「神聖樹の成長速度が遅くなっている?」
「ああ。どういう理由かは知らんが、スパッツの計算上、今回の神聖樹が育ち切るまでにはまだ一週間の余裕があるらしい」
ピッコロのその言葉に、トランクスは脱力したように膝をついた。
『精神と時の部屋』の入り口である。スパッツの予測を聞いたピッコロは、トランクスを安心させるべく即座にここへ来ていた。
「ハハ・・・良かった」
「とも言ってられん。時間が出来たとはいえ、あのベジータを苦もなく倒したターブルというサイヤ人を倒せなければ、結局は
同じことだ。修行の方はどうなっている?」
「それは・・・」
ピッコロの言葉に、トランクスは口ごもった。実際のところ、気ばかりが焦って思ったように力をつけることができない状態
だったのである。
「悟飯、お前はどうだ?」
「僕も、今のところ特別に強くなった感じは・・・」
そう言いながら悟飯もまた口ごもる。しかし考えてみれば無理もなかった。この二人は悟空やベジータと違い、戦闘経験は
ともかく、自ら創意工夫を重ねて力を上げることには慣れていないのだ。強くなる過程には必ず、独力で自らの力を跳ね上げる
ことに長けた人物が側にいたのである。それをいきなり自分達の力のみで飛躍的なパワーアップをしろと言っても、そう易々と
出来るはずもない。
現にこの世界での悟飯は悟空やベジータの不在により、セルはおろかこの世界における人造人間17(19)号、18(20)号の
二人にも及ばないまま死んでしまっているし、トランクスが強くなったのもベジータとの修行の成果である。
「そうか・・・」
ピッコロにしてもこの二人とは力の上げ方がそもそも違っているため、気の利いたアドバイスをすることも出来ない。
仕方なく外へ出ると、ベジータが立っていた。
「ああ。どういう理由かは知らんが、スパッツの計算上、今回の神聖樹が育ち切るまでにはまだ一週間の余裕があるらしい」
ピッコロのその言葉に、トランクスは脱力したように膝をついた。
『精神と時の部屋』の入り口である。スパッツの予測を聞いたピッコロは、トランクスを安心させるべく即座にここへ来ていた。
「ハハ・・・良かった」
「とも言ってられん。時間が出来たとはいえ、あのベジータを苦もなく倒したターブルというサイヤ人を倒せなければ、結局は
同じことだ。修行の方はどうなっている?」
「それは・・・」
ピッコロの言葉に、トランクスは口ごもった。実際のところ、気ばかりが焦って思ったように力をつけることができない状態
だったのである。
「悟飯、お前はどうだ?」
「僕も、今のところ特別に強くなった感じは・・・」
そう言いながら悟飯もまた口ごもる。しかし考えてみれば無理もなかった。この二人は悟空やベジータと違い、戦闘経験は
ともかく、自ら創意工夫を重ねて力を上げることには慣れていないのだ。強くなる過程には必ず、独力で自らの力を跳ね上げる
ことに長けた人物が側にいたのである。それをいきなり自分達の力のみで飛躍的なパワーアップをしろと言っても、そう易々と
出来るはずもない。
現にこの世界での悟飯は悟空やベジータの不在により、セルはおろかこの世界における人造人間17(19)号、18(20)号の
二人にも及ばないまま死んでしまっているし、トランクスが強くなったのもベジータとの修行の成果である。
「そうか・・・」
ピッコロにしてもこの二人とは力の上げ方がそもそも違っているため、気の利いたアドバイスをすることも出来ない。
仕方なく外へ出ると、ベジータが立っていた。
「どうだ?様子は」
「芳(かんば)しくないな。それなりに力はつけているようだが、正直伸び悩んでいるといったところか」
「バカ共が・・・!」
言いながらベジータは、ぎり、と歯を噛み締めた。彼にはもう次のレベルへ進むために必要なことがわかっているのだろうか。
それを見て、ピッコロは思わず頬をほころばせた。
「教えてやりたそうな顔をしているな」
「何?」
「強くなるための方法を掴んでいるなら教えてやれ。出し惜しみをする余裕など俺達にはないだろう」
「く・・・!」
相変わらずの難しい顔をしてその場にしばらく立っていたベジータだったが、やがて舌打ちを一つすると、傍らの壺を掴んだ。
それは過去の世界から神龍の雛形と共に持ち出した、仙豆の詰まった壺であった。
それを片手にずかずかと部屋の扉の向こうに消えていくベジータを横目に、ピッコロは悟られないくらいに小さく、くすりと笑った。
「ふん、随分と楽しそうじゃないか」
「芳(かんば)しくないな。それなりに力はつけているようだが、正直伸び悩んでいるといったところか」
「バカ共が・・・!」
言いながらベジータは、ぎり、と歯を噛み締めた。彼にはもう次のレベルへ進むために必要なことがわかっているのだろうか。
それを見て、ピッコロは思わず頬をほころばせた。
「教えてやりたそうな顔をしているな」
「何?」
「強くなるための方法を掴んでいるなら教えてやれ。出し惜しみをする余裕など俺達にはないだろう」
「く・・・!」
相変わらずの難しい顔をしてその場にしばらく立っていたベジータだったが、やがて舌打ちを一つすると、傍らの壺を掴んだ。
それは過去の世界から神龍の雛形と共に持ち出した、仙豆の詰まった壺であった。
それを片手にずかずかと部屋の扉の向こうに消えていくベジータを横目に、ピッコロは悟られないくらいに小さく、くすりと笑った。
「ふん、随分と楽しそうじゃないか」
ピッコロと入れ替わるように(実際には『精神と時の部屋』の作用で数時間が経過しているが)現れたベジータの姿を見て、
トランクスが駆けつけると、ベジータは無言で睨みつけた。
「貴様ら、いつまで甘えるつもりだ」
少し遅れて悟飯がやって来てからも、変わらずトランクスを睨むベジータが発した第一声がそれだった。
「甘えてなんか・・・」
「ならばピッコロの奴に言った言葉は何だ。弱音じゃないなら言ってみろ!」
ベジータの断ち切るような恫喝に、二人はぐうの音も出ず顔をうつむける。
「今回だけは手助けしてやる。こいつを使え。どう修行するかは奴らの強さがどういうものかを考えればすぐにわかる」
そう言いながら、ベジータは片手に掴んだ壺を床に置いた。
「いいか、俺はカカロットじゃない。そう毎度貴様らの手を引いてやるつもりもない。それでも強くなりたいなら、自分で探し出す
能力を見に付けろ」
最後にそう言い捨てて、ベジータは部屋を出て行った。
少しの間、ベジータの言葉に消沈していた二人だが、やがておずおずと覗き込んだ。
「仙豆だ」
「これを使うって・・・」
壺に収められた仙豆を見つめながら、二人はしばらく考えた。
トランクスが駆けつけると、ベジータは無言で睨みつけた。
「貴様ら、いつまで甘えるつもりだ」
少し遅れて悟飯がやって来てからも、変わらずトランクスを睨むベジータが発した第一声がそれだった。
「甘えてなんか・・・」
「ならばピッコロの奴に言った言葉は何だ。弱音じゃないなら言ってみろ!」
ベジータの断ち切るような恫喝に、二人はぐうの音も出ず顔をうつむける。
「今回だけは手助けしてやる。こいつを使え。どう修行するかは奴らの強さがどういうものかを考えればすぐにわかる」
そう言いながら、ベジータは片手に掴んだ壺を床に置いた。
「いいか、俺はカカロットじゃない。そう毎度貴様らの手を引いてやるつもりもない。それでも強くなりたいなら、自分で探し出す
能力を見に付けろ」
最後にそう言い捨てて、ベジータは部屋を出て行った。
少しの間、ベジータの言葉に消沈していた二人だが、やがておずおずと覗き込んだ。
「仙豆だ」
「これを使うって・・・」
壺に収められた仙豆を見つめながら、二人はしばらく考えた。
翌日、部屋から現れた二人を見て、ピッコロは違和感を覚えた。以前に部屋を利用した時のように髪型が変わっている以外に、二人とも
特別に変わったようには見えないのに、どこか違って見える。
「ふん、気付いたか」
しかしベジータにはその違いが分かるのか、皮肉な笑みを浮かべながらそう言った。
「えっと・・・どういう風に強くなったんだ?セルの時みたいに、もっと凄い変身が出来るようになったとか」
クリリンの質問に、悟飯とトランクスは一度笑みを交わしてから、二人同時に
『こうなりました』
と言った。しかし言葉とは裏腹に二人の外見に変化はまるで見られない。しかし、
「うおっ!」
二人の言葉自体に弾かれたようにクリリンが後ずさった。ピッコロも移動はしないまでも片足を引いている。
違うのだ。
超サイヤ人でもない普通の外見でありながら、二人から発せられる気は普通のサイヤ人と同等か、それ以上の大きさを持っていた。
「あの時闘ったラニというサイヤ人は、第二形態にすらなっていない状態で悟飯さんより強い力を持っていました。それは神聖樹の実を
食べ続けたから、と言っていましたが、神聖樹の実が、あくまで食べた者の眠っている力を引き出すものだと考えるなら、俺達も本来
同じだけの力が持てるはずなんです」
「でも、僕達には神聖樹の実はありません。だから、父さんやベジータさんが以前やった方法で自分の基本能力を引き上げたんです」
「え、それってまさか、フリーザの時にベジータが俺にやらせた、アレ?」
「はい」
おののいた声で聞くクリリンに、悟飯は笑って答えた。
彼らが取った方法とは、お互いに気を極限まで抑えた状態で互いの攻撃を受け、瀕死の状態になったところを相手に仙豆を飲まして
もらって回復するというものだった。
「ハハ・・・(あんなのを一年間。俺なら最初の一回でやめるな)」
特別に変わったようには見えないのに、どこか違って見える。
「ふん、気付いたか」
しかしベジータにはその違いが分かるのか、皮肉な笑みを浮かべながらそう言った。
「えっと・・・どういう風に強くなったんだ?セルの時みたいに、もっと凄い変身が出来るようになったとか」
クリリンの質問に、悟飯とトランクスは一度笑みを交わしてから、二人同時に
『こうなりました』
と言った。しかし言葉とは裏腹に二人の外見に変化はまるで見られない。しかし、
「うおっ!」
二人の言葉自体に弾かれたようにクリリンが後ずさった。ピッコロも移動はしないまでも片足を引いている。
違うのだ。
超サイヤ人でもない普通の外見でありながら、二人から発せられる気は普通のサイヤ人と同等か、それ以上の大きさを持っていた。
「あの時闘ったラニというサイヤ人は、第二形態にすらなっていない状態で悟飯さんより強い力を持っていました。それは神聖樹の実を
食べ続けたから、と言っていましたが、神聖樹の実が、あくまで食べた者の眠っている力を引き出すものだと考えるなら、俺達も本来
同じだけの力が持てるはずなんです」
「でも、僕達には神聖樹の実はありません。だから、父さんやベジータさんが以前やった方法で自分の基本能力を引き上げたんです」
「え、それってまさか、フリーザの時にベジータが俺にやらせた、アレ?」
「はい」
おののいた声で聞くクリリンに、悟飯は笑って答えた。
彼らが取った方法とは、お互いに気を極限まで抑えた状態で互いの攻撃を受け、瀕死の状態になったところを相手に仙豆を飲まして
もらって回復するというものだった。
「ハハ・・・(あんなのを一年間。俺なら最初の一回でやめるな)」
次に入るのはベジータ一人ということになり、ベジータの修行の間、他の者達で今後について改めて話し合うことになった。
「俺としては、孫悟空を連れて来るべきだと思う。異星人がいつ来るかはわからんが、あの3人だけでも手に余る状況だ」
「そうですね。お父さんなら、今の状況を伝えればきっと来てくれると思います」
ピッコロの意見に悟飯を始めとした全員が同意する。唯一トランクスの表情が複雑なのは、例え今の状況であれ、他人の助力をあてに
するのを快く思わないであろう父親のことが頭にあるせいだろう。
「それじゃあ、皆さんは三日後に一旦過去に戻るということですね」
「その必要はない」
トランクスの言葉に、何故かスパッツが異を唱えた。
「俺が一人で行こう。元々、過去の世界のブルマさんが俺を参加したのは、今回のような事態を考えてのことだからな」
「一人でって、お前一人であのマシンに乗るのか?」
当然の質問をするクリリンに、スパッツは笑みを向けながら胸に手を当てて言った。
「俺にはタイムマシンの機能も内蔵してある」
「いいっ?!」
「ホ、ホントですか?」
「ああ。俺一人のパワーでは精々2、3日を往復するのが限界だが、俺達が乗って来たタイムマシンの残エネルギーも加えれば、
俺一人ならすぐに過去に戻ることが可能だ」
スパッツを全員が信じられないものを見る眼で見つめた。中でも一番驚いているのはトランクスだろう。スパッツは確かに大柄な人間の
姿をしているが、あのタイムマシンの機能がスパッツの身体に収まるとは思えない。
そんなトランクスの心を察したのか、スパッツは人間が時を超えるためにはシートや計器も含めたスペースが必要な上、過去の世界に
戻るための膨大な燃料も必要なためにあの大きさになってしまうこと。スパッツの場合は元々永久エネルギー回路が内蔵されている上、
飛ぶのは本人だけなので、彼のボディ程度の中に収まるのだということを説明した。
「そうですか。向こうの母さんも、やっぱり天才なんですね」
「そうだな。俺も正直こういう身体で皆と再会出来るとは思わなかった」
「では、孫悟空さんのことはお願いします」
「ああ」
トランクスの言葉に、スパッツは頼もしい笑みを浮かべた。それはどこか以前の姿-16号-を思わせるものだった。
「俺としては、孫悟空を連れて来るべきだと思う。異星人がいつ来るかはわからんが、あの3人だけでも手に余る状況だ」
「そうですね。お父さんなら、今の状況を伝えればきっと来てくれると思います」
ピッコロの意見に悟飯を始めとした全員が同意する。唯一トランクスの表情が複雑なのは、例え今の状況であれ、他人の助力をあてに
するのを快く思わないであろう父親のことが頭にあるせいだろう。
「それじゃあ、皆さんは三日後に一旦過去に戻るということですね」
「その必要はない」
トランクスの言葉に、何故かスパッツが異を唱えた。
「俺が一人で行こう。元々、過去の世界のブルマさんが俺を参加したのは、今回のような事態を考えてのことだからな」
「一人でって、お前一人であのマシンに乗るのか?」
当然の質問をするクリリンに、スパッツは笑みを向けながら胸に手を当てて言った。
「俺にはタイムマシンの機能も内蔵してある」
「いいっ?!」
「ホ、ホントですか?」
「ああ。俺一人のパワーでは精々2、3日を往復するのが限界だが、俺達が乗って来たタイムマシンの残エネルギーも加えれば、
俺一人ならすぐに過去に戻ることが可能だ」
スパッツを全員が信じられないものを見る眼で見つめた。中でも一番驚いているのはトランクスだろう。スパッツは確かに大柄な人間の
姿をしているが、あのタイムマシンの機能がスパッツの身体に収まるとは思えない。
そんなトランクスの心を察したのか、スパッツは人間が時を超えるためにはシートや計器も含めたスペースが必要な上、過去の世界に
戻るための膨大な燃料も必要なためにあの大きさになってしまうこと。スパッツの場合は元々永久エネルギー回路が内蔵されている上、
飛ぶのは本人だけなので、彼のボディ程度の中に収まるのだということを説明した。
「そうですか。向こうの母さんも、やっぱり天才なんですね」
「そうだな。俺も正直こういう身体で皆と再会出来るとは思わなかった」
「では、孫悟空さんのことはお願いします」
「ああ」
トランクスの言葉に、スパッツは頼もしい笑みを浮かべた。それはどこか以前の姿-16号-を思わせるものだった。
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