SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ WHEN THE MAN COMES ARROUND 48-1


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「さて、そろそろ君達にも見せてあげよう。この私の武装錬金を……」

錬金戦団の五人がビルの入口を目の前にした時、サムナーが立ち止まり、誇らしげな笑いと共に口を開いた。
それに合わせて、何も存在する筈の無いサムナーの頭上にバチバチと青白い電光が発せられる。
その直後には、電光にあぶり出される形で五つの物体が出現した。
「戦術高エネルギーレーザー兵器(THELW)の武装錬金『インヴィジブルサン』だ……!」
それは例えるなら“小さな太陽系”だった。
恒星を思わせる1m程の球体の周りを、四つの小球(ビット)が規則的に廻っている。
「特性は高出力レーザービームの射出。それと武装錬金そのものの光学迷彩カモフラージュ」
インヴィジブルサンの本体と思われるメカニカルな球体は、まるで『スターウォーズ』に登場する
“デス・スター”だ。
そして、本体を周回するビットには一つずつ射出口のようなものが付いている。
大戦士長執務室や先のアンデルセンとの戦いで見せたレーザーは、おそらくここから発射されたのだろう。
「剣だの槍だのといった原始的な武器なんぞお話にならん。銃や焼夷弾、ミサイルランチャーも時代遅れだ。
この私の武装錬金こそが最新鋭! 最強の破壊力を誇るのだ!」
外套を翻し、芝居がかった語調で口上を述べるサムナー。
無言でそれを見つめる四人。

「……じゃ、そろそろ行こうぜ」
見るだけ見てやったからもういいだろう、と言わんばかりに火渡はさっさと歩き出す。
「お、おい! 勝手な行動は慎まんか!」
「オラァ!」
火渡は気合いと共に正面入口の大扉を蹴破った。
非常灯だけがほのかな輝きを点す一階ロビーは静寂、いや沈黙という語句が似合い過ぎる程に
不自然に静まり返っていた。
真正面には来客の為の受付カウンターがあり、それを中心として左右対称に二階へ通じる大階段、
大理石風の柱、各部屋への通路がある。
当たり前の話だが、見渡す限り人影は無い。
「フッ、身を隠してこちらを窺ってるのが見え見えだな……」
サムナーは千歳の方を振り返る。

「戦士・楯山、君の武装錬金はレーダーだろう? このフロアにいる敵の人数と場所を特定しろ」
彼女の武装錬金の特性を微妙に勘違いした命令に、慌て気味の千歳は口ごもりながら応答した。
「え!? あ、あの……。ヘルメスドライブの索敵有効対象は、私が視認した人間のみに限られてるんです……」
「何ィ!? それでは敵と顔を合わせてカフェで仲良くお茶をしてからでないと、その超高性能レーダーには
映りもしないという事か!? ……この役立たずめ!」
「すみません……」
瞳を潤ませてしょげる千歳だが、この場合は彼女に非は無い。
むしろ部下の能力の把握を怠り、適材適所の人員配置が出来なかった上官サムナーの失態だ。
そもそもヘルメスドライブの特性を活かした千歳の得意とする任務形態は、最前線での索敵行動ではない。
変装等による敵地への潜入の後、瞬間移動を駆使して司令部との往復を繰り返し、情報を持ち帰る事によって
敵の実態を丸裸にする。
それこそが戦士・千歳を組み入れた作戦部隊の必勝パターンなのだ。

千歳は自分の能力を否定され、半泣き状態で立ち尽くしている。
そんな彼女の肩に力強く、それでいて優しく手が置かれた。そして、そのまま彼女をズイと横へ押しのける。
火渡だ。
「んな事でガタガタ騒ぐんじゃねえ。俺と防人が行けば問題無えよ。オイ、防人」
「ああ」
火渡の呼びかけに答え、防人は帽子を目深に被り直し、シルバースキンの襟元を顔まで引き上げる。
二人は悠然とロビーの中央に向かって歩き出した。
「き、貴様ら! 勝手な真似は許さんぞ!」
サムナーが、というよりもサムナーの自尊心が罵声を上げるのも束の間、隠れていたテロリスト達が
行動を起こした。
「畜生! 撃て! 撃ちまくれ!!」
ヤケクソ気味の掛け声と同時に、ロビー内のあらゆる方向から自動小銃による一斉射撃が始まった。
「くっ!」
「うわわっ!」
直接攻撃から身を守る術を持たない千歳とジュリアンは、急いで手近のベンチソファの陰に身を隠した。
サムナーもビットを自身の周りに旋回させて防御する。
だが、歩みを止めないこの二人の錬金の戦士に対し、“ただの”一斉射撃など攻撃のうちに入らない。


無数の弾丸は、火炎同化した火渡の身体を空しく通り抜け、防人のシルバースキンの前にパラパラと
BB弾のように弾かれる。
七年の後、精鋭揃いの錬金戦団日本支部において戦士長となるこの二人に、物理攻撃は一切通用しない。
それが通常兵器によるものだろうと、武装錬金によるものだろうと。
絶え間無く斉射される銃弾の中、二人は冷静にその発射元を見極めた。
「受付スペースの中に三人、右の通路の陰に一人、左の通路の陰に二人、左右の柱の後ろに一人ずつ……」
「それに正面の階段の踊り場に三人だ。これでいいっスか? 指揮官殿」
火渡はサムナーの方へ振り返り、小馬鹿にしたように報告する。
「フ、フン……。まあ、君達にも少しは活躍の機会を与えなくてはな」
苦虫を噛み潰した顔で言い放つが、誰が聞いてもサムナーの負け惜しみにしか聞こえないだろう。
だが彼はいつでも、どんな状況だろうと自分に言い聞かせ、他人にもそれを肝に銘じる事を強要する。

“私は、このマシューサムナーは栄えある錬金戦団大英帝国支部の戦士長なのだ”と。

「ではNew Real IRAの諸君! 君達にはそろそろこの舞台からは御退場願おうか!!」
気取った死刑宣告を物陰のテロリスト達に浴びせたサムナーは、心持ち腕を浮かせた前傾姿勢を取った。
「インヴィジブルサン・スタティスティック・オン・ア・ガバメントチャート……」
そうサムナーが呟くと、四つのビットは本体から離れ、大きく旋回しながら天井へと上昇していった。
そして天井付近で静止すると、ウィンウィンとモーター音に似た機械音を立てながらあらゆる
角度・方向へ射出口を向ける。
まるで獲物の位置を丁寧に確かめるが如く。
一瞬の間を置いて、ビットが短く連続的にレーザービームを高速射出し始めた。
雨のように、それでいて精確に、火渡と防人が指し示した場所にレーザービームが降り注ぐ。
その様は流星群にも似ている。
壁や大理石の柱は粉々に砕かれていき、床や木製のカウンターは穴だらけになっていく。
血飛沫も上がらない。悲鳴すら上がらない。
やがて射出を終えたビットがサムナーの元に戻ってくる頃には、ビル内に踏み込んだ時と同じ
沈黙が訪れていた。
やはりこの場合も静寂ではなく沈黙だ。死者の沈黙と言っていいだろう。
程無くロビーの中を肉や髪が焦げる火葬場の臭いが漂い始めた。
「フハハハハッ! New Real IRA、何の事もあらん!」


サムナーはコツコツと靴音を立て、パーティ会場のスペシャルゲストのように優雅にロビーを進む。
防人と火渡を通り過ぎ、穴だらけになった受付スペースのカウンターの前で彼は立ち止まった。
そして、邪悪な笑みを浮かべて呟いた。決して誰にも聞こえぬ声で。四人に背を向けたまま。
「三つ葉計画(シャムロック・プログラム)、始動……」



――地下一階、倉庫スペース。
そこには手錠と鎖で厳重に拘束された半裸の大男と、それを見張る二人のテロリストがいた。
床に座る大男は長い白髪を垂れ下がらせて、ガックリとうな垂れたまま身動き一つしない。
彼はこのアジトに連れてこられた時も、また警戒したパトリックによってここに幽閉されてからも、
自らの意思で行動を起こす事も言葉を発する事も無かった。
そう、今のところは。

見張りの二人は、彼から少し離れた場所に立ってボソボソと言葉を交わしている。
懐からポケット瓶を出してあおったり、火付きの悪いライターで煙草に火を点けようと悪戦苦闘したりと、
任務に熱心という訳でもない。
二人はとっくの昔に、この動かぬ被拘束者の見張りに倦んでいた。

ふと、片割れのテロリストの眼には、何となく大男が動いたように映った。
「お、おい……。今、コイツ動かなかったか……?」
「んあ?」
もう一人が振り返って大男の方を見遣る。
「動いてねえじゃねえか。ビビり過ぎなんだよ、お前は。それより火ィ貸してくれ」
「お、おう」
小さな火を揺らめかせるジッポライターがくわえられた煙草に近づき、

床に落ちた。

「おい、何やってんだよ」
「あ、ああ……あ……」
ライターを落とした手が、指差す。
煙草をくわえたテロリストはもう一度振り返った。
「!?」
大男が立ち上がっていたのだ。相変わらずうな垂れたままで。
やがて彼は細かく身を震わせた。どうやら、この拘束を外したいらしい。
ただし、さほど力を入れているようには見えない。
だが何重にも縛りつけられた鎖は、派手な金属音と共に簡単に千切れた。無論、手錠も左右の手首を飾る
バングルに過ぎなくなっている。
「コ、コイツ……!」
「撃て! 頭を狙うんだ!」
二人は慌てて肩から下げたハイパワーライフル、ウェザビーMkⅤを構える。
それに反応するかのように、大男はゆっくりと顔を上げた。
その顔が二人の眼に飛び込んだ時、既に彼らの運命は決まったも同然だった。

「ひッ、ひいいいいいいいいッ!!」



「グズグズしている暇は無い。行きましょう、サムナー戦士長」
防人は背を向けたまま立ち尽くすサムナーを促した。
「ああ、そうだな……」
その時、ズシンと地響きのような音を立てて、床が大きく揺れた。
衝撃の直後、ロビー中央部分の床にひび割れが広がっていく。
「な、何だ!?」
驚きと揺れのあまり、ジュリアンは床に尻餅をついている。
更に間髪入れず、もう一度衝撃が走る。
その衝撃によって、床のひび割れはタイルやコンクリートの破片を撒き散らせながら、大きな穴へと変わった。
その大穴からノロノロと一人の大男が這い上がってくる。
「どうやらコイツがテロリスト共の作り出したホムンクルスらしいな……」
口元に手をやり、多少驚いた風を見せるサムナーが声を洩らした。
その掌に隠された唇は微笑を形作ってはいたが。


穴から這い出たホムンクルスは、まるで伸びをするように時間を掛けて立ち上がった。
見ようによっては愚鈍とも受け取れる。
「随分とうすらデケえ野郎だな……」
火渡の呟きは驚きとも呆れとも付かない。
だが、確かに大きい。身の丈3mはあろうか。
人型にしろ、動物型にしろ、人間形体でここまで巨漢のホムンクルスをここにいる誰もが見た事が無かった。
ボディビルダー並みの筋肉質を持つ身体の上には、長い白髪を振り乱した頭が乗っている。
ホムンクルスはゆっくりと自分を囲む五人を見回す。そして、その視線が防人を捉えると
ピタリと動かなくなった。
ただジッと防人を見つめ続ける。
「……!」
防人は無言で重心を落とし、両腕を構えた。
「CAPTAIN BRAVO...」
金属を擦り合わせるような人工的な響きを持つホムンクルスの声が、防人の名を呼んだ。
と、同時に。
ホムンクルスはそれまでの鈍重な動きが嘘のように、巨体に似合わぬ俊敏さを以って防人に襲い掛かった。