木の葉の里外れにて、いの、チョウジと合流したシカマルは、任務遂行のプランを二人に話して聞かせる。
「色々と考えてはみたんだが……割合、工夫のない作戦になっちまった」
その言葉の通り、シカマルの立てた作戦はシンプルなものだった。
スパイと諜報部隊の接触予定ポイントの近くで、変化の術で動物などに扮して待機。
その際、三人はチョウジ、シカマルといのの二手に別れて、ポイントを挟み撃ちするような陣形をとる。
そして、スパイが諜報部隊と接触し、動かぬ証拠となる巻物を取り出すのを確認したら、行動開始。
チョウジが起爆札と煙玉で敵の注意を逸らし、その隙にシカマルといのが逆方向から奇襲を仕掛ける。
煙に乗じて巻物を奪い、木の葉に潜入しているスパイと情報を回収しに来た諜報員を、それぞれ一人を目安に拘束する。
「それから、何らかのミスで巻物の奪取に失敗、敵が巻物を所持したまま散開するなど、俺たちが別行動を余儀なくされる場面もあるかもしれない」
実際、音忍に唆されて里を抜けたサスケを奪還する任務では、敵の足止めにより、戦力が分断された。
サスケに追い縋る為――任務を成功させる為に、仲間たちはいずれ劣らぬ強敵揃いである音の四人集と、一対一の勝負をする羽目になった。
病み上がりの身体で駆けつけてくれたリー。それから砂隠れの我愛羅、カンクロウ、テマリの増援がなければ、全員の生還は危うかっただろう。
あの時、小隊長として指揮を任されておきながら仲間を危機に晒してしまった記憶は、苦い経験としてシカマルの中に未だ残っている。
「そこで、だ。めんどくせーけど、簡単な変化対策だ。ないよりマシ、程度のものだから、くれぐれも過信しないでくれよ」
そう前置きしてから、シカマルは説明を始める。
「色々と考えてはみたんだが……割合、工夫のない作戦になっちまった」
その言葉の通り、シカマルの立てた作戦はシンプルなものだった。
スパイと諜報部隊の接触予定ポイントの近くで、変化の術で動物などに扮して待機。
その際、三人はチョウジ、シカマルといのの二手に別れて、ポイントを挟み撃ちするような陣形をとる。
そして、スパイが諜報部隊と接触し、動かぬ証拠となる巻物を取り出すのを確認したら、行動開始。
チョウジが起爆札と煙玉で敵の注意を逸らし、その隙にシカマルといのが逆方向から奇襲を仕掛ける。
煙に乗じて巻物を奪い、木の葉に潜入しているスパイと情報を回収しに来た諜報員を、それぞれ一人を目安に拘束する。
「それから、何らかのミスで巻物の奪取に失敗、敵が巻物を所持したまま散開するなど、俺たちが別行動を余儀なくされる場面もあるかもしれない」
実際、音忍に唆されて里を抜けたサスケを奪還する任務では、敵の足止めにより、戦力が分断された。
サスケに追い縋る為――任務を成功させる為に、仲間たちはいずれ劣らぬ強敵揃いである音の四人集と、一対一の勝負をする羽目になった。
病み上がりの身体で駆けつけてくれたリー。それから砂隠れの我愛羅、カンクロウ、テマリの増援がなければ、全員の生還は危うかっただろう。
あの時、小隊長として指揮を任されておきながら仲間を危機に晒してしまった記憶は、苦い経験としてシカマルの中に未だ残っている。
「そこで、だ。めんどくせーけど、簡単な変化対策だ。ないよりマシ、程度のものだから、くれぐれも過信しないでくれよ」
そう前置きしてから、シカマルは説明を始める。
変化の術は忍者アカデミーの必修科目にも据えられている、基本中の基本忍術だ。
しかし、基本故にその汎用性は高く、使い方次第では、下手な禁術よりも強力な術となり得る可能性を秘めている。
サスケの写輪眼、ネジ、ヒナタの白眼など、特殊な童術を持つ者なら、変化の術を見破るのは容易いのだが、今回の任務では童術を持つメンバーはいない。
熟練した達人レベルの忍者であればその所作、チャクラの流れなどから看破出来る場合もままあるらしいが
それを今の第十班に求めるのは、流石に酷と言うものだろう。
予め、対応策を持っておくに越したことはない。それがシカマルの判断だった。
「一度離れてから合流する際に、片方が、片手を挙げて宣言することを示してから、適当な数字を言う。数字はいくつでも構わない。
答える側は、その数字から三を引いた数字を答える。八と宣言したら五、五と宣言したら二、と言った具合に。
そして、宣言した側は、答える側の言った数字を、鸚鵡返しに繰り返す。それで終了だ。
要は『マイナス三』が鍵の役目を果たすワケで、それだけ頭に入れておいてくれれば問題ない」
「わかった」
「了解よ」
チョウジといのが、揃って頷く。
「よし、それじゃあ各自、所定の地点で待機。後は予定通りで頼む」
しかし、基本故にその汎用性は高く、使い方次第では、下手な禁術よりも強力な術となり得る可能性を秘めている。
サスケの写輪眼、ネジ、ヒナタの白眼など、特殊な童術を持つ者なら、変化の術を見破るのは容易いのだが、今回の任務では童術を持つメンバーはいない。
熟練した達人レベルの忍者であればその所作、チャクラの流れなどから看破出来る場合もままあるらしいが
それを今の第十班に求めるのは、流石に酷と言うものだろう。
予め、対応策を持っておくに越したことはない。それがシカマルの判断だった。
「一度離れてから合流する際に、片方が、片手を挙げて宣言することを示してから、適当な数字を言う。数字はいくつでも構わない。
答える側は、その数字から三を引いた数字を答える。八と宣言したら五、五と宣言したら二、と言った具合に。
そして、宣言した側は、答える側の言った数字を、鸚鵡返しに繰り返す。それで終了だ。
要は『マイナス三』が鍵の役目を果たすワケで、それだけ頭に入れておいてくれれば問題ない」
「わかった」
「了解よ」
チョウジといのが、揃って頷く。
「よし、それじゃあ各自、所定の地点で待機。後は予定通りで頼む」
「こちらフォルテワン、現在接触予定ポイント付近に到着、どうぞ」
音隠れのシンボルマークが刻まれた額当ての位置を、神経質そうに何度も左手で調節しながら、無線機に向かって語りかける。
目にかかりそうなくらいに前髪を垂らした、どこか暗そうな雰囲気を漂わせる男だ。
彼の名はトウバ。フォルテワンの隊長である。
音隠れのシンボルマークが刻まれた額当ての位置を、神経質そうに何度も左手で調節しながら、無線機に向かって語りかける。
目にかかりそうなくらいに前髪を垂らした、どこか暗そうな雰囲気を漂わせる男だ。
彼の名はトウバ。フォルテワンの隊長である。
今回、音諜報部隊は、フォルテワンとフォルテツー、二つの隊に分かれて行動していた。
トウバ指揮するフォルテワンの役目は、本来諜報活動を専門とする為に戦闘能力に劣るフォルテツーの護衛だった。
フォルテツーに先行して、罠の有無をチェックすると同時に索敵を行い、移動ルートの安全を確保。敵襲とあらば応戦する。
一言で言ってしまうならば、戦闘要員である。
「こちらフォルテツー。了解。周辺に鼠が潜んでいないか、十分な警戒を」
「オーケイ。確認が済み次第、連絡を入れる」
トウバは苦々しげな表情で、無線機のボタンを押す。
ブツリ、と、最後に不快なノイズを耳に響かせて、通信は切れた。
「まったく、あの女は。言われるまでもない……」
トウバは一人愚痴る。任務とは言っても、自分よりも弱い者に顎で使われるのはあまり気分のいいものではなかった。
忍頭である大蛇丸の実力至上主義的な方針に惹かれて、音隠れの里の一員となったトウバにしてみれば、尚更である。
無論、フォルテツーのメンバーとて、ただの木偶坊などではあるまい。
諜報活動においてはフォルテワンを遥かに凌ぐスキルを持っているからこそ、こうして遠方まで出張ってきているのだろう。
しかし、それにしたって、もう少しくらい謙虚な物言いをしてもバチは当たらないというものだ……
トウバがそんなことを考えていると、カイ、ゲンの二人が索敵を終えて戻ってきた。
カイは小柄な少年。ゲンは強面の大男。正に凸凹コンビと呼ぶに相応しい二人だった。
「カイ、ゲン、どうだった。ポイント付近に異常はないな?」
「いえ、それが……」
と、カイは声を潜める。
「僕の『千里眼』によれば、ポイント付近に、変化の術を使用して潜伏している忍が、少なくとも……三人」
カイは、疲れたように目を擦りながら言う。
カイの童術『千里眼』は、血継限界ではなく、特殊な手術によって後天的に身に付けたものだった。
童術としては未完成であり、その分、体にかかる負担は大きい。チャクラ量に余裕があっても、長時間の使用は無理だ。
「ふむ。今回の一件、木の葉に気取られているか。どうしたものかね」
トウバは左手を顎に添えて、ううむ、と唸った。
「なあに、迷うまでもない。つぶしてしまえばよかろう」
「そういうわけにもいきませんよ。もう、敵本陣……木の葉の里は目と鼻の先です。
ここで僕たちが派手に暴れでもすれば、すぐに木の葉から増援がやってくる。そうなってしまっては、任務どころではなくなります」
ゲンの短慮な発言を、カイが諌める。
トウバ指揮するフォルテワンの役目は、本来諜報活動を専門とする為に戦闘能力に劣るフォルテツーの護衛だった。
フォルテツーに先行して、罠の有無をチェックすると同時に索敵を行い、移動ルートの安全を確保。敵襲とあらば応戦する。
一言で言ってしまうならば、戦闘要員である。
「こちらフォルテツー。了解。周辺に鼠が潜んでいないか、十分な警戒を」
「オーケイ。確認が済み次第、連絡を入れる」
トウバは苦々しげな表情で、無線機のボタンを押す。
ブツリ、と、最後に不快なノイズを耳に響かせて、通信は切れた。
「まったく、あの女は。言われるまでもない……」
トウバは一人愚痴る。任務とは言っても、自分よりも弱い者に顎で使われるのはあまり気分のいいものではなかった。
忍頭である大蛇丸の実力至上主義的な方針に惹かれて、音隠れの里の一員となったトウバにしてみれば、尚更である。
無論、フォルテツーのメンバーとて、ただの木偶坊などではあるまい。
諜報活動においてはフォルテワンを遥かに凌ぐスキルを持っているからこそ、こうして遠方まで出張ってきているのだろう。
しかし、それにしたって、もう少しくらい謙虚な物言いをしてもバチは当たらないというものだ……
トウバがそんなことを考えていると、カイ、ゲンの二人が索敵を終えて戻ってきた。
カイは小柄な少年。ゲンは強面の大男。正に凸凹コンビと呼ぶに相応しい二人だった。
「カイ、ゲン、どうだった。ポイント付近に異常はないな?」
「いえ、それが……」
と、カイは声を潜める。
「僕の『千里眼』によれば、ポイント付近に、変化の術を使用して潜伏している忍が、少なくとも……三人」
カイは、疲れたように目を擦りながら言う。
カイの童術『千里眼』は、血継限界ではなく、特殊な手術によって後天的に身に付けたものだった。
童術としては未完成であり、その分、体にかかる負担は大きい。チャクラ量に余裕があっても、長時間の使用は無理だ。
「ふむ。今回の一件、木の葉に気取られているか。どうしたものかね」
トウバは左手を顎に添えて、ううむ、と唸った。
「なあに、迷うまでもない。つぶしてしまえばよかろう」
「そういうわけにもいきませんよ。もう、敵本陣……木の葉の里は目と鼻の先です。
ここで僕たちが派手に暴れでもすれば、すぐに木の葉から増援がやってくる。そうなってしまっては、任務どころではなくなります」
ゲンの短慮な発言を、カイが諌める。
「かと言って、予定通り接触するのも、みすみす罠に飛び込むようなもの、か……」
トウバは少しばかり考えてから、言葉を続けた。
「敵さんはおそらく、我々を接触させておいて、そこを少数精鋭で一網打尽にする算段だろう。
警戒しつつも、表向きは予定通りに振舞い、彼等の存在に気付いていないように見せかける。
そして、敵さんが仕掛けてくると同時に、木の葉への潜入組を引き連れて音隠れへと逃走。今思いつく作戦はそれぐらいか。
前以て覚悟ができているとはいっても、どんな手を用意しているのかもわからない奇襲を凌げるかどうかは、頭が痛い所だが……
少なくとも、こんな場所で正面からやり合うよりは得策であるのは疑う余地がない」
「あの、奇襲の隙をつくのならば、分身体を向かわせてはどうでしょうか?」
カイの提案に、トウバは首を横に振った。
「いいや、小細工はしない。全員本体でポイントに向かう。敵さんにも童術持ちがいるかもしれん。
こちらが分身体であると気付けば、その時点で行動を開始するだろう。
そうすると、状況を把握できていない上に、本体で来る潜入組は格好の的になってしまう。
もし分身体が運良く巻物を受け取れたとしても、本体にたどり着く前に一度でも攻撃を受ければそれでアウトだ」
「なるほど……わかりました」
カイは最もだ、という風に頷く。
それに軽く頷き返してから、トウバはいかにも嫌々といった表情で、懐から無線機を取り出して連絡を入れる。
というのも、今回の任務、その主導権を握っているのはフォルテツーだった。
サポート役に過ぎないトウバの一存では、決定は下せない。
トウバは今までの経緯と自分の作戦を、フォルテツー隊長であるミサキに伝えた。
「了解。隊の安全、任務遂行、どちらの観点から考えても、そうするのが合理的でしょう」
一通り聞き終えると、感情の籠らない女の声がそれだけ告げて、一方的に通信は切られた。
「どうやら、お許しが出たらしい」
トウバは苦笑しながら、カイとゲンに視線を投げ、大袈裟に肩を竦めてみせた。
トウバは少しばかり考えてから、言葉を続けた。
「敵さんはおそらく、我々を接触させておいて、そこを少数精鋭で一網打尽にする算段だろう。
警戒しつつも、表向きは予定通りに振舞い、彼等の存在に気付いていないように見せかける。
そして、敵さんが仕掛けてくると同時に、木の葉への潜入組を引き連れて音隠れへと逃走。今思いつく作戦はそれぐらいか。
前以て覚悟ができているとはいっても、どんな手を用意しているのかもわからない奇襲を凌げるかどうかは、頭が痛い所だが……
少なくとも、こんな場所で正面からやり合うよりは得策であるのは疑う余地がない」
「あの、奇襲の隙をつくのならば、分身体を向かわせてはどうでしょうか?」
カイの提案に、トウバは首を横に振った。
「いいや、小細工はしない。全員本体でポイントに向かう。敵さんにも童術持ちがいるかもしれん。
こちらが分身体であると気付けば、その時点で行動を開始するだろう。
そうすると、状況を把握できていない上に、本体で来る潜入組は格好の的になってしまう。
もし分身体が運良く巻物を受け取れたとしても、本体にたどり着く前に一度でも攻撃を受ければそれでアウトだ」
「なるほど……わかりました」
カイは最もだ、という風に頷く。
それに軽く頷き返してから、トウバはいかにも嫌々といった表情で、懐から無線機を取り出して連絡を入れる。
というのも、今回の任務、その主導権を握っているのはフォルテツーだった。
サポート役に過ぎないトウバの一存では、決定は下せない。
トウバは今までの経緯と自分の作戦を、フォルテツー隊長であるミサキに伝えた。
「了解。隊の安全、任務遂行、どちらの観点から考えても、そうするのが合理的でしょう」
一通り聞き終えると、感情の籠らない女の声がそれだけ告げて、一方的に通信は切られた。
「どうやら、お許しが出たらしい」
トウバは苦笑しながら、カイとゲンに視線を投げ、大袈裟に肩を竦めてみせた。