『復活のビート Part3 ③』
「ったくよ……なんで朝っぱらから……」
「ぼやかないぼやかない」
朝の並木道を、二人の男が歩いていた。
片方は不機嫌が黒のスーツを着て歩いているような、髪を短く切りそろえた大男で、
もう片方は暢気さが滲み出ている、大男よりは幾分趣味のいい服装の、無造作に長めの髪を流している優男風だった。
「頑張ってお仕事しないとねー。ねー、お父さん」
「『お父さん』はやめろと何度も言ってるだろーが! てめぇの脳ミソは藁かなんかか!?」
怒鳴る大男の剣幕を受け流し、優男がへらへら笑う。
「もー、黒ぴーってばホント怒りんぼー」
「この──っ」
こめかみをぴくぴくさせながら優男の胸倉を掴むのへ、その険悪な空気にそぐわない能天気な声が響き渡った。
「あー! 黒鋼がファイをいじめてるー! いーけないんだ、いけないんだー! せーんせーに言ってやろー!」
「……だから俺らがその『先生』になるんだろーが!」
大男──黒鋼はその声の主へ振り返る。
奇妙なことに、UFOキャッチャーの景品でありそうな、真っ白でふかふかのぬいぐるみが宙に浮かんでいた。
そしてそのぬいぐるみがいきなり口を利く。
「黒鋼、先生になるの!? じゃあモコナも先生になる!」
「白まんじゅうがなにを教える気だ、ああ!?」
すると、モコナ──ぬいぐるみでも白まんじゅうでもなく──は、優男の胸の中に飛び込む。
「えーん、黒鋼がいじめるよー。ファイも黒鋼にいじめられたのー?」
「そーだよー。もー、悪いお父さんだよねー」
「家庭内暴力?」
「モコナは難しい言葉を知ってるね。よしよし、お母さんが叱っておくねー。──ダメだぞ、めっ」
緩みきった笑顔でモコナを撫でなでするファイに、黒鋼は脱力感を露わにがっくり肩を落とした。
「てめぇら……いつか殺す……」
そんな黒鋼をよそに、ファイがモコナに訊ねる。
「それでどうしたの、モコナ? 今日はサクラちゃんや小狼くんと一緒に学校に来るんじゃなかったの?」
その言葉がきっかけとなり、モコナの額の宝石がわずかに輝く。
そしてモコナの小さな口がありえないくらいに大きく開かれ、さらにありえないことに、
モコナの大きさと同じ体積くらいの直方体をそこから吐き出された。しかも二つも。
「二人とも、お弁当忘れた! だからモコナが届けにきた!」
「わー、ありがとうモコナ」
「ほめてほめてー」
「んー、モコナはいい子だねー。……ほらほら黒ぽん、モコナにお礼は?」
「……ああ? 知るか」
普通の人間だったら恐怖に身をすくませてもおかしくない黒鋼の狂相も、ファイとモコナにはまったく通用しないようで、
「モコナ知ってる! こーゆーの、『恩知らず』って言うの! 黒鋼、恩知らず!」
「そーだそーだ。黒ぴょんは恩知らずー」
ノリノリで「恩知らず」とコーラスを始めた一人と一匹に、黒鋼が再びキレかけたその時だった。
「──っ!」
ただならぬ気配を察知した黒鋼がファイの身体を突き飛ばす。
その瞬間、鈍い音を立ててレンガ造りの歩道にジュラルミンの矢が突き刺さった。
その凶器を、その攻撃の意志を悟ったファイもさすがに顔をわずかに引き締める。
黒鋼と背中合わせに立ち、全方位をお互いにカバーして襲撃者の姿を探す。
「見えたか?」
「んー、ちょっと分かんないー。矢の方向からしてこっちらへんだとは思うけどー」
「……複数だな。あっちこっちから殺気を飛ばしていやがる」
「この国に来たときに襲ってきたのと同じ人たちかなー?」
「さあな。──来るぞ!」
二人が同時に飛び、その元いた位置に矢が何本も生える。
飛んでくる金属性の矢を素手で打ち落としつつ、黒鋼は襲撃者の気配の変化を探る。
徐々に近づいていた。
遠距離からの狙撃ではダメージを与えられないことを知り、直接的な近接戦闘に持ち込むつもりだろう。
つまり、回避不可能な矢の雨を降らせるほどの大規模なグループではないようだ。
なら一人ずつ潰す──黒鋼はそう判断し、ファイから離れる。
「白まんじゅうの面倒みておけよ!」
「おっけーお父さん」
「『お父さん』はやめろ!」
ひらひらと器用に矢をかわしながら親指を立ててみせるファイを怒鳴りつけ、黒鋼はまず一人目の気配の元へ駆け寄る。
そいつは並木の上にいた。黒鋼の見たことのない弓のような装置──ボウガンをその手に携えていた。
急接近する黒鋼に驚くことなく、そいつは極めて冷静な手つきで矢を繰り出す。
ボウガンの適正な有効距離に侵入したことで、さすがにかわしきれず、一本の矢が黒鋼の首を掠めた。
「いい狙いしてるじゃねえか!」
首筋から血を垂れさせながらも、黒鋼は構わず木に駆け上り、そいつを殴り飛ばす。
足場にした枝から、その向かいの木に立っている別のやつと目があった。
そいつはすでに黒鋼に狙いをつけてトリガーに指を掛けていた。
だが、矢を発射する前に「ぐっ」とうめいて肩を押さえ、そのまま木から落ちる。
下を見ると、地面のから回収した矢を何本も持つファイが「やっほー」と手を振っていた。
「余計なことをしやがって」
忌々しげに呟く黒鋼だったが、その顔はあまり嫌そうな感じではなかった。
──笛の音がした。
それを合図に、今までどこに隠れていたのか、ぞろぞろと人影が湧き出てくる。
そのどいつもが同じような服装だった。ただ、男と女とでは全く違っている。
(『学校』の制服ってやつだな……小僧と姫が今朝着ていたやつだ)
黒鋼は目でファイに合図すると、木の上から並木道に降り立った。警戒しながら、再びファイと背中合わせに立つ。
襲撃者はおよそ十四、五人。どれもがボウガンやらナイフやらで武装していた。
だが、そんなことよりも黒鋼の気を引いたのは──。
「気にいらねえな、あの『目』」
「どーしたの、黒にゃん」
「あいつら、小僧や姫と同じくらいの年頃だ……それにしちゃあ、『目』に光がねえ。
あのくらいのガキっつったら、良くも悪くも確固たる『意』をそこに宿しているはずだ」
かつての自分の姿を思い出しながら、黒鋼はその見解を述べるが。
「ああ、なるほどねー。でも──それはどうだろうね──」
などと、ファイは肯定してるのか否定してるのかよく分からない言葉を返した。
そいつらは陣形を組み、じりじりと距離を狭めてくる。それは獣の動作にも似ていた。
「白まんじゅう! 刀をよこせ!」
「いいのー? あんま刀を振り回してるとお巡りさんに怒られるって露伴先生に言われたでしょー?」
「知るかよ。先に向こうが抜いてるんだ。警察だかなんだか知らねえが文句は言わせねえ」
この国のシステムを考えるにそれはさすがに無理のある発言だったが、
それを突っ込めるほど『常識的』な人間はこの場にいなかった。
「いいから刀!」
「う、うん!」
ファイの懐に隠れていたモコナが顔を出し、先ほど弁当箱を出したときのように口を大きく広げる。だが。
二人と一匹を囲む陣形が、いきなり崩れた。そのことを訝しむ間もなく、その理由をも知る。
いや、今まで『それ』が起こらなかったことのほうが不思議だった。
「……なにをしているんですか?」
そう──無関係者の目撃、である。
崩れた陣形の穴の向こうに、一人の少年が立っていた。
控えめに言ってもかなりの美少年で、もっと余裕のある状況だったら、ファイなどは「ひゅー」とか言っていただろう。
戸惑うように、その致命的なまでに奇妙で不審な集団を見ていた。
「おいそこの! 逃げろ!」
思わず、黒鋼は叫んでいた。
「はあ?」
少年が訳の分からない、といったふうに、気弱に首を傾げてみせる。
そうしている間にも、崩れた陣形のそもそもの理由──襲撃者の一部が、少年の口を封じるために彼に接近していた。
「ちっ!」
モコナに刀を急かすのすら惜しく、黒鋼は襲撃者たちの間を飛び越えて少年へ向かって失踪する。
(間に合わねえか!?)
内心で舌打ちし、だがそれでもさらに足を速める黒鋼の目の前で、
「……僕は、『なにをしている』と聞いているんだがな」
少年の目がわずかに細められ、そこに情け容赦のない冷たい色が浮かび上がる。
そして、数々の修羅場で鳴らした黒鋼ですら目を疑うような光景が起きた。
少年に襲い掛かっていた襲撃者の一人が、「ぐぎゃあ」という音──それは声ではなく、
あくまで肉体的な反応によって肺から搾り出された音だった──とともに、
爆散した。
糸の切れた人形のようにずり落ちるそいつの顔の辺りには、少年の手がかざされていた。
「僕を襲った、ということは僕の敵だ。つまり──」
淡々と述べる少年の口調は冷え切っていて、まるで人間味を感じさせない、そういう口調だった。
そして黒鋼は耳をも疑う。
「『統和機構』の追っ手には見えないから──『パンドラ』に予言された、『羽を追うもの』の関係者ということだな」
──『羽』、そう言った。
「てめえ……何者だ」
「僕かい? 名乗る必要もないが……まあいいさ。僕の名前は天色優だ。君たちも『羽を追うもの』なのか?」
少年──天色優は、黒鋼を見据えながら、そう問うた。
「ぼやかないぼやかない」
朝の並木道を、二人の男が歩いていた。
片方は不機嫌が黒のスーツを着て歩いているような、髪を短く切りそろえた大男で、
もう片方は暢気さが滲み出ている、大男よりは幾分趣味のいい服装の、無造作に長めの髪を流している優男風だった。
「頑張ってお仕事しないとねー。ねー、お父さん」
「『お父さん』はやめろと何度も言ってるだろーが! てめぇの脳ミソは藁かなんかか!?」
怒鳴る大男の剣幕を受け流し、優男がへらへら笑う。
「もー、黒ぴーってばホント怒りんぼー」
「この──っ」
こめかみをぴくぴくさせながら優男の胸倉を掴むのへ、その険悪な空気にそぐわない能天気な声が響き渡った。
「あー! 黒鋼がファイをいじめてるー! いーけないんだ、いけないんだー! せーんせーに言ってやろー!」
「……だから俺らがその『先生』になるんだろーが!」
大男──黒鋼はその声の主へ振り返る。
奇妙なことに、UFOキャッチャーの景品でありそうな、真っ白でふかふかのぬいぐるみが宙に浮かんでいた。
そしてそのぬいぐるみがいきなり口を利く。
「黒鋼、先生になるの!? じゃあモコナも先生になる!」
「白まんじゅうがなにを教える気だ、ああ!?」
すると、モコナ──ぬいぐるみでも白まんじゅうでもなく──は、優男の胸の中に飛び込む。
「えーん、黒鋼がいじめるよー。ファイも黒鋼にいじめられたのー?」
「そーだよー。もー、悪いお父さんだよねー」
「家庭内暴力?」
「モコナは難しい言葉を知ってるね。よしよし、お母さんが叱っておくねー。──ダメだぞ、めっ」
緩みきった笑顔でモコナを撫でなでするファイに、黒鋼は脱力感を露わにがっくり肩を落とした。
「てめぇら……いつか殺す……」
そんな黒鋼をよそに、ファイがモコナに訊ねる。
「それでどうしたの、モコナ? 今日はサクラちゃんや小狼くんと一緒に学校に来るんじゃなかったの?」
その言葉がきっかけとなり、モコナの額の宝石がわずかに輝く。
そしてモコナの小さな口がありえないくらいに大きく開かれ、さらにありえないことに、
モコナの大きさと同じ体積くらいの直方体をそこから吐き出された。しかも二つも。
「二人とも、お弁当忘れた! だからモコナが届けにきた!」
「わー、ありがとうモコナ」
「ほめてほめてー」
「んー、モコナはいい子だねー。……ほらほら黒ぽん、モコナにお礼は?」
「……ああ? 知るか」
普通の人間だったら恐怖に身をすくませてもおかしくない黒鋼の狂相も、ファイとモコナにはまったく通用しないようで、
「モコナ知ってる! こーゆーの、『恩知らず』って言うの! 黒鋼、恩知らず!」
「そーだそーだ。黒ぴょんは恩知らずー」
ノリノリで「恩知らず」とコーラスを始めた一人と一匹に、黒鋼が再びキレかけたその時だった。
「──っ!」
ただならぬ気配を察知した黒鋼がファイの身体を突き飛ばす。
その瞬間、鈍い音を立ててレンガ造りの歩道にジュラルミンの矢が突き刺さった。
その凶器を、その攻撃の意志を悟ったファイもさすがに顔をわずかに引き締める。
黒鋼と背中合わせに立ち、全方位をお互いにカバーして襲撃者の姿を探す。
「見えたか?」
「んー、ちょっと分かんないー。矢の方向からしてこっちらへんだとは思うけどー」
「……複数だな。あっちこっちから殺気を飛ばしていやがる」
「この国に来たときに襲ってきたのと同じ人たちかなー?」
「さあな。──来るぞ!」
二人が同時に飛び、その元いた位置に矢が何本も生える。
飛んでくる金属性の矢を素手で打ち落としつつ、黒鋼は襲撃者の気配の変化を探る。
徐々に近づいていた。
遠距離からの狙撃ではダメージを与えられないことを知り、直接的な近接戦闘に持ち込むつもりだろう。
つまり、回避不可能な矢の雨を降らせるほどの大規模なグループではないようだ。
なら一人ずつ潰す──黒鋼はそう判断し、ファイから離れる。
「白まんじゅうの面倒みておけよ!」
「おっけーお父さん」
「『お父さん』はやめろ!」
ひらひらと器用に矢をかわしながら親指を立ててみせるファイを怒鳴りつけ、黒鋼はまず一人目の気配の元へ駆け寄る。
そいつは並木の上にいた。黒鋼の見たことのない弓のような装置──ボウガンをその手に携えていた。
急接近する黒鋼に驚くことなく、そいつは極めて冷静な手つきで矢を繰り出す。
ボウガンの適正な有効距離に侵入したことで、さすがにかわしきれず、一本の矢が黒鋼の首を掠めた。
「いい狙いしてるじゃねえか!」
首筋から血を垂れさせながらも、黒鋼は構わず木に駆け上り、そいつを殴り飛ばす。
足場にした枝から、その向かいの木に立っている別のやつと目があった。
そいつはすでに黒鋼に狙いをつけてトリガーに指を掛けていた。
だが、矢を発射する前に「ぐっ」とうめいて肩を押さえ、そのまま木から落ちる。
下を見ると、地面のから回収した矢を何本も持つファイが「やっほー」と手を振っていた。
「余計なことをしやがって」
忌々しげに呟く黒鋼だったが、その顔はあまり嫌そうな感じではなかった。
──笛の音がした。
それを合図に、今までどこに隠れていたのか、ぞろぞろと人影が湧き出てくる。
そのどいつもが同じような服装だった。ただ、男と女とでは全く違っている。
(『学校』の制服ってやつだな……小僧と姫が今朝着ていたやつだ)
黒鋼は目でファイに合図すると、木の上から並木道に降り立った。警戒しながら、再びファイと背中合わせに立つ。
襲撃者はおよそ十四、五人。どれもがボウガンやらナイフやらで武装していた。
だが、そんなことよりも黒鋼の気を引いたのは──。
「気にいらねえな、あの『目』」
「どーしたの、黒にゃん」
「あいつら、小僧や姫と同じくらいの年頃だ……それにしちゃあ、『目』に光がねえ。
あのくらいのガキっつったら、良くも悪くも確固たる『意』をそこに宿しているはずだ」
かつての自分の姿を思い出しながら、黒鋼はその見解を述べるが。
「ああ、なるほどねー。でも──それはどうだろうね──」
などと、ファイは肯定してるのか否定してるのかよく分からない言葉を返した。
そいつらは陣形を組み、じりじりと距離を狭めてくる。それは獣の動作にも似ていた。
「白まんじゅう! 刀をよこせ!」
「いいのー? あんま刀を振り回してるとお巡りさんに怒られるって露伴先生に言われたでしょー?」
「知るかよ。先に向こうが抜いてるんだ。警察だかなんだか知らねえが文句は言わせねえ」
この国のシステムを考えるにそれはさすがに無理のある発言だったが、
それを突っ込めるほど『常識的』な人間はこの場にいなかった。
「いいから刀!」
「う、うん!」
ファイの懐に隠れていたモコナが顔を出し、先ほど弁当箱を出したときのように口を大きく広げる。だが。
二人と一匹を囲む陣形が、いきなり崩れた。そのことを訝しむ間もなく、その理由をも知る。
いや、今まで『それ』が起こらなかったことのほうが不思議だった。
「……なにをしているんですか?」
そう──無関係者の目撃、である。
崩れた陣形の穴の向こうに、一人の少年が立っていた。
控えめに言ってもかなりの美少年で、もっと余裕のある状況だったら、ファイなどは「ひゅー」とか言っていただろう。
戸惑うように、その致命的なまでに奇妙で不審な集団を見ていた。
「おいそこの! 逃げろ!」
思わず、黒鋼は叫んでいた。
「はあ?」
少年が訳の分からない、といったふうに、気弱に首を傾げてみせる。
そうしている間にも、崩れた陣形のそもそもの理由──襲撃者の一部が、少年の口を封じるために彼に接近していた。
「ちっ!」
モコナに刀を急かすのすら惜しく、黒鋼は襲撃者たちの間を飛び越えて少年へ向かって失踪する。
(間に合わねえか!?)
内心で舌打ちし、だがそれでもさらに足を速める黒鋼の目の前で、
「……僕は、『なにをしている』と聞いているんだがな」
少年の目がわずかに細められ、そこに情け容赦のない冷たい色が浮かび上がる。
そして、数々の修羅場で鳴らした黒鋼ですら目を疑うような光景が起きた。
少年に襲い掛かっていた襲撃者の一人が、「ぐぎゃあ」という音──それは声ではなく、
あくまで肉体的な反応によって肺から搾り出された音だった──とともに、
爆散した。
糸の切れた人形のようにずり落ちるそいつの顔の辺りには、少年の手がかざされていた。
「僕を襲った、ということは僕の敵だ。つまり──」
淡々と述べる少年の口調は冷え切っていて、まるで人間味を感じさせない、そういう口調だった。
そして黒鋼は耳をも疑う。
「『統和機構』の追っ手には見えないから──『パンドラ』に予言された、『羽を追うもの』の関係者ということだな」
──『羽』、そう言った。
「てめえ……何者だ」
「僕かい? 名乗る必要もないが……まあいいさ。僕の名前は天色優だ。君たちも『羽を追うもの』なのか?」
少年──天色優は、黒鋼を見据えながら、そう問うた。