悲鳴に続けて爆音が響き渡る、人々の逃げ惑う足音が地面を震わせる。
コートを着た男が立ち上がり、埃を払いながら逃げる準備を始める。
「物騒な街だな。さっさと立ち退くとするか。」
ギターケースを背負い込み、男は店を後にした。
コートを着た男が立ち上がり、埃を払いながら逃げる準備を始める。
「物騒な街だな。さっさと立ち退くとするか。」
ギターケースを背負い込み、男は店を後にした。
何があったのか確かめなくては。
足を動かすが、重い、自分の体か疑ってしまうほどに。
立ち上がると奇妙な感覚に襲われる。
地面が揺れているのか、自分が揺れているのかも分からない。
体温はウォームアップが必要無い程に高まっているが、体がこれでは意味がない。
足を動かすが、重い、自分の体か疑ってしまうほどに。
立ち上がると奇妙な感覚に襲われる。
地面が揺れているのか、自分が揺れているのかも分からない。
体温はウォームアップが必要無い程に高まっているが、体がこれでは意味がない。
「それでは戦えませんね、酒が抜けたら頼みますよ。」
槍を手に、周囲を警戒しながら爆発音が聞こえた方へと走る。
嫌な予感がする、前にも同じような経験をした。
槍を手に、周囲を警戒しながら爆発音が聞こえた方へと走る。
嫌な予感がする、前にも同じような経験をした。
トキに秘功を突かれ、病魔に侵された肉体でラオウに挑むのを見送った。
今の自分と来たらどうだ。たかが酒如きに肉体の自由を奪われてしまった。
「くっ・・・指が震えて秘功が突けん。自然に抜けるのを待つしかないのか・・・。」
思わず壁に寄りかかる自分に、店主が水を差しだしてきた。
何故、逃げないのだろうか?
今の自分と来たらどうだ。たかが酒如きに肉体の自由を奪われてしまった。
「くっ・・・指が震えて秘功が突けん。自然に抜けるのを待つしかないのか・・・。」
思わず壁に寄りかかる自分に、店主が水を差しだしてきた。
何故、逃げないのだろうか?
「命が欲しければ海に飛び込めば済む、防波堤に魔物用の仕掛けもあるから
港にまでモンスターは寄らないのさ。」
爆音と同時に地面に衝撃が走り、店内を揺らす。
並べてあるグラスや酒樽が地面に落ち、転がっていく。
港にまでモンスターは寄らないのさ。」
爆音と同時に地面に衝撃が走り、店内を揺らす。
並べてあるグラスや酒樽が地面に落ち、転がっていく。
「さっき何故、海賊を続けるのか聞いてたな。あんたには無いのか?」
「・・・何?」
「人生も命もつぎ込んで、やりたいと思うことさ。」
「・・・何?」
「人生も命もつぎ込んで、やりたいと思うことさ。」
「乱世を生きる弱き人々を守るのが俺の・・・。」
店主の問いに答えながら、グラスを受け取ろうと手を伸ばした。
バシャッ、冷たい、一瞬何が起こったのか分からなかった。
空になったグラスから水滴が床へと落ちている。
「残念、不正解。アンタの目、今一瞬だが泳いだぞ。」
店主の問いに答えながら、グラスを受け取ろうと手を伸ばした。
バシャッ、冷たい、一瞬何が起こったのか分からなかった。
空になったグラスから水滴が床へと落ちている。
「残念、不正解。アンタの目、今一瞬だが泳いだぞ。」
グラスに水を注ぎなおし、今度はかけずに渡してきた。
「さぁ、頭を冷やした所で答えてくれ。ヒントをやるよ。アンタ自分の我儘や理屈で行動する人じゃない。
民を守るのはアンタが『やるべき事』、聞いてるのはアンタの『やりたい事』だ。」
「さぁ、頭を冷やした所で答えてくれ。ヒントをやるよ。アンタ自分の我儘や理屈で行動する人じゃない。
民を守るのはアンタが『やるべき事』、聞いてるのはアンタの『やりたい事』だ。」
やりたい事、俺が望むもの、人々が平穏な暮らしを送れるようにしたい。
そう思っている、心の底からだ。だが、「分からない」。
何故だ、何故、俺は人々の平穏を思うようになったのだ。
いや、平和を望むのは当然の筈だ。何故こんな疑問を抱く。
俺は、何を見失っているのだ?
そう思っている、心の底からだ。だが、「分からない」。
何故だ、何故、俺は人々の平穏を思うようになったのだ。
いや、平和を望むのは当然の筈だ。何故こんな疑問を抱く。
俺は、何を見失っているのだ?
「・・・アンタの目は哀しみに満ちている、
その哀しみはどうやったら満たせるか。
考えてみな。」
その哀しみはどうやったら満たせるか。
考えてみな。」
店主が寂しそうに言った、彼の目にも哀しみが宿っていた。
そう、誰も哀しむことのない世界、だから争いを消そうとしていた。
そして、俺の哀しみは消えないのだ。
最愛の人を失っている俺は消す事は未来永劫できないのだ。
だが、ユリアが死して俺の胸に哀しみを刻んだのは無駄ではない筈だ!
そう、誰も哀しむことのない世界、だから争いを消そうとしていた。
そして、俺の哀しみは消えないのだ。
最愛の人を失っている俺は消す事は未来永劫できないのだ。
だが、ユリアが死して俺の胸に哀しみを刻んだのは無駄ではない筈だ!
「そうか、哀しみを忘れなければ死ぬ瞬間まで争いを憎んでいられる・・・。
答えが出たぞ、『乱世を生きる弱き人々の哀しみを少しでも減らすこと』
これが俺の生きる目的だ。」
答えが出たぞ、『乱世を生きる弱き人々の哀しみを少しでも減らすこと』
これが俺の生きる目的だ。」
「言ってる事はあんまり変わらねぇな。だが目の色が『哀しみ』から『決意』に変わった。
今のアンタが言うのなら、それが答えだ。ほら、水飲んでさっさと行け。」
そういって今度はしっかりと手にグラスを渡してくれた。
今のアンタが言うのなら、それが答えだ。ほら、水飲んでさっさと行け。」
そういって今度はしっかりと手にグラスを渡してくれた。
一気に飲み干すとフラフラと店の外へと向かう。
「おい、まだ酒は抜けてないだろう。何しに行く気だ?」
大きく呼吸し、発達した胸筋へと指を打ち込む。
ふら付いていた足は、先程までの頼りないものでは無くなっていた。
「おい、まだ酒は抜けてないだろう。何しに行く気だ?」
大きく呼吸し、発達した胸筋へと指を打ち込む。
ふら付いていた足は、先程までの頼りないものでは無くなっていた。
「安驀孔、俺の体は元々毒素に強い抵抗を持っている。
秘孔を突いてそれを強化すれば酒程度なら、どうという事はない。」
テーブルに今朝釣り上げた魚を置き、店を後にする。
秘孔を突いてそれを強化すれば酒程度なら、どうという事はない。」
テーブルに今朝釣り上げた魚を置き、店を後にする。
「礼だ、足りるか分からんが高く売れると聞いた。」
爆音の鳴る方へと走って行くケンシロウを見送る店主。
テーブルに置かれた金色に輝く魚を手に取る。
爆音の鳴る方へと走って行くケンシロウを見送る店主。
テーブルに置かれた金色に輝く魚を手に取る。
「あいつ・・・これの価値わかってんのかね。
だが面白い男を見つけた、エメラルド!」
だが面白い男を見つけた、エメラルド!」
店主がそう叫ぶと奥からローブを纏った妙齢の女性が現れた。
身なりからすると魔術師と思われる。
「彼、かなりの『力』を秘めていたわ。彼に受け継がせるの?」
「いいや、まだ決めてはいない。俺が一緒について直に見てみる。」
身なりからすると魔術師と思われる。
「彼、かなりの『力』を秘めていたわ。彼に受け継がせるの?」
「いいや、まだ決めてはいない。俺が一緒について直に見てみる。」
「そうね、先帝は万能だったけど最も得意としたのは『剣』なんだし彼に託すのは早計ね。」
店主が転がった酒樽を蹴り壊すと、中からは巨大な鎧が出現した。
店主が転がった酒樽を蹴り壊すと、中からは巨大な鎧が出現した。
「それじゃ、私はジェイムズ達の所に戻る事にするわね。
- でもあの3人に加えてあなたが入ったらバランス悪くない?ベア。」
ベアと呼ばれた男は巨大な鎧を難なく着こなし、巨大な盾と細身の剣を手にして突き進んでいた。
~市街地・中心~
「まずいですね、警備兵が押されています。まぁあの魔物では仕方ないでしょう。」
ゲラ=ハが冷静に状況を判断する、空から火球を放つ魔物、空中の帝王リオレウス。
その背に一人の男を乗せて殺意の爆炎を町に放ち続けている。
「はーはっはぁ!逃げろ逃げろ、運よく生き延びれた奴は木人形にしてやるぞぉ!」
「まずいですね、警備兵が押されています。まぁあの魔物では仕方ないでしょう。」
ゲラ=ハが冷静に状況を判断する、空から火球を放つ魔物、空中の帝王リオレウス。
その背に一人の男を乗せて殺意の爆炎を町に放ち続けている。
「はーはっはぁ!逃げろ逃げろ、運よく生き延びれた奴は木人形にしてやるぞぉ!」
竜騎士の血族は伝説だけだと思っていた、武器も手綱もなしに飛竜を操るとは得体のしれない男だ。
それにしても兵の統率が滅茶苦茶である、バリスタの発射も遅すぎる。
もし破壊されていたらどう飛竜を仕留める気だろうか。
とりあえず少しでも投槍が当たる様に高地を確保しなくてはならない。
「フゥ・・・キャプテンに教えるべきではありませんでしたね。」
それにしても兵の統率が滅茶苦茶である、バリスタの発射も遅すぎる。
もし破壊されていたらどう飛竜を仕留める気だろうか。
とりあえず少しでも投槍が当たる様に高地を確保しなくてはならない。
「フゥ・・・キャプテンに教えるべきではありませんでしたね。」
不在のホークの助けをただ、待っていたら町中火の海である。
ここは一つ時間を稼いでみるとしよう。
下段から弓を撃ち続けている警備兵に気が向いているリオレウス。
今のうちにメルビル市街の2階へ屋根伝いに移動する。
階段は火球で破壊されていたが、爬虫類であるゲッコ族なら平らな壁にも多少の踏ん張りがきく。
ここは一つ時間を稼いでみるとしよう。
下段から弓を撃ち続けている警備兵に気が向いているリオレウス。
今のうちにメルビル市街の2階へ屋根伝いに移動する。
階段は火球で破壊されていたが、爬虫類であるゲッコ族なら平らな壁にも多少の踏ん張りがきく。
苦もなく2階へと上り詰めると兵士が一人も高地へと移動していない事に気づく。
「・・・飛龍戦では高度の確保も重要な筈、なるほど指揮官が無能な様ですね。」
半ば呆れながらも状況を確認するため広場を見まわす。
兵士の死体がゴロゴロと転がっている、これはチャンスかもしれない。
相手の力を削いだ今、一気に片付けに来る可能性が高い。
あの竜騎士のような男の残虐性を考えれば、ほぼ100%である。
「・・・飛龍戦では高度の確保も重要な筈、なるほど指揮官が無能な様ですね。」
半ば呆れながらも状況を確認するため広場を見まわす。
兵士の死体がゴロゴロと転がっている、これはチャンスかもしれない。
相手の力を削いだ今、一気に片付けに来る可能性が高い。
あの竜騎士のような男の残虐性を考えれば、ほぼ100%である。
「よし、降りていいぞ・・・俺が直々に出向いてやる!」
うすら笑いを浮かべながら竜に指示を出す男、やるなら着地の瞬間。
翼を畳み込み完全に硬直する瞬間を狙うしかない。
うすら笑いを浮かべながら竜に指示を出す男、やるなら着地の瞬間。
翼を畳み込み完全に硬直する瞬間を狙うしかない。
翼を動かすたびに暴風が周囲の民家、商店を吹き飛ばし死体をゴミの様に転がす。
そして、着陸の瞬間が訪れた。
そして、着陸の瞬間が訪れた。
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