SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 大長編イカ娘 栄子と山の侵略者 7


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「大変……でゲソ! 狼娘が溺れてしまった……でゲソ!」
 イカ娘の声が河原に響いた。
「た、大変だ!」
「くっ、悟郎呼んでくる」
 悟郎を探してその場を離れようとした栄子の目に、必死で水を掻き分けるイカ娘の姿が映った。
「ああ、もう」
 このときの栄子の判断は――
「なんでお前がッ」
 正しかったとはいえない。
「溺れてるんだよ!」
 結果論で語れば、完全に間違っていたと言える。
 栄子は知らないことだが(とはいえ、予想はできたはずだが)、
 磯崎はこのとき、悟郎と一緒にいた。
 だから助ける対象が『二人』であっても、
 ライフセーバーの二人は、的確に対処できたはずである。
 そうでなくても、助けるべきものが増えたにも関わらず
 自分で助けに向かった栄子は間違っている。
 とはいえ、目の前で苦しんでいるイカ娘の姿は、栄子の判断を曇らせた。

「ほれ、触手使え、触手!」
 栄子も泳ぎは達者だ。イカ娘が小柄なのも手伝って、
 意外とあっさり、深みから体をひっぱりあげることができた。
「ほ、本当だワン、触手を使えば、泳げるだワン」
 『イカ娘』が言った。
「……だワン?」
 短い沈黙があって、『イカ娘』が口を開いた。
「そうだワン、わたしは狼娘だワン。
 お前たちの敵、樹海からの侵略者だワン」
 イカ娘=狼娘は、栄子の瞳を見据えて笑った。
「だからこんな裏切りも、たいしたことじゃあないのだワン」
 ひゅっという音がして、栄子の意識が暗くなった。
「姉貴……!」
「とはいえ、利用させてもらった礼だワン。
 お前たちの命は助けてやるだワン」
 相沢千鶴=狼娘が、低い声で言った。

「冗談じゃない。こんなところにいられるか!」
 大きな声がテント内に響いて、イカ娘は目を覚ました。
「あの千鶴さんが操られちまったんだぞ!
 千鶴さんだぞ!
 化け物的な逸話の数々、五本の指じゃ足りねえぞ!」
「千鶴さんを化け物とか言うな」
 悟郎が言った。
「いやいや、現実見ようぜ」
「現実……そうだな、千鶴さんの力は人間離れしたものがある。
 だがだからなんだ? 放っておいて帰るのが現実なのか?
 俺たちは人を助けるのが仕事じゃないのか」
「しょい込みすぎなんだよ、お前は!」
「お前が軽すぎだ」
「じゃあいいぜ、お前は帰らないってんだな。
 俺は帰る、怖いからな。
 一緒に来るやつはいるか?」
 沈黙。
「じゃあいい、一人で行く!」

「あーあ、護送車は使えそうだったのに」
 シンディがぽつりと言った。
「さっきから何の話でゲソ?」
「千鶴さんが狼さんに操られてしまったんです」
 鮎美が説明した。
「話をまとめると、イカさんを操ってみんなの気を引いて、
 助けに来た千鶴さんの隙をついたということのようです。
 イカさんが(触手なしで)泳げないということを狼さんが知らなかったので、
 状況がますます混乱して……」
 鮎美は人外相手だとよくしゃべる。
「っていうか、『ゲソ』って語尾だからイカちゃんはイカちゃんね!
 よかった~」
「わたしも操られたのでゲソか……」
「わたしたちは見逃されたんだ。イカ娘」
 栄子が言った。
「頼みがある」

つづく