SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊情の宴~ ~紅魔降臨・前~


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<永遠に紅い幼き月>レミリア・スカーレット。
<紅い悪魔>レミリア・スカーレット。

外の世界において最強の吸血鬼はと問えば、百人いれば九十九人が化け物殺しの鬼札(ジョーカー)―――
窮極にして絶対の存在たるアーカードの名を挙げるだろう。
残る一人についても<まあ他の奴はどうせアーカードって言うだろうし俺もそう思うけど、ここは敢えて別の奴に
しよっと。俺って異端派!>というへそ曲がりである可能性が非常に高い。
だが。しかし。
幻想郷においては恐らくレミリアこそが最強の吸血鬼であり、至高である。
とはいえ、彼女も最初から最強だったわけでもなければ、生まれた時から吸血鬼だったわけではない。
遥か遠い昔―――500年ともう少し前には、彼女とて人間だった。


とある小さな町の貧しい家に生を受けた彼女は、贅沢はできなかったけれど、それなりに幸福だった。
誰もが羨む美男美女のカップル、というわけではないけれど愛し合って結ばれた両親。
優しい父親と気立てのいい母親。
微笑みかけてくれる町の人々。
同世代の友人達。
幸いにして器量良しで、素直な性格に育ったレミリアは、誰からも愛されるお姫様だった。
両親は自分が満足に食べずとも、愛娘を飢えさせはしなかった。
誕生日には乏しい稼ぎをやり繰りして、彼女のために綺麗な服を仕立ててくれた。
そんな、ささやかながらも幸せを与えてくれた両親は、彼女がまだ十になる前に流行り病で亡くなった。
途方に暮れていたレミリアを救ってくれたのは、町に唯一つだけある教会の神父様だった。
自分と同じように親を亡くした孤児達の面倒を見てくれている、慈悲深い人だった。
「いいですか、レミィ」
自分が泣いていると、神父様は大きく、温かな手で静かに頭を撫でながら語りかけてくれたものだ。
「主は、あなたをいつだって見守ってくれています。どんな辛い事があっても強く、優しく、正しく生きていれば
きっと幸運を授けて下さいますよ」
「ほんと?いい子にしてれば、神様が助けてくれるの?」
「うーん…とは言ったものの、世の中はそう上手くいかないんですよね。残念な事ですが、真面目に清く生きた
人が報われないなんて、いくらでもあるのです」
「ダメじゃない」
「うーん…」
けれどね、レミィ。
神父様は笑いながら片目を瞑る。
「それでも、神様なんかいないと悲観して下ばかり向いて生きていくより、何かいい事がきっとあると信じて前を
向いて歩いていく方が、ずっと楽しいじゃないですか」
だから。
「運命は残酷です。けれど、強く生きればきっと主は微笑んでくれますよ」
「…うん!」
レミリアは泣き止んで、太陽のような明るい笑顔を見せた。
―――それは今となっては絶対に浮かべる事のない、純朴な、少女そのままの笑顔だった。


―――それは、ある日の御祈りの時間だった。
剣や槍で武装した暴漢達が、教会に押し掛けてきたのだ。
彼等は一様に白いフード付きのローブを被った、得体の知れない連中だった。
「…!何ですか、あなた達は!」
これまでに見た事もないような険しい顔で、神父様が怒鳴る。
怯える子供達を下がらせ、前へ出る。
「ここは神の家ですぞ!土足で踏み入るなど、何たる不敬!」
「おやおや、勇ましい神父様ですねえ。でもそういう態度はよくない。命を縮めますよ?」
神に仕える者でも、死に急ぎたくはないでしょう。
白フードのリーダーと思しき先頭の男が、にやにや笑いながら答える。
「ま、突然やって来て何なんだ、と思われるのも当たり前ですんで、用件だけ端的に」
「何を…」
「その子供達、売ってもらえませんか?」
「な―――!」
絶句する神父様を無視して、白フードはコインの詰まった袋をちらつかせる。
「ほら、この通り代金は支払います。あなたってば、こんな小さな教会で子供達の面倒見るとか、ただでさえ大変
でしょう?これは大変にお得な話で」
「帰れ、この恥知らず共めがっ!」
怒声が響いた。
「この子達は、私にとって実の子同然だ!それを売るなど、誰がするかっ!」
「うーむ、それは残念」
特に残念でもなさそうに言って。白フードは手にした剣を、あっさり振り下ろした。
真っ赤な血が迸る。
子供達の悲鳴。
「が…あっ…」
「ま、別にいいですけど。金を払わずに済むかわりに死体の処理が面倒になるってだけですし」
地を赤く染めながら、血に濡れた神父様は崩れ落ちる。
「な…何故…」
死の間際の、今にも消えていきそうな命を振り絞り、神父様は言った。
「どうして…こんな事…を…」
「え?えーっと、うん、まあ、別に誰でもよかったといえば誰でもよかったんですがね」
「な…に」
「なんつーかね、ウチの組織ですごいモンを手に入れまして。その人体実験をやりたくてね。別に子供じゃないと
ダメなわけじゃないけど、親のいないガキなら後腐れないでしょ?ま、そういう事で」
「き…さ…ま…」
神父様は震える手で、胸元から何かを取り出す。
清貧を旨とする彼にとって唯一の贅沢品ともいえる、純銀製のロザリオだった。
最期の力で握り締め、祈る。
「主よ…子供達を…どうか…お救い…」
そこまでだった。掌から、ロザリオが滑り落ちる。白フードはそれを拾い上げた。
「うん、中々いい品じゃないの。どっかで売っ払って女でも買うか!巨乳がいいな、巨乳!…まあまあ、それは後
のお楽しみにとっとくとして」
その顔は、まさしく悪魔としか形容できなかった。
「さ、クソガキ共。おじさんと一緒に行こうね?いやいやするワガママで、聞き分けのない子は、神父様みたいに
なっちゃうよ?」


子供達が連れていかれたのは、人がいなくなって久しい古城。
その地下には大きな部屋があり、中央には不気味な魔法陣が描かれている。
壁にはたいまつが燃え盛って室内に灯りをともしている。
奥には祭壇らしきものが置かれ、そこには奇妙なものが祭られていた。
(…あれは…何…?)
印象としては、槍の穂先だけ取り外した刃物。
それはたいまつの火に照らされて鈍く、妖しい輝きを放っていた。
「よーし、最初は誰にし・よ・う・か・な?…よし、君に決めた!」
指名された女の子は泣き喚き暴れ出すが、所詮は小さな子供の力だ。
あっさり取り押さえられ、魔法陣に寝かされる。
「や…やだぁ…」
「はいはい、こんな所で怖がっちゃダ~メ。ほら、これが見えるかな?」
祭壇から例の刃物を持ってきて、女の子の目の前でちらつかせる。
「まあ分からないと思うけど、一応説明しとこうか」
へらへら笑いながら、白フードは口を開いた。
「こいつは<ロンギヌスの槍>というものでね…これを使った儀式によってだ、何と驚き、あっと驚き、吸血鬼を
造れちゃうんだ!」
「きゅ…きゅうけつ…き…?」
「そう―――それも単なる吸血鬼じゃないぞ。吸血鬼には幾つもの血統があるんだけどね、その中でも血統の祖
となった偉大な吸血鬼を始祖(ソース・ブラッド)と呼ぶんだ。この<ロンギヌスの槍>はだ、その始祖を人工的に
産み出してしまう、すっごい秘密道具なんだよ!」
でもね、と白フードは述懐する。
「やっぱそんなモン、いきなり使うのも怖いじゃない。化け物にもなりたくないしさあ?だからさあ、適当な奴で
実験しようと思って。で、まあ、成功して本当に始祖が爆誕したら、俺達のために馬車馬のように働いてもらおう
ってね。え?制御できるのかって?そこでこの魔法陣さ。これには特別な魔力が秘めてあって、吸血鬼の力を
完全に封じるんだ。だから、絶対安全ってわけ」
ぺらぺらぺらぺら、訊かれていない事まで語る白フード。そして彼は。
「えいっ」
少女の胸に向けて<ロンギヌスの槍>を突き立てた。絶叫が響き―――
「…あ。ダメ。失敗。次いこ、次」
心臓を貫かれ、絶命した少女をまるでモノのように脇にどけて、次の生贄を指名する。

「あー。また失敗!」
「こいつもダメか!」
「あーもう、次持ってきて!」

―――その凄惨な儀式を、レミリアは震えながら見ているだけしかなかった。
(助けて…)
それは誰に対しての呟きだったのだろうか。
優しい父?気立てのいい母?慈悲深い神父様?それとも―――神様?
(神父様…大好きな神父様…!)
今でも、大好きだ。でも、一つだけ恨んでいる。
(嘘吐き…!神父様の嘘吐き!神様が見守ってくれてるんなら…何でみんなを助けてくれないの…?)
「―――あーあ。君で最後だ」
こりゃ失敗だな、とぼやきながら白フードはレミリアの腕を掴む。抵抗の意思は、既に失せていた。
もう、何もかもどうでもよかった。
父も、母も、神父様も、仲間達も先に逝ってしまった。
これならもう―――向こうの方が楽しそうだ。
レミリアは死を前にして、安らかですらあった。
「じゃ、いくよー。ほれ」
明らかにやる気のない様子で、けれど刃は容赦なくレミリアの心臓に食い込んだ。
「ぐ…ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
激痛。憤怒。悲嘆。絶望。
先程までの聖者の如き安らかさは、それらの前に一瞬にして吹き飛んだ。
負の感情全てがないまぜになって、全身を駆け巡った。
何で?何でこんな事になるんだ?
どんな辛い事があっても強く、優しく、正しく生きてきたつもりなのに。

(ああ、そうか。助けてくれる神様なんか―――いないんだ)
悟った。
(あるのは―――残酷な運命だけ)
だったら。
(こんな運命なんか―――捻じ曲げてやる)
それは、人間として何らかの形で訪れる死という運命を、否定した瞬間だった。
(このまま死んでたまるか…!私は…私は…!)
―――化け物に成り果ててでも生き延びて―――
―――このクズ共を八つ裂きにしてやる―――
―――運命に、復讐してやる―――

誰かの、何者かの、脈動を、感じた。
例えるなら足下に、真っ黒な何かが這い寄ってくるような。
「えいっ」
少女の胸に向けて<ロンギヌスの槍>を突き立てた。絶叫が響き―――
「…あ。ダメ。失敗。次いこ、次」
心臓を貫かれ、絶命した少女をまるでモノのように脇にどけて、次の生贄を指名する。

「あー。また失敗!」
「こいつもダメか!」
「あーもう、次持ってきて!」

―――その凄惨な儀式を、レミリアは震えながら見ているだけしかなかった。
(助けて…)
それは誰に対しての呟きだったのだろうか。
優しい父?気立てのいい母?慈悲深い神父様?それとも―――神様?
(神父様…大好きな神父様…!)
今でも、大好きだ。でも、一つだけ恨んでいる。
(嘘吐き…!神父様の嘘吐き!神様が見守ってくれてるんなら…何でみんなを助けてくれないの…?)
「―――あーあ。君で最後だ」
こりゃ失敗だな、とぼやきながら白フードはレミリアの腕を掴む。抵抗の意思は、既に失せていた。
もう、何もかもどうでもよかった。
父も、母も、神父様も、仲間達も先に逝ってしまった。
これならもう―――向こうの方が楽しそうだ。
レミリアは死を前にして、安らかですらあった。
「じゃ、いくよー。ほれ」
明らかにやる気のない様子で、けれど刃は容赦なくレミリアの心臓に食い込んだ。
「ぐ…ああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
激痛。憤怒。悲嘆。絶望。
先程までの聖者の如き安らかさは、それらの前に一瞬にして吹き飛んだ。
負の感情全てがないまぜになって、全身を駆け巡った。
何で?何でこんな事になるんだ?
どんな辛い事があっても強く、優しく、正しく生きてきたつもりなのに。

(ああ、そうか。助けてくれる神様なんか―――いないんだ)
悟った。
(あるのは―――残酷な運命だけ)
だったら。
(こんな運命なんか―――捻じ曲げてやる)
それは、人間として何らかの形で訪れる死という運命を、否定した瞬間だった。
(このまま死んでたまるか…!私は…私は…!)
―――化け物に成り果ててでも生き延びて―――
―――このクズ共を八つ裂きにしてやる―――
―――運命に、復讐してやる―――

誰かの、何者かの、脈動を、感じた。
例えるなら足下に、真っ黒な何かが這い寄ってくるような。
返り血で真紅に染まった姿で、レミリアは嗤う。もはやそれは―――朗らかな少女の笑みではない。
まさしく、鬼そのものの貌だった。
「ころちて…ころ…ちて…」
「…あー。もう、完全に精神があっちにイっちゃってるわね」
これ以上は、どう痛めつけても<ころちて>としか言わないだろう。
潮時ね、とレミリアは男の頭を両手で挟み込む。
「お望み通り、殺してあげるわ。気分はどう?」
「あ…あ…」
その言葉を聞いた瞬間、彼はまさに至福の表情を浮かべた。
やっと、この形容しようもない地獄から解放される。
「あり…が…とう…」
多分彼は、生まれて初めて、心の底から感謝していた。

ぶちゃっ。

頭を挟み潰し、彼は死体―――というよりも、残骸と化した。
その残骸の中に、光る物を見つける。
純銀のロザリオ。
「神父…様…」
反射的に掴み取ろうとして。
「…っ!」
肌が焼ける痛みに、手を離す。そうか、と思い至った。
「私…吸血鬼になったんだものね…そりゃあ銀なんか、持てないか」
自嘲する。
「あははははは…」
廃墟の古城に響く、虚ろで乾いた笑い。
超越者となった彼女には似つかわしくない―――或いは逆に、だからこそこれ以上なく相応しい―――
カラカラの笑い声だった。
「あはは…私、化け物になっちゃったよ…」

「化け物とは酷いね。人間じゃないのは確かだけどさ」

レミリアの背後から、どことなくおどけた声。
振り向けば、いつの間に現れたのか、一人の男が立っていた。
見てくれは、何の変哲もない男だった。
まずまず整った顔立ちだが、特にこれといって特徴もない。
極々、ありふれた青年だ。
だが、レミリアには分かった。人でなくなった彼女には、理解できた。

―――こいつも、自分と同じ、化け物だ―――

「だから化け物扱いは酷いってば…とにかくその通り。君と同じで、僕も吸血鬼さ」
心を読んだかのように、そう答える男。
にこやかで、人好きのする―――しかし、瞳の奥に底知れぬ深淵を宿した人外の笑顔。
「…あなたが誰で、何をしに来たかはどうでもいい」
紅の瞳が、大きく見開かれた。
「問題は、私の敵なのかどうかよ」
紅い風が、渦を巻く。
古びているとはいえ、頑丈に造られているはずの城が、今にも砕けそうな程に震える。
レミリアは、特に何かしたわけではない。
ただ、男に向けて威嚇の意味を込めて殺気を放った―――それだけだ。
それだけの事で、天地を揺るがす程の圧力が生み出された。
これこそが―――吸血鬼。
その中でも別次元の存在である、始祖の力だ。
「―――素晴らしい」
しかし、殺気を向けられた当の本人はといえば、感極まった声で呟く。
「何と苛烈で―――華麗な始祖(ソース・ブラッド)か…!」
男は、瞳に涙さえ浮かべて感動に打ち震えていた。
レミリアは何とも興を削がれたような気分で、珍獣を見るような目で彼を睨む。
「あなたは」
問いかける。
「あなたは…誰?」
男は、涙を拭いて笑顔で答えた。
「可愛い女の子の味方さ」


―――これは、真紅の吸血姫―――レミリア・スカーレットが産まれた夜の物語。
続きはまた、後ほど―――