壁にべったりと張り付いた血は深紅・・・・ではなく汚物を連想させる不純物まみれの緑の液体であった。
「助かったな赤ちゃん。」
ラファエルに向かってそう言うと、青いコートに身を包んだ金髪の青年は銃を床に捨てた。
男が撃ち抜いたのはラファエルの背後に瞬間移動していた使い魔だった。
「助かったな赤ちゃん。」
ラファエルに向かってそう言うと、青いコートに身を包んだ金髪の青年は銃を床に捨てた。
男が撃ち抜いたのはラファエルの背後に瞬間移動していた使い魔だった。
「ラファエルに代わって礼を言おう、ありがとう。」
「大した腕だな、シールドを目暗ましにジャンプするとは。」
(ガガ、ファーック!俺のセンサーは自分も守れない青いケツしたガキを助けるもんじゃないぜ!)
声が男の脳内で文句を喚き散らしている、男に目暗ましは絶対に効くことはない。
だが男はこれが本音でない事を分かっている。
声の主、ファッツとの付き合いはまだ長くはないが、出会ってすぐお互いを理解しあっている。
男が知る者の中で、本当は誰よりも優しい事を。
だからこんな時の対応も彼への皮肉を込めてこう言うのだ。
「大した腕だな、シールドを目暗ましにジャンプするとは。」
(ガガ、ファーック!俺のセンサーは自分も守れない青いケツしたガキを助けるもんじゃないぜ!)
声が男の脳内で文句を喚き散らしている、男に目暗ましは絶対に効くことはない。
だが男はこれが本音でない事を分かっている。
声の主、ファッツとの付き合いはまだ長くはないが、出会ってすぐお互いを理解しあっている。
男が知る者の中で、本当は誰よりも優しい事を。
だからこんな時の対応も彼への皮肉を込めてこう言うのだ。
「・・・もう俺も歳みたいだな、長生きしすぎて幻聴が聞こえるぜ。」
(この・・・命の恩人を老い耄れのポンコツ呼ばわりするたぁ生まれたてのガキの分際で・・・)
見た目には若々しく、長身だが二十歳までいかない位に見える青年が、
自分の事を老い耄れの様に話す様に困惑するスタン達。
(この・・・命の恩人を老い耄れのポンコツ呼ばわりするたぁ生まれたてのガキの分際で・・・)
見た目には若々しく、長身だが二十歳までいかない位に見える青年が、
自分の事を老い耄れの様に話す様に困惑するスタン達。
彼の名はブルー。惑星ティノスという星への移民者、生物学上は異星人ではなく地球人である。
もっとも、今の彼が生物学上で「人間」と判断されるかは別の話であるが。
もっとも、今の彼が生物学上で「人間」と判断されるかは別の話であるが。
「ゴホン・・・それは私に対する嫌味かね?さっきも君は私の事を幼児呼ばわりしたが?」
テオドールがファッツへの皮肉を自分への物と勘違いしたのか、明らかに不機嫌な面持ちになる。
「フッ、気を悪くするなよ。それよりお前等は何しにここに来たんだ?」
軽く流された事に苛立ちながらも、ブルーのサラマンダーと拳銃、そして自分の剣を拾い上げる。
拾いながらもブルーへの警戒は怠ってはいないが、戦闘中のようにピリピリした闘気は放っていない。
テオドールがファッツへの皮肉を自分への物と勘違いしたのか、明らかに不機嫌な面持ちになる。
「フッ、気を悪くするなよ。それよりお前等は何しにここに来たんだ?」
軽く流された事に苛立ちながらも、ブルーのサラマンダーと拳銃、そして自分の剣を拾い上げる。
拾いながらもブルーへの警戒は怠ってはいないが、戦闘中のようにピリピリした闘気は放っていない。
「魔物を討伐しにきたのだ。それよりも君の素性を話してもらおうか。
この見慣れぬ武器、そして物陰に隠れていた我々を見つけた不可思議な術、一体何者なのだ?」
この見慣れぬ武器、そして物陰に隠れていた我々を見つけた不可思議な術、一体何者なのだ?」
「俺の名はブルー、ここに来たのは・・・まぁ慈善事業の化け物退治さ。それに、
見抜けたのは術なんかじゃねぇよ。あんた達の中で、その優男だけは気配を完全に消せてなかったぜ。」
そういってラファエルを見つめるブルー、だがラファエルの事を気にもかけず険しい表情で見つめる。
あの時のブルーはおそらく全員を見抜いていた。死線を潜って来た老騎士にはブルーの視線を壁越しに感じた。
見抜けたのは術なんかじゃねぇよ。あんた達の中で、その優男だけは気配を完全に消せてなかったぜ。」
そういってラファエルを見つめるブルー、だがラファエルの事を気にもかけず険しい表情で見つめる。
あの時のブルーはおそらく全員を見抜いていた。死線を潜って来た老騎士にはブルーの視線を壁越しに感じた。
「すみません・・・テオドール卿、私が未熟なばかりに・・・。」
「・・・気にするな、騎士見習のお前は隠密時の基本を学んではいまい。精進するのだ。」
ブルーの言う事に納得はしてないものの、自分の勘違いということもあるかもしれない。
魔物の討伐も済んでいないのでこの件は後回しとする事にした。
「・・・気にするな、騎士見習のお前は隠密時の基本を学んではいまい。精進するのだ。」
ブルーの言う事に納得はしてないものの、自分の勘違いということもあるかもしれない。
魔物の討伐も済んでいないのでこの件は後回しとする事にした。
「それでは先を急ごう、夜になればこの辺りは冷え込む。ブルー、だったな。
ラファエルの命を救ってくれたのには感謝しているが、この件が片付いたら君を拘束する。」
その発言は一瞬の緊迫を生んだが、ブルーもある程度予想はついていたらしく首を軽く縦に振った。
ラファエルの命を救ってくれたのには感謝しているが、この件が片付いたら君を拘束する。」
その発言は一瞬の緊迫を生んだが、ブルーもある程度予想はついていたらしく首を軽く縦に振った。
「この件が片付いたら、って事は今はどうしてればいいんだい?」
床に落ちていた魔物の剣をブルーに向かって投げつけると、返事もせずに廊下へと進んでいった。
「ふぅ・・・剣より射撃の方が得意なんだがな。でも不審者に武器なんか持たせていいのかい?」
これを聞いたテオドールは振り返る事もせずに答えた。
床に落ちていた魔物の剣をブルーに向かって投げつけると、返事もせずに廊下へと進んでいった。
「ふぅ・・・剣より射撃の方が得意なんだがな。でも不審者に武器なんか持たせていいのかい?」
これを聞いたテオドールは振り返る事もせずに答えた。
「慈善事業をする男が後ろから襲うのか?それに、たとえ襲われても年季の違いを見せるだけだ。」
暗く、危険な魔物の巣窟であるダンジョンの廊下へと姿を消していく一人の老人。
何も知らぬ者がこの姿を見ればドンキホーテの様にしか映らぬであろう。
だが、その場にいた誰もが先に待つ魔物を蹴散らす勇敢な騎士を思い描いた。
「やれやれ・・・元気なじいさまだぜ。」
暗く、危険な魔物の巣窟であるダンジョンの廊下へと姿を消していく一人の老人。
何も知らぬ者がこの姿を見ればドンキホーテの様にしか映らぬであろう。
だが、その場にいた誰もが先に待つ魔物を蹴散らす勇敢な騎士を思い描いた。
「やれやれ・・・元気なじいさまだぜ。」
予想通り魔物の血で染まった廊下を歩いて行くと、突然ルーティが立ち止まった。
「どうしたんだ?ルーティ。まさかこんな時にもサーチガルドじゃ・・・。」
スタンを無視してしゃがみ込むルーティ、するとしばらくして突然走りだした。
「どうしたんだ?ルーティ。まさかこんな時にもサーチガルドじゃ・・・。」
スタンを無視してしゃがみ込むルーティ、するとしばらくして突然走りだした。
「おい!ルーティ!?」
追いかけると十字路へと出て、テオドールが進んだと思われる血の海となった正面通路から外れる。
「やっぱりあったわ!」
それを見ると突然走りだした理由が直ぐに分かった。宝箱を発見したのだ。
うれしそうに宝箱へと走り出すルーティをブルーが静止する。
とんでもない力で引きとめられたので肩に痛みが走る。
「痛っつ・・・!ちょっと、なにすんのよ!」
追いかけると十字路へと出て、テオドールが進んだと思われる血の海となった正面通路から外れる。
「やっぱりあったわ!」
それを見ると突然走りだした理由が直ぐに分かった。宝箱を発見したのだ。
うれしそうに宝箱へと走り出すルーティをブルーが静止する。
とんでもない力で引きとめられたので肩に痛みが走る。
「痛っつ・・・!ちょっと、なにすんのよ!」
ジロリ、とブルーを睨みつけるが意に介さない様子で床を指さした。
「オイオイ、こういう時は感謝するもんだぜ。」
ふと指さす方を見てみると多少だがヒビが入っていた。
「失礼ね!こんなちゃっちい傷が元で床を踏み抜くほど太ってないわよ!」
そういってブルーの手を振りほどき宝箱へと歩くルーティ。
「オイオイ、こういう時は感謝するもんだぜ。」
ふと指さす方を見てみると多少だがヒビが入っていた。
「失礼ね!こんなちゃっちい傷が元で床を踏み抜くほど太ってないわよ!」
そういってブルーの手を振りほどき宝箱へと歩くルーティ。
すると、体重がかかった瞬間ベキベキと音をたてて床が崩れた。
「危ない!ルーティ!」
咄嗟にスタンが飛び出したが既に手遅れで、二人して落ちてしまった。
ラファエルが駆け寄り、二人の無事を確認しようと穴を覗き込む。
「危ない!ルーティ!」
咄嗟にスタンが飛び出したが既に手遅れで、二人して落ちてしまった。
ラファエルが駆け寄り、二人の無事を確認しようと穴を覗き込む。
「間抜けな譲ちゃんだ・・・自然に入ったヒビじゃないのを見抜けば罠だと大体判るもんだろ。」
その言葉に驚くラファエル、分かっていて見殺しにしたのだろうか。
剣に手を当てブルーへと近づくが、見抜かれて剣に当てていた手を押さえられる。
「くっ・・・何故ルーティさん達を見殺しにした!」
怒りをあらわにしながら吼えるラファエル、未熟な腕だが怒りからくる震えが確かに伝わってきた。
それを察してか、ラファエルから手を離すとバツが悪そうにブルーが答えた。
「見殺したんじゃねぇ、確かに言わなかったのも悪いが、普通あんだけ宝箱に敏感なら罠にだって気付くだろ。」
その言葉に驚くラファエル、分かっていて見殺しにしたのだろうか。
剣に手を当てブルーへと近づくが、見抜かれて剣に当てていた手を押さえられる。
「くっ・・・何故ルーティさん達を見殺しにした!」
怒りをあらわにしながら吼えるラファエル、未熟な腕だが怒りからくる震えが確かに伝わってきた。
それを察してか、ラファエルから手を離すとバツが悪そうにブルーが答えた。
「見殺したんじゃねぇ、確かに言わなかったのも悪いが、普通あんだけ宝箱に敏感なら罠にだって気付くだろ。」
名前 ルーティ・カトレット
年齢 18歳 身長157cm 体重46kg
職業 レンズハンター 通り名「強欲の魔女」
年齢 18歳 身長157cm 体重46kg
職業 レンズハンター 通り名「強欲の魔女」
モンスターの体内から取れるレンズと呼ばれる隕石の欠片を集めて生計を建てている。
ズバ抜けた洞察力で床に落ちた僅かな金銭、金目の物を見落とさない。
戦闘においても類い希なる運動能力と、手にした古代兵器、知能ある武器ソーディアン、
「アトワイト」によって攻守、回復を務める。術は深い知識で威力を増すと言われ、
冷静な判断と見かけからは判断出来ない知力から繰り出される攻撃術は、
剣では生み出せない絶大な攻撃力を誇る。
そんな彼女の唯一の弱点は、お金が絡むと警戒心も冷静さも一瞬ですっ飛ぶ事である。
ズバ抜けた洞察力で床に落ちた僅かな金銭、金目の物を見落とさない。
戦闘においても類い希なる運動能力と、手にした古代兵器、知能ある武器ソーディアン、
「アトワイト」によって攻守、回復を務める。術は深い知識で威力を増すと言われ、
冷静な判断と見かけからは判断出来ない知力から繰り出される攻撃術は、
剣では生み出せない絶大な攻撃力を誇る。
そんな彼女の唯一の弱点は、お金が絡むと警戒心も冷静さも一瞬ですっ飛ぶ事である。
~騎士団の砦跡地 地下~
「いてて・・・ルーティ、大丈夫か?」
目の前に座りこんだスタンの姿を見る、朝と違って最悪の気分で目覚める。
「いったぁ~・・・もっと速く助けないさいよ!どうやって戻る気!?」
助けてもらいながら謝ることなく文句を口にする。彼女は罠に引っ掛かったり自分のミスから来る怒りを
他人にぶつける習性があるので、うまく付き合っていける人間は極僅かだ。
「ごめん、それよりも怪我はないか?」
「いてて・・・ルーティ、大丈夫か?」
目の前に座りこんだスタンの姿を見る、朝と違って最悪の気分で目覚める。
「いったぁ~・・・もっと速く助けないさいよ!どうやって戻る気!?」
助けてもらいながら謝ることなく文句を口にする。彼女は罠に引っ掛かったり自分のミスから来る怒りを
他人にぶつける習性があるので、うまく付き合っていける人間は極僅かだ。
「ごめん、それよりも怪我はないか?」
謝りもしないで八つあたりを仕掛けるルーティに怒る事もせず心配する。
だが、この素直さが彼女を更に苛立たせる。自分のミスで落ちてこんな事になったのだ。
なのに責められた事を受け入れ自分より他人を心配するスタンを見ると逆にムカついてくる。
「ないわよ、そんなもん!怪我したってアトワイトがあるんだから別にアンタが気にする必要ないでしょ!」
だが、この素直さが彼女を更に苛立たせる。自分のミスで落ちてこんな事になったのだ。
なのに責められた事を受け入れ自分より他人を心配するスタンを見ると逆にムカついてくる。
「ないわよ、そんなもん!怪我したってアトワイトがあるんだから別にアンタが気にする必要ないでしょ!」
怒れば怒る程に不機嫌になっていく、何故この男は自分の事を責めないのか?
どうして、こんなにも素直でいられるのか理解出来なかった。
一人でイライラしている自分への嫌悪で更に苛立っている所にスタンが話しかけてきた。
どうして、こんなにも素直でいられるのか理解出来なかった。
一人でイライラしている自分への嫌悪で更に苛立っている所にスタンが話しかけてきた。
「そうか、良かった。けど、ルーティは女の子なんだからあんまり無茶しない方がいいと思うよ。」
この一言が何故か頭にきたのか、冷たい目でスタンを睨む。その顔は鬼気迫っていた。
この一言が何故か頭にきたのか、冷たい目でスタンを睨む。その顔は鬼気迫っていた。
「アンタに何が分かるっていうの・・・?」
「ルーティ?どうしたんだ。」
「・・・アンタってさぁ、本当に世間知らずよね。お節介で、ドジばっかりの田舎者のくせに仲間ですって?
笑わせるんじゃないわよ、アンタの思い込みのお陰で私がどれだけ苦労してると思ってるのよ!」
声の出る限り叫ぶ、18年でこれ以上怒った事はないという位に怒りに身を任せた。
そんなルーティを見て異変を感じ取ったスタンが話しかけてくる。
「なぁルーティ、聞きたい事があるんだけどいいか?」
「ルーティ?どうしたんだ。」
「・・・アンタってさぁ、本当に世間知らずよね。お節介で、ドジばっかりの田舎者のくせに仲間ですって?
笑わせるんじゃないわよ、アンタの思い込みのお陰で私がどれだけ苦労してると思ってるのよ!」
声の出る限り叫ぶ、18年でこれ以上怒った事はないという位に怒りに身を任せた。
そんなルーティを見て異変を感じ取ったスタンが話しかけてくる。
「なぁルーティ、聞きたい事があるんだけどいいか?」
こんな時に聞きたい事だなんて、やはりどうかしている。
何故、こんなにも余裕なのか、話に耳を傾けながらも座ったまま姿勢を崩していない。
一々仕草にイライラしてたが、それでも沈黙が続くよりはいいとして話す事にした。
「なによ。」
何故、こんなにも余裕なのか、話に耳を傾けながらも座ったまま姿勢を崩していない。
一々仕草にイライラしてたが、それでも沈黙が続くよりはいいとして話す事にした。
「なによ。」
「あのさぁ、ルーティってお金の事が絡むといっつも無茶ばっかりするよなぁ?」
「素直にがめついって言ったら!?なんのために闘ってると思ってるのよ!」
何かと思ったら下らない質問だった、いつも自分が言っている事の再確認をしようと言うのだ。
ただでさえ苛立っているのに嫌味でダメ押しをされるとは思ってもいなかった。
これなら沈黙が続いた方がまだマシというものだ。
「素直にがめついって言ったら!?なんのために闘ってると思ってるのよ!」
何かと思ったら下らない質問だった、いつも自分が言っている事の再確認をしようと言うのだ。
ただでさえ苛立っているのに嫌味でダメ押しをされるとは思ってもいなかった。
これなら沈黙が続いた方がまだマシというものだ。
留まる事を知らない憤怒を感じ取ってもスタンは話を続ける。
「ひょっとして、自分の事よりもお金の方が大切だ。とか思ってないか?」
「当たり前でしょ!お金より大事な物なんてこの世にないわ!」
ここまで言い切れば少しは黙ると思ったが、そうではなかった。
「ひょっとして、自分の事よりもお金の方が大切だ。とか思ってないか?」
「当たり前でしょ!お金より大事な物なんてこの世にないわ!」
ここまで言い切れば少しは黙ると思ったが、そうではなかった。
「それは違うんじゃないか?命に代えられるものなんてないだろ?」
「違わないわよ!目の前に10ガルド落ちてたらアンタどうする?
私は拾うわ!その10ガルドで助かる命がどれっだけあると思ってんのよ!」
息を荒げるルーティを呆気に取られながら見つめるスタン。
そして、ようやく彼女が金銭に執着する理由が分かった。
「違わないわよ!目の前に10ガルド落ちてたらアンタどうする?
私は拾うわ!その10ガルドで助かる命がどれっだけあると思ってんのよ!」
息を荒げるルーティを呆気に取られながら見つめるスタン。
そして、ようやく彼女が金銭に執着する理由が分かった。
「まさか・・・クレスタにある孤児院の為に?」
「ちっ・・・違うわ!私は自分の為にやってるの!自分の欲を満たすためよ!」
的中だった、世間知らずの筈のスタンが何故、クレスタに孤児院がある事を知っていたのか?
動揺で言い訳も思い浮かばず目線を合わせないようにして否定するのがやっとだった。
的中だった、世間知らずの筈のスタンが何故、クレスタに孤児院がある事を知っていたのか?
動揺で言い訳も思い浮かばず目線を合わせないようにして否定するのがやっとだった。
「そうか、そんな理由があって俺がクレスタに行くのを止めたのか・・・。」
普段は鈍感なくせに何でこんな時ばかり感が鋭いのだろうか。
他人に弱みを洩らしたくない一心で、常に秘密にしてきたのも徒労に終わった。
気まずい空気がその場に流れる、これ以上話すことなんてない、ほっといて欲しい。
だが沈黙は、遅い来る試練の数々は、この鈍感な男がいつも打ち破ってきた、そしてこの時も。
「だったら、やっぱり体は大切にしなきゃダメだ!」
普段は鈍感なくせに何でこんな時ばかり感が鋭いのだろうか。
他人に弱みを洩らしたくない一心で、常に秘密にしてきたのも徒労に終わった。
気まずい空気がその場に流れる、これ以上話すことなんてない、ほっといて欲しい。
だが沈黙は、遅い来る試練の数々は、この鈍感な男がいつも打ち破ってきた、そしてこの時も。
「だったら、やっぱり体は大切にしなきゃダメだ!」
思わぬ言葉にスタンの方へと視線を戻す。
曇り一つない青い瞳が少しも揺らぐ事無くこちらを見据えていた。
「たまには帰るんだろ?その時にみんなから「お帰り」って言われた後になんて聞かれる?
怪我がないか、病気になってないか、本当に大丈夫なのか、とか聞かれた事あるだろ!?」
曇り一つない青い瞳が少しも揺らぐ事無くこちらを見据えていた。
「たまには帰るんだろ?その時にみんなから「お帰り」って言われた後になんて聞かれる?
怪我がないか、病気になってないか、本当に大丈夫なのか、とか聞かれた事あるだろ!?」
「・・・っ!?」
いつも、そうだった。帰る度に迎えてくれる子供の中には、嬉しさで涙を流す子さえも居てくれた。
そして聞いてくるのだ、スタンに言われた通りの事を。そして無事を伝えるとはしゃぎ出す。
明るい笑顔に救われ、それを失いたくない一心で自分の事など忘れ果てていた。
いつも、そうだった。帰る度に迎えてくれる子供の中には、嬉しさで涙を流す子さえも居てくれた。
そして聞いてくるのだ、スタンに言われた通りの事を。そして無事を伝えるとはしゃぎ出す。
明るい笑顔に救われ、それを失いたくない一心で自分の事など忘れ果てていた。
「なら、帰りを待つ人達の為にも体を大事にしなきゃダメだ。
お金より何より、ルーティの無事の方が大切な筈だろ?」
涙腺が緩むのを感じる、頬が熱くなる、そしてまたもスタンから視線を外す。
今度は、怒りで顔を見るのも嫌だったからではなく、泣き顔を見られるのが辛いから。
お金より何より、ルーティの無事の方が大切な筈だろ?」
涙腺が緩むのを感じる、頬が熱くなる、そしてまたもスタンから視線を外す。
今度は、怒りで顔を見るのも嫌だったからではなく、泣き顔を見られるのが辛いから。
「俺も、人の事言えないけどさ。家出して、密航して、
こんな旅してるなんて知られたらじいちゃんやリリスに怒られちゃうな。」
明るく家族の事を話すスタンに、改めて教えられた。
血の繋がっていない家族の想いを無駄にし続けていた事を。
こんな旅してるなんて知られたらじいちゃんやリリスに怒られちゃうな。」
明るく家族の事を話すスタンに、改めて教えられた。
血の繋がっていない家族の想いを無駄にし続けていた事を。
そしてスタンの言葉が終るとまた沈黙が場を包み込む。
困ったようにボリボリと頭を掻きながら再び話しかけようとする。
「ありがとね、スタン。」
困ったようにボリボリと頭を掻きながら再び話しかけようとする。
「ありがとね、スタン。」
びっくりして何か言おうと開けた口を、開いたまま硬直していた。
いつもは場の空気を和ませる側のスタンも、この時は救われたのだろう。
こんなに素直に謝ってくるとは思わなかったためか、急に愉快な気分になって笑い出してしまった。
「なによ、アタシが謝るのがそんなに可笑しい!?」
いつもは場の空気を和ませる側のスタンも、この時は救われたのだろう。
こんなに素直に謝ってくるとは思わなかったためか、急に愉快な気分になって笑い出してしまった。
「なによ、アタシが謝るのがそんなに可笑しい!?」
笑いを堪えながら口をパクパクさせながら初めて会った時の事を話しだす。
「い、いや、だって・・・ルーティが謝ったのなんて初めて会った時の
『ああ~、どこのどなたかは存じませぬが、ありがとうございます~』以来だったからさぁ・・・。」
「い、いや、だって・・・ルーティが謝ったのなんて初めて会った時の
『ああ~、どこのどなたかは存じませぬが、ありがとうございます~』以来だったからさぁ・・・。」
神殿でトラップに引っ掛かっていた時の事を鮮明に思い出し、恥しさで頬を赤くするルーティ。
「ばっ、バカ言うんじゃないわよ!アレは・・・って人の話を聞きなさいよ!」
すっかり仲違いを取り払った二人は、見た目には変化がなくとも以前より強い絆で結ばれただろう。
「ばっ、バカ言うんじゃないわよ!アレは・・・って人の話を聞きなさいよ!」
すっかり仲違いを取り払った二人は、見た目には変化がなくとも以前より強い絆で結ばれただろう。
「さて・・・と、いてててて!」
立ち上がる拍子に腰を押さえながらへなへなと老人の様に膝を崩すスタン。
その様子をみて初めて上を見上げた、この高さで落ちて無傷な筈がない。
「まさか、アンタ・・・私を庇って?」
立ち上がる拍子に腰を押さえながらへなへなと老人の様に膝を崩すスタン。
その様子をみて初めて上を見上げた、この高さで落ちて無傷な筈がない。
「まさか、アンタ・・・私を庇って?」
「へへへ・・・俺は丈夫だからいいんだ。」
自分に体を大事にしろと言っておいて他人を庇って怪我をするなんて。
そう言おうと思ったが、スタンの目を見ると言えなかった。
温かく優しい輝きを持った、赤を上回る熱さと強さを持つ青色の瞳がそれを言わせなかった。
自分に体を大事にしろと言っておいて他人を庇って怪我をするなんて。
そう言おうと思ったが、スタンの目を見ると言えなかった。
温かく優しい輝きを持った、赤を上回る熱さと強さを持つ青色の瞳がそれを言わせなかった。
「バカね・・・怪我見せなさい。特別にタダで治してあげるわ。」
そういってアトワイトを握り、地面に座り込んだスタンの手を取った。
そういってアトワイトを握り、地面に座り込んだスタンの手を取った。