「鳥型だと……!」
鋭い声がかかった。鉤爪は見た。森から広場へ躍り込んでくる影を。ひどくがっちりとした大柄の男だ。彼はぎょろりとし
た三白眼の下で鋭い犬歯も露に吠えている。待て。勝負しろ。ありきたりの制止をひっきりなしに上げている彼はいうまで
もなく先ほど総角に昏倒させられた戦士──… 剣持真希士。
鋭い声がかかった。鉤爪は見た。森から広場へ躍り込んでくる影を。ひどくがっちりとした大柄の男だ。彼はぎょろりとし
た三白眼の下で鋭い犬歯も露に吠えている。待て。勝負しろ。ありきたりの制止をひっきりなしに上げている彼はいうまで
もなく先ほど総角に昏倒させられた戦士──… 剣持真希士。
「やはり遭遇していたか。怪我は?」
巨体に見合わぬ軽捷さで奈落を飛び越えてきた真希士、屈託ない笑みを浮かべた。
「ダイジョーブ! タンコブできたけどオレ様まだまだ戦える!」
なるほど言葉どおり後頭部にはひどく戯画的な瘤がある。それを彼は『三本目の腕』でさすってもいる。無駄な使い方を…
…鉤爪の口から嘆息が漏れた。
(西洋大剣(ツヴァイハンダー)の武装錬金、アンシャッター・ブラザーフッド。本来その三本目の腕は剣を持ち替え相手の
虚を突くためのものだろうに)
「待ちやがれ鳥型! 待ちやがれー!!」
背後から立ち上る白けの気配もなんのその、西洋大剣の戦士はガントレットで強固に覆われた両腕を駄駄っ子のように
振りながら遠ざかる玉城に吠えている。右手に握った剣──これは大人の背丈ぐらいあり、両手持ちの剣の中では最大級
のものだった──を振りかざすたび巻き起こる真空の風圧は、しかし玉城に届かない。ただ樹林が巻き添えを喰い未来の肥
料候補たる翠の器官が散るのみだ。
「だああああああああっ! 戻れ! ……畜生。駄目だ無理だ。こうなりゃ走って──…」
「待つのはお前だ。剣持真希士」
「でも! 待たなきゃアイツらが誰かの楽園を!」
真希士、と呼ばれた戦士はクラウチングスタートの姿勢のまま首をねじ向けた。鉤爪を見る瞳には焦りがアリアリと浮かん
でいる。
「落ちつけ。防人戦士長の言葉を思い出せ」
一瞬きょとりと大きな瞳を点にした真希士はやがて無念そうに構えを解いて地面を見た。牙噛み縛りつつも露骨に肩を
落している姿は主人に怒られた大型犬のようである。
「ダイジョーブ! タンコブできたけどオレ様まだまだ戦える!」
なるほど言葉どおり後頭部にはひどく戯画的な瘤がある。それを彼は『三本目の腕』でさすってもいる。無駄な使い方を…
…鉤爪の口から嘆息が漏れた。
(西洋大剣(ツヴァイハンダー)の武装錬金、アンシャッター・ブラザーフッド。本来その三本目の腕は剣を持ち替え相手の
虚を突くためのものだろうに)
「待ちやがれ鳥型! 待ちやがれー!!」
背後から立ち上る白けの気配もなんのその、西洋大剣の戦士はガントレットで強固に覆われた両腕を駄駄っ子のように
振りながら遠ざかる玉城に吠えている。右手に握った剣──これは大人の背丈ぐらいあり、両手持ちの剣の中では最大級
のものだった──を振りかざすたび巻き起こる真空の風圧は、しかし玉城に届かない。ただ樹林が巻き添えを喰い未来の肥
料候補たる翠の器官が散るのみだ。
「だああああああああっ! 戻れ! ……畜生。駄目だ無理だ。こうなりゃ走って──…」
「待つのはお前だ。剣持真希士」
「でも! 待たなきゃアイツらが誰かの楽園を!」
真希士、と呼ばれた戦士はクラウチングスタートの姿勢のまま首をねじ向けた。鉤爪を見る瞳には焦りがアリアリと浮かん
でいる。
「落ちつけ。防人戦士長の言葉を思い出せ」
一瞬きょとりと大きな瞳を点にした真希士はやがて無念そうに構えを解いて地面を見た。牙噛み縛りつつも露骨に肩を
落している姿は主人に怒られた大型犬のようである。
やがて世にも情けない声が漏れた。
「緊張と、緩和」
「そうだ。元のターゲットは殲滅されている。核鉄も手に入れた。新手はたった4体で構成員50体の共同体を殲滅したホムンクル
スどもと『1体でそれができる』鳥型」
「ん? 俺が見たのは3体……そうかこっちにも1体。……でも、鳥型が残党じゃないって根拠は?」
「俺がきたときすでにココ(共同体の根城)は蛻の空だった。いたのはイヌと鳥型だけ。他の死骸はなかった。よって殲滅さ
れたのは昨晩から今朝早くとみるべき」
「確かに。あいつら死ぬとすぐ消滅するからな」
「もしあの鳥型が最後の1体だとすると辻褄は合わない。今は昼をやや過ぎたあたり……。最後の仲間が死んだのを『昨晩
から今朝』としよう。そうすると奴は長くて昨日の晩から今まで、短くとも早朝から正午までたった1人であの4体を相手にして
いた計算になる」
「単にそれだけ強かったつーか、共同体のボスだったんじゃ」
「そうだとすればお前が鉢合わせた金髪どもの場所がおかしい」
「…………あ」
「確認するぞ剣持。お前が連中と鉢合わせたのは、俺とはぐれた付近──…つまり、中腹辺りだな?」
「あ、ああ。じゃあ確かにおかしいな。もしあの鳥型が最後の1体なら金髪どもは仲間1人だけ置いて山を下るようなマネは
しねェ。慌てた様子で登ってたけど、吹き飛ばされたって感じじゃなかった。何かこう、追っているような?」
「もちろん鳥型が最後の1体で、運良く難を逃れたあと舞い戻り……奴らの中で一番弱い者を攫ってきた。という可能性も
考えたが──…」
「たが?」
「ディプレス」
「え」
「あの鳥型、嘴をハシビロコウのそれにしたが……見えたんだ。付け根にウロボロスの刺青があるのを」
真希士は、息を呑んだ。
「待て。ハシビロコウでウロボロスの刺青? そいつって、確か」
「9年前、我々が総力を上げ殲滅した『あの共同体』の幹部」
「ディプレス=シンカヒアだっけ」
「そうだ。元のターゲットは殲滅されている。核鉄も手に入れた。新手はたった4体で構成員50体の共同体を殲滅したホムンクル
スどもと『1体でそれができる』鳥型」
「ん? 俺が見たのは3体……そうかこっちにも1体。……でも、鳥型が残党じゃないって根拠は?」
「俺がきたときすでにココ(共同体の根城)は蛻の空だった。いたのはイヌと鳥型だけ。他の死骸はなかった。よって殲滅さ
れたのは昨晩から今朝早くとみるべき」
「確かに。あいつら死ぬとすぐ消滅するからな」
「もしあの鳥型が最後の1体だとすると辻褄は合わない。今は昼をやや過ぎたあたり……。最後の仲間が死んだのを『昨晩
から今朝』としよう。そうすると奴は長くて昨日の晩から今まで、短くとも早朝から正午までたった1人であの4体を相手にして
いた計算になる」
「単にそれだけ強かったつーか、共同体のボスだったんじゃ」
「そうだとすればお前が鉢合わせた金髪どもの場所がおかしい」
「…………あ」
「確認するぞ剣持。お前が連中と鉢合わせたのは、俺とはぐれた付近──…つまり、中腹辺りだな?」
「あ、ああ。じゃあ確かにおかしいな。もしあの鳥型が最後の1体なら金髪どもは仲間1人だけ置いて山を下るようなマネは
しねェ。慌てた様子で登ってたけど、吹き飛ばされたって感じじゃなかった。何かこう、追っているような?」
「もちろん鳥型が最後の1体で、運良く難を逃れたあと舞い戻り……奴らの中で一番弱い者を攫ってきた。という可能性も
考えたが──…」
「たが?」
「ディプレス」
「え」
「あの鳥型、嘴をハシビロコウのそれにしたが……見えたんだ。付け根にウロボロスの刺青があるのを」
真希士は、息を呑んだ。
「待て。ハシビロコウでウロボロスの刺青? そいつって、確か」
「9年前、我々が総力を上げ殲滅した『あの共同体』の幹部」
「ディプレス=シンカヒアだっけ」
頷く鉤爪に「でも!」という声を上げたのは言うまでもなく真希士である。
「でもそいつ、他の幹部や『あの盟主』ともども死んだって話じゃねえか! なんでそんなんが今さら」
「そこまでは分からん。だがあの鳥型がマレフィックと同じ組織にいたのは疑いようがない。とすれば」
単騎で共同体を殲滅する程度の実力はある。厳然と断言する鉤爪に真希士は指折って考え始めた。
「えーと。そんな奴が、4体で50体殲滅する連中に合流したってコトは……いま逃げてった奴らは単純計算で共同体2つ分
の相手なのか?」
「だな。当初の目的を達した以上、俺と貴様の2人で挑むのは『採算割れ』。金髪の言うとおり過ぎて気に食わんがな」
正論だが真希士は納得いかないようすだ。ブンスカブンスカ首を振り言い募る。
「でも! 見たトコ何人か手負いだったじゃねェか! いやまあ確かに俺は逃げられるばかりで仕留められなかったけど!」
大仰な身振り手振りを交えながら真希士は鼻を鳴らした。やるせない。全身からはそんな気配が濃厚に溢れている。
「そいつらぐらい仕留めとかなきゃ誰かの楽園が壊される! 今からでも遅くねェ! 千歳さん呼んでヘルメスドライブで捕
捉ぐらい──…」
「携帯電話は鉤爪とともに壊されている。お前のもそうじゃないのか?」
え、と息を呑んだ真希士は慌ててポケットをまさぐり、そして呻いた。
「野郎。オレ様が気絶している間になんてコトを」
引き抜いた掌の上ではプラスチックや基盤の破片が液晶まみれでひしめき合っている
「それだけではない」
観ろ、と鉤爪の戦士は腕を差し出した。最初怒り満面でそれを眺めていた真希士の表情がみるみると変じた。
「鉤爪さんの手に傷が一つもねェ」
「そうだ。奴は鉤爪と携帯電話を破壊しつつも──… 怪我を直した。衛生兵の武装錬金を出したとき、ついでに。その気に
なれば俺を殺れたのにな」
「衛生兵? 今度はグレイズィングかよ。ディプレスの仲間の。待てよ整理しよう。鳥型と金髪どもは争ってた。で、片っぽ
はディプレスの知り合いらしく、もう片方はなぜかハズオブラブ持ってる。仲間? いやでも争ってたんだよなそいつら?
なのにさっき合流してどっか飛んでった。ああもうややこしい!!」
でっかい体の前で太い腕をよじ合わせていた真希士だが、しびれが切れたのか咆哮する。
「俺も分からんが……確かなコトは一つある。もし手負いの仲間を仕留めていればこの程度では済まなかっただろう」
「そういやアイツ、逃げるばかりでほとんど攻撃してこなかった。気絶してるオレ様にトドメも刺さなかった……
「意図はともかく、ああいう加減を知る者が一番恐ろしい。まして複数の武装錬金を使えるとあらば。それに……」
「それに?」
鉤爪は無言で広場の端を指差した。盛り上がった地面を見た真希士は息を呑んだ。
「墓? アレなんで残ってるんだ? 鉤爪さんがわざと避けたのか?」
まあな、と戦士は頭を掻いた。
「中には恐らく共同体の犠牲者が埋まっている。あの5体の内の誰かがやったのだろう」
俄かには信じられなかったのだろう。真希士は墓を指差したままたっぷり30秒ほど硬直した。やがて鉤爪めがけねじ向け
る首の動きもぎこちなく、「ぎぎぃ」なる軋みさえ帯びていた。
「ホムンクルスがか?」
ホムンクルスにとって人間は食料にすぎない。人間がチキンの骨や魚の臓物を三角コーナーに捨てるようなコトを、ホム
ンクルスは野山に実行する。真希士の戦士人生はそういう洗礼──喰いカスを旅客機(いれもの)ごと岐阜の山中に堕と
すような──から始まってもいる。ホムンクルスが埋葬? 真希士の表情に怒りとも驚きともつかぬニュアンスがみるみる
と広がっていくのを鉤爪は険しい表情で眺めた。
「本来なら考えられないコトだがな」
「そこまでは分からん。だがあの鳥型がマレフィックと同じ組織にいたのは疑いようがない。とすれば」
単騎で共同体を殲滅する程度の実力はある。厳然と断言する鉤爪に真希士は指折って考え始めた。
「えーと。そんな奴が、4体で50体殲滅する連中に合流したってコトは……いま逃げてった奴らは単純計算で共同体2つ分
の相手なのか?」
「だな。当初の目的を達した以上、俺と貴様の2人で挑むのは『採算割れ』。金髪の言うとおり過ぎて気に食わんがな」
正論だが真希士は納得いかないようすだ。ブンスカブンスカ首を振り言い募る。
「でも! 見たトコ何人か手負いだったじゃねェか! いやまあ確かに俺は逃げられるばかりで仕留められなかったけど!」
大仰な身振り手振りを交えながら真希士は鼻を鳴らした。やるせない。全身からはそんな気配が濃厚に溢れている。
「そいつらぐらい仕留めとかなきゃ誰かの楽園が壊される! 今からでも遅くねェ! 千歳さん呼んでヘルメスドライブで捕
捉ぐらい──…」
「携帯電話は鉤爪とともに壊されている。お前のもそうじゃないのか?」
え、と息を呑んだ真希士は慌ててポケットをまさぐり、そして呻いた。
「野郎。オレ様が気絶している間になんてコトを」
引き抜いた掌の上ではプラスチックや基盤の破片が液晶まみれでひしめき合っている
「それだけではない」
観ろ、と鉤爪の戦士は腕を差し出した。最初怒り満面でそれを眺めていた真希士の表情がみるみると変じた。
「鉤爪さんの手に傷が一つもねェ」
「そうだ。奴は鉤爪と携帯電話を破壊しつつも──… 怪我を直した。衛生兵の武装錬金を出したとき、ついでに。その気に
なれば俺を殺れたのにな」
「衛生兵? 今度はグレイズィングかよ。ディプレスの仲間の。待てよ整理しよう。鳥型と金髪どもは争ってた。で、片っぽ
はディプレスの知り合いらしく、もう片方はなぜかハズオブラブ持ってる。仲間? いやでも争ってたんだよなそいつら?
なのにさっき合流してどっか飛んでった。ああもうややこしい!!」
でっかい体の前で太い腕をよじ合わせていた真希士だが、しびれが切れたのか咆哮する。
「俺も分からんが……確かなコトは一つある。もし手負いの仲間を仕留めていればこの程度では済まなかっただろう」
「そういやアイツ、逃げるばかりでほとんど攻撃してこなかった。気絶してるオレ様にトドメも刺さなかった……
「意図はともかく、ああいう加減を知る者が一番恐ろしい。まして複数の武装錬金を使えるとあらば。それに……」
「それに?」
鉤爪は無言で広場の端を指差した。盛り上がった地面を見た真希士は息を呑んだ。
「墓? アレなんで残ってるんだ? 鉤爪さんがわざと避けたのか?」
まあな、と戦士は頭を掻いた。
「中には恐らく共同体の犠牲者が埋まっている。あの5体の内の誰かがやったのだろう」
俄かには信じられなかったのだろう。真希士は墓を指差したままたっぷり30秒ほど硬直した。やがて鉤爪めがけねじ向け
る首の動きもぎこちなく、「ぎぎぃ」なる軋みさえ帯びていた。
「ホムンクルスがか?」
ホムンクルスにとって人間は食料にすぎない。人間がチキンの骨や魚の臓物を三角コーナーに捨てるようなコトを、ホム
ンクルスは野山に実行する。真希士の戦士人生はそういう洗礼──喰いカスを旅客機(いれもの)ごと岐阜の山中に堕と
すような──から始まってもいる。ホムンクルスが埋葬? 真希士の表情に怒りとも驚きともつかぬニュアンスがみるみる
と広がっていくのを鉤爪は険しい表情で眺めた。
「本来なら考えられないコトだがな」
──「不当に歪められし只の少女を囮にしてまで我が身の安全を謀ろうなどとは思わん!」
──「なぜなら我は──…」
──「人間だからだ!!」
(…………)
すでに治っている手首だが平癒前、実感があった。筋や神経、破れば決定的な後遺症が残る部分が『避けられている』と。
「もしかしたら、今の連中も楽園のために戦って……? いやいやいや! ンなコトはねェ! ホムンクルスは悪だ!
「まったくだな。いかな理由があれホムンクルスは狩るのみだ。戦士はそれ以外を考えるべきではない」
鉤爪は鼻を鳴らし、踵を返した。
「……だが一旦引くぞ。当初の目的は総て果たされている。奴らを追跡するか否かは大戦士長の裁定次第だ。我々は戦
部や根来どものような奇兵とは違う」
戦士たちは歩きだす。裾野に向かってゆっくりと。
「まったくだな。いかな理由があれホムンクルスは狩るのみだ。戦士はそれ以外を考えるべきではない」
鉤爪は鼻を鳴らし、踵を返した。
「……だが一旦引くぞ。当初の目的は総て果たされている。奴らを追跡するか否かは大戦士長の裁定次第だ。我々は戦
部や根来どものような奇兵とは違う」
戦士たちは歩きだす。裾野に向かってゆっくりと。
「ところでお前、本当に大丈夫か? 頭の傷は後からくるぞ」
「タンコブ以外は問題ナシ!! といいたいとこだけど少し痛い。あーでも頭痛っていうか、髪抜かれたような……」
「タンコブ以外は問題ナシ!! といいたいとこだけど少し痛い。あーでも頭痛っていうか、髪抜かれたような……」
戦士たちから遠く離れた、森の中。
「フ。不意の遭遇、少々難儀した。しかしおかげで新しい武装錬金が手に入った。西洋大剣か。……大剣。嫌な記憶が蘇
りもするが、使い勝手やなかなかに良し。……フ」
シックな意匠の大剣を軽やかに振り回す総角に一通り賛辞の言葉を述べた無銘は、視線を切り替え、盛大な溜息を玉城
へついた。
「……情けない」
「だって……流石に4体は……重い……です。なのに……40kmほど……飛びました」
「フ。不意の遭遇、少々難儀した。しかしおかげで新しい武装錬金が手に入った。西洋大剣か。……大剣。嫌な記憶が蘇
りもするが、使い勝手やなかなかに良し。……フ」
シックな意匠の大剣を軽やかに振り回す総角に一通り賛辞の言葉を述べた無銘は、視線を切り替え、盛大な溜息を玉城
へついた。
「……情けない」
「だって……流石に4体は……重い……です。なのに……40kmほど……飛びました」
過積載のせいですっかりバテバテらしい。玉城は臆面もなく地面に突っ伏していた。
(こうして見ておりますと)
(単騎で僕たち全員と互角にやりあったとは思えない!)
玉城はグルグル目でへあへあと息をついていた。見ればナルト入りのラーメンが食べたくなる、そんなグルグル目だ。
そんな眼差しで妙な抑揚のついた呻きをひっきりなしに漏らす少女はちょっと攻撃するだけですぐ斃せそうだ。隙だらけ。
緩み切っている。まったく以て頼りない……顔を見合わせた小札と貴信、複雑な溜息をついた。
「また回復してやりたいが、あいにく俺のハズオブラブは同じ相手を1度しか癒せない。その制約さえなければ小札も栴檀
どももすぐ治療できたのだがな」
「我は武装錬金の形状ゆえああまで重傷を負ったコトはない。だが今回の一件でもはや2度と回復できん」
「…………すみません。私の……せいで……あぅ」
力なく面を上げた玉城の体が揺らめいた。と見るや細い上体がくらあっと後方に向かって沈んでいき、盛大な音を立てた。
(ですから、その)
小札は思わず頬を掻いた。平素の実況癖で述べるなら「何というギャップでありましょう」というところである。
「痛い……です」
運悪くそこにあって運悪く強打したのだろう。玉城が大きな石を枕に目を回している。集団幻覚。一同は玉城の頭頂部で
グルグル追いかけっこする三匹のヒヨコを確かに見た。
「ったくもー。何さこいつ。戦ってないとまるでだめじゃん」
ほら立つじゃん。腰を屈めた香美に抱き起こされる間にも「うぅあぅあああ~」……ガッスンガッスン首を振りまわすコト4分、
やっと着座した玉城光であった。
(単騎で僕たち全員と互角にやりあったとは思えない!)
玉城はグルグル目でへあへあと息をついていた。見ればナルト入りのラーメンが食べたくなる、そんなグルグル目だ。
そんな眼差しで妙な抑揚のついた呻きをひっきりなしに漏らす少女はちょっと攻撃するだけですぐ斃せそうだ。隙だらけ。
緩み切っている。まったく以て頼りない……顔を見合わせた小札と貴信、複雑な溜息をついた。
「また回復してやりたいが、あいにく俺のハズオブラブは同じ相手を1度しか癒せない。その制約さえなければ小札も栴檀
どももすぐ治療できたのだがな」
「我は武装錬金の形状ゆえああまで重傷を負ったコトはない。だが今回の一件でもはや2度と回復できん」
「…………すみません。私の……せいで……あぅ」
力なく面を上げた玉城の体が揺らめいた。と見るや細い上体がくらあっと後方に向かって沈んでいき、盛大な音を立てた。
(ですから、その)
小札は思わず頬を掻いた。平素の実況癖で述べるなら「何というギャップでありましょう」というところである。
「痛い……です」
運悪くそこにあって運悪く強打したのだろう。玉城が大きな石を枕に目を回している。集団幻覚。一同は玉城の頭頂部で
グルグル追いかけっこする三匹のヒヨコを確かに見た。
「ったくもー。何さこいつ。戦ってないとまるでだめじゃん」
ほら立つじゃん。腰を屈めた香美に抱き起こされる間にも「うぅあぅあああ~」……ガッスンガッスン首を振りまわすコト4分、
やっと着座した玉城光であった。
白い膝小僧をちょんと揃えて女の子座りする彼女は──ゾンビよろしく生気のない目で頭をふらつかせているのさえ無視
すれば──なかなか可憐な様子である。文句ありげなチワワも急に口をつぐんでいる。
(フ。一瞬見とれたな無銘)
笑う総角の先でゾンビの首の揺れが強まり始めた
「あ……でもぉ……どうして総角さんはぁ……グレイズィングさんの武装錬金を……あいた……使える……のですか?」
「むかし色々あったのさ」
「そうですかァ……あ……なんだか……話したくないようなので……これ以上は……きき……痛……ききませ……」
「それはともかく、だ。お前の事情はだいたい分かった」
「そーじゃんそーじゃん! なんつーヒドいやつじゃんあんたのねーさん!」
「なお注釈! 鳥型どのの経緯と不肖たちの自己紹介は移動中に終わっております! ついでに核鉄と武装錬金に連関性
に於きましてもすでに説明済み! 以下はその前提にてお読みいただきたく思います次第!」
「えーと」
虚ろな視線が泳ぎ始めた。勢いよく意味不明な言葉を巻き散らかす小札と腕まくりする香美を持て余したのだろう。
「あんたのねーさんさ! あんたのねーさんさ! あんたの体ヘンにするとか考えられん! ひどいじゃん! 可愛そうじゃん!」
玉城はおそるおそる手を上げた。
「実は……その…………ホムンクルスで……いろいろ変形できるのは……悪く……ないです。むしろ、好きです」
「はい?」
目を剥いたのは小札である。
「だから……だからその……私は……ロボットとか好きなので……いろいろ変形できるのは……カッコ良くて……好きです」
無言の微笑を浮かべる総角が「わーお」と肩を竦めた。
「いつか合体も……したい……です」
「合体はやめろ! あまり大きな声で言うな!」
「フ。どうしてそんな必死なんだ無銘?」
歌うような調子でからかう総角を玉城はつくづく不思議そうに見た。
『あまりつつきたくはないが! 貴方は5倍速の老化についてどう思う!?』
虚ろな表情が更に暗くなった。
「それは……嫌…………です。私だけが……あっという間に……お婆さんなのは……嫌、です」
『だろうな!!』
ひどい大声だ。香美の後頭部にいる貴信。簡単な説明は聞いたがまだ構造はよく分からない。
ただ、青空と貴信が出会ったら、間違いなく姉は逆上する(彼女のもっとも嫌いなタイプ)であろうコトは理解できた。
「しかしいくら伝えるためとはいえ、サブマシンガンを用いる是非につきましては不肖も眉を顰めざるを得ない訳です。年端
も行かぬ女のコにあのような……ううう。期せずして漏れ出でる万斛(ばんこく)の涙、不肖には止めようがありませぬ……」
「あ……いえ……最近は……サブマシンガンでは撃ちません……」
なんと、と涙ぬぐうハンケチが止まった。その横から躍り出たネコ少女は鋭く叫んだ。
「じゃあなんさ。なに使ってあんたいじめるのさ!」
「いじめる……というか……伝える……です」
「があああ! あんたのしゃべりかたさ! あんたのしゃべりかたさ! なんかノロい! もっとパッパとやるじゃん!」
「ピコピコハンマー……です」
返事になっとらんじゃん。齟齬にイライラと目を細める香美を見た瞬間……玉城は決めた。
(実演しか……ありません)
そして無銘を抱え。
「こう……何か伝えたい時は……
チワワの頭を自分のそこにぶつけて、
すれば──なかなか可憐な様子である。文句ありげなチワワも急に口をつぐんでいる。
(フ。一瞬見とれたな無銘)
笑う総角の先でゾンビの首の揺れが強まり始めた
「あ……でもぉ……どうして総角さんはぁ……グレイズィングさんの武装錬金を……あいた……使える……のですか?」
「むかし色々あったのさ」
「そうですかァ……あ……なんだか……話したくないようなので……これ以上は……きき……痛……ききませ……」
「それはともかく、だ。お前の事情はだいたい分かった」
「そーじゃんそーじゃん! なんつーヒドいやつじゃんあんたのねーさん!」
「なお注釈! 鳥型どのの経緯と不肖たちの自己紹介は移動中に終わっております! ついでに核鉄と武装錬金に連関性
に於きましてもすでに説明済み! 以下はその前提にてお読みいただきたく思います次第!」
「えーと」
虚ろな視線が泳ぎ始めた。勢いよく意味不明な言葉を巻き散らかす小札と腕まくりする香美を持て余したのだろう。
「あんたのねーさんさ! あんたのねーさんさ! あんたの体ヘンにするとか考えられん! ひどいじゃん! 可愛そうじゃん!」
玉城はおそるおそる手を上げた。
「実は……その…………ホムンクルスで……いろいろ変形できるのは……悪く……ないです。むしろ、好きです」
「はい?」
目を剥いたのは小札である。
「だから……だからその……私は……ロボットとか好きなので……いろいろ変形できるのは……カッコ良くて……好きです」
無言の微笑を浮かべる総角が「わーお」と肩を竦めた。
「いつか合体も……したい……です」
「合体はやめろ! あまり大きな声で言うな!」
「フ。どうしてそんな必死なんだ無銘?」
歌うような調子でからかう総角を玉城はつくづく不思議そうに見た。
『あまりつつきたくはないが! 貴方は5倍速の老化についてどう思う!?』
虚ろな表情が更に暗くなった。
「それは……嫌…………です。私だけが……あっという間に……お婆さんなのは……嫌、です」
『だろうな!!』
ひどい大声だ。香美の後頭部にいる貴信。簡単な説明は聞いたがまだ構造はよく分からない。
ただ、青空と貴信が出会ったら、間違いなく姉は逆上する(彼女のもっとも嫌いなタイプ)であろうコトは理解できた。
「しかしいくら伝えるためとはいえ、サブマシンガンを用いる是非につきましては不肖も眉を顰めざるを得ない訳です。年端
も行かぬ女のコにあのような……ううう。期せずして漏れ出でる万斛(ばんこく)の涙、不肖には止めようがありませぬ……」
「あ……いえ……最近は……サブマシンガンでは撃ちません……」
なんと、と涙ぬぐうハンケチが止まった。その横から躍り出たネコ少女は鋭く叫んだ。
「じゃあなんさ。なに使ってあんたいじめるのさ!」
「いじめる……というか……伝える……です」
「があああ! あんたのしゃべりかたさ! あんたのしゃべりかたさ! なんかノロい! もっとパッパとやるじゃん!」
「ピコピコハンマー……です」
返事になっとらんじゃん。齟齬にイライラと目を細める香美を見た瞬間……玉城は決めた。
(実演しか……ありません)
そして無銘を抱え。
「こう……何か伝えたい時は……
チワワの頭を自分のそこにぶつけて、
一言。
「ピコッ」
「……って……叩きます……」
(もしや天然?)
(天然ですねコレは)
「つーかぴこぴこはんまーってなにじゃん! あたしはそこがわからん!」
「ピコハン……です」
「ふみゃああああ! 略されると余計わからんっ! つーかさつーかさつーかさ! あんたとあたしかみあわん! 絶対!」
「でしょう……か。無銘くんも……そう、思いますか」
ピコハンの代替物に意見を求める。だが彼は目を白くして本気で唸っていた。
「わぁ」
「……我を使うな。というかこの期に及んでまだ姉をかばい立てするか」
「ごめんなさい……です。でも……本当……です。ドーナツだって……作ってくれますし…………怒ってない時は……割と
……優しいお姉ちゃん……です。ここにくるちょっと前に……こんなのだって……くれました」
無銘を地面に下ろした玉城は、ポシェットから何かを取り出し、総角に見せた。端正な顔に好奇と驚きが広がった。
「バンダナと……リボン、か」
それぞれ布製。順に純白と黄色である。
「はい…………女のコだからお洒落した方がいいって……くれました。この服を選ぶ時だって……ファッション雑誌をたくさん
……買ってきてくれました……。ゲームだって結構……買ってくれました……。いっしょにドカポンやって……2人でコンピュー
タの人いじめるのは……楽しかった……です」
(もしや天然?)
(天然ですねコレは)
「つーかぴこぴこはんまーってなにじゃん! あたしはそこがわからん!」
「ピコハン……です」
「ふみゃああああ! 略されると余計わからんっ! つーかさつーかさつーかさ! あんたとあたしかみあわん! 絶対!」
「でしょう……か。無銘くんも……そう、思いますか」
ピコハンの代替物に意見を求める。だが彼は目を白くして本気で唸っていた。
「わぁ」
「……我を使うな。というかこの期に及んでまだ姉をかばい立てするか」
「ごめんなさい……です。でも……本当……です。ドーナツだって……作ってくれますし…………怒ってない時は……割と
……優しいお姉ちゃん……です。ここにくるちょっと前に……こんなのだって……くれました」
無銘を地面に下ろした玉城は、ポシェットから何かを取り出し、総角に見せた。端正な顔に好奇と驚きが広がった。
「バンダナと……リボン、か」
それぞれ布製。順に純白と黄色である。
「はい…………女のコだからお洒落した方がいいって……くれました。この服を選ぶ時だって……ファッション雑誌をたくさん
……買ってきてくれました……。ゲームだって結構……買ってくれました……。いっしょにドカポンやって……2人でコンピュー
タの人いじめるのは……楽しかった……です」
対戦もしました。私が勝っても「光ちゃんスゴいねー」って褒めるだけでした。
……などと玉城はいうがこれはまた別のお話である。
……などと玉城はいうがこれはまた別のお話である。
とにかく、話がズレている。
総角は咳払いした」
「とにかく本題だ。俺たちの仲間にならないか?」
この世の誰を敵に回しても大丈夫さ、そんな感じの笑みをたっぷり浮かべながら、総角は虚ろな目の少女に呼び掛けた。
「それにだな。様々な鳥になれるというお前の特異体質はまだまだ伸びしろがある。俺の元にくればいま以上に強く、多くの
鳥に変形できるようになるが……フ。女のコへの勧誘文句にしては少々武骨かな?」
「ほう! ほう! ほたらようけの鳥さんになれよん!? ほんなんええなあ!」
急に叫んだ玉城は勢いの赴くまま総角の肩を掴み(精一杯背伸びをして)、彼を揺すり始めた。
(予想外に喰いつかれておりますーっ!!)
(つーかなんの言葉よアレ)
(ハハ! 伊予弁だな! むしろあれが本来の姿だ!)
「ねーがいよるのは最大とか最速とか大きなあ奴ばっかでどもこもならん! うん! いかないっ! わしはもっとじゃらじゃ
らした鳥さんになりたいんよ。とーからほー思っとんよ。でもねーは大きなあ奴ばっか!」
総角は咳払いした」
「とにかく本題だ。俺たちの仲間にならないか?」
この世の誰を敵に回しても大丈夫さ、そんな感じの笑みをたっぷり浮かべながら、総角は虚ろな目の少女に呼び掛けた。
「それにだな。様々な鳥になれるというお前の特異体質はまだまだ伸びしろがある。俺の元にくればいま以上に強く、多くの
鳥に変形できるようになるが……フ。女のコへの勧誘文句にしては少々武骨かな?」
「ほう! ほう! ほたらようけの鳥さんになれよん!? ほんなんええなあ!」
急に叫んだ玉城は勢いの赴くまま総角の肩を掴み(精一杯背伸びをして)、彼を揺すり始めた。
(予想外に喰いつかれておりますーっ!!)
(つーかなんの言葉よアレ)
(ハハ! 伊予弁だな! むしろあれが本来の姿だ!)
「ねーがいよるのは最大とか最速とか大きなあ奴ばっかでどもこもならん! うん! いかないっ! わしはもっとじゃらじゃ
らした鳥さんになりたいんよ。とーからほー思っとんよ。でもねーは大きなあ奴ばっか!」
玉城の声は一段と跳ね上がる。いつしか彼女は輝くような笑顔を浮かべこう叫んでいた。
「わし、もっとじゃらじゃらした鳥さんになりたいんよー。南米とかアマゾンにおる、キョロちゃんみたいな鳥になりたいんよー!」」
「……伊予弁になっているぞ。せめて意味ぐらいは説明しろ」
「え?」
無銘の指摘に玉城はようやく止まった。後はまあ俯いてぶるぶる震えて「今のは忘れて下さい」の赤面歎願である。
「…………興奮すると、地が出るのか?」
「出ないよう……気をつけ、ます」
「というかそちらこそが本来の姿だろう! なぜ今さら恥ずかしがる!」
「その…………そうなんですが……お姉ちゃんのせいで……なぜか……恥ずかしい、です」
「だあ! わけ分からん!!」
『もしかすると変形能力を使いこなせているのは変身願望のせいかも知れない!!』
「成程、です。ちなみに……じゃらじゃらというのは……『フザけた』という……意味、です。南米とかアマゾンにいる……
キョロちゃんみたいな鳥に……なりたい、です。とーからほーは『前からそう』、です」
フ。じゃなく、う。そんな音声が総角から洩れた。呆れているらしい。
「望まずして変形能力与えられた割にはノリノリだなお前」
「……で、仲間になるかどうかの話……ですが、一旦、お姉ちゃんのところへ帰ってから決めたいと……思います……」
「ほう」
「一度……じっくり話をしてみたい……です。その上で……決めます」
「ケジメ、という訳か」
「はい。お姉ちゃんはたった一人の家族だから……何もいわずに別れたく……ないです」
「貴様! 何をいっている!」
無銘は怒った。
「傷を治してくれた師父への謝意というものはないのか! だいたい戻ったとして姉が頷くとでも思っているのか!」
「いや、その選択もアリだろう」
「師父!?」
「落ちつけ無銘。あれは進歩だ。ただ黙って従ってた時よりは確実にいい方向に向かっている」
「ですが師父! 戻ったとして他の幹部どもが出てきたが最後、奴は確実に!」
「フ。やけに心配しているようだがそれはどうしてだ? 惚れたか?」
「ち!! 違います師父! 奴は我が達した任務の一部! それを今さら死なせては任務にて負った傷が無駄になるから
心配しているだけのコト!!」
「ま、そういうコトにしておくさ」
「では……行ってきます」
「おう行ってこ……ぬええ!? ちょ! 待て! 我の話ぐらい聞けえええええええ!!!!!」
もう何もかもが遅かった。翼を広げた玉城はぎゅいんと飛び去り遠い空で豆粒になっていた。
「大丈夫だ。アイツは強い。何とか切り抜けて帰ってくるだろう」
「つーか」
ジト目の香美に総角はギクリとした。
「あたしらがついてってあのコのねーさんに「仲間にしたいけどいい」って一緒にきく方が安全じゃん。なんでそれしなかった
のさ」
「フ。そろそろご飯の時間にしよう。出でよレーションの武装錬金……」
震える声で缶詰を出した総角に溜息が洩れた。追おうにも玉城の姿は遥か遠く。追跡は不可能だった。
「戻ってくるのを待つしかありませぬ。ところでどれくらいでありましょう?」
「そうだな。往復と戦闘こみで2日ってところかな」
「え?」
無銘の指摘に玉城はようやく止まった。後はまあ俯いてぶるぶる震えて「今のは忘れて下さい」の赤面歎願である。
「…………興奮すると、地が出るのか?」
「出ないよう……気をつけ、ます」
「というかそちらこそが本来の姿だろう! なぜ今さら恥ずかしがる!」
「その…………そうなんですが……お姉ちゃんのせいで……なぜか……恥ずかしい、です」
「だあ! わけ分からん!!」
『もしかすると変形能力を使いこなせているのは変身願望のせいかも知れない!!』
「成程、です。ちなみに……じゃらじゃらというのは……『フザけた』という……意味、です。南米とかアマゾンにいる……
キョロちゃんみたいな鳥に……なりたい、です。とーからほーは『前からそう』、です」
フ。じゃなく、う。そんな音声が総角から洩れた。呆れているらしい。
「望まずして変形能力与えられた割にはノリノリだなお前」
「……で、仲間になるかどうかの話……ですが、一旦、お姉ちゃんのところへ帰ってから決めたいと……思います……」
「ほう」
「一度……じっくり話をしてみたい……です。その上で……決めます」
「ケジメ、という訳か」
「はい。お姉ちゃんはたった一人の家族だから……何もいわずに別れたく……ないです」
「貴様! 何をいっている!」
無銘は怒った。
「傷を治してくれた師父への謝意というものはないのか! だいたい戻ったとして姉が頷くとでも思っているのか!」
「いや、その選択もアリだろう」
「師父!?」
「落ちつけ無銘。あれは進歩だ。ただ黙って従ってた時よりは確実にいい方向に向かっている」
「ですが師父! 戻ったとして他の幹部どもが出てきたが最後、奴は確実に!」
「フ。やけに心配しているようだがそれはどうしてだ? 惚れたか?」
「ち!! 違います師父! 奴は我が達した任務の一部! それを今さら死なせては任務にて負った傷が無駄になるから
心配しているだけのコト!!」
「ま、そういうコトにしておくさ」
「では……行ってきます」
「おう行ってこ……ぬええ!? ちょ! 待て! 我の話ぐらい聞けえええええええ!!!!!」
もう何もかもが遅かった。翼を広げた玉城はぎゅいんと飛び去り遠い空で豆粒になっていた。
「大丈夫だ。アイツは強い。何とか切り抜けて帰ってくるだろう」
「つーか」
ジト目の香美に総角はギクリとした。
「あたしらがついてってあのコのねーさんに「仲間にしたいけどいい」って一緒にきく方が安全じゃん。なんでそれしなかった
のさ」
「フ。そろそろご飯の時間にしよう。出でよレーションの武装錬金……」
震える声で缶詰を出した総角に溜息が洩れた。追おうにも玉城の姿は遥か遠く。追跡は不可能だった。
「戻ってくるのを待つしかありませぬ。ところでどれくらいでありましょう?」
「そうだな。往復と戦闘こみで2日ってところかな」
予想に反して2時間後、玉城は帰ってきた。
「ただいま……です」
戦闘休止後というコトもあり、ブレミュ一同は車座に座って食事を取っていた。缶入りのレーション。それを食べていた一同
の動きがピタリと止まる。代わりに針のような視線が総角に刺さった。何が2日だ24分の1で片がついてるそれでもリーダー
か……みたいなトゲの成分に耐えかねたのだろう。悠然と、極力焦りと怒りを抑え込んだ様子で悠然と立ち上がった総角は
輝くような笑みを浮かべた。
「フ。さすがはお前。俺の予想を遥かに上回るとは」
「いえ。お姉ちゃんのいるところが……分からない……だけ、です。ここに戻ってこれたのも……奇跡……です。おいしそうな
匂いがしたので……きたら……無銘くんたちが……いました……」
総角の背中を極北の風が撫でた。
「あ、凍ってるじゃん」
「凍っておりますね。気取っておりますが基本は中間管理職ゆえにや仕方無きことなのです」
「それはともかく、だ」
もはや氷像か何かの如く静止した総角の足もとでチワワ、厳しい目線を上げる。
「貴様、方向音痴か?
玉城は、むくれた。
「違います。帰り道が……分からないだけ……です」
「それが方向音痴だというのだ!」
「いいえ。ちょっと遠いから……分からない……だけです」
「あっちは」
無銘は北を指差した。わかります。玉城は力強く頷いた。
「西……です……!」
「方向音痴ではないか!!」
「違うって……いってます……分からず屋な無銘くんは……嫌い……です」
とうとうプイと顔を背けた赤髪の少女。少年忍者の怒りは高まる一方だ。
「どっちが分からず屋だ!」
「それは……絶対…………無銘くん……です……!」
「ちなみにいつもはどうしてたんだ?」
と質問したのはようやく解凍された総角である。
「お姉ちゃんが……付添い……でした。基本何もしてくれず見ているだけでしたが……仕留め損ねた相手を……探してい
たら……物影、で……
「ただいま……です」
戦闘休止後というコトもあり、ブレミュ一同は車座に座って食事を取っていた。缶入りのレーション。それを食べていた一同
の動きがピタリと止まる。代わりに針のような視線が総角に刺さった。何が2日だ24分の1で片がついてるそれでもリーダー
か……みたいなトゲの成分に耐えかねたのだろう。悠然と、極力焦りと怒りを抑え込んだ様子で悠然と立ち上がった総角は
輝くような笑みを浮かべた。
「フ。さすがはお前。俺の予想を遥かに上回るとは」
「いえ。お姉ちゃんのいるところが……分からない……だけ、です。ここに戻ってこれたのも……奇跡……です。おいしそうな
匂いがしたので……きたら……無銘くんたちが……いました……」
総角の背中を極北の風が撫でた。
「あ、凍ってるじゃん」
「凍っておりますね。気取っておりますが基本は中間管理職ゆえにや仕方無きことなのです」
「それはともかく、だ」
もはや氷像か何かの如く静止した総角の足もとでチワワ、厳しい目線を上げる。
「貴様、方向音痴か?
玉城は、むくれた。
「違います。帰り道が……分からないだけ……です」
「それが方向音痴だというのだ!」
「いいえ。ちょっと遠いから……分からない……だけです」
「あっちは」
無銘は北を指差した。わかります。玉城は力強く頷いた。
「西……です……!」
「方向音痴ではないか!!」
「違うって……いってます……分からず屋な無銘くんは……嫌い……です」
とうとうプイと顔を背けた赤髪の少女。少年忍者の怒りは高まる一方だ。
「どっちが分からず屋だ!」
「それは……絶対…………無銘くん……です……!」
「ちなみにいつもはどうしてたんだ?」
と質問したのはようやく解凍された総角である。
「お姉ちゃんが……付添い……でした。基本何もしてくれず見ているだけでしたが……仕留め損ねた相手を……探してい
たら……物影、で……
「人の妹に傷を付けるなんて考えられないあははうふふ覚悟はいいただやられていればいいだけの雑魚さんたちがあがく
なんて考えられない大人しく光ちゃんに殲滅されてればいいのにねあはははは死んで死んでうふふふふふ」
なんて考えられない大人しく光ちゃんに殲滅されてればいいのにねあはははは死んで死んでうふふふふふ」
とか笑いながら……喉を千切っては投げ……喉を千切っては投げ……声帯踏みにじって……いました」
「怖いわ」
「ボルテージが上がると……」
「怖いわ」
「ボルテージが上がると……」
「どーちーらにしようかなキキッ! キキキ! って私はしゃぎすぎね落ち着きましょうそうしましょう」
「あほ毛で太鼓をたたいてドンドドンやって……相手を決めて……ぐしゃぐしゃにして……ました」
「だから怖いわ」
「でも……手当……してくれました。包帯とか……オロナイン塗って……痛いの痛いの飛んでけーって傷をさすってニコニコ
してました……。その顔を見ると……痛みも……和らぎました……。お姉ちゃんは……怖いけど……優しいところも……
あるのです」
「貴様は暴力亭主を持つ妻か! かような優しさなど貴様を隷属させるための方便!」
「フ。どうかな。案外、怒りも優しさも心からの物かも知れないぞ?」
「師父」
濡れ光る黒瞳の遥か上で窘めるような声が響いた。
「だから怖いわ」
「でも……手当……してくれました。包帯とか……オロナイン塗って……痛いの痛いの飛んでけーって傷をさすってニコニコ
してました……。その顔を見ると……痛みも……和らぎました……。お姉ちゃんは……怖いけど……優しいところも……
あるのです」
「貴様は暴力亭主を持つ妻か! かような優しさなど貴様を隷属させるための方便!」
「フ。どうかな。案外、怒りも優しさも心からの物かも知れないぞ?」
「師父」
濡れ光る黒瞳の遥か上で窘めるような声が響いた。
「純粋な悪などいないさ。所業が悪に見えたとしても、どこかで人間らしい優しさを他人に振舞いたいとも願っている。感情
と言うのはそういう物。単純な『枠』に嵌めようとするのは……まあやめておいた方がいい」
と言うのはそういう物。単純な『枠』に嵌めようとするのは……まあやめておいた方がいい」
「例えそれがこいつの姉の仲間の……我々に歪みをもたらした連中だとしても、ですか?」
「まあな。……フ。だからといって戦わぬ理由にはならん。忌むべき循環は断ち、根源もまた滅ぼさなくてはならない」
師父がそうおっしゃるなら。無銘がしぶしぶ引き下がるのと引き換えに今度は小札が質問を始めた。
「ところで、アジトまでの地図は?」
「機密保持とかで……ありません……」
『なら! 君の姉に電話して迎えに来てもらうか!?』
「馬鹿が。そもそもこいつが携帯電話を持っているかどうかさえ──…」
玉城はポンと柏手を打った。
「電話なら……あります。山の頂上へ行く時……ナビ……してもらいました……あ……でも……ナビして貰わなくても……
私は絶対……行けました…………お姉ちゃんがどうしても……っていうから……させてあげた……だけ、です」
(ウソつけ)
(フ。なんで微妙に上から目線なんだ)
(現に貴方は帰り道でナビ使わなかったせいで迷っている!)
「まあな。……フ。だからといって戦わぬ理由にはならん。忌むべき循環は断ち、根源もまた滅ぼさなくてはならない」
師父がそうおっしゃるなら。無銘がしぶしぶ引き下がるのと引き換えに今度は小札が質問を始めた。
「ところで、アジトまでの地図は?」
「機密保持とかで……ありません……」
『なら! 君の姉に電話して迎えに来てもらうか!?』
「馬鹿が。そもそもこいつが携帯電話を持っているかどうかさえ──…」
玉城はポンと柏手を打った。
「電話なら……あります。山の頂上へ行く時……ナビ……してもらいました……あ……でも……ナビして貰わなくても……
私は絶対……行けました…………お姉ちゃんがどうしても……っていうから……させてあげた……だけ、です」
(ウソつけ)
(フ。なんで微妙に上から目線なんだ)
(現に貴方は帰り道でナビ使わなかったせいで迷っている!)
ちょっと待って下さい。玉城がポシェットに手を伸ばしかけた瞬間。
その白い蓋が、震えた。
誰かが息を呑んだ。風は吹いていない。玉城の腕もまだ10cmほど上にある。にもかかわらず蓋はゆるゆると隆起を始め
ている。蓋は──…内側から開いている。いや、開けられている。盛り上がった蓋の頂点が緩やかに凹み、布を殴りつける
乱暴な音とともに膨れ上がった。蓋はマジックテープかボタンで堅く留められているのだろう。俄かに開く気配はない。だがそ
れが気に障ったとみえ、蓋を叩く音はますます多く、そして大きくなっていく。
総角に目くばせされた玉城は蒼い顔で首を振った。知らない。何が居て何をしようとしているか──…知らない。紙のよ
うに白い顔がポシェットの紐をくぐり抜けた。恐怖に駆られたのだろう。ポシェットを放り投げ総角たちめがけ駆けだす玉城。
誰かが息を呑んだ。風は吹いていない。玉城の腕もまだ10cmほど上にある。にもかかわらず蓋はゆるゆると隆起を始め
ている。蓋は──…内側から開いている。いや、開けられている。盛り上がった蓋の頂点が緩やかに凹み、布を殴りつける
乱暴な音とともに膨れ上がった。蓋はマジックテープかボタンで堅く留められているのだろう。俄かに開く気配はない。だがそ
れが気に障ったとみえ、蓋を叩く音はますます多く、そして大きくなっていく。
総角に目くばせされた玉城は蒼い顔で首を振った。知らない。何が居て何をしようとしているか──…知らない。紙のよ
うに白い顔がポシェットの紐をくぐり抜けた。恐怖に駆られたのだろう。ポシェットを放り投げ総角たちめがけ駆けだす玉城。
ばし。
彼女の後ろで何かの爆ぜる音がした。振りかえる。雲の切れはしを思わせる白い鞄が爆炎を吹いている。衝撃で加速した
のか。7メートルほど先にあるブナの太い幹に衝突し、内容物がバラバラとブチ撒かれた。
『開いた蓋』
そこにぼっかりと開く深淵、プラモ雑誌の先々月号やらプラモの箱やらが乱雑にはみ出す深淵から黒い煙がもうもうと立
ち登っている。鼻を焼く嫌な臭いがした。「火薬?」 入れた覚えはない。馴染みもない。嗅覚を灼く匂いにおもわず鼻を押さ
える。踵を返す。すでに並んだ総角たちはめいめいの武器を構え油断なく辺りを見渡している。
のか。7メートルほど先にあるブナの太い幹に衝突し、内容物がバラバラとブチ撒かれた。
『開いた蓋』
そこにぼっかりと開く深淵、プラモ雑誌の先々月号やらプラモの箱やらが乱雑にはみ出す深淵から黒い煙がもうもうと立
ち登っている。鼻を焼く嫌な臭いがした。「火薬?」 入れた覚えはない。馴染みもない。嗅覚を灼く匂いにおもわず鼻を押さ
える。踵を返す。すでに並んだ総角たちはめいめいの武器を構え油断なく辺りを見渡している。
『開いた蓋』
「そこから何が飛び出した? いったい何が、どこへ……?」
玉城を守るように立ちはだかった兵馬俑が独り言のようにごち、
「居たじゃん!」
香美の鋭い叫びに視線が動く。木の枝。距離にして10m。高さにして3m。彼らからそれだけ離れた枝の上に『それ』は
居た。
居た。
「これは──…」
玉城は息を呑んだ。『それ』は一言でいえば人形だった。2~3歳の子供でさえ胸に抱えて歩けるほど小さな人形。平たく
言えば3頭身で、体のあらゆる部位は「子供受けを極力良くしたい」、そんな意気込みのもと極端にデフォルメされていた。
指を排した手足は無害極まりなく丸く、フリフリしたワンピースは簡明なあまり安っぽくさえもあった。だがそんな服がお気に
入りで幸せなのとでもいいたげにその人形はにっこりほほ笑んでいた。
誰でも描けるような顔だった。クレヨンを握ったばかりの2歳の子でも寝たきりの98歳のおじいさんでも、「見ればすぐ描
ける」。そんな顔。口は笑みに綻んだ曲線1本だけで表され、目に至っては「点」を打っただけのシンプル極まりない形状。
それ以外は髪以外何もない顔だった。眉毛も鼻も耳もない。フワフワとしたウェーブの掛ったショートヘアーの下で、その
人形はただひたすら標識のような笑顔で総角たちを見降ろしていた。
「あ……」
10本の視線が人形の右手に集中した。玉城はようやく彼女(?)の目的を理解した。綺麗に畳まれたプラスチック性の筐
体。それが人形の右手にピットリ吸いついている。
『あれはまさか!!』
「はい……私の……携帯電話、です」
人形の頭頂部で何かが動いた。毛だ。ひたすらに長い触角のような毛がピロピロと触れた。固定的な笑顔。そこから思考
を読み取るのはひどく困難な笑顔。そんな人形が何かを投げた。注視していた総角さえ一瞬何が起こったか把握できなかった。
意識が玉城の携帯電話に移った刹那の隙に”それ”は実行されていたらしい。
言えば3頭身で、体のあらゆる部位は「子供受けを極力良くしたい」、そんな意気込みのもと極端にデフォルメされていた。
指を排した手足は無害極まりなく丸く、フリフリしたワンピースは簡明なあまり安っぽくさえもあった。だがそんな服がお気に
入りで幸せなのとでもいいたげにその人形はにっこりほほ笑んでいた。
誰でも描けるような顔だった。クレヨンを握ったばかりの2歳の子でも寝たきりの98歳のおじいさんでも、「見ればすぐ描
ける」。そんな顔。口は笑みに綻んだ曲線1本だけで表され、目に至っては「点」を打っただけのシンプル極まりない形状。
それ以外は髪以外何もない顔だった。眉毛も鼻も耳もない。フワフワとしたウェーブの掛ったショートヘアーの下で、その
人形はただひたすら標識のような笑顔で総角たちを見降ろしていた。
「あ……」
10本の視線が人形の右手に集中した。玉城はようやく彼女(?)の目的を理解した。綺麗に畳まれたプラスチック性の筐
体。それが人形の右手にピットリ吸いついている。
『あれはまさか!!』
「はい……私の……携帯電話、です」
人形の頭頂部で何かが動いた。毛だ。ひたすらに長い触角のような毛がピロピロと触れた。固定的な笑顔。そこから思考
を読み取るのはひどく困難な笑顔。そんな人形が何かを投げた。注視していた総角さえ一瞬何が起こったか把握できなかった。
意識が玉城の携帯電話に移った刹那の隙に”それ”は実行されていたらしい。
夥しい数の棒が飛んでくる。数は10や20などという生易しい物ではなかった。おろしたての徳用マッチ箱30ダース全部すっ
からかんにするほど遠慮斟酌なくぶっちゃかさねば再現映像は作れないぐらい、徹底的に飛んでいた。
からかんにするほど遠慮斟酌なくぶっちゃかさねば再現映像は作れないぐらい、徹底的に飛んでいた。
棒。 棒。 棒。
棒。 棒。 棒。
棒。 棒。 棒。
棒。 棒。 棒。
棒。 棒。 棒。
視界の総てを席捲する全長40cm弱の棒ども。その尖端で黒光りする缶詰を見るや総角は叫ぶ。
「ポテトマッシャーか!!」
M24型柄付手榴弾の群れが爆発した。1個当たりのTNT火薬使用量は170gというが総計どれほど炸裂したか分からない。
ドーム状の炎の膜が森の一角を焼きつくした。むせ返るような熱量は夏の風を呼び戻しているようだった。
「ポテトマッシャーか!!」
M24型柄付手榴弾の群れが爆発した。1個当たりのTNT火薬使用量は170gというが総計どれほど炸裂したか分からない。
ドーム状の炎の膜が森の一角を焼きつくした。むせ返るような熱量は夏の風を呼び戻しているようだった。
人形はその様子を遠くの青空にほわほわ浮かびながらしばらく眺めていたが──…
やがていずこかへと飛び去っていった。
やがていずこかへと飛び去っていった。