SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ その名はキャプテン 48-4


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五十八話「灼熱の翼」

「よし、向こうは片付いたぞ!」
「一気にいくのよ、スタン!」
二人の激励を背に受け、力強く跳躍する。

「虎牙破斬!獅子、戦吼!」
短いジャンプで上下と素早く2連続で斬りつけ、着地と同時に闘気を放つ。
2連斬りで怯み、弱みを見せた所に強烈な打撃を与えるこの連撃。
もっていた剣がディムロスであったら幻獣といえども吹き飛ばせたかもしれない。

全ての攻撃に重さがないので、吹っ飛ばしてダウンを奪ったりする戦いは出来ない。
小型の剣というものは切れ味を重点的に強化してあるので、
全身を引き裂いて出血によるダメージを狙わなければいけない。
今まで長剣、斧、槍とある程度の重量があるものしか扱ってこなかったので、
小型剣の使い方を理解できていないのだ。

(ファッツ、何かスタンにアドバイスを・・・。)
「だから大振りじゃダメっていってるでしょうが!剣の先端を当てて少しづつ体力を削るのよ!」
ブルーよりも速く、スタンへと的確な指示を出す。
二人の方がつき合いが長いのだから当然に見えるかもしれないが、
こんな事は普通なら出来る事ではない、旧型とはいっても300年に渡って自分を改造したファッツ。

ちょっとした調べ物程度なら、その驚異的なテクノロジーによって脳に命令が下った瞬間、
ファッツに記憶された全ての情報の中から1秒とかからず検索が完了する。
ルーティの剣も見た感じは曲刀がベースの長剣だが、青龍刀と違い細身なので扱いは小型剣と似てるのだろう。
身体で覚えた技術を瞬時にパートナーに伝えた、コンピューターを上回る速度で。

(オイオイ、このクソ女!俺の仕事とっちまったぜ!)
(厄日から一転したな。ラッキーだぜ、これでポンコツとお喋りしなくて済むんだからな。)
脳内で「ファック」を連呼しているのが聞こえるが当然無視。
「所で、さっきの治療用の魔術、残りは何回くらい使えるんだ?お譲ちゃん。」
「人が集中してる時に話しかけない!まぁ、お金さえ貰えれば何回でもやってやるわよ。」
ラファエル達を治療してから動いていない筈なのに、額からは汗が滲み出ている。
おそらく術を使用する為に魔力を溜め続けていたのだろう。

「その様子じゃ、それが最後の術みたいだな。」
「・・・いいからスタンを援護してなさい。」
目を閉じ、全神経を手にしたソーディアン、アトワイトへ集中させる。
はめ込まれたレンズに魔力が集まり、それを所持者がコントロールする事で武器を通して術を放つ。
武器によるが、これは普通の魔術より強力なのだが練度を問われる。

自分の体の中に魔力を取り込める体質であれば、肉体を使えば比較的だが容易に操れる。
だが、自分の神経の通っていない武器で魔術を使うのだ、構造を理解したり、
何度となく実践して身につけなければ成功する事は無い。
しかも、ソーディアンには『感情』がある。
心を通わせなければ少し切れ味がいいだけの平凡な剣である。

《いいわよ、ルーティ。いつも以上に集中出来てるわ。》
ルーティの頭に妙齢の女性の声が響き渡る。
その声は母の様な温かさと、女性としての魅力を兼ね備えた天使の様な声だった。
声の主、彼女が知能を持つ剣、絶対零度の冷気と母胎のように暖かな癒しの水の力を持ったソーディアン。
「アトワイト?久々にアンタの声聞いたわね。今までどうしてたの?」
《あら、そんな事気にしてていいの?スタンさんを助けなきゃ。》

美しい獣が殺意に満ちた裁きの雷をスタンへと向ける。
だが、殺意は通じる事は無かった。
ブルーが電撃を内部へと帯電させる仕組みを持たせた紫電は、
切れ味では本物の達人が削り出したものに及ばないかもしれないが、電力と雷属性対策を完全と成していた。

「なるほど、案外扱いやすいんだなこれ。」
段々と扱いに慣れ始めるスタン、元々戦士としての素質が高い上に扱いやすいとされる片手剣。
落ち着いた環境で戦っていればもっと速く慣れていたに違いない。
だが、厳しい戦いの最中でしか見えない物もある。
ディムロスがあれば如何に幻獣キリンといってもここまで苦戦することはない。
一匹であればソーディアンが二本もあれば片づけられる。
しかし、今はディムロスを手にしていない。
本人の力のみで戦う時に、相手との実力差が開いていると起こりうること。
それは生きる術を『閃く』ことである。

「でえりゃあっ!」
普段と変わらない、変化があるとすれば武器だけだった。
何気ない一撃、アドバイスを参考に切り続けていただけ。
この攻撃を終えたら回避に移るべき筈だったのに、体は自然と前へと動く。
頭で考える事を全て無視して体がスタンに命令する ″飛びあがれ″ と。

「シィット!空中じゃ身動きがとれねぇ!」
「急いで、アトワイト!」
幻獣の嘶きと共に天空から死を運ぶ光の雨が降り注ぎスタンを打つ。
真上に落ちる雷は防げても、右や左に少しずれた雷がほぼ同時に落とされる。
幾ら紫電が避雷針の役割を受け持っているとはいえ、全ての雷を引き寄せられる訳ではない。
そうなれば幾つかの雷がスタンの生身の肉体に直撃してしまう。
「ううおおおおおおおおっ!」

雷を一つ、紫電に受け止める。
雷を二つ、紫電が中に蓄える。
雷を三つ、紫電から溢れ出る。

どうみても限界だった、しかし溢れた雷は四散する事無く『姿』を持った。
剣から次々と溢れる雷は、あろうことか英雄に『翼』を与えてしまった。
「焼き尽くす!紅蓮の翼の中で!」
剣から雷が溢れていたように、スタンからも闘気が溢れていた。
赤い炎のように燃え盛る闘気が二枚の美しい翼を作り出し、
その翼に剣から飛び散る雷が纏わりつく。

岩石の沸点を上回り、床や天井がみるみるうちに溶けていく。
ルーティの前に立ち、襲い来る熱の盾となる事でその凄まじさを目と体の両方で感じ取る。

「紫電にあんな機能つけてない筈だ、闘気で無理に雷をコントロールしてやがる。
それにしてもとんでもねぇ熱量だぜ・・・ファッツ、計測出来るか?」
(無理いうんじゃねぇよ!ありゃ本物の炎じゃねぇが触れただけで蒸発しちまう!)

全てを焼き尽くす業火の如き闘志、炎のソーディアン。
ディムロスのマスターとして彼以上の人間は存在しない。

そしてもう一つのソーディアン、アトワイトに十分な量の力が溜まった。
《今よ、ルーティ》!
「シャープネス!」
集めていたレンズの力は、荒れ狂う炎を潜り抜けスタンの元に集う。
それは癒しの力でも冷気による攻撃でもなく、『力の増幅』を行う物だった。

回復して力尽きるよりも、スタンを強化する事で戦闘の短縮を試みたのだった。
しかも、それは唯のシャープネスではない。
十分に力を練る事で効果を何倍にも高め、
並の戦士を一撃で鋼鉄を砕ける豪傑に変えるほどに精錬されていた。

雷をも従えた鳳凰の翼を身に纏ったその姿は、
誰かが与える訳でも無く、人々が自然にこう呼ぶだろう【英雄】と。

危険を感じ取ったのか、背を向けて走り出す獣。
だが、鳳凰の怒りから逃れる事は許されなかった。
灼熱に包まれた腕が、触れた者のいない角へと延びる。
近寄る者全てを拒絶する爆炎を帯びた魔手が、神秘的な輝きを持った角を握りつぶす。

激痛に倒れ込む獣を、執拗に追撃する魔手に爆炎ではなく雷を集めて光と成した。
そして、英雄の咆哮が周囲へと響き渡ると同時に、獣の姿は光の彼方へと消えた。