第四話「DORAの奇妙な冒険~満喫でJOJOを一気読みしました」
「なんてろくでもないサブタイだ!それはともかくのび太くん、大丈夫!?」
ぶっ飛ばされたのび太の元に駆け寄り、心配そうに声をかけるドラえもん。
「だ、大丈夫…だけど、ドラえもん。あの子たち、本気でぼくたちを殺す気だよ。見てよ、あの目を…養豚場の豚でも
見るかのように冷たい目…残酷な目だよ。『可哀想だけど明日の朝にはお肉屋に並ぶ運命なのね』ってかんじの!」
「そりゃいい例えだね」
ティスはのび太を見下ろし、嘲笑う。
「まあともかくね…ギガゾンビ様に逆らうってのはあたいたちとしては<メチャ許せんよなぁぁ!>ってわけなのさ。
さっきも言った通り、あんたたちには気の毒だけど、死んでもらうよ」
ティスとデスピニス、そしてラリアー。彼らは三者三様の威圧感を持って、のび太の前に立ちはだかった。
「ううっ…凄い殺気だ!まるでケツの穴にツララを突っ込まれた気分だ…」
少々お下品な例えでびびるのび太。
「今!ためらいもなくあんたを惨殺処刑したげるよ!」
「―――待て!」
だがのび太とティスたちの間に、割って入る者たちがいた。アジャセ率いる鬼族の面々だ。
「事情はよく分からないが…彼らは先ほど我々を救ってくれた者たちだ。その敵だというのならば…我ら鬼族一同、
容赦せん!」
「あ、アジャセさん…かっこいい…!」
先ほど出会ったばかりの自分たちのためにここまで言ってくれるアジャセに感激するドラえもんだった。
「よっ大統領!つーわけで、後はお願いしますということで…」
そして混ぜっ返すのび太。既にこの場を鬼の皆さんに任せる気満々だ。実に他力本願である。
「はっ…まあいいや。どの道ギガゾンビ様に逆らう奴らは全滅させる予定なんだからね。順番が変わろうが、大した
問題じゃないよ」
「…私たちは、ギガゾンビ様の敵を排除するだけです」
「申し訳ありませんが―――皆さん、死んでいただきます」
ジリジリと近づく三人。対するのび太たちは彼らを迎え撃つため、全身に緊張感を漲らせる。
「お待ち下さい!」
いきなり四人の鬼が飛び出してきた。ビックリする一同の前で、彼らは言い放った。
「私は銀の鬼!」
「金の鬼!」
「パールの鬼!」
「そして金銀パールプレゼントの鬼!」
「ファミコン版初代桃伝かよ!」
のび太は分かり辛いツッコミをかました。だがそれに構わず銀の鬼がまず口を開く。
「皆様方が出るまでもありません!ここは私たちにお任せを!」
どう考えてもお任せできないセリフを吐いた!そして金の鬼!
「敵はたかだか子供が三人!心配はいりませぬ!」
相手を過小評価し始めた!さらにパールの鬼!
「ここらでお遊びはいいかげんにしろってとこを見せてやりましょうぞ!」
某バトル漫画十八巻で雑魚と相打ちになった時のあの男と同じセリフをかましやがった!
そして最後、金銀パールプレゼントの鬼!
「長年鍛えた私のムエタイ、存分に味わいなさい!」
つーかこの世界にもあるのかよ、ムエタイ!
―――とにかく、この四人の役割を端的に表すならばこうである。ではスピードワゴンさん、お願いします。
ぶっ飛ばされたのび太の元に駆け寄り、心配そうに声をかけるドラえもん。
「だ、大丈夫…だけど、ドラえもん。あの子たち、本気でぼくたちを殺す気だよ。見てよ、あの目を…養豚場の豚でも
見るかのように冷たい目…残酷な目だよ。『可哀想だけど明日の朝にはお肉屋に並ぶ運命なのね』ってかんじの!」
「そりゃいい例えだね」
ティスはのび太を見下ろし、嘲笑う。
「まあともかくね…ギガゾンビ様に逆らうってのはあたいたちとしては<メチャ許せんよなぁぁ!>ってわけなのさ。
さっきも言った通り、あんたたちには気の毒だけど、死んでもらうよ」
ティスとデスピニス、そしてラリアー。彼らは三者三様の威圧感を持って、のび太の前に立ちはだかった。
「ううっ…凄い殺気だ!まるでケツの穴にツララを突っ込まれた気分だ…」
少々お下品な例えでびびるのび太。
「今!ためらいもなくあんたを惨殺処刑したげるよ!」
「―――待て!」
だがのび太とティスたちの間に、割って入る者たちがいた。アジャセ率いる鬼族の面々だ。
「事情はよく分からないが…彼らは先ほど我々を救ってくれた者たちだ。その敵だというのならば…我ら鬼族一同、
容赦せん!」
「あ、アジャセさん…かっこいい…!」
先ほど出会ったばかりの自分たちのためにここまで言ってくれるアジャセに感激するドラえもんだった。
「よっ大統領!つーわけで、後はお願いしますということで…」
そして混ぜっ返すのび太。既にこの場を鬼の皆さんに任せる気満々だ。実に他力本願である。
「はっ…まあいいや。どの道ギガゾンビ様に逆らう奴らは全滅させる予定なんだからね。順番が変わろうが、大した
問題じゃないよ」
「…私たちは、ギガゾンビ様の敵を排除するだけです」
「申し訳ありませんが―――皆さん、死んでいただきます」
ジリジリと近づく三人。対するのび太たちは彼らを迎え撃つため、全身に緊張感を漲らせる。
「お待ち下さい!」
いきなり四人の鬼が飛び出してきた。ビックリする一同の前で、彼らは言い放った。
「私は銀の鬼!」
「金の鬼!」
「パールの鬼!」
「そして金銀パールプレゼントの鬼!」
「ファミコン版初代桃伝かよ!」
のび太は分かり辛いツッコミをかました。だがそれに構わず銀の鬼がまず口を開く。
「皆様方が出るまでもありません!ここは私たちにお任せを!」
どう考えてもお任せできないセリフを吐いた!そして金の鬼!
「敵はたかだか子供が三人!心配はいりませぬ!」
相手を過小評価し始めた!さらにパールの鬼!
「ここらでお遊びはいいかげんにしろってとこを見せてやりましょうぞ!」
某バトル漫画十八巻で雑魚と相打ちになった時のあの男と同じセリフをかましやがった!
そして最後、金銀パールプレゼントの鬼!
「長年鍛えた私のムエタイ、存分に味わいなさい!」
つーかこの世界にもあるのかよ、ムエタイ!
―――とにかく、この四人の役割を端的に表すならばこうである。ではスピードワゴンさん、お願いします。
, -──- 、
/:::::::::::::: ::\
/::::::::::: ::∨ト、 こいつらはくせえッー!
:::::::::: :: レ'ノ
:::::::::::::: ::: レ'⌒ヽ カマセのにおいが
ヽ-───i===i─-}ァ' ノ プンプンするぜッ─────ッ!!
、` ー-===-゚---゚==‐' /
、`¨フ>;''ニニゞ,;アニニY´; ) こんなカマセには出会ったことが
_、;;)¨´,ニ=゚='" ,.ヘ=゚:く {ッリ' ねえほどなァ────ッ
i1(リ r;:ドヽ K
ヾ=、 に二ニヽ `|; ) 環境でカマセになっただと?
_,ノ| i. {⌒゙'^ヽ.{ i;; ヽ ちがうねッ!!
_,ノ!i ヽ、 ヾ二ニソ ,';;; ;;冫=:、
_;(|.!. \ ‐っ /!;;; ;;/ 、''"\__ こいつらは生まれついてのカマセだッ!
'ト、\. ,ゝ、.二..イリ\ / ー1\'ニゝヽ_
:ヽ `ニア ,. -┴‐‐' ー-:l :=ゞ=ソ」=ヽ ティス、デスピニス、ラリアー
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- ::::\ ニ=ト、.i___`ー-┴-、ノ . l __l
- ,ニト、くヽ
- l::::::::::\ー:ト __}/ト、゙ ー-‐| ,ニ|ゞ=ハ `¨´ー- 早えとこ
- ;ニ=ー:::::::ヾト、._  ̄ ノ|::ヽ ニ._‐-ゞ=' .ノ ::|::::::::::: カマセちまいな!
- \:::::::::::::::ヽ  ̄ ̄ !:
- ::::  ̄ ̄ ::::
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―――つーわけで、二分後。
四人はティスたちにボコボコにされた。彼らは完膚なきまでにやられることにより、敵の強さを身を持って示してくれた
のである。
「なっ何をするだぁーーーーーーッゆるさんッ!」
仲間を傷つけられ、怒りに燃えるアジャセだったが、微妙にセリフを間違っていた。
「ぴゅるるるるぅ!だが、奴らのあの力…!」
「ぐゎらりぐゎらり!決して侮れぬ…!」
冷や汗を流す一同。そして―――
「それじゃあ、雑魚を片したとこで、行くとするか―――野比のび太!あんたはあたいが相手してやるよ!」
ティスがのび太に向けて飛蹴りを放つ。咄嗟に迎え撃とうとしたのび太だったが、あるモノに目が釘付けになった。
彼女の服装は、ヒラヒラしたミニスカワンピースである。そんな格好で正面から飛蹴りを放てば―――
「うお、まぶしっ…ゲフッ!」
男の子のサガとして眩い物体(くまさんパンツ)に気を取られ、隙だらけで顔面に足裏を喰らった。
「はっ!そんなにあたいのパンツが魅力的だったかい?」
「うう…わ、我ながら面目ない…!」
本当になかった。
「のび太くん!…うわっ!」
助けに行こうとしたドラえもんだが、目の前を手刀が襲い、反射的に身をかわす。
「邪魔はさせません。野比のび太…彼のことも調べています。普段のダメっぷりとは裏腹に、土壇場で思いもよらない
底力を発揮するタイプ―――そういう手合いは、真っ先に消しておくべきですから」
デスピニスが手刀を振り下ろした態勢のまま、告げる。
「その間は、あなた方の相手は僕たちが務めましょう。残念ですがあなた方の助けがなければ、野比のび太が一対一で
ティスに勝つことはまずありえませんから」
ラリアーもまた、冷酷な事実を語る。だがドラえもんは挫けずに言い返す。
「それなら―――さっさと君たち二人を倒して、のび太くんを助けにいくまでだ!」
そんなドラえもんの側に、風神と雷神、そしてアジャセが並び立つ。
「ぴゅるるるるぅ!ドラえもんとやら!」
「ぐゎらりぐゎらり!我らも助太刀いたそう!」
「こやつらの好きにさせるわけにはいかぬ!」
「そうですか―――では、まとめて相手をしてあげましょう!」
今、戦いの火蓋が切って落とされた―――!
そして、のび太はというと―――
「う、うぐぐ…!」
ティスに羽交い絞めにされ、腕を捻り上げられていた。
「はん―――こんなあっさりあんたをぶっ潰せるとは思わなかったよ」
「く、くっそお…」
悔しそうに唸ってもどうにもならない。少女の細腕とは思えない力でのび太の身体は押さえ込まれていた。
「さて、野比のび太―――問題だよ。この状態から如何にして脱出するか?」
ティスはのび太の耳元で囁く。
「答え①ハンサムなのび太くんは突如反撃のアイデアが閃く。けどあんたハンサムじゃないね…。これは却下だ。
答え②仲間が来て助けてくれる。あんたが○をつけたいのはまあこれだろうけど、あんたの仲間はデスピニスとラリアー
の相手で手一杯だから、これも却下。さっきデスピニスたちと戦いを始めた連中がこの数秒の間にここに都合よく現れて
アメリカン・コミックヒーローのようにジャジャーンと登場して『待ってました!』と間一髪助けてくれるってわけには
いかないよ。逆にあいつらも既に苦戦してるかもね」
「…くっ…!」
持ち前の他力本願精神により、答え②を痛切に願っていたのび太はその可能性が皆無であることを非常に論理的に説明
されて、グウの音も出なかった。
そして、残る答えは一つだけ―――
「最後に―――答え③助からない。現実は非情である―――ってね!」
そしてティスはのび太の腕を折ろうと、力を込めて―――
「…え?」
全く身体が動かせないことに気付いた。
「な…なんでさ!?」
自問しても答えは出ない―――だが、ティスの視界の隅。自分の影を見て、ティスはあることに気付いた。
影に、バラが刺さっている。まるで地面に縫い付けるかのように―――
そしてどこからともなく声が響く。
<フフフフッ…いかがです?これぞ秘術<影縫い>…!>
「な…誰だ!こそこそ隠れてないで、出てきなよ!」
<フフフフッ…いいでしょう。私の美しき姿、お見せしましょう!>
ティスとのび太の目の前で突如、どこからともなく現れたバラの花びらが舞い踊る。そして、それは次第に一人の男の
姿を為していった。
やがて現れた男に、のび太もティスも、一瞬にして目を釘付けにした。
「フフフフッ…ところでお嬢さん。先ほどの答え、四つ目が抜けていますよ」
その男は、一言で表すならばまさに<美>。頭部に二本の角を持つ異形でありながら、それ以外に言葉が見つからない。
緩やかにウェーブのかかった髪。切れ長の目。全てが完璧に整っている。
彼こそは、えんま王直属の配下の中でも別格の男。あの風神と雷神ですら、一対一では彼にはとても敵わないだろう。
「答え④―――強く賢く、そして―――美しき男が助けに来る!」
そう、まさしくアメリカン・コミックヒーローのようにジャジャーンと登場して『待ってました!』と間一髪のび太を助けてくれた
その男は、まさに美の化身!
「私の名はあしゅら―――この世で最も美しき男、あしゅら!」
そして、全裸だった!
「「変態だーーーーーーーー!」」
のび太とティスが同時に叫ぶ。もはや敵も味方もなく、二人の心は一つとなった。
「む?この美しき私をつかまえて、変態とは失敬な!」
「やかましい!てめえ、なんで全裸なんだよ!?ちっきしょう、モロに見ちまったじゃないのさ…!」
「少しは隠そうとしてよ!」
二人から非難されても、男―――あしゅらは何処吹く風だった。
「これは異な事を…ちゃんと絹を身に付けているではありませんか」
そう言って首にかけた、ヒラヒラした細長い絹を指し示す。確かにそれによってギリギリやばい部分は隠れていたが、
それがなんだというのか。ちょっと動いたり、風が吹けば、まるで意味を成さない代物だ。
鬼族屈指の実力者、あしゅら。確かに彼は別格だった。主にダメな意味で。
「まあ、それはともかく、のび太さん…でしたか?今この私が助けてさしあげましょう」
「嫌だ!あんたに助けられるくらいなら、ぼくは死を選ぶ!」
「フフフフッ…遠慮なさらず!さあ、こっちへ!」
「やめろ!ぼくに触るな!やめてくれー!」
―――十秒後、<やめてくれ>と十三回言ったところでのび太はティスの羽交い絞めからあしゅらの手によって助け
出された。だが精神に負った傷を考えれば、腕を折られていた方がマシだったかもしれない。
「汚された…変態に汚された…」
のび太はさめざめと泣きながら、泥水で口を拭っていた。それを見たあしゅらは怒りに燃えた。
「うぬぬぬっ…これは余程恐ろしい目に合わされたようですね…お嬢さん、許しませんよ!」
「てめえにだけはあたいをどうこう言う資格はねー!つーかてめえ、全く何の前振りも伏線もなく、いきなり出てきて
場を掻き乱してんじゃねー!」
「前振り?それならあったでしょう。前回に」
「あれのどこが前振りだよ!元野球選手がなぜかアメフト協会理事長になってるくらい唐突だよ!」
「フフフフッ…そういう各方面から批判を受けそうなセリフはほどほどにするとして―――そろそろ影縫いの術も効力
が切れる頃です。そろそろ戦闘開始といきましょうか?」
言われてティスは、自分を拘束する力が弱まっていることに気付いた。試しにちょっと気合を入れると、呆気なくバラ
は粉々になり、身体に自由が戻る。
「はん…動けるようになりゃこっちのもんだ。あんたの自慢のお顔を、素敵に整形してやるよ」
腕をほぐしながら、ティスはじりじりとあしゅらに近づく。対してあしゅらは、妖艶な笑みを浮かべた。
「フフフフッ…昔の偉人は言っていました。<戦いは顔で決まる>と。あなたも中々美しい顔ではありますが―――
残念ながら、私の美しさには勝てない!」
ティスはそれには答えず、一気にあしゅらの元へ飛び掛った。隙だらけに見えるその姿に向けて、拳を繰り出す。
―――だがそれはあしゅらの罠だった!
「むぐっ…!?」
ティスは再び動けなくされているのに気付いた。またもあの<影縫い>とかいう術か―――!?いや、違う。ティスの
身体には無数のバラの蔓が巻きついていたのだ。
「フフフフッ…バラを使わせたら私の右に出るものはいませんよ。これくらいは軽いものです」
「ち…ちくしょう!」
「精々暴れてください。あなたは私の強さを見せ付けるために攻撃してきたんですからね」
「悔しいっ…こんなバラさえなければっ…」
ビクビクッ!と身を震わせて呻くティス。
「よかったではないですか、バラのせいにできて!」
「んんんんんんんっ!」
「フフフフッ…他のお二人も呼んできなさい。まとめて倒してさしあげましょう!」
下卑た笑みを浮かべるあしゅら。ああ、このままティスはクリ○ゾンな展開でヤられてしまうのか!?
「いー加減にしなさい」
「ぐふっ!?」
あしゅらは背後からのび太の蹴りを喰らい、地面に顔面から突っ伏した。しかして流石というべきか、すぐさま立ち
上がってのび太に抗議する。
「ななな、何をなさりまするかっ!この美しき私に何たる無礼なっ!」
「いや…あんたの方が少女を手篭めにしようとする悪党に見えたから、つい…」
「何ですと!?侵略者を倒さんと華麗に戦う私をなんと心得ておるのです!」
「黙れ変態」
ピシャリと反論を遮った。
「とにもかくにも服を着ろ!どこぞの蝶々仮面だってそこまで突き抜けた格好はしてないよ!」
「服…ですと?」
あしゅらは眼尻を持ち上げた。
「フフフフッ…愚問ですね。この私のっ!」
ズバッ!とかっこよくポーズを決めるあしゅら!
「美しき肉体っ!」
更にポーズ!
「服など着て隠す方が美への冒涜っ!」
ババーーン!と後光が射すほどの勢いでポーズ!
「…………おんみょうだんをくらえー」
のび太はGUN鬼の銃を構え、陰陽弾を弾切れになるまで撃った。
「うおおっ!?」
思いっきり上体を仰け反らせて(俗にマトリックス避けという)それをかわすあしゅらだった。
「ままま、またしても何をなさりまするかっ!はっ!まさか私のあまりの美しさに嫉妬して…」
「いや…急激にあんたに対する殺意がMAXを越えたからつい…もういいから、とりあえずこの場はすっこんでてよ!
このままあんたを戦わせてたらこのSSが有害指定図書になっちゃうよ!」
もはや手遅れな気もしたが、のび太は言わずにはおれなかった。あしゅらものび太の意を汲んだようで、それ以上の
反論はしなかった。
「フフフフッ…そこまで言われてはいたし方ありませんね。では、私は一先ず休ませていただくとしましょう…おっと、
先ほどの戦いで私の美しい身体が埃塗れになってしまった…海の水で清めるとしますか」
あしゅらは絹をも脱ぎ捨てて全裸になると、何故か突如出現した海へとその身を晒した。ちなみに陽光によって大事な
部分は隠されていたので映像化の際も安心だ。
「フフフフッ…美しい…!私は何と美しいのか…!」
「……」
どう見ても変態ですありがとうございました。
もうツッコむことすらままならない。あしゅらさん、あんたはここに留まるような男じゃない。悪いことは言わないから
ギリシャにあるという聖域で蜥蜴座の白銀聖闘士にでもなってこい。そしてペガサスにやられてこい。
「つーか、バラ使いなら魚の人ネタでいくべきだろ…常識的に考えて…」
あと、星矢ネタはインキ…いや、銀杏丸さんにお任せするべきだ。
「それはともかくさあ、野比のび太…」
バラから開放されたティスが起き上がりながら、のび太に声をかけた。
「ここは一旦協力して、あの変態を真っ先に消し去るってのはどうよ?」
「…却下だけど、正直頷きたい気分だよ…」
「そうかい…ま、いいや。じゃあ続きといくかい?」
「やっぱそうなるか…ならぼくも、本気でいくよ!」
のび太は奇妙な構えを取る。そして、叫んだ。
「奥義―――<賢者の舞>!」
そして、どこからともなく聞こえてくる軽快な音楽―――
♪チャッチャラッチャ~チャッチャラッチャ~チャッチャラッチャ~チャ~チャ~ジャンジャンジャジャン(イントロ)♪
そんな軽快な音楽と共に、のび太は拳銃をくるくる回し、不可思議な動きを始めた。
参考動画
ttp://www.youtube.com/watch?v=rpCL092EPSA
はたから見るととんでもなく間抜けな光景ではあったが、のび太の顔は真剣そのものだ。その迫力に押され、ティスは
手出し出来ずにただただ固唾を飲んでそれを見守るばかりだった。
そしてのび太はティスに向けて一気に間合いを詰める!
「ガッダイ!テツジョウ!」
何の意味があるのかよく分からない掛け声と共に、のび太は銃で直接ティスを殴り飛ばした!
「うああっ!」
吹っ飛ぶティス。そのまま地面に叩きつけられるかと思ったが、そうはならなかった。彼女は固い地面ではなく、
誰かの腕によって受け止められていた。
「ティス…大丈夫?」
「ティス!」
「さ…サンキュー、デスピニス。ラリアー」
そう、向こうでドラえもんや鬼の軍勢と戦っていたはずの二人だった。
「こっちはこっちで、結構てこずってね…ここは一旦退いた方がいい」
「少々、甘く見ていました…準備不足が悔やまれます」
二人の意見に、ティスも少しだけ逡巡し、すぐに頷いた。
「残念ながら、今回は撤退した方がよさそうだね―――こいつらを侮っちゃいけないってことはよく分かった」
「なんだと!?逃げる気か!?」
「待て!逃がすもんか!」
その声に振り向くと、ドラえもんたちがこちらに向かって駆けてくるところだった。そして三人を鬼の軍勢で取り囲む。
もはやティスたちは袋の鼠もいいところだったが、その顔には焦りはない。
「おやおや、こーんな可愛らしいガキンチョ三人によってたかってご苦労なこったね」
「どう言われてもいいが―――ここは諦めて投降しろ。命まで奪う気はない」
アジャセが呼びかけるが、三人は答えない。そして、ラリアーが懐から何かを取り出す。
「ドラえもん、それに野比のび太―――あなたたちならこれが何か分かるでしょう?」
「!あれは―――!」
「そう…<こけおどし手投げ弾>ですよ!」
言うが早いか、それを地面に投げつける。強烈な閃光に、一瞬視界が奪われた。
「しまった…!」
視界が戻ると、既にティスたちは包囲網から抜け出していた。こうなっては、もはや追いかけることは難しいだろう。
彼女らの身体能力自体が半端ではない上に、他にも未来の道具を持っている可能性がある。逃げの一手を打たれれば、
為す術はない。
「くそっ…待て!」
「待てと言われて待つ奴はいないってね…ま、こっちよりはむしろ、えんま様の方を心配しなよ。なんせあっちにゃあ
<とんでもねーの>が行ってるからね」
えんま様?誰のことだろう。のび太は思ったが、今は聞けるような状況ではないようだ。
「じゃーね、みなさん。また近いうちに会いにくるよ」
「それまで、どうかお元気で―――」
「さようなら…」
それだけ言い残し、彼らは立ち去っていった―――。
「さて―――アジャセさん、でしたっけ?あいつらは逃がしちゃったけど、ひとまず落ち着いたところで話を聞いても
いいですか?」
そう言ったドラえもんにアジャセは屈みこみつつ頷いた(普通に立ってると目線が全く合わないからである)。
「ああ、答えられることなら何でも話そう」
「じゃあ、あの―――あしゅらって人、なんなんですか?」
これはのび太である。彼にとってはあの変態が一番気になるところだった。
「あしゅらか?彼がどうかしたのか?」
「その…助けてもらって感謝はしてるんですが…あまりにも危なすぎるというか、なんというか…」
「はて。そんなに問題のある男ではないと思うが。何しろ私がほんの子供だった頃からああだった」
「…………」
嫌すぎる話だった。もうこの話題には触れない方がよさそうだ。
「のび太くん、それよりもっと聞くべきことがあるでしょ?アジャセさん、ぼくを見て<青き神獣>って言ってた
でしょ?あれは、どういう意味なんです?」
「青き神獣か…青き珍獣だったらピッタリだったのにね」
のび太が混ぜっ返すと、アジャセもプッと吹き出した。どうやら彼もそう思っていたらしい。
「すまない、失礼をした―――実はだ」
憮然としたドラえもんに、アジャセは平謝りして説明を始める。この世界を支えるかぐや姫の事、彼女が数日前に
なした予言のこと、その予言の通りに現れた敵、そしてのび太とドラえもん―――
「かぐや姫様に、かつて鬼退治をした桃太郎さんか…どうやらこの世界、例えていうなら御伽噺の世界ってとこだね」
「それっぽいね…とにかく、話の流れからしてぼくたちがその予言の戦士ってことか。それと、あの三人が言ってた
えんま様って、誰のことなんですか?」
「えんま王―――我が父である鬼族の王バサラの右腕。簡単に言えば鬼族の中でも現在第二位の権力者だ。風神に雷神、
そしてあしゅらは彼の直属の部下でもある」
「へえ…すごい人っぽいけど、なんか<とんでもねーの>が相手してるみたいな話でしたよ。大丈夫なのかな…」
「問題はなかろう。あの方の強さは風神と雷神、そしてあしゅらが束になっても敵わぬほどだからな。そうそう勝てる
相手などいるはずが…」
「―――アジャセ王子!」
会話を遮って金切り声が響いた。見るとそこでは一人の鬼が盛大に息をついている。何かを伝えるため、大急ぎでやって
きた―――そんな有様の彼に、アジャセは訝しげに返事を返す。
「どうした!何事だ!?」
「そ…それが…えんま様が…えんま様が!」
ドラえもん、のび太、そしてアジャセは一斉に<!>な顔をした。丁度彼の話をしていたところに、どう見ても不吉な
報せを持ってきたとしか思えない様子の伝令。
「とにかく、こちらへ!」
言われるがままにそちらへ向かうと、そこには人だかり(鬼だかり?)ができていた。
「ぴゅるるるるぅ!えんま様、しっかりなさってください!」
「ぐゎらりぐゎらり!えんま様が…ばかな…!」
「うぬぬぬっ…一体誰がこのようなことを…!」
中心にいるのは風神雷神、それにあしゅら。三人は一人の大きな鬼に寄り添い、悲痛な声を漏らしていた。
「ドラえもん、ひょっとして、この人が…」
「うん、多分そうだよ。それっぽい格好だもの」
その鬼は、一般的にイメージされる<閻魔大王>そっくりそのままな姿だった。本来ならば威厳に満ちているであろう
厳めしい顔つきが、今は苦痛に喘いで痛ましい限りだ。
「そんな…えんま様!しっかりなさってください!」
アジャセが駆け寄ると、えんまはゆっくりと目を開き、自嘲を漏らす。
「ア…アジャセ王子。も…申し訳…ない…」
「な、何を…一体何があったのですか!」
えんまは息も絶え絶えに語り出した。
「<アヤカシ>とかいう化物どもを倒したまではよかったのですが…その直後に…恐ろしいまでに…強い…男が…まるで
女子のように美しい姿をしていたが…その中身は、まさに剣神というほかない。手も足も、出ませんでした…軍は全滅し、
わしもこのザマです…奴に、傷一つ付けられず…!」
ごくり、とのび太は唾を飲み込んだ。鬼の大軍、さらには鬼族の序列第二位、凄まじい力を持つというこのえんまが、何も
できずに敗れ去るほどの相手。想像するだけで恐ろしい話だ。えんまは話を続ける。
「名は…錆白兵(さびはくへい)と名乗っておりました…!」
「錆…白兵…!」
この戦いを続ければいずれ出会うであろうその強敵の名を、のび太たちは胸に刻み込んだ。できればそんなおっかない
相手と顔を合わせたくはないが、そうも言ってられないだろう。
「そして奴は…何故かやたらと<拙者にときめいてもらうでござる!>と言っておりました…」
「…………」
出会うのが、もっと嫌になった。そんなセリフをやたらとかますような奴が、どう考えてもまともな人格とは思えない。そして
えんまは動かなくなった。どうやら気絶したらしい。
「と、とにかくこの人の怪我をどうにかしなくちゃ…<治療灯>!」
ドラえもんは電気スタンドのような道具を取り出し、それで気絶したえんまを照らし出した。
「個人差もあるけど…安静にしてればこれで二、三日で回復するはずです」
「かたじけない…しかし、大変なことになってきたようだ」
「ええ。できるだけ早く、対策を練りたいところですね」
アジャセは顔を俯かせたが、すぐにドラえもんとのび太に向き直った。
「ひとまずは私の父に―――バサラ王に会ってほしい。話はそれからだ」
四人はティスたちにボコボコにされた。彼らは完膚なきまでにやられることにより、敵の強さを身を持って示してくれた
のである。
「なっ何をするだぁーーーーーーッゆるさんッ!」
仲間を傷つけられ、怒りに燃えるアジャセだったが、微妙にセリフを間違っていた。
「ぴゅるるるるぅ!だが、奴らのあの力…!」
「ぐゎらりぐゎらり!決して侮れぬ…!」
冷や汗を流す一同。そして―――
「それじゃあ、雑魚を片したとこで、行くとするか―――野比のび太!あんたはあたいが相手してやるよ!」
ティスがのび太に向けて飛蹴りを放つ。咄嗟に迎え撃とうとしたのび太だったが、あるモノに目が釘付けになった。
彼女の服装は、ヒラヒラしたミニスカワンピースである。そんな格好で正面から飛蹴りを放てば―――
「うお、まぶしっ…ゲフッ!」
男の子のサガとして眩い物体(くまさんパンツ)に気を取られ、隙だらけで顔面に足裏を喰らった。
「はっ!そんなにあたいのパンツが魅力的だったかい?」
「うう…わ、我ながら面目ない…!」
本当になかった。
「のび太くん!…うわっ!」
助けに行こうとしたドラえもんだが、目の前を手刀が襲い、反射的に身をかわす。
「邪魔はさせません。野比のび太…彼のことも調べています。普段のダメっぷりとは裏腹に、土壇場で思いもよらない
底力を発揮するタイプ―――そういう手合いは、真っ先に消しておくべきですから」
デスピニスが手刀を振り下ろした態勢のまま、告げる。
「その間は、あなた方の相手は僕たちが務めましょう。残念ですがあなた方の助けがなければ、野比のび太が一対一で
ティスに勝つことはまずありえませんから」
ラリアーもまた、冷酷な事実を語る。だがドラえもんは挫けずに言い返す。
「それなら―――さっさと君たち二人を倒して、のび太くんを助けにいくまでだ!」
そんなドラえもんの側に、風神と雷神、そしてアジャセが並び立つ。
「ぴゅるるるるぅ!ドラえもんとやら!」
「ぐゎらりぐゎらり!我らも助太刀いたそう!」
「こやつらの好きにさせるわけにはいかぬ!」
「そうですか―――では、まとめて相手をしてあげましょう!」
今、戦いの火蓋が切って落とされた―――!
そして、のび太はというと―――
「う、うぐぐ…!」
ティスに羽交い絞めにされ、腕を捻り上げられていた。
「はん―――こんなあっさりあんたをぶっ潰せるとは思わなかったよ」
「く、くっそお…」
悔しそうに唸ってもどうにもならない。少女の細腕とは思えない力でのび太の身体は押さえ込まれていた。
「さて、野比のび太―――問題だよ。この状態から如何にして脱出するか?」
ティスはのび太の耳元で囁く。
「答え①ハンサムなのび太くんは突如反撃のアイデアが閃く。けどあんたハンサムじゃないね…。これは却下だ。
答え②仲間が来て助けてくれる。あんたが○をつけたいのはまあこれだろうけど、あんたの仲間はデスピニスとラリアー
の相手で手一杯だから、これも却下。さっきデスピニスたちと戦いを始めた連中がこの数秒の間にここに都合よく現れて
アメリカン・コミックヒーローのようにジャジャーンと登場して『待ってました!』と間一髪助けてくれるってわけには
いかないよ。逆にあいつらも既に苦戦してるかもね」
「…くっ…!」
持ち前の他力本願精神により、答え②を痛切に願っていたのび太はその可能性が皆無であることを非常に論理的に説明
されて、グウの音も出なかった。
そして、残る答えは一つだけ―――
「最後に―――答え③助からない。現実は非情である―――ってね!」
そしてティスはのび太の腕を折ろうと、力を込めて―――
「…え?」
全く身体が動かせないことに気付いた。
「な…なんでさ!?」
自問しても答えは出ない―――だが、ティスの視界の隅。自分の影を見て、ティスはあることに気付いた。
影に、バラが刺さっている。まるで地面に縫い付けるかのように―――
そしてどこからともなく声が響く。
<フフフフッ…いかがです?これぞ秘術<影縫い>…!>
「な…誰だ!こそこそ隠れてないで、出てきなよ!」
<フフフフッ…いいでしょう。私の美しき姿、お見せしましょう!>
ティスとのび太の目の前で突如、どこからともなく現れたバラの花びらが舞い踊る。そして、それは次第に一人の男の
姿を為していった。
やがて現れた男に、のび太もティスも、一瞬にして目を釘付けにした。
「フフフフッ…ところでお嬢さん。先ほどの答え、四つ目が抜けていますよ」
その男は、一言で表すならばまさに<美>。頭部に二本の角を持つ異形でありながら、それ以外に言葉が見つからない。
緩やかにウェーブのかかった髪。切れ長の目。全てが完璧に整っている。
彼こそは、えんま王直属の配下の中でも別格の男。あの風神と雷神ですら、一対一では彼にはとても敵わないだろう。
「答え④―――強く賢く、そして―――美しき男が助けに来る!」
そう、まさしくアメリカン・コミックヒーローのようにジャジャーンと登場して『待ってました!』と間一髪のび太を助けてくれた
その男は、まさに美の化身!
「私の名はあしゅら―――この世で最も美しき男、あしゅら!」
そして、全裸だった!
「「変態だーーーーーーーー!」」
のび太とティスが同時に叫ぶ。もはや敵も味方もなく、二人の心は一つとなった。
「む?この美しき私をつかまえて、変態とは失敬な!」
「やかましい!てめえ、なんで全裸なんだよ!?ちっきしょう、モロに見ちまったじゃないのさ…!」
「少しは隠そうとしてよ!」
二人から非難されても、男―――あしゅらは何処吹く風だった。
「これは異な事を…ちゃんと絹を身に付けているではありませんか」
そう言って首にかけた、ヒラヒラした細長い絹を指し示す。確かにそれによってギリギリやばい部分は隠れていたが、
それがなんだというのか。ちょっと動いたり、風が吹けば、まるで意味を成さない代物だ。
鬼族屈指の実力者、あしゅら。確かに彼は別格だった。主にダメな意味で。
「まあ、それはともかく、のび太さん…でしたか?今この私が助けてさしあげましょう」
「嫌だ!あんたに助けられるくらいなら、ぼくは死を選ぶ!」
「フフフフッ…遠慮なさらず!さあ、こっちへ!」
「やめろ!ぼくに触るな!やめてくれー!」
―――十秒後、<やめてくれ>と十三回言ったところでのび太はティスの羽交い絞めからあしゅらの手によって助け
出された。だが精神に負った傷を考えれば、腕を折られていた方がマシだったかもしれない。
「汚された…変態に汚された…」
のび太はさめざめと泣きながら、泥水で口を拭っていた。それを見たあしゅらは怒りに燃えた。
「うぬぬぬっ…これは余程恐ろしい目に合わされたようですね…お嬢さん、許しませんよ!」
「てめえにだけはあたいをどうこう言う資格はねー!つーかてめえ、全く何の前振りも伏線もなく、いきなり出てきて
場を掻き乱してんじゃねー!」
「前振り?それならあったでしょう。前回に」
「あれのどこが前振りだよ!元野球選手がなぜかアメフト協会理事長になってるくらい唐突だよ!」
「フフフフッ…そういう各方面から批判を受けそうなセリフはほどほどにするとして―――そろそろ影縫いの術も効力
が切れる頃です。そろそろ戦闘開始といきましょうか?」
言われてティスは、自分を拘束する力が弱まっていることに気付いた。試しにちょっと気合を入れると、呆気なくバラ
は粉々になり、身体に自由が戻る。
「はん…動けるようになりゃこっちのもんだ。あんたの自慢のお顔を、素敵に整形してやるよ」
腕をほぐしながら、ティスはじりじりとあしゅらに近づく。対してあしゅらは、妖艶な笑みを浮かべた。
「フフフフッ…昔の偉人は言っていました。<戦いは顔で決まる>と。あなたも中々美しい顔ではありますが―――
残念ながら、私の美しさには勝てない!」
ティスはそれには答えず、一気にあしゅらの元へ飛び掛った。隙だらけに見えるその姿に向けて、拳を繰り出す。
―――だがそれはあしゅらの罠だった!
「むぐっ…!?」
ティスは再び動けなくされているのに気付いた。またもあの<影縫い>とかいう術か―――!?いや、違う。ティスの
身体には無数のバラの蔓が巻きついていたのだ。
「フフフフッ…バラを使わせたら私の右に出るものはいませんよ。これくらいは軽いものです」
「ち…ちくしょう!」
「精々暴れてください。あなたは私の強さを見せ付けるために攻撃してきたんですからね」
「悔しいっ…こんなバラさえなければっ…」
ビクビクッ!と身を震わせて呻くティス。
「よかったではないですか、バラのせいにできて!」
「んんんんんんんっ!」
「フフフフッ…他のお二人も呼んできなさい。まとめて倒してさしあげましょう!」
下卑た笑みを浮かべるあしゅら。ああ、このままティスはクリ○ゾンな展開でヤられてしまうのか!?
「いー加減にしなさい」
「ぐふっ!?」
あしゅらは背後からのび太の蹴りを喰らい、地面に顔面から突っ伏した。しかして流石というべきか、すぐさま立ち
上がってのび太に抗議する。
「ななな、何をなさりまするかっ!この美しき私に何たる無礼なっ!」
「いや…あんたの方が少女を手篭めにしようとする悪党に見えたから、つい…」
「何ですと!?侵略者を倒さんと華麗に戦う私をなんと心得ておるのです!」
「黙れ変態」
ピシャリと反論を遮った。
「とにもかくにも服を着ろ!どこぞの蝶々仮面だってそこまで突き抜けた格好はしてないよ!」
「服…ですと?」
あしゅらは眼尻を持ち上げた。
「フフフフッ…愚問ですね。この私のっ!」
ズバッ!とかっこよくポーズを決めるあしゅら!
「美しき肉体っ!」
更にポーズ!
「服など着て隠す方が美への冒涜っ!」
ババーーン!と後光が射すほどの勢いでポーズ!
「…………おんみょうだんをくらえー」
のび太はGUN鬼の銃を構え、陰陽弾を弾切れになるまで撃った。
「うおおっ!?」
思いっきり上体を仰け反らせて(俗にマトリックス避けという)それをかわすあしゅらだった。
「ままま、またしても何をなさりまするかっ!はっ!まさか私のあまりの美しさに嫉妬して…」
「いや…急激にあんたに対する殺意がMAXを越えたからつい…もういいから、とりあえずこの場はすっこんでてよ!
このままあんたを戦わせてたらこのSSが有害指定図書になっちゃうよ!」
もはや手遅れな気もしたが、のび太は言わずにはおれなかった。あしゅらものび太の意を汲んだようで、それ以上の
反論はしなかった。
「フフフフッ…そこまで言われてはいたし方ありませんね。では、私は一先ず休ませていただくとしましょう…おっと、
先ほどの戦いで私の美しい身体が埃塗れになってしまった…海の水で清めるとしますか」
あしゅらは絹をも脱ぎ捨てて全裸になると、何故か突如出現した海へとその身を晒した。ちなみに陽光によって大事な
部分は隠されていたので映像化の際も安心だ。
「フフフフッ…美しい…!私は何と美しいのか…!」
「……」
どう見ても変態ですありがとうございました。
もうツッコむことすらままならない。あしゅらさん、あんたはここに留まるような男じゃない。悪いことは言わないから
ギリシャにあるという聖域で蜥蜴座の白銀聖闘士にでもなってこい。そしてペガサスにやられてこい。
「つーか、バラ使いなら魚の人ネタでいくべきだろ…常識的に考えて…」
あと、星矢ネタはインキ…いや、銀杏丸さんにお任せするべきだ。
「それはともかくさあ、野比のび太…」
バラから開放されたティスが起き上がりながら、のび太に声をかけた。
「ここは一旦協力して、あの変態を真っ先に消し去るってのはどうよ?」
「…却下だけど、正直頷きたい気分だよ…」
「そうかい…ま、いいや。じゃあ続きといくかい?」
「やっぱそうなるか…ならぼくも、本気でいくよ!」
のび太は奇妙な構えを取る。そして、叫んだ。
「奥義―――<賢者の舞>!」
そして、どこからともなく聞こえてくる軽快な音楽―――
♪チャッチャラッチャ~チャッチャラッチャ~チャッチャラッチャ~チャ~チャ~ジャンジャンジャジャン(イントロ)♪
そんな軽快な音楽と共に、のび太は拳銃をくるくる回し、不可思議な動きを始めた。
参考動画
ttp://www.youtube.com/watch?v=rpCL092EPSA
はたから見るととんでもなく間抜けな光景ではあったが、のび太の顔は真剣そのものだ。その迫力に押され、ティスは
手出し出来ずにただただ固唾を飲んでそれを見守るばかりだった。
そしてのび太はティスに向けて一気に間合いを詰める!
「ガッダイ!テツジョウ!」
何の意味があるのかよく分からない掛け声と共に、のび太は銃で直接ティスを殴り飛ばした!
「うああっ!」
吹っ飛ぶティス。そのまま地面に叩きつけられるかと思ったが、そうはならなかった。彼女は固い地面ではなく、
誰かの腕によって受け止められていた。
「ティス…大丈夫?」
「ティス!」
「さ…サンキュー、デスピニス。ラリアー」
そう、向こうでドラえもんや鬼の軍勢と戦っていたはずの二人だった。
「こっちはこっちで、結構てこずってね…ここは一旦退いた方がいい」
「少々、甘く見ていました…準備不足が悔やまれます」
二人の意見に、ティスも少しだけ逡巡し、すぐに頷いた。
「残念ながら、今回は撤退した方がよさそうだね―――こいつらを侮っちゃいけないってことはよく分かった」
「なんだと!?逃げる気か!?」
「待て!逃がすもんか!」
その声に振り向くと、ドラえもんたちがこちらに向かって駆けてくるところだった。そして三人を鬼の軍勢で取り囲む。
もはやティスたちは袋の鼠もいいところだったが、その顔には焦りはない。
「おやおや、こーんな可愛らしいガキンチョ三人によってたかってご苦労なこったね」
「どう言われてもいいが―――ここは諦めて投降しろ。命まで奪う気はない」
アジャセが呼びかけるが、三人は答えない。そして、ラリアーが懐から何かを取り出す。
「ドラえもん、それに野比のび太―――あなたたちならこれが何か分かるでしょう?」
「!あれは―――!」
「そう…<こけおどし手投げ弾>ですよ!」
言うが早いか、それを地面に投げつける。強烈な閃光に、一瞬視界が奪われた。
「しまった…!」
視界が戻ると、既にティスたちは包囲網から抜け出していた。こうなっては、もはや追いかけることは難しいだろう。
彼女らの身体能力自体が半端ではない上に、他にも未来の道具を持っている可能性がある。逃げの一手を打たれれば、
為す術はない。
「くそっ…待て!」
「待てと言われて待つ奴はいないってね…ま、こっちよりはむしろ、えんま様の方を心配しなよ。なんせあっちにゃあ
<とんでもねーの>が行ってるからね」
えんま様?誰のことだろう。のび太は思ったが、今は聞けるような状況ではないようだ。
「じゃーね、みなさん。また近いうちに会いにくるよ」
「それまで、どうかお元気で―――」
「さようなら…」
それだけ言い残し、彼らは立ち去っていった―――。
「さて―――アジャセさん、でしたっけ?あいつらは逃がしちゃったけど、ひとまず落ち着いたところで話を聞いても
いいですか?」
そう言ったドラえもんにアジャセは屈みこみつつ頷いた(普通に立ってると目線が全く合わないからである)。
「ああ、答えられることなら何でも話そう」
「じゃあ、あの―――あしゅらって人、なんなんですか?」
これはのび太である。彼にとってはあの変態が一番気になるところだった。
「あしゅらか?彼がどうかしたのか?」
「その…助けてもらって感謝はしてるんですが…あまりにも危なすぎるというか、なんというか…」
「はて。そんなに問題のある男ではないと思うが。何しろ私がほんの子供だった頃からああだった」
「…………」
嫌すぎる話だった。もうこの話題には触れない方がよさそうだ。
「のび太くん、それよりもっと聞くべきことがあるでしょ?アジャセさん、ぼくを見て<青き神獣>って言ってた
でしょ?あれは、どういう意味なんです?」
「青き神獣か…青き珍獣だったらピッタリだったのにね」
のび太が混ぜっ返すと、アジャセもプッと吹き出した。どうやら彼もそう思っていたらしい。
「すまない、失礼をした―――実はだ」
憮然としたドラえもんに、アジャセは平謝りして説明を始める。この世界を支えるかぐや姫の事、彼女が数日前に
なした予言のこと、その予言の通りに現れた敵、そしてのび太とドラえもん―――
「かぐや姫様に、かつて鬼退治をした桃太郎さんか…どうやらこの世界、例えていうなら御伽噺の世界ってとこだね」
「それっぽいね…とにかく、話の流れからしてぼくたちがその予言の戦士ってことか。それと、あの三人が言ってた
えんま様って、誰のことなんですか?」
「えんま王―――我が父である鬼族の王バサラの右腕。簡単に言えば鬼族の中でも現在第二位の権力者だ。風神に雷神、
そしてあしゅらは彼の直属の部下でもある」
「へえ…すごい人っぽいけど、なんか<とんでもねーの>が相手してるみたいな話でしたよ。大丈夫なのかな…」
「問題はなかろう。あの方の強さは風神と雷神、そしてあしゅらが束になっても敵わぬほどだからな。そうそう勝てる
相手などいるはずが…」
「―――アジャセ王子!」
会話を遮って金切り声が響いた。見るとそこでは一人の鬼が盛大に息をついている。何かを伝えるため、大急ぎでやって
きた―――そんな有様の彼に、アジャセは訝しげに返事を返す。
「どうした!何事だ!?」
「そ…それが…えんま様が…えんま様が!」
ドラえもん、のび太、そしてアジャセは一斉に<!>な顔をした。丁度彼の話をしていたところに、どう見ても不吉な
報せを持ってきたとしか思えない様子の伝令。
「とにかく、こちらへ!」
言われるがままにそちらへ向かうと、そこには人だかり(鬼だかり?)ができていた。
「ぴゅるるるるぅ!えんま様、しっかりなさってください!」
「ぐゎらりぐゎらり!えんま様が…ばかな…!」
「うぬぬぬっ…一体誰がこのようなことを…!」
中心にいるのは風神雷神、それにあしゅら。三人は一人の大きな鬼に寄り添い、悲痛な声を漏らしていた。
「ドラえもん、ひょっとして、この人が…」
「うん、多分そうだよ。それっぽい格好だもの」
その鬼は、一般的にイメージされる<閻魔大王>そっくりそのままな姿だった。本来ならば威厳に満ちているであろう
厳めしい顔つきが、今は苦痛に喘いで痛ましい限りだ。
「そんな…えんま様!しっかりなさってください!」
アジャセが駆け寄ると、えんまはゆっくりと目を開き、自嘲を漏らす。
「ア…アジャセ王子。も…申し訳…ない…」
「な、何を…一体何があったのですか!」
えんまは息も絶え絶えに語り出した。
「<アヤカシ>とかいう化物どもを倒したまではよかったのですが…その直後に…恐ろしいまでに…強い…男が…まるで
女子のように美しい姿をしていたが…その中身は、まさに剣神というほかない。手も足も、出ませんでした…軍は全滅し、
わしもこのザマです…奴に、傷一つ付けられず…!」
ごくり、とのび太は唾を飲み込んだ。鬼の大軍、さらには鬼族の序列第二位、凄まじい力を持つというこのえんまが、何も
できずに敗れ去るほどの相手。想像するだけで恐ろしい話だ。えんまは話を続ける。
「名は…錆白兵(さびはくへい)と名乗っておりました…!」
「錆…白兵…!」
この戦いを続ければいずれ出会うであろうその強敵の名を、のび太たちは胸に刻み込んだ。できればそんなおっかない
相手と顔を合わせたくはないが、そうも言ってられないだろう。
「そして奴は…何故かやたらと<拙者にときめいてもらうでござる!>と言っておりました…」
「…………」
出会うのが、もっと嫌になった。そんなセリフをやたらとかますような奴が、どう考えてもまともな人格とは思えない。そして
えんまは動かなくなった。どうやら気絶したらしい。
「と、とにかくこの人の怪我をどうにかしなくちゃ…<治療灯>!」
ドラえもんは電気スタンドのような道具を取り出し、それで気絶したえんまを照らし出した。
「個人差もあるけど…安静にしてればこれで二、三日で回復するはずです」
「かたじけない…しかし、大変なことになってきたようだ」
「ええ。できるだけ早く、対策を練りたいところですね」
アジャセは顔を俯かせたが、すぐにドラえもんとのび太に向き直った。
「ひとまずは私の父に―――バサラ王に会ってほしい。話はそれからだ」