第三話「戦闘開始」
そこは鬼ヶ島。かつて説明した通り、太平の世になって五年、鬼族の巣窟たるこの島も平穏そのものであった。
―――そして、今。
五年ぶりの戦渦が、鬼ヶ島を、ひいてはこの世界を巻き込もうとしていた―――。
―――そして、今。
五年ぶりの戦渦が、鬼ヶ島を、ひいてはこの世界を巻き込もうとしていた―――。
異形の怪物が大地を揺らし、空を蹂躙する。その爛々と光る眼が、世界を睥睨する。その身体の輪郭は人間のものに近い
が、それは逆に彼らの異様さを際立たせている。
総じて黒色の巨体を持ち、獰猛な唸り声をあげて襲い掛かってくる怪物たち。
が、それは逆に彼らの異様さを際立たせている。
総じて黒色の巨体を持ち、獰猛な唸り声をあげて襲い掛かってくる怪物たち。
対して鬼族は現在、軍勢を二つに分けてその侵攻を食い止めている。
一つはバサラ王の右腕にして名実共に鬼族第二位の実力者、えんま王率いる軍勢。
もう一つはバサラ王の第二子、アジャセ王子が率いている。
現在の所、戦況は鬼族にとって不利なものであった―――。
一つはバサラ王の右腕にして名実共に鬼族第二位の実力者、えんま王率いる軍勢。
もう一つはバサラ王の第二子、アジャセ王子が率いている。
現在の所、戦況は鬼族にとって不利なものであった―――。
怪物たちと鬼族が入り乱れる戦場。
長く美しい黒髪を靡かせて、アジャセは周囲に群がる敵に向かう。彼が手にしているのは、見掛けは特に何の変哲もない
横笛だ。
勿論それでは武器として扱うことなどできないが、特殊な念を込めることで笛の強度を上げることにより、直接怪物たち
を殴り飛ばすことを可能とする。
外見からは想像も付かないが、彼は割と肉体派だった。
(例・険しい山に囲まれた場所に行きたいが乗り物がない→山にトンネルを掘るしかないじゃないか!)
ちなみにこれ、実話である。
それはともかく、雑魚の皆さんをダース単位であしらった彼は、一際大きな身体と翼を持った怪物に対峙した。
「ふふふ…ただの優男かと思っていたが、中々やるな」
「お褒めに預かり光栄だが…お前たちは何者だ。何をしに来た!」
怪物の牙だらけの口が、にいっと歪む。笑ったのだとすれば、それはあまりに醜悪すぎた。
「―――我らはアヤカシ。ギガゾンビ様の忠実なる僕なり」
「アヤカシ…ギガゾンビ…!?」
聞き慣れぬ言葉に困惑するアジャセを尻目に怪物―――いや、アヤカシは続けて名乗った。
「そして我が名はジジョウダ。アヤカシのジジョウダだ!」
言い終わるが早いか、ジジョウダがその大きな翼を羽ばたかせ、突風を巻き起こす。身を切り裂くかのような風に翻弄
されて、アジャセは身を守るだけで精一杯だ。
そこを狙い、ジジョウダが鋭い爪でアジャセに襲い掛かる。だがその瞬間、突風が向きを変えた。それは逆にジジョウダ
に向かう。
「何ぃっ!?」
驚く間もなく、次はどこからともなく電撃が放たれる。それを翼で防いだジジョウダだったが、たまらず動きを止める。
「今のは…」
アジャセが呟くと同時に、側に二人の大きな鬼が駆け寄る。
一人は青い身体に、大きな袋を手にしている。
もう一人は赤い身体に、背中に沢山の太鼓を円形に繋げて背負っている。
「ぴゅるるるるぅ!アジャセ王子、ご無事ですか!」
「ぐゎらりぐゎらり!風神と雷神、ただいま参りました!」
長く美しい黒髪を靡かせて、アジャセは周囲に群がる敵に向かう。彼が手にしているのは、見掛けは特に何の変哲もない
横笛だ。
勿論それでは武器として扱うことなどできないが、特殊な念を込めることで笛の強度を上げることにより、直接怪物たち
を殴り飛ばすことを可能とする。
外見からは想像も付かないが、彼は割と肉体派だった。
(例・険しい山に囲まれた場所に行きたいが乗り物がない→山にトンネルを掘るしかないじゃないか!)
ちなみにこれ、実話である。
それはともかく、雑魚の皆さんをダース単位であしらった彼は、一際大きな身体と翼を持った怪物に対峙した。
「ふふふ…ただの優男かと思っていたが、中々やるな」
「お褒めに預かり光栄だが…お前たちは何者だ。何をしに来た!」
怪物の牙だらけの口が、にいっと歪む。笑ったのだとすれば、それはあまりに醜悪すぎた。
「―――我らはアヤカシ。ギガゾンビ様の忠実なる僕なり」
「アヤカシ…ギガゾンビ…!?」
聞き慣れぬ言葉に困惑するアジャセを尻目に怪物―――いや、アヤカシは続けて名乗った。
「そして我が名はジジョウダ。アヤカシのジジョウダだ!」
言い終わるが早いか、ジジョウダがその大きな翼を羽ばたかせ、突風を巻き起こす。身を切り裂くかのような風に翻弄
されて、アジャセは身を守るだけで精一杯だ。
そこを狙い、ジジョウダが鋭い爪でアジャセに襲い掛かる。だがその瞬間、突風が向きを変えた。それは逆にジジョウダ
に向かう。
「何ぃっ!?」
驚く間もなく、次はどこからともなく電撃が放たれる。それを翼で防いだジジョウダだったが、たまらず動きを止める。
「今のは…」
アジャセが呟くと同時に、側に二人の大きな鬼が駆け寄る。
一人は青い身体に、大きな袋を手にしている。
もう一人は赤い身体に、背中に沢山の太鼓を円形に繋げて背負っている。
「ぴゅるるるるぅ!アジャセ王子、ご無事ですか!」
「ぐゎらりぐゎらり!風神と雷神、ただいま参りました!」
彼らは風神と雷神―――その姿をイメージできない人は多分いないと言っていい、あまりにも有名な鬼である。
えんま王直属の配下の中でも、とある一人の別格の男を除けば、特に強大な力を持った二人である。
ちなみにその男については次回登場予定。規制がかかるレベルの変態なので、覚悟しておいてください。
それはそうとして、風神と雷神はえんま王の元にいたはずだった。それが、何故ここに?
アジャセの疑問を表情から見て取ったのか、二人は答えた。
「ぴゅるるるるぅ!えんま様の事ならばご心配なく!」
「ぐゎらりぐゎらり!そのお力により、あちらの怪物共はほぼ全滅しております!」
ほぼ同時に言葉を発する。息の合った二人だった。
「そうか…流石はえんま王だ」
感心しつつ、立ち上がるアジャセ。風神と雷神、そして鬼の兵士たちと共にジジョウダを取り囲む。
だがその時―――大地が揺れた。地面に亀裂が走り、そこから何かが飛び出す。
現れたのは女性の顔を持った、小山ほどもある大きさの蜘蛛だった。
「これは、少々多勢に無勢でありんすねえ…ジジョウダ、ここはアチキも手伝うでありんすよ」
「くっ…新手か!?」
「ぴゅるるるるぅ!何者だ!」
「ぐゎらりぐゎらり!名を名乗れ!」
巨大な蜘蛛は、妖艶な笑みを浮かべてそれに答えた。
「アチキはアヤカシ女王蜘蛛・ガンダダーン。よろしくでありんす」
同時にその口から、白い糸が吐き出され、その場の全員の身体を拘束した。
「ぐっ…!?し、しまった!」
「ぴゅるるるるぅ!なんだ、この糸は!」
「ぐゎらりぐゎらり!う…動けん!
「おやおや…こんなにあっさりアチキの<魔糸(まいと)>にかかりとは、意外とうっかりさんでありんすねぇ…」
ニヤニヤと笑うガンダダーン。それに対し、ジジョウダが苦言を呈した。
「ガンダダーン!貴様、今まで何をやっていた!?」
「申し訳ない。この戦い、中々に壮観だったので、思わず手を休めていたでありんす」
呑気な事を口走るガンダダーン。だが、形勢は既にアヤカシの側に傾いていた。アジャセたちは、まさに料理されるのを
待つだけのまな板の上の鯉だ。
「さて、それではさっさと止めといくでありんす―――」
ガンダダーンの口から、更に大量の魔糸が吐き出され―――
えんま王直属の配下の中でも、とある一人の別格の男を除けば、特に強大な力を持った二人である。
ちなみにその男については次回登場予定。規制がかかるレベルの変態なので、覚悟しておいてください。
それはそうとして、風神と雷神はえんま王の元にいたはずだった。それが、何故ここに?
アジャセの疑問を表情から見て取ったのか、二人は答えた。
「ぴゅるるるるぅ!えんま様の事ならばご心配なく!」
「ぐゎらりぐゎらり!そのお力により、あちらの怪物共はほぼ全滅しております!」
ほぼ同時に言葉を発する。息の合った二人だった。
「そうか…流石はえんま王だ」
感心しつつ、立ち上がるアジャセ。風神と雷神、そして鬼の兵士たちと共にジジョウダを取り囲む。
だがその時―――大地が揺れた。地面に亀裂が走り、そこから何かが飛び出す。
現れたのは女性の顔を持った、小山ほどもある大きさの蜘蛛だった。
「これは、少々多勢に無勢でありんすねえ…ジジョウダ、ここはアチキも手伝うでありんすよ」
「くっ…新手か!?」
「ぴゅるるるるぅ!何者だ!」
「ぐゎらりぐゎらり!名を名乗れ!」
巨大な蜘蛛は、妖艶な笑みを浮かべてそれに答えた。
「アチキはアヤカシ女王蜘蛛・ガンダダーン。よろしくでありんす」
同時にその口から、白い糸が吐き出され、その場の全員の身体を拘束した。
「ぐっ…!?し、しまった!」
「ぴゅるるるるぅ!なんだ、この糸は!」
「ぐゎらりぐゎらり!う…動けん!
「おやおや…こんなにあっさりアチキの<魔糸(まいと)>にかかりとは、意外とうっかりさんでありんすねぇ…」
ニヤニヤと笑うガンダダーン。それに対し、ジジョウダが苦言を呈した。
「ガンダダーン!貴様、今まで何をやっていた!?」
「申し訳ない。この戦い、中々に壮観だったので、思わず手を休めていたでありんす」
呑気な事を口走るガンダダーン。だが、形勢は既にアヤカシの側に傾いていた。アジャセたちは、まさに料理されるのを
待つだけのまな板の上の鯉だ。
「さて、それではさっさと止めといくでありんす―――」
ガンダダーンの口から、更に大量の魔糸が吐き出され―――
「―――<ひらりマント>!」
―――それは直撃することなく、弾き返された。
「な…だ、誰でありんす!?アチキの邪魔をしてくれたのは!」
「ぼくだよ」
ひみつ道具<ひらりマント>を構えたまま、青いそいつは答えた。
「二十二世紀のネコ型ロボット…ドラえもんとは、ぼくのことだ!」
ババーン!と名乗ったドラえもん。だが、それに対する反応は―――
「…知ってるか、ガンダダーン?」
「いや、分からんでありんす」
ドラえもんはがくっと肩を落としたが、アジャセはその姿を見て、思わず呟いた。
「青き…神獣…」
「え?青き…なんですって?」
聞き返そうとしたドラえもんだが、その隙をついて再び放たれる魔糸。しかし、それはまたしても阻まれた。
「GUN鬼の銃・特殊弾―――<炎華暴弾(えんかぼうだん)>!」
文字通り暴れ狂うような炎の奔流が、魔糸を焼き尽くす。
「くっ…ま、またしても…今度は何でありんす!?」
「今までの展開を見る限り…そっちの方がギガゾンビの手先、でいいんだよね?」
そこにいたのは、着流しに袴、<MUSASHIセット>を着込んだ眼鏡の少年―――。
「ゴ○ゴもトレ○ンも目じゃない最強ガンマン―――野比のび太とは、ぼくのことだ!」
「…知ってるか、ガンダダーン?」
「いや、分からんでありんす」
―――繰り返しギャグは、いつの時代、どこの世界にも存在する。
「まあいいや…ひとまず、その糸をどうにかしないと。ドラえもん、任せた!」
「オッケイ!<物質変換機>!」
銃のような形をした道具を取り出すと、ドラえもんはアジャセたちの身体に巻き付いた魔糸に向けて引き金を引いた。
その瞬間、魔糸はあっさりと強度を失い、解けていく。
「ぴゅるるるるぅ!これは不思議な…!」
「ぐゎらりぐゎらり!誰かは知らんが、かたじけない!」
「いやあ、そんな…」
活躍できて照れ照れのドラえもん。そんな彼に、アジャセは疑問をぶつけた。
―――それは直撃することなく、弾き返された。
「な…だ、誰でありんす!?アチキの邪魔をしてくれたのは!」
「ぼくだよ」
ひみつ道具<ひらりマント>を構えたまま、青いそいつは答えた。
「二十二世紀のネコ型ロボット…ドラえもんとは、ぼくのことだ!」
ババーン!と名乗ったドラえもん。だが、それに対する反応は―――
「…知ってるか、ガンダダーン?」
「いや、分からんでありんす」
ドラえもんはがくっと肩を落としたが、アジャセはその姿を見て、思わず呟いた。
「青き…神獣…」
「え?青き…なんですって?」
聞き返そうとしたドラえもんだが、その隙をついて再び放たれる魔糸。しかし、それはまたしても阻まれた。
「GUN鬼の銃・特殊弾―――<炎華暴弾(えんかぼうだん)>!」
文字通り暴れ狂うような炎の奔流が、魔糸を焼き尽くす。
「くっ…ま、またしても…今度は何でありんす!?」
「今までの展開を見る限り…そっちの方がギガゾンビの手先、でいいんだよね?」
そこにいたのは、着流しに袴、<MUSASHIセット>を着込んだ眼鏡の少年―――。
「ゴ○ゴもトレ○ンも目じゃない最強ガンマン―――野比のび太とは、ぼくのことだ!」
「…知ってるか、ガンダダーン?」
「いや、分からんでありんす」
―――繰り返しギャグは、いつの時代、どこの世界にも存在する。
「まあいいや…ひとまず、その糸をどうにかしないと。ドラえもん、任せた!」
「オッケイ!<物質変換機>!」
銃のような形をした道具を取り出すと、ドラえもんはアジャセたちの身体に巻き付いた魔糸に向けて引き金を引いた。
その瞬間、魔糸はあっさりと強度を失い、解けていく。
「ぴゅるるるるぅ!これは不思議な…!」
「ぐゎらりぐゎらり!誰かは知らんが、かたじけない!」
「いやあ、そんな…」
活躍できて照れ照れのドラえもん。そんな彼に、アジャセは疑問をぶつけた。
「我々には計り知れない不思議な道具…それに、あいつらのことも知っているとは…君たちは、一体何者なのだ?」
「うーん、何者って言われても困るけど…それはそうと、そっちこそ、ぼくを見て青きなんたらって言ってたけど、一体
どういう意味なんです?」
「あー、もう、いいじゃない二人とも。今はグダグダ言ってる場合じゃないでしょ!」
のび太がピシャリ、と話を遮った。
「詳しい話は後!とにかくあいつら、ギガゾンビの手下なんでしょ?それと戦ってるんなら…ぼくたちは、味方だよ」
単純な理屈だったが、その通りではあった。ドラえもんとアジャセは一瞬顔を見合わせると、すぐに心得たとばかりに
頷きあった。
今ここに、ドラえもんとのび太、そして鬼族―――即席ながら、共闘関係が成立したのである。
「ふん…よかろう!ならばそこのガキから捻り潰してやる!」
ジジョウダが翼を広げ、空中へと舞い上がった。そしてのび太に向けて、一直線に飛び掛ってくる。
「おっと!」
その一撃をかわしたのび太は、空中を飛び回るジジョウダに向けてジャンプした。数十倍―――下手をすれば数百倍
にまで強化された身体能力が、天高くへの跳躍をも可能とする。
だがそれは、傍目には無謀な行為そのものだった。
「ぴゅるるるるぅ!逃げろ、少年!」
「ぐゎらりぐゎらり!空中では奴には勝てん!」
風神と雷神、そして全ての鬼族がのび太を心配そうに見上げる。
「大丈夫ですよ」
だがドラえもんが、あっさりと言った。
「のび太くんはダメな奴だけど、ぼくの道具があるし…何より、こういう事態にはやたら強いんですよ」
「しかし…」
言い募るアジャセに、もう一度ドラえもんは繰り返した。
「大丈夫ですって。ほら、見てください!」
言われた通り、空へと舞い踊ったのび太へと視線を向ける。のび太は重力を明らかに無視した動きで、ゆっくりと降下
しながらジジョウダと戦っていた。
その爪を紙一重でかいくぐり、GUN鬼の銃で応戦する。
「うーん、何者って言われても困るけど…それはそうと、そっちこそ、ぼくを見て青きなんたらって言ってたけど、一体
どういう意味なんです?」
「あー、もう、いいじゃない二人とも。今はグダグダ言ってる場合じゃないでしょ!」
のび太がピシャリ、と話を遮った。
「詳しい話は後!とにかくあいつら、ギガゾンビの手下なんでしょ?それと戦ってるんなら…ぼくたちは、味方だよ」
単純な理屈だったが、その通りではあった。ドラえもんとアジャセは一瞬顔を見合わせると、すぐに心得たとばかりに
頷きあった。
今ここに、ドラえもんとのび太、そして鬼族―――即席ながら、共闘関係が成立したのである。
「ふん…よかろう!ならばそこのガキから捻り潰してやる!」
ジジョウダが翼を広げ、空中へと舞い上がった。そしてのび太に向けて、一直線に飛び掛ってくる。
「おっと!」
その一撃をかわしたのび太は、空中を飛び回るジジョウダに向けてジャンプした。数十倍―――下手をすれば数百倍
にまで強化された身体能力が、天高くへの跳躍をも可能とする。
だがそれは、傍目には無謀な行為そのものだった。
「ぴゅるるるるぅ!逃げろ、少年!」
「ぐゎらりぐゎらり!空中では奴には勝てん!」
風神と雷神、そして全ての鬼族がのび太を心配そうに見上げる。
「大丈夫ですよ」
だがドラえもんが、あっさりと言った。
「のび太くんはダメな奴だけど、ぼくの道具があるし…何より、こういう事態にはやたら強いんですよ」
「しかし…」
言い募るアジャセに、もう一度ドラえもんは繰り返した。
「大丈夫ですって。ほら、見てください!」
言われた通り、空へと舞い踊ったのび太へと視線を向ける。のび太は重力を明らかに無視した動きで、ゆっくりと降下
しながらジジョウダと戦っていた。
その爪を紙一重でかいくぐり、GUN鬼の銃で応戦する。
「ぴゅるるるるぅ!すごいぞ、あの少年…!」
「ぐゎらりぐゎらり!落ちながら戦っておる!」
本当にこの二人、某中学生ダブルスもびっくりの息の合いようだった。今にもシンクロを始めそうな勢いだ。
それはともかくとして、今のび太が見せている動きこそが<MUSASHIセット>に秘められた力の一端―――
まさに<フォーリング・バトル・システム>である!
鬼たちはその動きに感心するやら、見とれるやら、完全にモブキャラと化している。
「陰陽弾をくらえ~!」
そしてのび太がついに勝負を決めた。二丁の銃から放たれた特殊弾―――<陰陽弾>が、ジジョウダの両目に見事に
命中したのだ。
「ぐわぁぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!!」
絶叫を上げながら落下していくジジョウダ。そして地面に叩きつけられると同時に、その身体は溶けるように消えて
いった。一瞬遅れて、のび太も着地する。
「ぬう…ジジョウダを倒すとは、やるでありんすね…アチキも本気でいかせてもらうでありんす!」
ガンダダーンが今まで以上の大量の魔糸を放出する。だがその前に、風神が立ちはだかった。
「ぴゅるるるるぅ!何度も同じ手が通じると思うな!<疾風の術>!」
風神が手にした袋から吹き出す疾風。全てを引き裂き、海をも割るかのような風が、魔糸を散り散りにしていく。
「なっ…アチキの魔糸を!」
驚愕するガンダダーン。だが、これでは終わらない。
「ぐゎらりぐゎらり!我が力を見せてくれよう!<雷撃の術>!」
雷神が激しく太鼓を打ち鳴らす。バチバチと雷光が迸り、ガンダダーンへ向けて放たれた。
「うぁっ!」
強烈な雷の一撃に、たまらず悶えるガンダダーン。そして―――
「最後はぼくの番だ!<炎華暴弾>最大出力!」
のび太が放った一撃は、まさに全てを飲み込む大火球。ガンダダーンは断末魔の声すらもなく、ただ溶けていく。
周りに残っていたアヤカシたちは、司令官クラスの二匹を倒されたことにより、散り散りになって敗走していく。
「―――ふう、これで一段落着いたね」
「うん。それじゃあ、改めて。ぼくはドラえもん。こっちはのび太くんです」
「ドラえもん…そして、野比のび太、か」
アジャセは姿勢を正し、頭を下げた。その顔には感謝と、いくばくかの敬意が浮かんでいる。
「ぐゎらりぐゎらり!落ちながら戦っておる!」
本当にこの二人、某中学生ダブルスもびっくりの息の合いようだった。今にもシンクロを始めそうな勢いだ。
それはともかくとして、今のび太が見せている動きこそが<MUSASHIセット>に秘められた力の一端―――
まさに<フォーリング・バトル・システム>である!
鬼たちはその動きに感心するやら、見とれるやら、完全にモブキャラと化している。
「陰陽弾をくらえ~!」
そしてのび太がついに勝負を決めた。二丁の銃から放たれた特殊弾―――<陰陽弾>が、ジジョウダの両目に見事に
命中したのだ。
「ぐわぁぁぁぁぁーーーーーーーっっ!!!」
絶叫を上げながら落下していくジジョウダ。そして地面に叩きつけられると同時に、その身体は溶けるように消えて
いった。一瞬遅れて、のび太も着地する。
「ぬう…ジジョウダを倒すとは、やるでありんすね…アチキも本気でいかせてもらうでありんす!」
ガンダダーンが今まで以上の大量の魔糸を放出する。だがその前に、風神が立ちはだかった。
「ぴゅるるるるぅ!何度も同じ手が通じると思うな!<疾風の術>!」
風神が手にした袋から吹き出す疾風。全てを引き裂き、海をも割るかのような風が、魔糸を散り散りにしていく。
「なっ…アチキの魔糸を!」
驚愕するガンダダーン。だが、これでは終わらない。
「ぐゎらりぐゎらり!我が力を見せてくれよう!<雷撃の術>!」
雷神が激しく太鼓を打ち鳴らす。バチバチと雷光が迸り、ガンダダーンへ向けて放たれた。
「うぁっ!」
強烈な雷の一撃に、たまらず悶えるガンダダーン。そして―――
「最後はぼくの番だ!<炎華暴弾>最大出力!」
のび太が放った一撃は、まさに全てを飲み込む大火球。ガンダダーンは断末魔の声すらもなく、ただ溶けていく。
周りに残っていたアヤカシたちは、司令官クラスの二匹を倒されたことにより、散り散りになって敗走していく。
「―――ふう、これで一段落着いたね」
「うん。それじゃあ、改めて。ぼくはドラえもん。こっちはのび太くんです」
「ドラえもん…そして、野比のび太、か」
アジャセは姿勢を正し、頭を下げた。その顔には感謝と、いくばくかの敬意が浮かんでいる。
「私はアジャセ―――鬼族の王、バサラ王の第二王子だ。助けてくれたこと、感謝する。ついては君たちのことで色々
聞きたいこともあるのだが…」
「ええ、構いませんよ。ただぼくたちもこの世界に来たばっかだから、こっちからも話を聞かせてもらいますよ」
「いいだろう。では、ひとまずどこか落ち着ける場所で―――」
「―――悪いけど、お休みの時間はまだ先だよ」
可憐とさえ言える少女の声が響いた。一斉にそちらへと顔を向けると、そこには三人の少女たちがいた。
小悪魔的な笑顔を浮かべた、活発そうな短髪の少女―――ティス。
弱々しく見えるほどに儚い雰囲気の髪の長い少女―――デスピニス。
その二人と比べるとどうにもインパクトの弱い、影の薄そうな少年―――ラリアー。
「なんか地の文で、酷い紹介された気がするんだけど…」
「気のせいだよ、ラリアー…さて、鬼族の皆さんに、ドラえもん、それに、野比のび太、だっけ?あたいはティス。
男の子がラリアーで、こっちのかーいらしい子がデスピニスだよ。よろしくね」
「あ、どうもよろしく。ラリアーくん、それにティスちゃんにデスピニスちゃんか、二人とも可愛いね。えへへ…」
あからさまに怪しい三人にへこへこ挨拶し、しまいには可愛い女の子とみてデレデレするのび太。ドラえもんが情けない、
と言わんばかりの顔でのび太をつつく。
「のび太くん、言ってる場合じゃないでしょ!あの子たち、多分敵だよ!」
「わ、分かってるよ…」
その様子を見て、ティスは小馬鹿にしたように笑う。
「はん、軟弱そうな野郎だね。ねえ、デスピニス…デスピニス?」
デスピニスは、何故か嬉しそうだった。
「可愛いって言われました…褒められました…」
「…よかったね」
「はい、よかったです…」
聞きたいこともあるのだが…」
「ええ、構いませんよ。ただぼくたちもこの世界に来たばっかだから、こっちからも話を聞かせてもらいますよ」
「いいだろう。では、ひとまずどこか落ち着ける場所で―――」
「―――悪いけど、お休みの時間はまだ先だよ」
可憐とさえ言える少女の声が響いた。一斉にそちらへと顔を向けると、そこには三人の少女たちがいた。
小悪魔的な笑顔を浮かべた、活発そうな短髪の少女―――ティス。
弱々しく見えるほどに儚い雰囲気の髪の長い少女―――デスピニス。
その二人と比べるとどうにもインパクトの弱い、影の薄そうな少年―――ラリアー。
「なんか地の文で、酷い紹介された気がするんだけど…」
「気のせいだよ、ラリアー…さて、鬼族の皆さんに、ドラえもん、それに、野比のび太、だっけ?あたいはティス。
男の子がラリアーで、こっちのかーいらしい子がデスピニスだよ。よろしくね」
「あ、どうもよろしく。ラリアーくん、それにティスちゃんにデスピニスちゃんか、二人とも可愛いね。えへへ…」
あからさまに怪しい三人にへこへこ挨拶し、しまいには可愛い女の子とみてデレデレするのび太。ドラえもんが情けない、
と言わんばかりの顔でのび太をつつく。
「のび太くん、言ってる場合じゃないでしょ!あの子たち、多分敵だよ!」
「わ、分かってるよ…」
その様子を見て、ティスは小馬鹿にしたように笑う。
「はん、軟弱そうな野郎だね。ねえ、デスピニス…デスピニス?」
デスピニスは、何故か嬉しそうだった。
「可愛いって言われました…褒められました…」
「…よかったね」
「はい、よかったです…」
ティスとラリアーは対照的に苦い顔をしていた。例えるなら、トレイで用を済ませた後で紙がないことに気付いたような
顔だ。それでもラリアーは何とか気を取り直し、
「…あなたたちが、ギガゾンビ様の敵ですね?」
「ギガゾンビ―――!やっぱり、君たちもアヤカシとおんなじで、あいつの手下か!」
「その通りだよ―――ただし」
ティスが答え、その瞬間には既にのび太の懐にまで入り込んでいた。
「―――っ!?」
目を剥く間もないスピード。そして、腹部に疾く、重い一撃を受けた。
「うぐっ…」
吹っ飛ばされ、呻くのび太を見下ろし、ティスは笑う。
子供らしく、無邪気な―――それ故に、残酷な笑みを。
それは蝶々の羽をむしる子供の笑顔だ。
「ただし―――あたいたちをアヤカシみたいな雑魚と一緒にされたら、困っちゃうんだよね」
「野比のび太―――それにドラえもん。あなたたちのことは知っています。かつて、ギガゾンビ様と敵対した者たち。
そうですね?」
ラリアーがティスの側に駆け寄り、言う。
「さっき褒めてくれたのは嬉しいです…だけど、ギガゾンビ様の敵であるあなたたちの事は、大嫌いです」
デスピニスも二人と並ぶ。三人は異口同音に言い放った。
「「「ギガゾンビ様のために―――死んでもらう」」」
顔だ。それでもラリアーは何とか気を取り直し、
「…あなたたちが、ギガゾンビ様の敵ですね?」
「ギガゾンビ―――!やっぱり、君たちもアヤカシとおんなじで、あいつの手下か!」
「その通りだよ―――ただし」
ティスが答え、その瞬間には既にのび太の懐にまで入り込んでいた。
「―――っ!?」
目を剥く間もないスピード。そして、腹部に疾く、重い一撃を受けた。
「うぐっ…」
吹っ飛ばされ、呻くのび太を見下ろし、ティスは笑う。
子供らしく、無邪気な―――それ故に、残酷な笑みを。
それは蝶々の羽をむしる子供の笑顔だ。
「ただし―――あたいたちをアヤカシみたいな雑魚と一緒にされたら、困っちゃうんだよね」
「野比のび太―――それにドラえもん。あなたたちのことは知っています。かつて、ギガゾンビ様と敵対した者たち。
そうですね?」
ラリアーがティスの側に駆け寄り、言う。
「さっき褒めてくれたのは嬉しいです…だけど、ギガゾンビ様の敵であるあなたたちの事は、大嫌いです」
デスピニスも二人と並ぶ。三人は異口同音に言い放った。
「「「ギガゾンビ様のために―――死んでもらう」」」
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