何なのだろう。
私は己に問うた。自分の身体に残された人の部分が、何かを感じさせている。
何なのだろう。
それが生まれたのはいつだったろうか。17号が吸収され、16号も破壊され、一人助かりながらも側にいる者がいないことを
知った時に、同じようなものを感じた気はするが。しかしそれとも少し違う。
何なのだろう。
ひたすらそれを考えながら、私は道をあてどなく歩く。途中、路面にタイヤがこすれる耳障りな音がして、自分の横で何かが
ひしゃげたような気もするが、そんなものに注意を向ける気にもなれなかった。
「・・・つまらないな」
そんな言葉をこぼしながら、いつもの癖で髪をかき上げた。陽の光を含んで輝く金の筋となった髪が視界を横切る。あの時
以来ろくに洗ってもいないのに、髪の艶が変わらないのを嘆くべきか喜ぶべきか。
自分を今の身体にした科学者が与えた目的であり、その科学者を17号が殺してからはただ気紛れに標的として目指した
孫悟空は既にこの世になく、17号を吸収する形で殺したセルもいない。
17号と二人助かってみれば、目の前に広がるのは、自由という名の砂漠だけだった。
いっそ、楽しむためだけに破壊と殺戮と略奪を繰り返してやろうかと思うこともあったが、今は自分などより遥かに上の力を
持った存在が立ち塞がると知りながら、ただ死ぬためだけにそんなことをするのも馬鹿げているし、第一自分の趣味ではない。
結局ただこうして、取るに足りない自分の内面に思考を沈めながら徘徊するのが関の山だった。
「そういえば、あの時から服を変えてないな」
改めて自分の服を見ると、何やらいくつも穴が空いていた。そういえば昨日、髭面の男が自分にしつこくまとわりついた後、
手に持った銃を私に撃っていた。取り上げて、丸めてから返すとすぐ去って行ったが。
「・・・新しい服でも手に入れるか」
私は己に問うた。自分の身体に残された人の部分が、何かを感じさせている。
何なのだろう。
それが生まれたのはいつだったろうか。17号が吸収され、16号も破壊され、一人助かりながらも側にいる者がいないことを
知った時に、同じようなものを感じた気はするが。しかしそれとも少し違う。
何なのだろう。
ひたすらそれを考えながら、私は道をあてどなく歩く。途中、路面にタイヤがこすれる耳障りな音がして、自分の横で何かが
ひしゃげたような気もするが、そんなものに注意を向ける気にもなれなかった。
「・・・つまらないな」
そんな言葉をこぼしながら、いつもの癖で髪をかき上げた。陽の光を含んで輝く金の筋となった髪が視界を横切る。あの時
以来ろくに洗ってもいないのに、髪の艶が変わらないのを嘆くべきか喜ぶべきか。
自分を今の身体にした科学者が与えた目的であり、その科学者を17号が殺してからはただ気紛れに標的として目指した
孫悟空は既にこの世になく、17号を吸収する形で殺したセルもいない。
17号と二人助かってみれば、目の前に広がるのは、自由という名の砂漠だけだった。
いっそ、楽しむためだけに破壊と殺戮と略奪を繰り返してやろうかと思うこともあったが、今は自分などより遥かに上の力を
持った存在が立ち塞がると知りながら、ただ死ぬためだけにそんなことをするのも馬鹿げているし、第一自分の趣味ではない。
結局ただこうして、取るに足りない自分の内面に思考を沈めながら徘徊するのが関の山だった。
「そういえば、あの時から服を変えてないな」
改めて自分の服を見ると、何やらいくつも穴が空いていた。そういえば昨日、髭面の男が自分にしつこくまとわりついた後、
手に持った銃を私に撃っていた。取り上げて、丸めてから返すとすぐ去って行ったが。
「・・・新しい服でも手に入れるか」
「とぉってもお似合いですよお」
冗談のような顔をした店主が揉み手をしながらお世辞を言う。それ程気に入らないわけでもないが、進んで着たいとも
思えない服だ。
以前はこの程度でも妥協していたが、どうせ時間は有り余っているのだから、たまには最も好みに合う組み合わせを
探すのもいいだろうと、店内をうろつくことにした。
「あの・・・まだお決まりになりませんか?」
2時間を経過する頃、店主が額に汗をかきながらそう聞いてきた。周りには試着した服が積み重なっている。
「もう少し淡い色で、丈の短めのものはないか?」
構わず質問してみると、店主は泣きそうな顔で笑いながら、生憎と在庫がございませんと言ってきた。
「なら仕方ない。この服にしておくか」
「あ、ありがとうございますぅ~っ」
店員は何故か涙を流して喜んだ。たかが服一着を買うのがそんなに嬉しいのだろうか。
「え~、しめて5万4千ゼニーになります」
いそいそとレジを打つ店員の声を聞きながら、私は初めて自分のミスに気がついた。これまでは服など勝手に着て勝手に
出て行けば良かったのだが、普通の手順を踏むのであれば金が必要なのだ。
金はない。とはいえ、せっかく時間をかけて選んだのに買わずに出るのも少しもったいない気がする。ここは変に騒ぐと
面倒なことになる店主を気絶させてこのまま出て行くのがいいか。加減が難しいが、まあ死んでしまったならその時はその時だ。
早速実行しようと、相変わらず媚びた笑いを浮かべる店主の方を向いた時、表の方で爆発音が響いた。
冗談のような顔をした店主が揉み手をしながらお世辞を言う。それ程気に入らないわけでもないが、進んで着たいとも
思えない服だ。
以前はこの程度でも妥協していたが、どうせ時間は有り余っているのだから、たまには最も好みに合う組み合わせを
探すのもいいだろうと、店内をうろつくことにした。
「あの・・・まだお決まりになりませんか?」
2時間を経過する頃、店主が額に汗をかきながらそう聞いてきた。周りには試着した服が積み重なっている。
「もう少し淡い色で、丈の短めのものはないか?」
構わず質問してみると、店主は泣きそうな顔で笑いながら、生憎と在庫がございませんと言ってきた。
「なら仕方ない。この服にしておくか」
「あ、ありがとうございますぅ~っ」
店員は何故か涙を流して喜んだ。たかが服一着を買うのがそんなに嬉しいのだろうか。
「え~、しめて5万4千ゼニーになります」
いそいそとレジを打つ店員の声を聞きながら、私は初めて自分のミスに気がついた。これまでは服など勝手に着て勝手に
出て行けば良かったのだが、普通の手順を踏むのであれば金が必要なのだ。
金はない。とはいえ、せっかく時間をかけて選んだのに買わずに出るのも少しもったいない気がする。ここは変に騒ぐと
面倒なことになる店主を気絶させてこのまま出て行くのがいいか。加減が難しいが、まあ死んでしまったならその時はその時だ。
早速実行しようと、相変わらず媚びた笑いを浮かべる店主の方を向いた時、表の方で爆発音が響いた。
「な、何なんだアイツは」
「ば、化け物だ」
次いで、そんな声が聞こえたかと思うと、銃を抱えた二人組みの男が店のドアを開けて入ってきた。
「おい!てめえら動くな!」
興奮した状態で、銃を左右に振りながらわめく男達の視線が、私のところで止まる。
「女だ。丁度いい、こいつを盾にすりゃ、あの化け物もおとなしくなるぜ」
そう言いながら私の所へずかずかとやって来ると、銃を突きつけて来た。店主の方は震え上がって店の壁に貼り付いたまま
固まっている。
むさくるしい顔だ。何をしたのかは知らないが、どうせロクなことはしていないだろう。
「姉ちゃん、悪りいがちょっと俺達のために働いてくれや」
「おとなしくしてりゃあ、殺しはしねえよ。楽しいことはするかもしれねえがなあ」
口々に下卑たセリフを吐きながら、下品な笑い声を上げる。ここまで型にはまった、頭の悪い悪党も珍しい。これならアイツの
方が100倍もマシだろう。
「ん?」
思わず疑問の声を上げていた。
何でいきなりアイツのことが頭に浮かぶのか。パチンコ玉のような頭で、鼻の潰れた味も素っ気もない顔。オレンジの道着だけは
着慣れているせいかそこそこ似合ってはいたが、身長も低い。容姿で言えばあのトランクスとかいう人間の方が余程マシなのに、
何故だろう。
「いい加減観念しろ」
そんなことを考えていると、店の入り口から二人組みとは別の声が聞こえた。
「ん?」
どこか聞き覚えのある声にそちらを向くと、今さっき頭に浮かんだ顔がそこにあった。服装こそ白のTシャツに青のズボンと普通の
服装だが、風采が上がらないという点では変わらない。
にもかかわらず、その姿を見た一瞬、胸にくすぶっている何かが大きくなったのは気のせいか。
「ば、化け物だ」
次いで、そんな声が聞こえたかと思うと、銃を抱えた二人組みの男が店のドアを開けて入ってきた。
「おい!てめえら動くな!」
興奮した状態で、銃を左右に振りながらわめく男達の視線が、私のところで止まる。
「女だ。丁度いい、こいつを盾にすりゃ、あの化け物もおとなしくなるぜ」
そう言いながら私の所へずかずかとやって来ると、銃を突きつけて来た。店主の方は震え上がって店の壁に貼り付いたまま
固まっている。
むさくるしい顔だ。何をしたのかは知らないが、どうせロクなことはしていないだろう。
「姉ちゃん、悪りいがちょっと俺達のために働いてくれや」
「おとなしくしてりゃあ、殺しはしねえよ。楽しいことはするかもしれねえがなあ」
口々に下卑たセリフを吐きながら、下品な笑い声を上げる。ここまで型にはまった、頭の悪い悪党も珍しい。これならアイツの
方が100倍もマシだろう。
「ん?」
思わず疑問の声を上げていた。
何でいきなりアイツのことが頭に浮かぶのか。パチンコ玉のような頭で、鼻の潰れた味も素っ気もない顔。オレンジの道着だけは
着慣れているせいかそこそこ似合ってはいたが、身長も低い。容姿で言えばあのトランクスとかいう人間の方が余程マシなのに、
何故だろう。
「いい加減観念しろ」
そんなことを考えていると、店の入り口から二人組みとは別の声が聞こえた。
「ん?」
どこか聞き覚えのある声にそちらを向くと、今さっき頭に浮かんだ顔がそこにあった。服装こそ白のTシャツに青のズボンと普通の
服装だが、風采が上がらないという点では変わらない。
にもかかわらず、その姿を見た一瞬、胸にくすぶっている何かが大きくなったのは気のせいか。
「あ、あれ?」
向こうの方でも気付いたのか、相変わらず間の抜けた声をあげる。
「何だクリリン、こいつらを追っていたのはお前か?」
「え?あ、まあ」
「正義の味方も大変だな。こんな連中を一々追いかけていたんじゃ、きりがないだろうに」
銃を突きつけられながら、自分達を追ってきた化け物と平然と会話する私に向かって、二人組みが何かうろたえたことを
言っていたが、会話の邪魔になるので床に叩きつけるとおとなしくなった。悪運の強いことに加減がうまくいったらしく、
気絶しただけのようだが。
「ん・・・まあ俺の場合、こういう場合くらいしか役に立つこともないしな。ところで、18号の方は買い物か?」
「ん、ま、まあな」
まさかさっきまで店主を気絶させて服を強奪しようとしていたとも言えず、曖昧に答えると、クリリンは妙にそわそわとした後、
妙なことを言ってきた。
「えと、そ、それじゃあさ、その服の金、お、俺が出そうか?」
「何でお前が出す必要がある」
願ってもない申し出だったのだが、コイツの情けない顔を見ていると、つい反発したくなる。だが何故だろう、同時に楽しさを
感じてしまうのは。
「いや、あの、そいつらのせいで迷惑かけたからさ、そのお詫びってことで」
「・・・まあ、そういうことならいいだろう」
そういうこともこういうこともない。そもそもコイツが払わなければ強奪するか、あきらめるしかないのだから。
ともあれ服の代金はクリリンが出すことになった。
向こうの方でも気付いたのか、相変わらず間の抜けた声をあげる。
「何だクリリン、こいつらを追っていたのはお前か?」
「え?あ、まあ」
「正義の味方も大変だな。こんな連中を一々追いかけていたんじゃ、きりがないだろうに」
銃を突きつけられながら、自分達を追ってきた化け物と平然と会話する私に向かって、二人組みが何かうろたえたことを
言っていたが、会話の邪魔になるので床に叩きつけるとおとなしくなった。悪運の強いことに加減がうまくいったらしく、
気絶しただけのようだが。
「ん・・・まあ俺の場合、こういう場合くらいしか役に立つこともないしな。ところで、18号の方は買い物か?」
「ん、ま、まあな」
まさかさっきまで店主を気絶させて服を強奪しようとしていたとも言えず、曖昧に答えると、クリリンは妙にそわそわとした後、
妙なことを言ってきた。
「えと、そ、それじゃあさ、その服の金、お、俺が出そうか?」
「何でお前が出す必要がある」
願ってもない申し出だったのだが、コイツの情けない顔を見ていると、つい反発したくなる。だが何故だろう、同時に楽しさを
感じてしまうのは。
「いや、あの、そいつらのせいで迷惑かけたからさ、そのお詫びってことで」
「・・・まあ、そういうことならいいだろう」
そういうこともこういうこともない。そもそもコイツが払わなければ強奪するか、あきらめるしかないのだから。
ともあれ服の代金はクリリンが出すことになった。
「え~と、18号は、この辺に住んでるのか?」
店を出てからしばらく一緒に歩いた頃、クリリンが聞いてきた。
「そうだが、それがどうした?」
そっけなく答えると、面白いほどあたふたとする。見ていて飽きない奴だ。
「それよりあの二人は捕まえたんだ。もう用は済んだだろう?何故すぐに帰らない」
「え、いや、それは・・・」
さらに言葉を連ねると、今度は眼に見えて消沈した。その極端な変わりぶりは面白いが、少し言い過ぎたかもしれない。
「まあいいさ。服の金も出してもらったんだ。少しくらいは付き合おう」
我ながら恩着せがましい言葉だと思うんだが、それでもクリリンは顔を輝かせた。本当にころころと表情が変わる。
そんなことを考えながらしばらく話している内に、ふと気付いた。それまで、もやもやと胸に巣くっていた何かが消えて
いるのだ。これはどうしたことだろう。
「-だ?」
クリリンが何かをまた聞いたらしくこちらを見ている。
「あ、ああすまない、聞き逃した。もう一度言ってくれ」
「ん、ああ。18号は今何をしているんだ?」
「何を・・・」
それはある意味最も聞かれたくない質問だ。目的もなくふらふらと歩いているなどと答えられるはずもなく、かといって下手な
嘘は自分をみじめにするだけだ。
「まあ・・・色々とな」
結局、そう答えるのが精一杯だった。しかしクリリンの方はそんな曖昧な答えでも納得したような顔をしている。
「色々、か。まあそうだよな。ちょっと前まであのDr.ゲロに機能を停止されてたし」
「その名前は口にするな」
「あ、ああゴメン」
実際のところ、もうDr.ゲロなどどうでもいい存在ではあるが、それでも憎い名前ではある。それに、自分の曖昧な答えにあっさりと
頷くのが少し腹立たしいのもあって、つい不機嫌な声が出た。
店を出てからしばらく一緒に歩いた頃、クリリンが聞いてきた。
「そうだが、それがどうした?」
そっけなく答えると、面白いほどあたふたとする。見ていて飽きない奴だ。
「それよりあの二人は捕まえたんだ。もう用は済んだだろう?何故すぐに帰らない」
「え、いや、それは・・・」
さらに言葉を連ねると、今度は眼に見えて消沈した。その極端な変わりぶりは面白いが、少し言い過ぎたかもしれない。
「まあいいさ。服の金も出してもらったんだ。少しくらいは付き合おう」
我ながら恩着せがましい言葉だと思うんだが、それでもクリリンは顔を輝かせた。本当にころころと表情が変わる。
そんなことを考えながらしばらく話している内に、ふと気付いた。それまで、もやもやと胸に巣くっていた何かが消えて
いるのだ。これはどうしたことだろう。
「-だ?」
クリリンが何かをまた聞いたらしくこちらを見ている。
「あ、ああすまない、聞き逃した。もう一度言ってくれ」
「ん、ああ。18号は今何をしているんだ?」
「何を・・・」
それはある意味最も聞かれたくない質問だ。目的もなくふらふらと歩いているなどと答えられるはずもなく、かといって下手な
嘘は自分をみじめにするだけだ。
「まあ・・・色々とな」
結局、そう答えるのが精一杯だった。しかしクリリンの方はそんな曖昧な答えでも納得したような顔をしている。
「色々、か。まあそうだよな。ちょっと前まであのDr.ゲロに機能を停止されてたし」
「その名前は口にするな」
「あ、ああゴメン」
実際のところ、もうDr.ゲロなどどうでもいい存在ではあるが、それでも憎い名前ではある。それに、自分の曖昧な答えにあっさりと
頷くのが少し腹立たしいのもあって、つい不機嫌な声が出た。
「もういいだろう。私も帰るし、この辺で別れよう」
どことなく気まずくなってそう言った時、何故か私の胸に、例の何かが再び生まれた。言い出したのは自分だというのに。
「ああ、そうだな。それじゃ・・・」
多少ぎこちなく、それでもそう言って手を振りながら、クリリンは背を向けてふわりと浮き上がった。それを見る私の胸の
何かが少し大きくなる。
「待て」
気付くとそう言っていた。きょとんとした顔でこちらを見るクリリンに、慌てて続ける言葉を捜す。
「・・・私は・・・・・・普段、大体この辺りにいる。用があったら、また来い」
かろうじてそう言うと、途端に目の前の顔が緩む。勿論行くよ、などと言ってから飛び去って行くその姿が一度止まると、
小さく右手を突き上げガッツポーズをした。
「面白い奴だ」
そうつぶやく私の顔に軽い笑みが浮かぶ。それに合わせて胸の何かもまた小さくなった。
時が経つ内にこれはまた大きくなるのだろう。それならそれでいい。その時はまたアイツがやって来て、私の言葉に
めまぐるしく色々な反応しながら、また小さくしてくれるだろうから。
どことなく気まずくなってそう言った時、何故か私の胸に、例の何かが再び生まれた。言い出したのは自分だというのに。
「ああ、そうだな。それじゃ・・・」
多少ぎこちなく、それでもそう言って手を振りながら、クリリンは背を向けてふわりと浮き上がった。それを見る私の胸の
何かが少し大きくなる。
「待て」
気付くとそう言っていた。きょとんとした顔でこちらを見るクリリンに、慌てて続ける言葉を捜す。
「・・・私は・・・・・・普段、大体この辺りにいる。用があったら、また来い」
かろうじてそう言うと、途端に目の前の顔が緩む。勿論行くよ、などと言ってから飛び去って行くその姿が一度止まると、
小さく右手を突き上げガッツポーズをした。
「面白い奴だ」
そうつぶやく私の顔に軽い笑みが浮かぶ。それに合わせて胸の何かもまた小さくなった。
時が経つ内にこれはまた大きくなるのだろう。それならそれでいい。その時はまたアイツがやって来て、私の言葉に
めまぐるしく色々な反応しながら、また小さくしてくれるだろうから。