SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ その名はキャプテン51-3


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その場には、数多の戦場を駆け抜けた者達が居た。
北斗七星より、悪を滅ぼす使者として世に送られた死神。
神に祝福された、獣を、人を超えた業火を操る超越的生物。
邪悪な生を受け、醜い容姿に生まれながらも、正しい魂を身に持つ青年。
治療という、民に希望を与えるべき行為を虐殺に使った愚者。
そして、海賊を生業にしながらも、命の尊さを誰よりも知る数少ない真の海の男。

激突し合う4人と1匹の中へ単身、乗り込む男が一人。
一見するとただの鎧を着た兵士だが、その場の全員が理解していた。
歩行速度は一般人並みである、いや、一般人並に歩けている。
身体を二周りは大きく見せる程の分厚い鎧、ハンマーかと勘違いさせる巨大な盾。
あれを着て動ける人間は、それだけで達人である事を物語っている。

「よお、酒代まけてやるから俺も混ぜてくれよ。
足引っ張らないように、オジサン頑張るからよ。」
言うが速いか抜くが早いか、手にはいつの間にか剣が握られていた。
巨躯の男が、巨大な鎧、巨大な盾、だが剣には軽さを重視した細身の長剣を選んでいた。
(なんだ・・・この男は。いつ剣を抜いたんだ?)
得体のしれない男、リオレウスの火球を剣圧で消し飛ばす程の使い手である。

「おい!裸のにーちゃんと、トカゲの旦那は変な頭したイカれ野郎だ!
ドラゴンは俺と裸のオッサンで年寄り同士、仲良くやるぞ!」
「誰が裸のオッサンだ!まだ29だぞ!」
瞬時に的確な判断を下す鎧の戦士、反対の理由は全くと言っていい位存在しない。オッサン発言以外。

アミバは一撃必殺の秘孔の使い手である、回避能力が無ければ太刀打ちできない。
秘孔の知識を持ったケンシロウは勿論、爬虫類独特の機敏性を持ったゲラ=ハなら信用できる。

リオレウスは巨体を活かした体当たり等の攻撃を、近距離で出す事がある。
これをかわすか受け流すかの判断力、つまり熟練が必要なのである。
判断力は時として力や知識より遙かに有用で、頭があっても判断や決断が出来なければ持ち腐れてしまう。


「まずいっ!分断しろぉぉ!奴等の思い通りにさせるなレウス!」
空中へと舞い上がりながら炎を吐き出す。
火竜が飛びながら火を吐く時は、必ず後ろへ飛びながら火を吐く。
喉への負担を減らすためだ。
だが、アミバの異常なトレーニングが与えた効果は絶大であった。
今まで休息を取りつつ吐いていたため、全く喉にダメージは無かった。
相手を餌ではなく、完全に敵と判断した今、殺す事に手段を選ばなかった。

なんと、火炎を吐きながらの前進。
通常の火竜では絶対に真似出来ない荒業、火炎の衝撃を前へ進む事で増加させる。
しかし、それは喉に更なる負担をかける事となる。
巨大で、屈強な翼で力強く飛び上がり衝撃を受け流さず、受け止める捨て身の技。

街の城門すら吹き飛ばす炎と、鎧ごと肉体を引きちぎる力と死の猛毒を秘めた爪との二段攻撃である。
「嘘だろっ!?」
竜が飛んだ時の風圧で体制を保てなかったホーク目掛けて、2つの驚異が一度に襲いかかってきた。
炎が目の前に迫る、すると気でも違ったのか突然、炎に向かって自分から突っ込む。

爆炎に押され、吹き飛ぶホーク。
火竜の毒爪の対象がホークと連携を取ろうとしていたベアへと向けられた。
彼も恐怖で我を忘れたのか、大地に根を張ったかのようにして立ち向かった。

「パリィ!」
剣の刃ではなく、刀身を横にして相手の攻撃を弾くようにして受け流す。
相手は飛竜、分厚い大剣ならば問題ないが細身の長剣でやるのは頼りない。
押し当てた剣、そこを鎧と一体化しているガントレットで殴る様にして更に押す。
ベアの足が地面に減り込む、押しつぶされる前に転がる様にして下を潜り抜けその場を逃れる。

下を潜り抜け視界から逃がしたが、体制が崩れているのを本能で悟る。
すかさず尻尾を振り回す、ドスッ、という重い音と同時に初めての感覚を味わった。
振り抜けないのだ、岩石も、鉄も、狩人達が同胞の遺体をズタズタにして作り上げた忌むべき鎧も砕いてきた。
だが、尾の先に居る男は地面から足を離す事なく立っていた。


ガラガラと瓦礫が崩れる音がした、振り向くと同時に斧が火竜の脳天に突き刺さる。
「い・・・・ってぇ~じゃねーか。スタンの剣、やっぱし『炎』に関係してるな。」
胸元にサブウェポンとして用意していたスタンの剣、ソーディアン・ディムロス。
武器でありながら炎への抵抗を大きく高める力があるようだ。
(持ってたのはラッキーだったぜ。この戦いで真価を・・・剣は得意じゃないんだが大丈夫なのか?)
ホークの心配とは別に、アミバの指示が効果を現したらしくケンシロウとの1vs1に持ち込んでいた。

「仲間が心配か?ケンシロウ!」
間違った秘孔へ気を流し込み、筋肉を肥大化させる。
完全な自爆技だが、秘孔への抵抗力を完全と成しているようだ。
前回以上の力に加え、比較的正確な位置への秘孔、そして俊敏な動き。
アミバを支える『執念』が、ケンシロウを追い詰める。
ホーク達を援護に向かう余裕はない、急いで始末しなければ。

筋肉が肥大した個所は主に上半身に集中している。
怒りで脳のリミッターを解除しつつあるアミバの筋肉は鋼鉄以上である。
だが下半身の筋肉や頭部には変化が薄い。
下半身に必殺の秘孔は存在しない、狙うのは頭部。
「ああぁったぁ!北斗壊骨け・・・っ!」
ゼロ距離から放たれた、アミバの北斗剛掌破が腹部を撃ち抜く。

隙を見せたケンシロウへ追い打ちをかけず後ろへ下がるアミバ。
何か企んでいるのは明白だったが、腹部の痛みは頭部の痛みより抜けにくい。
「いいぞ、その顔だ。何かされると分かっていても何も出来ない己の無力、思い知れぇ!」
奇妙な構えから漆黒の波動を打ち出すアミバ。
空間が歪み、足場が消える、間違いない。
この感覚には覚えがある。
「そうか、闇に堕ちて力を手に入れた貴様なら・・・。」

暗琉天破、闘気に己の持つ邪悪な心を加え、生み出された魔闘気によって繰り出される奥義。
だが、この技は北斗神拳ではなく、北斗神拳の宗家を祖とした北斗琉拳の物。
ルーツは同一で共通点も多いが、アミバが独学で生み出せる拳法ではない。


「ククク、そうだケンシロウ。俺は地獄でお前の戦いの全てを見ていたのだ。
カイオウ如き小物の使う手品程度、この俺様の手にかかれば造作もないわ!」
アミバが猛スピードで迫る、だが足の筋肉の強化が出来ていないので、
重くなった上半身が速度を鈍らせている。
この内に回転し、己の位置を掴まなければ。
だが、腕は空しく空を切るしかなかった。
この技はかけられた直後、己の位置を完全に失う前に回転を行う必要があったのだ。

「ケンシロウ!これを受け取りなさい!」
ゲラ=ハの投げたランスを受け止める、目の前ではアミバが拳を繰り出そうとしていた。

「そんな棒っきれで、なぁにが出来るんだぁぁぁ!?フハハァ・・・は?」
片手で握ったそれを使い、ポールダンサーのように槍を軸にして回転する。
「助かったぞ、ゲラ=ハ。遠心力の中心、それさえ分かれば自分の位置を掴める。後は・・・。」
ランスの様に円錐状に見えていた先端、よく見れば実は粗雑な作りの石槍だった。
何故そう見えたのか、それは高速で回転するドリルの溝が見えない事と同じ。
槍を回転させながら投げていたから。

「おおぁあ!」
勢いよく飛びこむアミバに、遠心力を味方につけたケンシロウの拳が命中する。
「へっ・・・ぶぱっ!」
飛び込んできた時、否、それ以上の勢いで盛大に吹っ飛ぶ。
魔闘気の流れが弱くなり、完全に感覚を取り戻す。

ゲラ=ハが援護に駆けつけるため走る。
だが、ケンシロウの目を見てそれが無用である事を悟った。
槍を持ち主に返し、地面から起き上がろうとする愚者へ目を向ける。
「北斗神拳の戦いに一対多数は無い、ここからが本番だ。アミバ。」


「ふざけやがって・・・今だって俺が遊んでやらなかったら貴様は粉々になっていたんだぁーっ!」
もう油断はしない、全ての動きは見切っている。
今度は激振孔を全力で撃ちこみ、最大の苦痛を味あわせてやる。

南斗聖拳特有の素早い突きで翻弄する。
しかし、同じように闘気を腕に纏いながら腕を払いのけ、生じた隙を的確に狙うケンシロウ。
秘孔を外す事には成功しているが、焦りと不安は蓄積されていく。
さっきまで優勢だったのにパンチ一撃で形勢を逆転されてしまった。
「な・・・何故だ!何故この天才の拳が当たらんのだ!」

北斗千手殺、千の拳を打ち出しその全てが必殺の秘孔を狙い撃つ。
だが、仕留める事に気を取られた今のアミバは、秘孔に当てようとしてフェイクも入れず、
手の秘孔に防御を集中させその隙に~等の作戦も無く闇雲に殴りかかっているだけだった。
そんな物が通用する筈もなく、全ての拳を叩き落とされてしまった。

「無様だな、お前のそれは北斗神拳ではない。
お前は道化だ、秘孔を理解したつもりの拳法家を演じているにすぎない。」
この一言がアミバから理性をむしり取ってしまった。
怒りで噴き出す闘気がケンシロウを上回るのに時間はかからなかった。

理性を失っても本能で闘気の差を理解しているアミバは、
いつまでも当たらない秘孔に頼るのを止め、完全に南斗聖拳に切り替えた。
冥府から全ての戦いを見ていただけあって、南斗六星拳までもコピーしていた。
「死ねぇぇい!ケンシロウ!」
鳳凰の翼を模るようにして腕を広げ、無駄な足掻きという事にも気づかずに闘気を集める。

「やはりお前は天才なんかではない、忘れているのか?北斗神拳には一度使った技は通用しない。
お前が只コピーしただけの偽拳法では俺は未来永劫、絶対に倒せん!」
ケンシロウの言葉を無視し、両腕に集めた気を容赦なく撃ち出そうと腕を振り下ろす。
妙だ、気が出ない。それに振り下ろしたはずの腕が視界に入ってこない。
代わりに、地面に転がる人体の一部が視界に入った。
鎧の破片も見当たらず兵士の物ではないのは確かだ、太く不自然な筋肉、それは自分の腕であった。


「しかし、飛竜なんて初めて相手にしたがこりゃすげぇな・・・。」
脳天に叩きこんだ愛用の石斧を見上げながら、思わず口にしてしまう。
こんな化け物を一人で撃退したケンシロウはきっと人間ではない。
エルフか獣人か、もしやヴァンパイアだろうか。しかし陽の光に当たってもなんともない。
ホークがそんな疑問を掲げているが、飛竜にとってはどうでもいい事であった。
自分に攻撃という敵意を向けたからには許す訳にはいかない。
唸り声を上げながらホークに向かって突っ込んでいく。

今度は炎の攻撃ではないのでディムロスで無効化する事はできない。
廻り込むようにして走り、飛び込むようにしてギリギリで体当たりをかわす。
直進は速いが旋回は遅い、という飛竜全般に当てはまる弱点を突いた回避方法。
「フゥ、『飛竜狩りの基本~初めての火竜討伐~(民明書房)』を読んでおいて助か・・・。」
立ち上がり、後ろを振り返ると低空に飛び上がり口から炎を漏らす火竜の姿があった。
放たれた火炎を咄嗟にディムロスで受け止めるが、火炎弾の衝撃までは吸収できない。

ホークの移動力を奪った事を察したリオレウスは、着地と同時に突撃の体制を取る。
「おい、トカゲの兄ちゃん!」
「分かってます!」
力強く、尚且つ素早い切り返しによるベアの二段斬りが飛竜の足首を切り裂く。
そしてベアが攻撃した足首へ、更にゲラ=ハが追い打ちをかける。
槍に力をこめ、突く。『十方』と呼ばれる槍技。
槍の先端を微細な動きで操り、真空波を操作して全方位から攻撃する。

「グウァァ・・・!」
自身の巨体を支えるたった二本の脚である、どんなに発達した筋力でも限界がある。
強靭な再生力に妨げられ、致命傷にはならないが大きな隙を生み出す事が出来る。

「ぬおっしゃあ!」
起きると同時に飛び上がり、脳天に突き刺さった石斧へとディムロスを振り下ろす。
ベキン、という何かが折れる音と同時に飛竜の叫び声が響き渡る。
砕けた斧が深く突き刺ささり、剥がれ落ちた鱗の間の肉から血を噴き出す火竜。
だが、その眼に映るのは更なる怒りと飽くなき闘争心だった。


足を捻り、後ろを向ける。
背を向けるという表現をしなかったのは、背ではなく尾を向けているからだ。
「危ねぇっ!」
ホークを突き飛ばし、大盾で尻尾を受け止めるベア。
なんとか踏ん張り、その場を凌いだが足が瓦礫に減り込んでしまった。

襲い来る尻尾の連撃、岩石を猛スピードで連続して叩きつけていることになる。
だが、盾と巨大な鎧で全て受け止めている。
「しつこいぞテメェっ!」
足を瓦礫に取られ、耐える事しかできないベアを救出すべくディムロスで斬りかかる。
だが、剣を得意としていないホークでは力任せに斬るしかなかった。
溶岩に触れても解ける事のない、岩石を超える強度と沸点。
自然界の生み出した大いなる生命、それが『竜』なのだ。
考えもなく斬りかかって勝てる筈がない。

爪を瓦礫に引っ掛け、地面を掘り起こし土塊を蹴りあげる。
眼潰しなどが目的ではなく、巨大な脚で力強く蹴りあげたそれは大砲に匹敵した。
「おごぉぉ!?」
思わぬ攻撃方法に防御もままならず、思わずディムロスを手放してしまった。

槍を手に、再び足を攻撃して時間を稼ぐため力を込める。
だが、ゲラ=ハの足もとに向かって炎を吐き出し爆風で行動を阻止する。
動きが止まったのを見計らい、今度は本体に向けて炎を吐き出す。
爆炎に包まれ吹き飛ばされるゲラ=ハ。
丈夫な鱗が全身に張り付いているので死にはしなかったが重傷である。

二人を打ちのめすと、再びベアへと尻尾を叩きこむ。
ベアの分厚く、巨大な鎧の表面がボコボコにへこまされている。
「へっ、『守り』が下手だからお前等そうなるんだよ。見てな・・・。」
何を思ったか、盾を捨て、剣を放り投げ自分の肉体と鎧のみの状態になる。


「馬鹿野郎!死ぬ気か!?」
リオレウスに手加減は無かった、鎧の崩れる音、火竜の尾が奏でる死への行進曲。
しかし、ベアの目に死を恐れる様子は一切なかった。

「何で俺が吹っ飛ばないか教えてやるよ・・・『守る』ためさ。」
不意にリオレウスの動きが止まった、尻尾が急に動きを止めたのだ。
巨大な槌の様な尾は、血塗れの鎧にしっかりと受け止められその場をピクリとも動かせなくなっていた。

「俺の命は皇帝陛下の為にある。だが、陛下は己の命は民のためにあると語ってくれた。
そして行動で示してくれた、化物を倒すため自己を犠牲とし、新たな陛下に精神を受け継がせた。
陛下の心が死なない様、俺は陛下を守りたい、そして陛下の命である、民の命も守りたい!」
ベアが渾身の力で尻尾を締め付けると、音を立てて鱗が剥がれ落ちていった。

「俺がこんな重っ苦しい鎧を着てるのは、俺の命が軽々しく吹っ飛ばないようにする重りさ。
俺は『盾』だ、陛下も仲間も、そして民も命を賭して『守り』抜く!吹っ飛ぶ訳にはいかねぇよ!」
尻尾からベキベキという音と共に、更に激しく鱗が剥げ落ちて行く。
激しく尻尾を揺り動かし、夢中でベアの手を逃れようとする。

尾から噴き出す血と、鎧に付着した己の血でぬめっていた為、尻尾が抜けてしまった。
だが、リオレウスは攻撃に出る事はなく、翼をバタバタと動かしていた。
「覚えておけ、『守る』力は決して『攻める』力に負けはしないという事を。」
本能のみで行動するリオレウスが退却しようとしている。
負けを認めたのだ、ケンシロウの時と同じく自ら身を退く。

両腕を失い、戦意を喪失しているアミバへ止めを刺すべく拳を振り上げるケンシロウ。
両翼で力強く羽ばたき、突風を生み出しそれを邪魔する。
火竜は倒れ込んだアミバを口に咥えて空へと飛び立っていった。

「勝ったか、また逃がしちまったな。」
ホークが水術で傷を癒しながらケンシロウの元へと近づく。
晴れやかな顔をして、昼間の酒飲みとは大違いだ、とお互い気付く事無く同じ事を思っていた。
「また来たら、また追い払えばいいさ・・・。」



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