ドドドドドドドドドドド……
……この耳鳴りは断じて…私の平穏の終わりを示す物ではない……。
現に奴等より優位に立っていた時にも、この騒音は耳にこびり付いていた…。
それに…山岸由花子の髪に触れた今、スイッチを押せば勝敗は決する!
現に奴等より優位に立っていた時にも、この騒音は耳にこびり付いていた…。
それに…山岸由花子の髪に触れた今、スイッチを押せば勝敗は決する!
「くらえっ!『第一の爆弾』ッ!」
カチリ、『キラークイーン』の右手にあるスイッチの作動音が聞こえる。
勝った……忌々しいクソカスどもとの戦いに…ようやく終止符を……ッ!?
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
小林玉美、彼は誰がどう見ても他人の為に命を掛ける人間ではなかった。
実際その通りで、スタンドを悪用しての金儲けで仕事なんて就こうとも思わなかった。
自分の為なら他人はいくらでも犠牲にしていい。
そんな正義とは程遠い彼は、自分でも信じられない行動を取っていた。
実際その通りで、スタンドを悪用しての金儲けで仕事なんて就こうとも思わなかった。
自分の為なら他人はいくらでも犠牲にしていい。
そんな正義とは程遠い彼は、自分でも信じられない行動を取っていた。
バカな……奴の目も…由花子……いや…仗助と………!
そんな筈はないッ!私に蹴りをくれておいて、女の背後に隠れるような奴が……。
そんな薄汚いクソカスでさえも……私の平穏を脅かすというのか…!
そんな筈はないッ!私に蹴りをくれておいて、女の背後に隠れるような奴が……。
そんな薄汚いクソカスでさえも……私の平穏を脅かすというのか…!
『キラークイーン』に触られた髪が、彼には見えていたのだろう。
小林玉美、彼は……その髪を『握りしめて』いた。
小林玉美、彼は……その髪を『握りしめて』いた。
「ヘヘヘ……何やってんだ?俺?」
腕が内側から崩壊していく、ひび割れた腕の表面が水に濡れた和紙の様に剥げていく。
そして中に見えたのは骨や血ではなく、赤と白の閃光、爆発だった。
爆弾となった髪を掴んだのは左手。
左腕から爆弾化し、上半身の左半分をほぼ吹っ飛ばされてしまった。
そこに居た誰もが、玉美自身ですら信じられない光景だった。
そして中に見えたのは骨や血ではなく、赤と白の閃光、爆発だった。
爆弾となった髪を掴んだのは左手。
左腕から爆弾化し、上半身の左半分をほぼ吹っ飛ばされてしまった。
そこに居た誰もが、玉美自身ですら信じられない光景だった。
「へへ……ドジっちまったぜ………何一つ…トラブルのない生活を…送りたかった…のに……」
「た……玉美…くん………?」
「た……玉美…くん………?」
髪の毛一本では、人間一人を丸ごと吹っ飛ばせる程のスタンドパワーは込められなかった。
由花子には頭を通じて脳を爆破する気でいたが、玉美はそれを左腕で受け止めたのだった。
由花子には頭を通じて脳を爆破する気でいたが、玉美はそれを左腕で受け止めたのだった。
「あ…姉さん……康一殿の……むね…ん……を」
彼は、最後に殺人鬼に一矢報いたという誇りからか口元に微笑を携えたまま亡骸となった。
彼自身から見ても、らしくない最後だっただろう。
だが、崇高だった。気高かった。
彼も、『誠の精神』の継承者だった。
彼自身から見ても、らしくない最後だっただろう。
だが、崇高だった。気高かった。
彼も、『誠の精神』の継承者だった。
「バカが…次は無いぞ……もう一発作れば問題は無い!
『第一の爆弾、キラークイーン』!」
『第一の爆弾、キラークイーン』!」
素早く髪に触り、即スイッチを入れた。
ブワァッ、という爆風が巻き起こったが…由花子は立っていた。
ブワァッ、という爆風が巻き起こったが…由花子は立っていた。
「大分…呼吸も落ち着いたわ……もうアナタから目を離さない。
『ラブ・デラックス』は遠隔操作も出来るの…触られた髪を切り離したわ。」
『ラブ・デラックス』は遠隔操作も出来るの…触られた髪を切り離したわ。」
………そんな……なっ…ならばシアーハートッ…!
「『シアーハートアタック』は無駄よ……落ち着かないみたいね。
私の髪の毛のパワーは、康一君のスタンドより強いと言った筈よ?」
髪の毛がギリギリと首を絞めつける、息が出来ない。
呼吸が弱まればスタンドも弱まる、『キラークイーン』のパワーも弱まりつつあった。
一切加減をせず首を絞めている、既に髪の毛を振りほどくパワーも残っていない。
私の髪の毛のパワーは、康一君のスタンドより強いと言った筈よ?」
髪の毛がギリギリと首を絞めつける、息が出来ない。
呼吸が弱まればスタンドも弱まる、『キラークイーン』のパワーも弱まりつつあった。
一切加減をせず首を絞めている、既に髪の毛を振りほどくパワーも残っていない。
「そんな……ありえん……こんな…クソカスどもに…」
呼吸が……まるっきし出来ない……ッ!
なんてことだ……『キラークイーン』のパワーがまるで通用しない…。
そうだッ!『ストレイ・キャット』……もう一度だ…。
腹部ハッチを開いて……空気弾を発射するッ!
なんてことだ……『キラークイーン』のパワーがまるで通用しない…。
そうだッ!『ストレイ・キャット』……もう一度だ…。
腹部ハッチを開いて……空気弾を発射するッ!
「………………」
どうした……オイッ…何故………。
「自分のスタンドを見る余裕も無いのね……『キラークイーン』に入ってたアレ…植物なの……?
日光が無ければ撃てないって訳かしら………」
日光が無ければ撃てないって訳かしら………」
ぼんやりと薄くなってきた『キラークイーン』へと視線を送る。
腹部ハッチは問題なく開いている、だがビッシリと巻きつけられた髪は日光を遮っていた。
腹部ハッチは問題なく開いている、だがビッシリと巻きつけられた髪は日光を遮っていた。
「危なかったわ……本当は巻きつけて開かないようにする気だったけど…。
それも関係なくなったわ……このまま………死ぬのよ…」
それも関係なくなったわ……このまま………死ぬのよ…」
駄目だ…もう手立てがない……殺されてしまう…今度こそ……。
いやだ……そんな……私がなにをしたっていうんだ……。
確かに…私の趣味のせいで…何人も被害者を出したのは認める……。
だが…私は生まれつき人を殺さずにはいられない、という性を背負っている……。
性を抑えることなど…誰にもできない筈だ……。
私を裁く権利なんて……誰にもない筈なのに……。
もう……駄目だ…………………。
意識を…………た…もて…な……い…。
いやだ……そんな……私がなにをしたっていうんだ……。
確かに…私の趣味のせいで…何人も被害者を出したのは認める……。
だが…私は生まれつき人を殺さずにはいられない、という性を背負っている……。
性を抑えることなど…誰にもできない筈だ……。
私を裁く権利なんて……誰にもない筈なのに……。
もう……駄目だ…………………。
意識を…………た…もて…な……い…。
……………………………………………………………………………………
………私は……死んでしまったのか?
私は…何も悪い事はしていない筈なのに……。
日々、伸びていく爪を自分の意思で止められる者がいるだろうか?
いない……それと同じく、沸き起こる自分の意思に反した衝動は抑えられる者はいない。
私は……悪くない……。
私は…何も悪い事はしていない筈なのに……。
日々、伸びていく爪を自分の意思で止められる者がいるだろうか?
いない……それと同じく、沸き起こる自分の意思に反した衝動は抑えられる者はいない。
私は……悪くない……。
トゥルルルルルル!
なんだ…この音は……電話?
私は……一体…!?
私は……一体…!?
ふと気がつくと、吉影は自分の携帯を握りしめたまま地面に寝そべっていた。
そして、手の中で鳴り続ける携帯には川尻浩作の妻、川尻しのぶの名が表示されていた。
そして、手の中で鳴り続ける携帯には川尻浩作の妻、川尻しのぶの名が表示されていた。
「……も、もしもし?」
『もしもし?じゃないわよ!会社から電話があったの……。
会社にいってないらしいけど……今どこに居るの?事故にでもあったの?』
『もしもし?じゃないわよ!会社から電話があったの……。
会社にいってないらしいけど……今どこに居るの?事故にでもあったの?』
一体……私は…山岸由花子はどうなった!?
周囲を見渡すと、爆死した玉美の死体。
そして、地面に転がっている由花子が居た。
安らかな寝顔だった、永遠の眠りを飾るのに相応しい…。
そして、地面に転がっている由花子が居た。
安らかな寝顔だった、永遠の眠りを飾るのに相応しい…。
何故……彼女は死んでいるんだ……。
時計は………まだ3時過ぎ……早人はまだ学校か…父ではないのか……?
時計は………まだ3時過ぎ……早人はまだ学校か…父ではないのか……?
『聞いてるの!?』
「えっ……ああ、ちょっと…自分でも思い出せないが……頭を打ったみたいだ…。」
「えっ……ああ、ちょっと…自分でも思い出せないが……頭を打ったみたいだ…。」
何故、由花子が死んでいるのか分からないが、さっさと死体を処理する為。
心配そうに安否を聞いてくる彼女をなだめる。
心配そうに安否を聞いてくる彼女をなだめる。
「心配しないで……すぐ病院にいくよ………。
悪かったね………心配掛けて…。」
悪かったね………心配掛けて…。」
電話での会話を終えると、用心深く由花子へ近づく。
呼吸もしてない、脈拍もない、間違いなく死んでいた。
呼吸もしてない、脈拍もない、間違いなく死んでいた。
「……そうか、『ストレイ・キャット』の空気弾を撃ち込まれた時に…」
血管に空気が入ると、脳や心臓へ向かっていき空気塞栓を起こす。
10CC以下なら問題なく済む場合もあるが、それを猫草は本能で理解している。
10CC以下なら問題なく済む場合もあるが、それを猫草は本能で理解している。
「フフ……ハハ…ハハハハハハハ!
勝った!私は勝ったぞ…『運命』は……私の味方だった!」
勝った!私は勝ったぞ…『運命』は……私の味方だった!」
終わった……私の平穏は保たれた………。
ヒドイ一日だったが……乗り越えることができた…。
なんてスガスガしいんだ……。
ヒドイ一日だったが……乗り越えることができた…。
なんてスガスガしいんだ……。
「フゥ……馬鹿笑いしてる場合じゃあ無いな。
さっさと死体を始末して……っと。」
さっさと死体を始末して……っと。」
死体を処理する時、人は何を想うのだろうか。
この時、吉良吉影は小林玉美を処理する際。
そこら辺に落ちているゴミをゴミ箱に片付けるように、
自分は路上のゴミを破棄しているんだ、という気持ちでいた。
彼は心の底から他人のことなど、どうでもいいのだ。
この時、吉良吉影は小林玉美を処理する際。
そこら辺に落ちているゴミをゴミ箱に片付けるように、
自分は路上のゴミを破棄しているんだ、という気持ちでいた。
彼は心の底から他人のことなど、どうでもいいのだ。
「血の方は面倒だな……地面を爆弾に変えるか…。
えーっと…面積は……アスファルトを全部吹っ飛ばして地面が出ないように…」
えーっと…面積は……アスファルトを全部吹っ飛ばして地面が出ないように…」
カチリ、『第一の爆弾』によって死体と血痕を消滅させる。
これで小林玉美は永遠に行方不明者となる。
誰も、殺人鬼の正体を知ることはないし、恨むこともできない。
誰も、彼に殺された犠牲者の魂に尊厳と安らぎを与える事はできない。
これで小林玉美は永遠に行方不明者となる。
誰も、殺人鬼の正体を知ることはないし、恨むこともできない。
誰も、彼に殺された犠牲者の魂に尊厳と安らぎを与える事はできない。
「少し地面がへこんじまったが、まぁ…最近の業者は手抜き工事が目立つ、気付かれはしないか」
ハァ……それにしても疲れた…さっさと病院に行かせてもらおう。
モチロン、彼女の手を頂いてから……。
モチロン、彼女の手を頂いてから……。
「さっ、由花子さん…君の、愛しの彼を殺してしまったお詫びに一緒にディナーでも……」
彼女の手には、髪の毛が埋め込まれていた。
最後の力で、自分の手に『広瀬康一』と文字を作って。
最後の力で、自分の手に『広瀬康一』と文字を作って。
「くっ……こんな…ふざけた真似をして…なんになるって言うんだ…ええ!?
こんなことで自分の意思を示したつもりか……なんとも………つまらんプライドだッ!」
こんなことで自分の意思を示したつもりか……なんとも………つまらんプライドだッ!」
物言わぬ死体へ蹴りを入れる殺人鬼、普段の紳士的な態度はまるで見られなかった。
息を荒げながら激昂する自分自身のみっともなさが、更に彼を怒らせた。
息を荒げながら激昂する自分自身のみっともなさが、更に彼を怒らせた。
「この……クソカスがァ――――!私をナメやがって…
お望みどおり…奇麗さっぱり、こっぱみじんに吹っ飛ばしてやるッ!」
お望みどおり…奇麗さっぱり、こっぱみじんに吹っ飛ばしてやるッ!」
山岸由花子も、消えた。
両親は一生、彼女の身を案じるだろう。
そして一生、例えようもない不安に身をよじるだろう。
吉良吉影に殺害された女性の数が今日、49人となった。
だが、彼のせいで心に不安を抱えて生きるようになった人の数……それは誰にも分からなかった。
両親は一生、彼女の身を案じるだろう。
そして一生、例えようもない不安に身をよじるだろう。
吉良吉影に殺害された女性の数が今日、49人となった。
だが、彼のせいで心に不安を抱えて生きるようになった人の数……それは誰にも分からなかった。
~数ヶ月後~
「いいんですか…浩作さん。」
「ん…何がだい?」
「奥さん……居るんでしょう?」
「フフ…それが、バレないんだな……これが。」
「またまたぁ~、TVとかでもそんなこと言ってる人って必ずバレちゃってますよ?」
「大丈夫だよ……君はもう…しゃべれなくなるんだからね。」
「ん…何がだい?」
「奥さん……居るんでしょう?」
「フフ…それが、バレないんだな……これが。」
「またまたぁ~、TVとかでもそんなこと言ってる人って必ずバレちゃってますよ?」
「大丈夫だよ……君はもう…しゃべれなくなるんだからね。」
女が「何を言ってるの?」と聞く前に、彼女は意識を失った。
何も話さず、何も考えず、動くことのなくなった彼女の腕。
ポタポタと真赤な血が垂れていたが、そんなことは気にならなかった。
何も話さず、何も考えず、動くことのなくなった彼女の腕。
ポタポタと真赤な血が垂れていたが、そんなことは気にならなかった。
「ホラ…もう大丈夫だよ……それにその姿…とっても素敵だ………」
そう言ってできあがったばかりの血生臭い彼女に、香水をかけてあげる。
臭いが消えると、二人の間に隔てる壁のない恋人の様に頬ずりをした。
臭いが消えると、二人の間に隔てる壁のない恋人の様に頬ずりをした。
「アッフゥゥ~~~~~~ン………スガスガしいなぁ~~~~~」
おや?フフ……少しお手洗いに行きたくなってきたぞ。
早速…彼女にお手伝いしてもらうとしよう。
早速…彼女にお手伝いしてもらうとしよう。
ジョロロロロロ……
便器に向かって排泄を終えると、トイレットペーパーを巻き取る。
そして、それを彼女の手に握らせると…彼はその手で股間の残尿をふき取った。
便器に向かって排泄を終えると、トイレットペーパーを巻き取る。
そして、それを彼女の手に握らせると…彼はその手で股間の残尿をふき取った。
「ああっ…そんなところまでしなくていいのに……案外…世話好きなんだね………君は…」
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