校ともに2勝1敗1分けというわけの分からんスコアで迎えた最終戦。ついに!満を持して!
主人公・藍川ヒロムの出陣である!
「藍川…戦う前に一つ言っておく!」
川末がヒロムの肩に手をやって語りかける。
「お前は最後の戦いを勝ち抜くためには最終奥義を会得せねばならないと思っているようだが…別になくても勝てる」
「な、何ですって!?」
いきなり明かされた真実に驚愕するヒロム。
「そしてお前の両親は痩せてきたのでウチの病院に入院させておいた…後はお前が勝つだけだな、ふふふ…」
「はい…分かっています。それはそうと僕もあなたに言っておくことがあります…僕には超人的な動体視力があると
思っていましたが、別にそんなことはありませんでした!」
「そうか…さあ、勝って来い、藍川!」
「ええ、行ってきます!」
ヒロムはまっすぐに、目の前にいきなり現れた石段を昇っていく。
(ようやく僕は登り始めたばかりだから…この果てしなく遠い卓球坂を!)
―――その頃、病院で眞白は夢を見ていた。
卓球場の中で誰かが呟いた「おやすみ」。
ヒロムの元に集う仲間たち。
プリンセス・ゾノ(前園のこと)。
卓球場の中で誰かが呟いた「おやすみ」。
ヒロムの元に集う仲間たち。
プリンセス・ゾノ(前園のこと)。
―――P2!第一部<全国激震篇>完!第二部<地球崩壊篇>もご期待ください!
NEVER END