SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ (今のところ無題)46スレ441氏


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4月20日

長身の男が、窮屈そうに、身体を少しだけ折り曲げ、電車『あねはづる』の窓の外に広がる海を見る。
海面で反射した日光に、薄い緑色の瞳を、少しだけ眩しそうに細めて、視線を横に滑らせる。
その先に、海に浮かぶ、人が作り上げた島があった。
その人の手により、人の為に作られた島の名前は『辰巳ポートアイランド』といった。

駅が近づいてきたのか、あねはづるがだんだんと速度を落としていく。
程なくして、あねはづるは完全にその動きを止めた。
男は、乗客が全員降り切ってから、ゆっくりとモノレールを降りた。
最後まで待った理由は、至極簡単なもので、騒がしいのも、鬱陶しいのも嫌いだからである。

駅から出ると、春の温かい日差しが、男を照らした。

(天気がいいな)

最早身体の一部ともいえる帽子のツバを、親指と人差し指て摘み、クイッと目深に被り直しながら、そう思った。

駅前の広場で暫らく待っていると、事前の資料で確認した、長髪の男が近づいてくる。
確か名前は・・・幾月修司とか言った筈だった。

「いやあ、お待たせしてすみません。空条博士。いや、空条先生の方が良かったかな?
何にせよ、SPW財団の方が、我が月光館学園に興味をお持ち下さるとは・・・。いやあ、感激です。
急なお話でしたので、新学期には間に合いませんでしたが、今日から月光館学園の教師です。
それでは、立ち話もなんですので、早速ご案内いたしましょう」

幾月は長身の男、改め空条承太郎に、喋る間も与えず、手で歩く事を促した。
詳しい話は歩きながらする、という事なのだろうと判断し、承太郎は無言のまま歩き出した。

歩いている間にも、幾月は、学園の成り立ちや建物についての説明などを、行なっていく。
承太郎は内心、『よく喋る男だ』と思ったが、役に立たない話ではないので黙って聞いていた。
一頻り説明した後で、幾月が承太郎に尋ねてくる。

「何かご質問などは?」

承太郎は、少し考えた後で、口を開いた。

「俺はどこで教師をする事になる?」

幾月は、最も大切な事を教えていなかったのだ。思い出したように、手をポンと打つと、幾月は言った。

「ああ、すみません。空条先生には高等部に行って頂きます」

空条承太郎が高校の教師になる。普段の彼を知る人間がいたら、何を考えているんだ、と正気を疑うだろう。
しかし、彼はここで教師をする、いや、しなければならない理由があった。

それは十年前。ちょうど杜王町で、吉良吉影を倒した後の事だった。
ホテルの一室で、何と無しに、時計をちらりと見た時から始まった。

(11時59分か。遅くまでかかったな)

その時、承太郎は海岸で見つけた珍しいヒトデについて、レポートを纏めていた。
すると、急に部屋中の電気が落ちた。停電かと思い、ボーイに電話をかけてみるも、つながらない。

(新手のスタンド使いか?)

警戒しながら部屋の外に出て、階段でロビーまで降りる。
フロントの中を見ると・・・驚いた事に棺が立っている。

(これはスタンド能力、なのか?)

だが何時まで経っても仕掛けてこない。承太郎は覚悟を固めて、ホテルの外に出る事にした。

外に出て、まず気付いたのが、その静かさだ。
動いているものは、自分一人だけではないかと思ってしまうほどに、静寂が支配している。
そして、月が妙に明るく見える。地上の灯が消えると、月や星はこうも輝くものなのか。
承太郎は街に出てみたが、そこにも先ほど見た棺がずらりと並んでいるだけだった。
これほどまで効果を及ぼす能力を持ち、かつ仕掛けてこない敵に、承太郎は得体の知れない恐怖を覚えた。
そろそろ、この奇妙な現象が起きてから一時間は経つ。たった一時間なのにやけに疲れが溜まっている気がする。
承太郎は時計を確認してみたが午前零時丁度を指したまま止まってしまっていた。

(やれやれ、いつの間にか壊れたか?)

どこかで時間が見れないものかと、探してみるが、停電のせいか動いてはいなかった。

「やれやれだぜ・・・」

敵も攻撃してこない、電気は消えて真っ暗。ビルを仰ぎ見ると、その瞬間光が戻った。

「うおっ!?」

あまりの眩しさに、驚きの声をあげる。
街の明かりに慣れてゆっくりと、手を離して見てみれば、先ほどまであった棺は残らず姿を消していた。
その代わりに、何時もと変わらぬように歩いている人の姿があった。
先ほどまで消えていた時計も元に戻り、時間は0時00分を表示している。
自分の腕時計に、再び目を落としてみると、腕時計も何事もなかったかのように時を刻んでいた。

(馬鹿な?あれから数秒しか経っていない訳が無い。
1時間も時を止められる敵がいたとしても、1時間俺が動き続けられるはずが無い。せいぜい5秒だ。
スタンド攻撃ではなかったという事か。つまりこれは・・・)

何らかの現象である。そう結論付けた。
知り合いや、友人のスタンド使いに、話してみたが、彼らはこの時間を認識する事ができなかった。
それがなぜかは解らないが、きっと理由がある事なのだろう、と考えた。
それから、空条承太郎は、25時間目を『空白の1時間』と呼び、1日25時間を生きてきた。


この不可解な現象を解明するためにSPW財団の力を借りながら、色々と調べを進めた。
本来の仕事や、襲ってくるDIOの残党達と戦いながらだったので、あまり捗っているとは言えなかったが。
そして今年に入って、ついに原因と思わしき事件と場所を、見つける事が出来た。
それが『辰巳ポートアイランド』であり、『月光館学園』であった。
巧妙に偽装された、爆発事故。桐条グループとやらが、行なっていた実験。
ここにすべての原因がある、そう確信し、SPW財団の伝を使い、教師として潜入する事に成功したのだ。
幾月は、承太郎からの質問がもう無い事が解ったので、承太郎をつれて高等部の中を案内する事にした。
幾月に付いて廊下を歩いていると、生徒らしき声が聞こえてきた。

「うっわぁ、スッゲェデケェ!スッゲェマッチョ!
見た事ねぇな。新手の体育教師かぁ?ゆかりッチはどう思う?」

ちらりと目をやれば、帽子に髭の生徒が騒いでいるのが見えた。その周りに、女子と男子が一名ずつ。
今度は『ゆかりッチ』と呼ばれた女子が口を開く。恐らく名前が『ゆかり』と言うのだろう。

「順平!ゆかりッチって言うなっつの!う~ん。体育って感じはしないかな?
数学とかじゃない?君はどの教科の先生だと思った?」

どうやら、ヒゲ帽子は『順平』というらしい。
ゆかりは前髪で顔の半分を隠した男子生徒に話を振った。

「・・・どうでもいい」

興味がなさそうな返事を返されて、ゆかりは困ったような顔をした。
順平もやれやれといった感じで口を開く。

「・・・お前、冷めてるよな」

承太郎は自分がされたのは新任教師の品定めだと理解した。
自分がやった覚えは無いが、周りでやっていた記憶がある。20年前の記憶だが。
こうして、空条承太郎は月光館学園での最初の一日を過ごした。
教師達との顔合わせなどがあったが、それは省略しよう。
時計の針は淀み無く進み、後数分で午前零時丁度を指す。
承太郎はポートアイランド駅から学園へと続く道を歩いていた。

昨日の『空白の時間』にこの学園の辺りから奇妙な塔が伸びているのを見たからだ。
前衛芸術のような外観の天高くそびえる塔。
まるでバベルの塔のようで、神々しくさえあった。

承太郎は直感的に”ここには何かある”と感じた。
と言うよりか、その光景を目の当たりにして、何も無いと考える方が難しいだろう。
正門の方に進んでいくと、零時間近だというのに人影がある。

承太郎は物陰に身を隠し、様子を伺った。
そこには昼間見た3人と、そのほかに2人。
赤いベストを着た男と、ロングブーツを履いた女がいた。

(やれやれ、肝試しには季節が早すぎるぜ。
ここは何か別の目的を持ってここに来たと見るべきか。
全く、初日からヘヴィな事になりそうだぜ・・・)

承太郎は物陰から姿を現すと、なにやら話し合っている5人に声を掛けた。

「おい。こんな時間に何をしている?」


その瞬間、時計が午前零時を指し、それまで一秒も休まず仕事に励んでいた時計が1時間の休みを取る。
月の輝く空を突くように、塔が伸びていく。唐突に現われた塔と男に驚きながら、順平が声を上げた。

「なんなんだよ、これ!俺らの学校、どこに行っちまったんだよ!?っつか、誰だよ、アンタ!いや、昼間見たけど!」

順平を制するようにロングブーツの女が進み出てくる。

「落ち着け、伊織!・・・申し訳ない、今日赴任してきた空条先生ですね?私は、桐条美鶴。
月光館学園を経営する、桐条グループの関係者です。ですから、今日赴任された先生の事を存じていた訳です」

承太郎は桐条と名乗った少女の顔をよく見る。桐条グループのトップ、桐条武治の一人娘、だったか。
この状況で冷静さを保てるとは、大したものだ、そんな風に思ってから口を開く。

「一つ聞くが、お前たちは目的を持ってこの場所に来ていたな?
ということは、今目の前で起った事も、今過ごしている奇妙な時間も知っているな?」

一部知らなかった者がいるようだが、この際それは除外だ。承太郎の問いに美鶴は答える。

「はい・・・。我々はこの時間を、『影時間』、そして、目の前にそびえる塔を『タルタロス』と呼んでいます。」

これが普通の時間で、普通の大人なら、彼女の言った事を笑い飛ばすかもしれない。
だが、空条承太郎は、そんな事はしなかった。恐らく、影時間ではなくとも、しなかっただろう。
承太郎自身が、高校2年生の時に、邪悪の化身とも言うべきDIOと、叔父に当る仗助は、高校1年の時に殺人鬼吉良と闘っている。
『そういう事もある』、たったそれだけの事を知っているだけで、目の前で起っている事を信じる事が出来た。

「分かった、信じよう。ところで、お前たちはこの塔に用があって来たんだろう?影時間は長くない。
詳しい事はそっちの方がよく知っているようだ。歩きながらでも話そう」
こうして承太郎と月光館の生徒5人はタルタロスに足を踏み入れることになった。
この瞬間、止まった時間の中で運命は動き出す。世界の歯車を止める者がいても、運命の歯車だけは止められる者などいないのだ。
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