バキイィッ!
ベジータの拳が、女の顔面に叩き込まれる。例え相手が女であろうと彼に一片の容赦もない
「ぐあっ!」
さらに吹き飛んだ女に追い討ちをかけようとしたベジータの前に、それまで無言で立っているだけだった男のサイヤ人が立ち塞がった。
「邪魔をするなぁーーっ!」
イラついた声で叫びながらベジータが男に向かって拳を振った瞬間、
『待て』
と、どこからともなく聞いた事のない声がその場の全員の耳を打った。
それは静かな口調でありながら、激昂して攻撃を繰り出そうとしたベジータまでもがその動きを止めるほど重い響きを持っていた。
「あ・・・」
一瞬後、声の出所に気付いたクリリンが、わなないた声を上げる。
そう、トランクスの調べた宇宙船から得た情報では、サイヤ人は「3人」だったのである。
それを証明するべく、声のした方向-宇宙船の入り口-に一人のサイヤ人が立っていた。
鋭い眉の下の眼が、純粋な戦闘民族らしい刃の如き光を放っている。肩、肘、左胸、膝に金属を貼り付けた、黒い戦闘用スーツのような
ものを身につけており、その上からでも引き絞った鋼のような筋肉が浮き上がって見える。そして何より眼を引くのはその髪だ。他の
二人のサイヤ人と同じく、恐らくは純粋なサイヤ人であるはずの彼の髪は、一本一本がそれ自体から光を放ちそうな銀色だった。
「ターブル様!」
ベジータの一撃から立ち直った女が、弾かれたように叫んだ。その顔は驚きと畏怖とが詰まっている。
「俺が眠っている間に、随分と楽しそうなことをしているじゃないか」
ゆっくりとベジータ達の所へと歩きながら、ターブルは淡い笑みを浮かべて言った。
「も、申し訳ありません!ターブル様に許可を得るまでもなく、すぐに片付くと思ったもので・・・」
平身低頭して詫びる女の顔は、紙のように白かった。ターブルのことを心の底から恐れているのだ。
「まあいいさ、間に合ったのだから。ところでそこのお前だが・・・」
ターブルはそこで言葉を止め、ベジータの顔をじろじろと観察するように見た後、
「似ているな。サイヤ人らしいが、ひょっとしてお前は王族の人間か?」
と聞いてきた。
「だったら何だ」
ベジータが不機嫌そうに答えると、ターブルはやはり、と頷いてからさらに質問をしてきた。
「こんな辺境の星に何故王族の人間がいる?バカンスにふさわしい星とも思えんが」
と、この質問に今度はベジータの方が意外な顔をした。
「貴様、惑星ベジータが破壊されたことを知らんのか?」
「破壊された?!ほう、それは面白い。『された』という以上はお前達が自分でやったわけでもなさそうだ。ハハ、そうか破壊されたか」
愉快そうに話すターブルの姿に、ベジータの額に青筋が浮かんだ。
「だが腐っても王族なだけはあるな。ラニに一撃を与えるとは」
「ターブル様!あれは・・・」
と、そこまで言ったラニを、ターブルの有無を言わせぬ眼光が貫いた。それ以上続けられず、ラニが再び顔を伏せる。
「面白い。ベジータと言ったか?お前、あの下級戦士の代わりに俺達の・・・」
とそこでターブルの言葉は途切れた。ベジータが攻撃をしかけたのである。
しかし不意をついた攻撃でありながら、ターブルは連続して繰り出される攻撃全てを易々と避け、さらにその拳を掴んでベジータの
動きを止めた。
「イキがいいな。さすがサイヤ人の王族なだけはある。改めて聞くが、あの下級戦士-確かターレスとかいう名前だったな-奴の
代わりにこの銀河で神聖樹の栽培をしてみる気はないか?」
「な・・・に・・・?」
ベジータは有無を言わさず拳を引き抜こうとしたが、まるで固定されてしまったかのように、拳はわずかにさえ動かなかった。
「神聖樹の実を食らえば、今より更に強い力を得られるぞ。ここにいるラニとリセロよりも強い力をな。更には、永遠の若さすらも
得ることが出来る」
「サイヤ人の、王子、であるこの俺に、貴様の下、につけだと?」
なおも引き剥がそうと力をいれながらそう言うベージタの拳を、笑みを浮かべてターブルは開放した。
「お前が王子ならば、俺は神だ。神が王子の上に立つのに何の不満もあるまい?」
『神?!』
目の前のベジータはおろか、3人の来訪者以外の全ての人間が驚きの声を上げた。
以前、界王は悟空に、どの星にも神は必ずいると言っていた。ならば確かに放浪の戦闘民族であるサイヤ人にも、元々の星の神は
いたのだろう。しかし-
「その神が、何故自分の星を捨てて別の銀河などにいた?!でたらめを言うな!」
「何故?ハハハ、俺達が食べているものを考えれば、理由はすぐにわかるだろう?」
「な・・・!」
「わかったか?そもそもサイヤ人が放浪の民となったのも、俺が自分の星で神聖樹を育てたからだよ」
愉快そうに話すターブルを前に、ベジータは痴呆のように固まっていた。余りの衝撃的な事実と、それに繋がる様々なことが全て目の
前の男に繋がって押し寄せ、混乱の極みに陥ったのだ。
「じ・・・自分の守るべき惑星を滅ぼすなんて・・・」
「神なんかじゃない。あ、悪魔だ」
悟飯やクリリンの言葉など聞く耳を持たないかのように、ターブルはあくまで視線をベジータに据えて言葉を続けた。
「もっとも、流浪の民となったお前達に同情がなかったわけじゃない。だから惑星プラントを乗っ取るのには協力したし、第二の故郷、
惑星ベジータとなってからはその星で神聖樹を育てることはしなかった。そして下級戦士の一人にこの銀河での栽培を任せ、俺達は
別の銀河を対象に選んだというわけだ。まあお前の話ではその惑星も長くはもたなかったらしいがな」
その言葉を聞いて、ベジータの顔がそれまで以上の怒りに包まれた。同時にその身を包むオーラも膨れ上がる。
「同情だと?!俺達サイヤ人はお前の同情で生かされていただと?!ふざけるな!!」
怒りに任せ、ベジータは右手からエネルギー弾を打ち出す。一切の加減のない、惑星破壊級の弾である。
しかしターブルは無造作に振った裏拳で、あっさりとそれを弾き飛ばした。そこにベジータが突進する。拳と蹴りが無数のパターンで
繰り出されるが、それはことごとく空を切った。
「わからん奴だな」
「ぐあっ!」
さらに吹き飛んだ女に追い討ちをかけようとしたベジータの前に、それまで無言で立っているだけだった男のサイヤ人が立ち塞がった。
「邪魔をするなぁーーっ!」
イラついた声で叫びながらベジータが男に向かって拳を振った瞬間、
『待て』
と、どこからともなく聞いた事のない声がその場の全員の耳を打った。
それは静かな口調でありながら、激昂して攻撃を繰り出そうとしたベジータまでもがその動きを止めるほど重い響きを持っていた。
「あ・・・」
一瞬後、声の出所に気付いたクリリンが、わなないた声を上げる。
そう、トランクスの調べた宇宙船から得た情報では、サイヤ人は「3人」だったのである。
それを証明するべく、声のした方向-宇宙船の入り口-に一人のサイヤ人が立っていた。
鋭い眉の下の眼が、純粋な戦闘民族らしい刃の如き光を放っている。肩、肘、左胸、膝に金属を貼り付けた、黒い戦闘用スーツのような
ものを身につけており、その上からでも引き絞った鋼のような筋肉が浮き上がって見える。そして何より眼を引くのはその髪だ。他の
二人のサイヤ人と同じく、恐らくは純粋なサイヤ人であるはずの彼の髪は、一本一本がそれ自体から光を放ちそうな銀色だった。
「ターブル様!」
ベジータの一撃から立ち直った女が、弾かれたように叫んだ。その顔は驚きと畏怖とが詰まっている。
「俺が眠っている間に、随分と楽しそうなことをしているじゃないか」
ゆっくりとベジータ達の所へと歩きながら、ターブルは淡い笑みを浮かべて言った。
「も、申し訳ありません!ターブル様に許可を得るまでもなく、すぐに片付くと思ったもので・・・」
平身低頭して詫びる女の顔は、紙のように白かった。ターブルのことを心の底から恐れているのだ。
「まあいいさ、間に合ったのだから。ところでそこのお前だが・・・」
ターブルはそこで言葉を止め、ベジータの顔をじろじろと観察するように見た後、
「似ているな。サイヤ人らしいが、ひょっとしてお前は王族の人間か?」
と聞いてきた。
「だったら何だ」
ベジータが不機嫌そうに答えると、ターブルはやはり、と頷いてからさらに質問をしてきた。
「こんな辺境の星に何故王族の人間がいる?バカンスにふさわしい星とも思えんが」
と、この質問に今度はベジータの方が意外な顔をした。
「貴様、惑星ベジータが破壊されたことを知らんのか?」
「破壊された?!ほう、それは面白い。『された』という以上はお前達が自分でやったわけでもなさそうだ。ハハ、そうか破壊されたか」
愉快そうに話すターブルの姿に、ベジータの額に青筋が浮かんだ。
「だが腐っても王族なだけはあるな。ラニに一撃を与えるとは」
「ターブル様!あれは・・・」
と、そこまで言ったラニを、ターブルの有無を言わせぬ眼光が貫いた。それ以上続けられず、ラニが再び顔を伏せる。
「面白い。ベジータと言ったか?お前、あの下級戦士の代わりに俺達の・・・」
とそこでターブルの言葉は途切れた。ベジータが攻撃をしかけたのである。
しかし不意をついた攻撃でありながら、ターブルは連続して繰り出される攻撃全てを易々と避け、さらにその拳を掴んでベジータの
動きを止めた。
「イキがいいな。さすがサイヤ人の王族なだけはある。改めて聞くが、あの下級戦士-確かターレスとかいう名前だったな-奴の
代わりにこの銀河で神聖樹の栽培をしてみる気はないか?」
「な・・・に・・・?」
ベジータは有無を言わさず拳を引き抜こうとしたが、まるで固定されてしまったかのように、拳はわずかにさえ動かなかった。
「神聖樹の実を食らえば、今より更に強い力を得られるぞ。ここにいるラニとリセロよりも強い力をな。更には、永遠の若さすらも
得ることが出来る」
「サイヤ人の、王子、であるこの俺に、貴様の下、につけだと?」
なおも引き剥がそうと力をいれながらそう言うベージタの拳を、笑みを浮かべてターブルは開放した。
「お前が王子ならば、俺は神だ。神が王子の上に立つのに何の不満もあるまい?」
『神?!』
目の前のベジータはおろか、3人の来訪者以外の全ての人間が驚きの声を上げた。
以前、界王は悟空に、どの星にも神は必ずいると言っていた。ならば確かに放浪の戦闘民族であるサイヤ人にも、元々の星の神は
いたのだろう。しかし-
「その神が、何故自分の星を捨てて別の銀河などにいた?!でたらめを言うな!」
「何故?ハハハ、俺達が食べているものを考えれば、理由はすぐにわかるだろう?」
「な・・・!」
「わかったか?そもそもサイヤ人が放浪の民となったのも、俺が自分の星で神聖樹を育てたからだよ」
愉快そうに話すターブルを前に、ベジータは痴呆のように固まっていた。余りの衝撃的な事実と、それに繋がる様々なことが全て目の
前の男に繋がって押し寄せ、混乱の極みに陥ったのだ。
「じ・・・自分の守るべき惑星を滅ぼすなんて・・・」
「神なんかじゃない。あ、悪魔だ」
悟飯やクリリンの言葉など聞く耳を持たないかのように、ターブルはあくまで視線をベジータに据えて言葉を続けた。
「もっとも、流浪の民となったお前達に同情がなかったわけじゃない。だから惑星プラントを乗っ取るのには協力したし、第二の故郷、
惑星ベジータとなってからはその星で神聖樹を育てることはしなかった。そして下級戦士の一人にこの銀河での栽培を任せ、俺達は
別の銀河を対象に選んだというわけだ。まあお前の話ではその惑星も長くはもたなかったらしいがな」
その言葉を聞いて、ベジータの顔がそれまで以上の怒りに包まれた。同時にその身を包むオーラも膨れ上がる。
「同情だと?!俺達サイヤ人はお前の同情で生かされていただと?!ふざけるな!!」
怒りに任せ、ベジータは右手からエネルギー弾を打ち出す。一切の加減のない、惑星破壊級の弾である。
しかしターブルは無造作に振った裏拳で、あっさりとそれを弾き飛ばした。そこにベジータが突進する。拳と蹴りが無数のパターンで
繰り出されるが、それはことごとく空を切った。
「わからん奴だな」
ドゴォッ!
その笑みを崩さずターブルの放った膝蹴りがベジータの腹に吸い込まれる。杭打ちのハンマーの如き重い音とともに、ベジータの身体が
痙攣した。続いて打ち下ろされた肘が後頭部を襲うと、あっけなくベジータは崩れ落ちた。同時に超サイヤ人の状態も解ける。
「う・・・嘘だろ?あのベジータが・・・」
「く・・・みんな、行くぞ!」
苦い顔で歯を食いしばり、ピッコロが掛けた号令と共に悟飯、トランクス、スパッツ、クリリンが動こうとした時、
「待て」
とターブルが片手を上げて制した。
地球を滅ぼそうとする相手にそう言われて待つ必要もないだろうが、その一言で一同の動きが止まる。それ程にターブルの実力は
圧倒的だった。
「ここに転がっている王子は聞く耳を持たなかったようだが、さっきも言ったように、俺も一応はサイヤ人だ。同じサイヤ人が住む星で
あるならば、見逃さんわけでもない。まして第二の故郷まで破壊されたというのであれば、余計にな。」
「何?!」
ターブルの意外な言葉に、全員が困惑した表情で見つめる。まさかその効果を狙ったというわけでもないだろう。ターブル程の
実力者であればそんなものは必要ない。
「ただしその条件は、さっきも言った通り、この銀河で神聖樹の栽培をする役を引き受けることだ」
続くターブルの言葉に、その場を沈黙が占めた。彼の要求を呑めば少なくとも地球は助かる。しかしそれは同時に、地球という一つの
星を守るために、この銀河に無数に散らばる他の星々を犠牲にすることを意味する。それを考えれば到底呑める要求ではないが、
かといってターブルを倒せる可能性は、今の時点においてほぼゼロに等しかった。
「・・・少し考える時間をもらいたい」
しばらくして、トランクスがそう答えた。
(今こいつとやっても勝てない。でも、『精神と時の部屋』で修行すれば・・・)
「即答は出来んか?まあいい、待ってやろう。ただし・・・」
と、そこでターブルは地面に向けて右手を振った。
痙攣した。続いて打ち下ろされた肘が後頭部を襲うと、あっけなくベジータは崩れ落ちた。同時に超サイヤ人の状態も解ける。
「う・・・嘘だろ?あのベジータが・・・」
「く・・・みんな、行くぞ!」
苦い顔で歯を食いしばり、ピッコロが掛けた号令と共に悟飯、トランクス、スパッツ、クリリンが動こうとした時、
「待て」
とターブルが片手を上げて制した。
地球を滅ぼそうとする相手にそう言われて待つ必要もないだろうが、その一言で一同の動きが止まる。それ程にターブルの実力は
圧倒的だった。
「ここに転がっている王子は聞く耳を持たなかったようだが、さっきも言ったように、俺も一応はサイヤ人だ。同じサイヤ人が住む星で
あるならば、見逃さんわけでもない。まして第二の故郷まで破壊されたというのであれば、余計にな。」
「何?!」
ターブルの意外な言葉に、全員が困惑した表情で見つめる。まさかその効果を狙ったというわけでもないだろう。ターブル程の
実力者であればそんなものは必要ない。
「ただしその条件は、さっきも言った通り、この銀河で神聖樹の栽培をする役を引き受けることだ」
続くターブルの言葉に、その場を沈黙が占めた。彼の要求を呑めば少なくとも地球は助かる。しかしそれは同時に、地球という一つの
星を守るために、この銀河に無数に散らばる他の星々を犠牲にすることを意味する。それを考えれば到底呑める要求ではないが、
かといってターブルを倒せる可能性は、今の時点においてほぼゼロに等しかった。
「・・・少し考える時間をもらいたい」
しばらくして、トランクスがそう答えた。
(今こいつとやっても勝てない。でも、『精神と時の部屋』で修行すれば・・・)
「即答は出来んか?まあいい、待ってやろう。ただし・・・」
と、そこでターブルは地面に向けて右手を振った。
グワッ!!
一瞬後、正しくその軌道に沿って地面が深く割れると、ターブルはそこに向かって何かを落とした。
「な!」
「期限はこの神聖樹の実が熟すまでだ。承諾するなら破壊するのを見逃してやる」
と、ターブルは笑いながら言った。
「な!」
「期限はこの神聖樹の実が熟すまでだ。承諾するなら破壊するのを見逃してやる」
と、ターブルは笑いながら言った。
ベジータをあっさりと倒してしまう実力を持ったターブルと、その部下であるラニとリセロ。3人の底知れぬ強敵を前に、地球の戦士達に
与えられた時間は余りにも短かった。
与えられた時間は余りにも短かった。