part.4
act.1
聖域情報部の調査結果どおり、錬金戦団自体の歴史は意外と新しい。
錬金戦団のルーツでもある、現在はジュリアン・ソロが総帥を務める錬金術師組合の始まりが
古代にまで遡るのと異なり、錬金戦団は十八世紀中後半、
その錬金術師組合中の急進派十人の錬金術師によって結成されたとされている。
彼ら十人の中の三人は、当時彼らに親和的であった錬金術師組合員の手引きで、
チベット山中で発見された不思議な材質の鎧らしきものの一部を解析し、
賢者の石の第一歩として核金のプロトタイプを作ることに成功する。
この時点で各々の闘争本能に応じて独自の武器となる、自己再生能力がある、
といった核金の骨子は出来上がっていたらしい。
他の七人は、人以上の存在を目ざしホムンクルスの研究に専念し、
核金のプロトタイプの完成と時を同じくして開発に成功する。
当時の彼らにはまだ理性があったのか、万が一ホムンクルスが暴走した可能性の対策の為、
核金にアンチホムンクルスの因子を組み込んでいるのだが、
これが後世、ホムンクルスを葬り去る唯一の手段となるのだから、世の中どう転ぶかわからない。
以後、半世紀にわたってホムンクルス研究と核金研究は二人三脚で発展していった。
そして、今から約百五十年前、核金は完成したのだが、
ここで思わぬ理由によって核金量産の必要に迫られる。
ホムンクルス技術の外部流出である。
東方より来たと自称する一人の男によって欧州全域に拡散してしまった為、
隠蔽の必要に迫られ、核金を使ってホムンクルスを滅ぼす戦士が誕生した。
さて、この最初の戦士たちであるが、上層部が期待したほどの効果をあげることが出来なかった。
理由は幾つかあげられるが、最大の理由は初期の戦士が錬金戦団とは何のゆかりも無い、
ゴロツキ同然のやからが多くを占めていたことだろう。
当時既に錬金戦団は大英帝国に本拠を置いていたのだが、英国は貧富の差が激しい国柄である。
上流階級がその主要メンバーであった当時の錬金戦団に、
直接命のやり取りをするほど気概のある者は極少数であり、
結果として、死んだとしても彼らの痛点とならないゴロツキや労働階級の人間が選ばれたのだ。
当然、彼らの士気は限りなく低かった。
マトモに活動する者は極僅か、厭々ながらも活動すれば良い方、
挙句の果てにはホムンクルス側に寝返る等という者まで現れた。
予断だが、一部戦士の裏切りの結果、
人間型ホムンクルスは核金を運用可能というという事実が明らかになる
この憂慮すべき事態に、錬金戦団の上層部は大英帝国を裏から取り仕切る集団「円卓会議」と渡りを付け、
極秘裏の支援体制を確立する事に成功する。
この時点で彼らは自らの組織を現在の名称である「錬金戦団」として再編した。
長く醜い闘争の幕を自らの手で開けたのである。
act.1
聖域情報部の調査結果どおり、錬金戦団自体の歴史は意外と新しい。
錬金戦団のルーツでもある、現在はジュリアン・ソロが総帥を務める錬金術師組合の始まりが
古代にまで遡るのと異なり、錬金戦団は十八世紀中後半、
その錬金術師組合中の急進派十人の錬金術師によって結成されたとされている。
彼ら十人の中の三人は、当時彼らに親和的であった錬金術師組合員の手引きで、
チベット山中で発見された不思議な材質の鎧らしきものの一部を解析し、
賢者の石の第一歩として核金のプロトタイプを作ることに成功する。
この時点で各々の闘争本能に応じて独自の武器となる、自己再生能力がある、
といった核金の骨子は出来上がっていたらしい。
他の七人は、人以上の存在を目ざしホムンクルスの研究に専念し、
核金のプロトタイプの完成と時を同じくして開発に成功する。
当時の彼らにはまだ理性があったのか、万が一ホムンクルスが暴走した可能性の対策の為、
核金にアンチホムンクルスの因子を組み込んでいるのだが、
これが後世、ホムンクルスを葬り去る唯一の手段となるのだから、世の中どう転ぶかわからない。
以後、半世紀にわたってホムンクルス研究と核金研究は二人三脚で発展していった。
そして、今から約百五十年前、核金は完成したのだが、
ここで思わぬ理由によって核金量産の必要に迫られる。
ホムンクルス技術の外部流出である。
東方より来たと自称する一人の男によって欧州全域に拡散してしまった為、
隠蔽の必要に迫られ、核金を使ってホムンクルスを滅ぼす戦士が誕生した。
さて、この最初の戦士たちであるが、上層部が期待したほどの効果をあげることが出来なかった。
理由は幾つかあげられるが、最大の理由は初期の戦士が錬金戦団とは何のゆかりも無い、
ゴロツキ同然のやからが多くを占めていたことだろう。
当時既に錬金戦団は大英帝国に本拠を置いていたのだが、英国は貧富の差が激しい国柄である。
上流階級がその主要メンバーであった当時の錬金戦団に、
直接命のやり取りをするほど気概のある者は極少数であり、
結果として、死んだとしても彼らの痛点とならないゴロツキや労働階級の人間が選ばれたのだ。
当然、彼らの士気は限りなく低かった。
マトモに活動する者は極僅か、厭々ながらも活動すれば良い方、
挙句の果てにはホムンクルス側に寝返る等という者まで現れた。
予断だが、一部戦士の裏切りの結果、
人間型ホムンクルスは核金を運用可能というという事実が明らかになる
この憂慮すべき事態に、錬金戦団の上層部は大英帝国を裏から取り仕切る集団「円卓会議」と渡りを付け、
極秘裏の支援体制を確立する事に成功する。
この時点で彼らは自らの組織を現在の名称である「錬金戦団」として再編した。
長く醜い闘争の幕を自らの手で開けたのである。
それから約半世紀後、錬金戦団は核金開発のノウハウも、生産プラントも永久に喪った。
元錬金の戦士であり、当時の錬金戦団最強を謳われた戦士・ヴィクターの妻でもあるアレキサンドリア博士は、
錬金戦団核金研究開発部門の中核メンバーであり、核金のノウハウの権威でもあった。
機密保持のために一箇所に纏められていた核金研究開発施設の壊滅、
主力研究者の死亡という事態が拍車をかけ、錬金戦団は核金を増産する事が出来なくなったのである。
湖水地方に存在する古城を、研究所として使えと「円卓会議」から譲渡され、要塞化したまでは良かった、が。
洋の東西を問わず、要塞の内部は脆い。
錬金戦団核金研究開発部門の中核メンバーであり、核金のノウハウの権威でもあった。
機密保持のために一箇所に纏められていた核金研究開発施設の壊滅、
主力研究者の死亡という事態が拍車をかけ、錬金戦団は核金を増産する事が出来なくなったのである。
湖水地方に存在する古城を、研究所として使えと「円卓会議」から譲渡され、要塞化したまでは良かった、が。
洋の東西を問わず、要塞の内部は脆い。
黒い核金を得て暴走したヴィクターの力によって研究所は完全に崩壊。
当時本部に一時帰還していた「軍医」の武装錬金をもつ戦士によって、
アレキサンドリア他数名が辛うじて命を取り留めた頃、
ヴィクターは錬金の魔人として追撃される立場となっていた。
尚、ヴィクター事件は今もなお錬金戦団に暗い影を落としており、
対ヴィクターの兵器開発の為に人体実験を行っている節があるという。
徹底的に隠蔽・改ざんされたこの事件は、辛うじて「円卓会議」から直接制裁を逃れることこそ出来たものの、
彼らから見放される結果となる。
「円卓会議」としては、彼らの研究成果が大英帝国と女王の為になるだろうという打算があったのだが、
その結果は、裏切り者を出した挙句に、こちらの提供した施設の壊滅という、
恩をあだで返されるが如き結果となったのである。
以来、彼らは付かず離れずの関係を保っている。
支援体制こそ続いているものの、嘗てのような密なものではなくなっていたのがその証拠である。
だが、二十年ほど前に別口の支援を得たらしく、特に此処最近は行動が活発化している。
その支援者こそが、現在聖域が最も危険視している組織「トゥーレ協会」なのだという。
そして、今年に入ってから錬金戦団局長が変わった。
局長の名は、ディードリッヒ・エッカルト。ドイツ出身の女性である。
思えば、彼女が錬金戦団内部で台頭して以来、世界的な錬金術への傾倒が始まっている。
無関係ではないのかもしれない。そう締めくくられた報告が、
城戸沙織がアテナとして受け取った現状報告の全てである。
そして、同じ調査結果は居場所の知れている神聖闘士四人と、黄金聖闘士二人にも知らされる事になる。
当時本部に一時帰還していた「軍医」の武装錬金をもつ戦士によって、
アレキサンドリア他数名が辛うじて命を取り留めた頃、
ヴィクターは錬金の魔人として追撃される立場となっていた。
尚、ヴィクター事件は今もなお錬金戦団に暗い影を落としており、
対ヴィクターの兵器開発の為に人体実験を行っている節があるという。
徹底的に隠蔽・改ざんされたこの事件は、辛うじて「円卓会議」から直接制裁を逃れることこそ出来たものの、
彼らから見放される結果となる。
「円卓会議」としては、彼らの研究成果が大英帝国と女王の為になるだろうという打算があったのだが、
その結果は、裏切り者を出した挙句に、こちらの提供した施設の壊滅という、
恩をあだで返されるが如き結果となったのである。
以来、彼らは付かず離れずの関係を保っている。
支援体制こそ続いているものの、嘗てのような密なものではなくなっていたのがその証拠である。
だが、二十年ほど前に別口の支援を得たらしく、特に此処最近は行動が活発化している。
その支援者こそが、現在聖域が最も危険視している組織「トゥーレ協会」なのだという。
そして、今年に入ってから錬金戦団局長が変わった。
局長の名は、ディードリッヒ・エッカルト。ドイツ出身の女性である。
思えば、彼女が錬金戦団内部で台頭して以来、世界的な錬金術への傾倒が始まっている。
無関係ではないのかもしれない。そう締めくくられた報告が、
城戸沙織がアテナとして受け取った現状報告の全てである。
そして、同じ調査結果は居場所の知れている神聖闘士四人と、黄金聖闘士二人にも知らされる事になる。
彼女が錬金戦団の調査続行を命じた理由は、今城戸邸に滞在している一人の少女によるところが非常に大きい。
「お気にに召しませんでしたか?
私の好物なんですのよ、このケーキ」
私の好物なんですのよ、このケーキ」
城戸沙織は、紅茶で僅かに表情に滲んでいた苦悩を飲み下すと、
テーブルの向こう側に仏頂面で座っている小柄な少女に微笑みかけた。
少女は、紅茶もお茶請けのケーキにも手をつけていない。
テーブルの向こう側に仏頂面で座っている小柄な少女に微笑みかけた。
少女は、紅茶もお茶請けのケーキにも手をつけていない。
「いらないわ、食欲無いもの」
少女が城戸邸に滞在というか、半ば強引に引き取られてきてから二月目に入る。
「もしかして、お嫌いでした?」
この事態を招いたきっかけは、城戸沙織がニュートンアップル学院入学前の事前調査にまで遡る。
「食欲が無いだけよ、甘いものは嫌いじゃないわ」
欧州の影の歴史として畏怖される聖域ではあるが、聖戦以外では基本的に内向的な組織でもある。
オカルト関連の事件対処以外では、極力国家間の事件には関わらないようにしているのだ。
無論、最低限度の渉外活動は行っているが。
錬金戦団、核金、ホムンクルスといった言葉の意味こそ知っていたが、それ以上踏み込むことはしなかった。
礼儀ある無関心とでもいうべきか、あまり深く立ち入らないというのも、
強大な力を持つ組織には重要である。余計なプレッシャーは摩擦を招くだけだ。
故に、聖域が「ヴィクター」を知ったのは極最近なのである。
オカルト関連の事件対処以外では、極力国家間の事件には関わらないようにしているのだ。
無論、最低限度の渉外活動は行っているが。
錬金戦団、核金、ホムンクルスといった言葉の意味こそ知っていたが、それ以上踏み込むことはしなかった。
礼儀ある無関心とでもいうべきか、あまり深く立ち入らないというのも、
強大な力を持つ組織には重要である。余計なプレッシャーは摩擦を招くだけだ。
故に、聖域が「ヴィクター」を知ったのは極最近なのである。
「よかった…。
甘いものがお嫌いでしたらどうしようかと思いましたわ」
甘いものがお嫌いでしたらどうしようかと思いましたわ」
そう言って胸の前で掌を合わせて微笑む城戸沙織に対して、
ふん、と、小ばかにしたかのような小さな笑いが、少女の答えだった。
そして、ケーキを口に運ぶ。
そんな彼女の様子をまるで気まぐれな猫のようだ、と、城戸沙織は思う。
ふん、と、小ばかにしたかのような小さな笑いが、少女の答えだった。
そして、ケーキを口に運ぶ。
そんな彼女の様子をまるで気まぐれな猫のようだ、と、城戸沙織は思う。
「食べたわよ、これでいいんでしょ?」
元から、夕食後のお茶の誘いだったのだ。
「紅茶も冷めない内にどうぞ」
微笑みの仮面の下で、城戸沙織は考える。
ホムンクルスと太古の女神、彼女と自分、何が違うのだろうと。
アテナと同時に、城戸沙織でもある。アテナとしての意思も、力も、城戸沙織にとっては恐怖でしかない。
神話の昔からの膨大な経験と、記憶は、
僅か十三歳の少女にとって受け止めるには余りにも強大すぎる代物だった。
辰巳からその事実を知らされたとき、
城戸沙織は自分の中で何かおおきな歯車ががちりと嵌り、動き出したのを実感した。
刻一刻と、日一日と、自分が自分でありながら自分以外の何かへと「戻っていく」感触など、
城戸家頭首にしてグラード財団総帥という立場でしかない少女にとっては、荷が勝ち過ぎた。
だから、アテナという存在へ逃げたのだ。
自分自身を何度ともなく死にさらすような真似をしたのは、つまりは逃避だ。
ホムンクルスと太古の女神、彼女と自分、何が違うのだろうと。
アテナと同時に、城戸沙織でもある。アテナとしての意思も、力も、城戸沙織にとっては恐怖でしかない。
神話の昔からの膨大な経験と、記憶は、
僅か十三歳の少女にとって受け止めるには余りにも強大すぎる代物だった。
辰巳からその事実を知らされたとき、
城戸沙織は自分の中で何かおおきな歯車ががちりと嵌り、動き出したのを実感した。
刻一刻と、日一日と、自分が自分でありながら自分以外の何かへと「戻っていく」感触など、
城戸家頭首にしてグラード財団総帥という立場でしかない少女にとっては、荷が勝ち過ぎた。
だから、アテナという存在へ逃げたのだ。
自分自身を何度ともなく死にさらすような真似をしたのは、つまりは逃避だ。
「…熱いのよ」
きっと、この少女もそうだったのだろう。
人外化生へと自分が造り変わる恐怖、だが、彼女はそれでも人間性を喪っていないし、逃げ出しても居ない。
ただ、淡々とその事実を認め、ホムンクルスという自分自身を消化している。
人外化生へと自分が造り変わる恐怖、だが、彼女はそれでも人間性を喪っていないし、逃げ出しても居ない。
ただ、淡々とその事実を認め、ホムンクルスという自分自身を消化している。
「それは…、ごめんなさい。
ヴィクトリアさん」
ヴィクトリアさん」
ホムンクルスへと変えられながらも、
「人間であること」を喪っていない、「人間」を辞めていないのだ。
城戸沙織はそんな彼女が少しだけ眩しい。
強大な聖闘士たちが自分をアテナと拝め奉る。
今や神聖闘士となった四人もだ。
だからこそ、ただ一人、彼女を只の一人の少女としか見ていない彼の存在が暖かい。
どんな理不尽でも、どんな運命でも、どんな逆境でも、彼は跳ね除ける。
そんな彼だから、彼女は彼の前でだけ一人の少女で居られた。
城戸沙織としての自分が、どうしようもない位に彼・
星矢に惹かれているのを自覚したのは何時だったのだろう。
「人間であること」を喪っていない、「人間」を辞めていないのだ。
城戸沙織はそんな彼女が少しだけ眩しい。
強大な聖闘士たちが自分をアテナと拝め奉る。
今や神聖闘士となった四人もだ。
だからこそ、ただ一人、彼女を只の一人の少女としか見ていない彼の存在が暖かい。
どんな理不尽でも、どんな運命でも、どんな逆境でも、彼は跳ね除ける。
そんな彼だから、彼女は彼の前でだけ一人の少女で居られた。
城戸沙織としての自分が、どうしようもない位に彼・
星矢に惹かれているのを自覚したのは何時だったのだろう。
「なんで謝るのよ?」
そこで少しだけ、毎日彼女を見ていなければ分からないくらいに、ほんの少しだけ、
彼女、ヴィクトリア・パワードは笑みを思い出した。
胸中を見透かされたように思った城戸沙織は、そこで少しだけ微笑みを増した。
彼女、ヴィクトリア・パワードは笑みを思い出した。
胸中を見透かされたように思った城戸沙織は、そこで少しだけ微笑みを増した。
「館の主としてゲストの好みを把握できなかったのですもの。
謝らなければなりませんわ」
謝らなければなりませんわ」
やわらかい笑み。
だがそれは哀しい仮面だ。
ヴィクトリアのこの外見に反して余りにも怜悧な顔と同じく、
グラード財団総帥としての、アテナとしての仮面だ。
この笑みの向こう側の感情を読みとった者は居ないし、読み取れるほど易いものでもないが、
ヴィクトリアは仮面であることには気が付いたらしい。
だがそれは哀しい仮面だ。
ヴィクトリアのこの外見に反して余りにも怜悧な顔と同じく、
グラード財団総帥としての、アテナとしての仮面だ。
この笑みの向こう側の感情を読みとった者は居ないし、読み取れるほど易いものでもないが、
ヴィクトリアは仮面であることには気が付いたらしい。
「そう…」
その、吐息にまぎれて消えてしまいそうな声には、確かに共感が含まれていた。
城戸沙織とヴィクトリアの出会いは、この年の四月になる。
何のことは無い、聖域が調べ上げた情報を元に、城戸沙織自身が会いに行ったのだ。
何のことは無い、聖域が調べ上げた情報を元に、城戸沙織自身が会いに行ったのだ。
当然、護衛についていたジュネや聖域の人間を驚愕させた。
後で事実を知った星矢からもしかられた。
普段余り使わない空間転移までして叱りに来たのだから、
星矢もだいぶ驚き焦って心配したのだろう。
だが、会って置くべき人物であることも事実だった。
敵対する可能性が高い組織の暗部を知るものから情報を引き出し、
願わくば協力を、という聖域上層部の思惑があったことは事実だが、
そんな思惑など知ったこっちゃなしに動くのが城戸沙織である。
良くも悪くもマイペースな彼女に、ヴィクトリアが振り回され、結果として津村斗貴子との接触の後に、
ヴィクトリアは「母」と共に城戸邸に引っ越す羽目になったのである。
後で事実を知った星矢からもしかられた。
普段余り使わない空間転移までして叱りに来たのだから、
星矢もだいぶ驚き焦って心配したのだろう。
だが、会って置くべき人物であることも事実だった。
敵対する可能性が高い組織の暗部を知るものから情報を引き出し、
願わくば協力を、という聖域上層部の思惑があったことは事実だが、
そんな思惑など知ったこっちゃなしに動くのが城戸沙織である。
良くも悪くもマイペースな彼女に、ヴィクトリアが振り回され、結果として津村斗貴子との接触の後に、
ヴィクトリアは「母」と共に城戸邸に引っ越す羽目になったのである。
「話はそれだけ?
だったら私は失礼させてもらうわ」
だったら私は失礼させてもらうわ」
素っ気無い態度で席を立ったヴィクトリアに、沙織は含みのある笑顔を向ける。
「戦団に、すこし変化がありました」
振り返ったヴィクトリアが見た城戸沙織の顔は、アテナのものだった。
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