SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ その名はキャプテン 61


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~海~

眠りから覚め、爽やかな朝日に包まれながら、
少し強めの磯の香りの漂う潮風のシャワーを浴びる。
目を擦りながらテーブルへと近づいていき目蓋を開けば豪華な海鮮類が出迎えてくれる。
口いっぱいにそれを頬張ると魚や貝、海藻や塩の本来の旨味が口に溢れだしてくる。
そして次の食事に備えて釣りに興じる、みんなで大物を釣り上げ喜びを分かち合い・・・

「まだ続くのか?」
「大体こんな船旅が理想的だな。」
目の前にいる筋骨隆々とした逞しい若者が純真な目で夢を語る。
別に悪い事ではないのだが少しメルヘンが入り過ぎているような気がした。

「おめぇ何歳だ、船旅とかした事はあるのか?」
「いや・・・一応あるんだが忘れてた。で、ここの海はイクラは取れるのか?
食糧庫にはカレールーはあるのか?ビーフが好きなんだがシーフードでもいけるな。」

一度体験したら分かるだろ、と言いたい所だったがアホらしくなってしまった。
カレーも幸い、食糧庫にカレー粉があった気がするのでそれで作ればいいだろう。

「・・・いいから、さっさと網引っ張ってこい。」
そう言い残してデッキに上がる、掃除係のスペックが居ないので大分汚れている。
爽やかな朝日、という事は次は潮風のシャワーか。
風が吹き荒れ帆がバタバタと音をたてる、シャワーなものか、これでは滝だ。
数日に一回洗う程度の服(海賊では清潔な方さ・・・多分)には常に磯と汗が混じり合った香りが漂っている。

「こいつも中々に年季が入ってきたな。」
自分の服の臭いを嗅ぎながら思わず、誰に話しかける訳でもなく言葉が出てしまう。
ゲラ=ハは、この時間は操舵士として舵を任せている。
そろそろ交替して飯でも作ってもらうとしようか。

船の後部で巧みに舵を扱い、波風を操る一人の青年がいた。
最も、外見では一目見た所で青年とは分からないが。
「おや、キャプテン。お目覚めでしたか。」

人型に巨大化したトカゲ、彼を表すにはこれ以上の言葉は無いだろう。
「まだ見えねぇ様だな、ちっとばかし遅すぎるぜこの船は。」
「我々の島に寄る人間は、商人が大半です。一般人には需要が低いので船賃は安くなってますが、
大量の荷物に耐えるだけの船底を作るので、速度を犠牲にしたのでしょう。」

海賊船は強度より速度だ、大砲での撃ち合いなんて海軍の演習くらいな物である。
相手の船に素早く乗り込み、奇襲を仕掛けられなくてはホークにとって船とは言えない。
「メルビルに乗り込んで帝国海軍の高機動船を頂戴するか。」
「この船のボートで我慢して下さい、また弓矢の雨に追われますよ。」

予測の範囲内の返答である、だが肝心の返す言葉は予測してなかった。
海を飛び跳ねる魚の群れを見つめながら無理に話を続ける。
「この船だってメルビルの物だぜ、どうせお尋ね者だって。」
「ボートについていたメルビルの紋章は外しました、普通の船と変わりませんどうぞ使って下さい。」

ホークの言葉を受け流しながら懐に手を伸ばし、小包を引き出す。
片手で舵を取りながら口で包みを開くと、彼の朝ごはんが飛び出した。
巨大な甲殻類のモンスターを乾燥させた物、ようするに虫の干物である。
見てるとゾンビ系の魔物を思い浮かべるが、人のミイラの方がまだマシと思える程にグロい。

口一杯に干物を頬張る、表面はカラカラなのに完全に血が抜けていないらしく汁が飛び散る。
この光景も大分慣れたつもりだったが、やはりキモい。
段々と気持ち悪くなってきたので仕方なく、一旦ゲラ=ハの説得を諦めた。


「ったく、あのお堅い所が無ければなぁ・・・。」
愚痴を洩らしながら網にかかった獲物を見に行く。
ケンシロウは力だけは確かなので引き千切らないように注意しておけば問題はない。

体中に白い煙を纏いながら、千切れた尻尾を持ったケンシロウが立っていた。
「キャプテン、この世界の魚はどうなっているんだ。爆発したぞ。」
「バクレツアロワナか、最近見かけるようになった魚だがそりゃ食用じゃない。
だが取っておけよ、爆薬として使えるからな。後大きめの金魚みたいなのはカクサンデメキン・・・」

ケンシロウに取れた魚についてくわしく教えている内に異変に気づく。
こいつの引き上げた網には食える物が一つもないのだ。
黄金魚、ハレツアロワナ、古代魚から魚竜と呼ばれる魔物の鱗。
ここまで素材を引き上げると狩人だったら泣いて喜ぶ所だが、
生憎とこちらは海賊である、爆薬は便利だが武器の製作に態々狩りなどしていられない。
金銭面では黄金魚を引き上げているので中々の金額にはなりそうだ。

「かなりの大物揃いだったがどれも食えるもんじゃ無い。
今夜は具なしのカレーだな、嫌なら素潜りだ。」
そういってケンシロウへと目を向けると、銛(モリ、と読む。とったどー!でお馴染みのアレ)
を構えた海パン一丁の逞しい拳士の姿がそこにあった。

「ちょっと待て!錨を下ろさないと・・・」
全部言い終わる前に飛び込むケンシロウ、晩御飯の為に危険な海へと単身乗り込んでしまった。
急いでデッキに駆け上がるホーク、遅い船だが泳いで追いつくのは無理がある。
錨を下して停止させなければいけない。

「ゲラ=ハ!錨を下せ、ケンの奴が海に飛び込みやがった!」
それを聞くと、舵から手を離して海へと錨を放り投げる。
「なんだか嫌な予感がしますね、キャプテン。」
「ああ・・・船に穴の開かない程度の予感だとありがたいんだがな。」


それは潜ると呼べるものでは無かった。
闘気によって周囲の水分を蒸発させ、塩と水蒸気に変える。
本来の常軌を逸した肺活量に加え、水蒸気から酸素を取り込む。
更には巻き起こるオーラによって浮力まで得ているので飛行しているのに近い状態だ。

闘気によって魚が逃げていくが、暗殺者としての英才教育を受けた北斗の使者からは逃れられない。
手にした銛を標的に投げつける、水をかきわけて海の幸へと真っすぐ突き進む。
魚類とは水の些細な動きを感じ取る事で外敵の攻撃をかわす事を可能としている。
だが、水の動きを感じた時には手遅れである。

深々と銛が突き刺さる、腕力のみを用いた漁の技巧など寸分も無いというのに水の抵抗がない。
通常の人間とは異なった筋肉を最大に生かした結果生まれた奇跡の投槍。
だが、威力も尋常ではなかった。

魚を木端微塵に吹き飛ばし、近くにあった島の地層を粉々に砕いて行く。
島が数センチ程沈んだが、幸いにも無人島だった。

「おいおい、アレと殴り合ったのか俺達・・・。」
「今生きていることを神に感謝したくなりますね。」
「バカ言うな、ゲッコ族の神はサルーインじゃねぇか。次は殺されるぞ。」
「次?キャプテン、もう一度彼とやる気なんですか。では私から伝えておきますね。」

二度も奇跡の生還は果たせない、そんな事になったら今度は筋肉痛じゃ済まないだろう。
慌てて弁明しようとする様子を見てニヤニヤしているゲラ=ハ。
普段は生真面目を通す男なのでそれを冗談と見破るのに数秒かかった。

「このっ・・・いいからケンシロウを呼び戻すぞ!」
そういって海の方へと目を戻すと、一匹の魔物がケンシロウに迫っていた。
見た目は牙がやたらと長い事以外、普通の魚である。
問題なのは、そのサイズであった。

「化石魚・・・生まれて初めて見たぜあんなヤバい魚・・・。」




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