SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 第095話 「演劇をしよう!! (前編)」  (3)


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【銀成学園。屋上】

 貴信は床の上にぼんやり座っていた。
 客観的にいえば香美があぐらをかいている状態なのだが、一応彼女と体を共有している身である。貴信もまた「座っている」
といえた。
 香美の目の前には斗貴子と剛太。まだ来ぬ防人たちについて愚痴をこぼし合っている。

 秋らしく床の感触はなかなか涼しい。きょろきょろと落ち付きなく目玉を動かし周囲を見る。一部やけに真新しい床板と
鉄柵が設けられている──屋上につくなり剛太が開口一番指差した。曰くこの前鐶にやられた。1階からここまで吹き飛ば
された。修理の跡だ──以外とりたてて特徴のない屋上だ。人気もない。
 ただ時おり生徒たちの声が下の方から響いてくる。校舎と校舎の間にある連絡通路からだろう。ここまで斗貴子と剛太に
両脇固められつつ『護送』されてきた貴信だ。当たり前だが屋上に行くためにはまず連絡通路を通り、校舎内の階段を登ら
なくてはならない。その道順を反復しつつ、「いかにも楽しそうな」生徒の声に溜息をつく。

(いいなあ!! きっとみんな楽しい学園生活を送っているというのに僕ときたら……!!)

 道中見た銀成学園生徒たちの輝くような笑顔が胸を抉って仕方ない。500mlのパック。菓子パン。幕の内弁当。それらを
ひっさげながら友達たちと昼休みモードでキャッキャしてる学生たち。中にはいかにもカップルという男女もいた。彼らは人目も
憚らず通路の端に座りこみ、手作りの弁当を「あーん」しあっている。それがますます貴信の心を辛くする。人間だったころ、
学生だったころ、円満な人間関係を築けなかった貴信にとって学園生活は地獄──(ハイみなさん2人でグループを作っ
て下さい!……あれ? ○○君だけまだですね。誰かー! ○○君とグループを作ってあげてくださいー!!」)──なのだ。

(て!!! 転入しなければ良かった!! 僕たちだけ寄宿舎に居れば……僕たちだけ寄宿舎に居れば良かった……!!)

 人知れず涙を流す貴信に気付いているのかいないのか。
 苛立たしげな叫びが屋上に広がった。
「……ガス中毒ぅ!? また何をやっているんだ戦士長たちは!!」
 屋上に不機嫌な声が轟いた。発信源を見る。ちょうどもの凄い形相の斗貴子が携帯電話を閉じるところだった。。
「どうしました先輩」
「早坂姉弟とまひろちゃんと若宮千里と河合沙織とヴィクトリアと鳩尾無銘がガスでやられたらしい。他の生徒にも僅か
だが被害が出ている。戦士長と毒島と鐶で保健室に運びしだい、こっちに来るそうだ」
「じゃあ特訓についての打ち合わせは? 大戦士長救出のための。今からやる予定でしたよね?」
「遅れるだろうな。まったく。今朝までに終わらせれば良かったものを」
「結局昨日は音楽隊の身の上話聞いて終わりでしたしね」

「つーかさ」
 それまで無言であぐらをかいていた香美が不思議そうに呟いた。
「もりもり(総角)とあやちゃん(小札)の名前でてこんかったけど、2人はなにしてんのさ? ここ来んの? 来ないの?」

 彼女を除く一同の目が点になった。一番早く動いたのは斗貴子で、彼女は電光のごとき素早さで携帯電話を開き、そし
て叩いた。20秒後。防人経由で現状と現況を把握したのか。彼女はこう叫んだ。

「ええい!! 逃げられた!!」
「逃げられたァ!!? まさかガス騒動のどさくさに紛れてですか!?」
「そうだ、小札を連れて!!」
「やばいじゃないですか! アイツ(副長戦の三分の一程度のページ数で負けたリーダーとはいえ)かなり強いんでしょ!」
 愕然たる面持ちで剛太が立ち上がる頃にはもう斗貴子、階段めがけ走り始めている。つられて貴信も立ち上がり、斗貴
子の後を追い始めた。
「ああもう!! だから裏返し(リバース)で拘束しろといったんだ!! 鐶と同じクラスにしておけばそれも可能だったろうに!!
『行くぞ香美! 僕たちも探すぞ!!』
「ああもうあの馬鹿もりもり!! 逃げんのはよくないでしょーが!! あんたはどーでもいいけどあやちゃんが困る!!」
「まだ遠くには行っていない筈だ!! キミは校外を探せ!! 私は校内だ!!」
「ラジャー!!」
「あと栴檀どもから目を離すな! 大事な人質だからな。いざとなったら利用して、脅して、抵抗できなくしてやる!!」
「ラジャー!!」
『え! なに、僕たちそんな扱い!?』
「さー出てこいもりもり!! あたしらの命が惜しかったらていこーをやめてでーてーくーるーじゃーん!!」
 口ぐちに叫びながら走る一同──香美はあまり良く分かってないらしく、剛太にぴょいぴょい飛び付きながら叫んでいる──
は階段に通じる扉を開き、そこに踏み入り、そして弾き飛ばされた。
 自画自賛したくなるほどの弾き飛びぶりだった。ばらばらと地面に散らばった一同は一瞬何が起こったのか判じかねた。

「バッキャロー大浜!! 斗貴子さんに何してんだ!!」
「ゴメン。急に走ってきたから」
「急いでいるみたいだけどちょっといい斗貴子氏?」

 扉から出てきたのは3人の少年だった。先頭にいたのは気弱そうだがひどく恰幅の良い青年で、彼への出会い頭の
衝突をして吹き飛んだのだと一同は理解した。その後ろには眼鏡少年とリーゼント。大浜、六舛、岡倉……貴信は彼らが
武藤カズキの親友というコトはおろか名前さえ知らないが、その顔には見覚えがあった。とても嫌な、見覚えが。

(確か授業中僕と目があった人たち!! マズい! まさか僕たちの正体を追求しに……!?)

 鼓動が跳ね上がる。汗が噴き出し香美の後ろ髪をべっとりと濡らす。大浜がこっちを見ているような気もした。

「ちょっと、といわれても。悪いが今は時間が……」

 口ごもる斗貴子の手の中で携帯電話が振動した。メールが届いたらしい。苦い顔の斗貴子がそれを剛太と香美に披瀝
した。

【差出人:フ】

【件名:フ。】

【内容:フ。失踪気味ですまない。いまから3分以内に屋上へ行く】

「……という訳だ」
「あんたさ、もりもりの名前「フ」で登録してんの?」
「違う!! 私が見せたいのはそこじゃない!! 奴がここに来るなら探す必要もないと!! ああもう! 音楽隊はこうい
うばかりか!! いい加減いやになってきた……いつもこうだ、おかしな連中の面倒ばかり……」
 語調はだんだんと弱くなり後半に至ってはもはや泣き声だった。斗貴子の苦労が、伺えた。
「あの、もし3分以内に総角が来なかったらどうします?」
 やや蒼い顔で手を挙げる後輩に、先輩は迷いなく断言した。
「人質ごとブチ撒ける」
『やっぱり!?』
「あ、もう1通メール来たみたいですよ」

【フ。ちなみにいま小札をお姫様抱っこしているぞ。写真は1枚20円だ】

「知 る か !」

 凄い力で携帯電話が叩きつけられた。床板に罅(ひび)が入るほどだった。


「どうやら時間ができたみたいだし、単刀直入に聞くけど」

 騒いでいた一同ははっと六舛を見た。そして彼は言葉通りとても単刀直入な言葉を吐いた。

「あまり突っ込まないけど任務増えた? 演劇の方、どうする?」


 貴信は斗貴子を見た。「忘れてた!」。そういう顔を彼女はしていた。


「フ。成程な。状況を整理してみよう。まずパピヨンどのが演劇部の監督になった。部員への、とりわけ武藤まひろという
お嬢さんへの悪影響を懸念したセーラー服美少女戦士はそれを防ぐべく演劇部に入り、一晩だけとはいえ秋水ともども
演技の神様とやらの元で修行した。戻ってみるとパピヨンどのは3日後の劇発表を決めた。それは他の劇団との対抗形
式で、負ければ全員男女問わずのセーラー服着用。彼の影響、ますますもって広がるはまあ確実、絶対勝たねばなるま
い、と。フ。流石は俺の理解力」
「それが昨日の話だ。発表まであと2日しかない。だがお前たちの監視もしなければならないし」
「大戦士長どの救出に備え、俺たちと特訓もしなければならない、と。フ。すまない。悪いタイミングで忙しくしてしまったな」

 屋上の隅で斗貴子と総角がヒソヒソと話している。遠巻きに、訝しげに彼らを眺める六舛たちにはもちろん聞こえていな
いが香美(ネコ)と聴覚を共有する貴信には嫌というほど聞こえてくる。

「つかさあやちゃん、さっきからなんかあわあわしてるけどだいじょーぶ?」
「あわわ……お姫様抱っこ……お姫様抱っこ~~~~~! 流れる金髪は正に騎士の如く、軽々と廊下を駆ける様たるや正
に英姿颯爽見惚れるほどの素晴らしさ! そもお姫様抱っこは乙女の憧れ拒める道理はありませぬ。腕Aが腕に当たり脇B
の下が逞しき胸板に当たるあの感触。腕Bを首に巻きつけるあの感触。嗚呼少女のロマンっ! 甘酸っぱさを感じずにはい
られません! それを何度夢見たコトか! 何度おねだりしたいのを呑みこんだコトでしょう! さささされど、されど実現した
らば抱えるは不肖が如きちんちくりん…………合いませぬ合いませぬパズルのピースが合いませぬ……にも関わらず生
徒どのに教師どのに老若男女様々な方々に見られ囁かれ囃し立てられまするは最早まったく羞恥の一言下車は不可! 
恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしいィィィィー!! 抑え込まれ成す術なくあうあう首を振るばかりの不肖! そこへダメ押
しとばかり囁かれる悪魔の一言! 「お前軽いな」。ああああああああーっ!!! 直撃! 直撃ですーーーーー!! ぎゃあ
ああああああああああ!! 何という痛烈さ! 嬉しくも恐ろしきひとこ……ああっ、顔がッ、顔が近い! ダメですダメです
ダメなのでありますここは学び舎、人もおります! それ以上は、それ以上はーーーーっ!!」
「何言ってんだコイツ?」
 顔も真赤に瞳を渦巻かせる小札はまったく意識が混濁しているようだった。うわ言のように意味不明な言葉を吐くばかり
でまったくどうにもならなかった。時おり頬へオーバーアクション気味に両手を当てたり、首ごとおさげをブンブン振るが現世へ
復帰する気配はない。彼女が何かを拒むように両手をばたつかせた辺りで、剛太はなぜか総角を睨み、ひどく悔しそうな
顔をした。少し泣きそうだった。
「どーしたじゃんあんた! おなかいたい? おなかいたいときはクサ喰うといいじゃん。もさもさした丸っこいの吐くじゃん」
「うるせえ! 肩組みにくんな!」
「ヘーイ彼女! そんなつれない奴放っておいて俺とお茶しなーい!」
「しゃあー!! うっさい! さっきからあんたはなんか好かん! なんかこう、やな感じするじゃん!!」
 香美は牙を剥いた。恐ろしい気迫だった。
 それまでの鼻下伸びたエビス顔もどこへやら。岡倉はリーゼントも萎ませ崩れ落ちた。
「露骨すぎるからだよ岡倉君。付き合いたいならもっとこう手順ってもんが」
「下心バレバレ。せめて胸は見ない方がいいぞ。このエロスが」
「うるっせえ!! 黙って聞いてりゃ好き勝手いいやがってコンチクショー!!」
「お前もお前で俺にばかり絡んでくるな! あっちのリーゼントにしろ!! お前気に入っているみたいだし!」
「いやじゃん! ご主人かあんたに限る!!」
「なんでだよ!」
「なんでかは分からん!」

(なんかすごいなこの状況!!)

 貴信は笑いたくなってきた。分身のような香美が剛太とやいのやいのとじゃれ合い、六舛たちは軽く喧嘩し、小札は相変
わらず現世に復帰していない。総角はというと何やら叫ぶ斗貴子をまあまあと両手で制し、指を立てつつ語りかけている
らしい。説得。貴信がその内容を聞くともなしに聞いているうち斗貴子も譲歩する気になったようだ。彼女は不承不承と頷いた。

(いいなあ! こういうのが学園生活なんだよなあ!! 僕は参加できないけど、いいなあ!!」
「フ。参加したくばすればいい 。お前は自分が思っているほど嫌われる性分ではない」
(!?)
 髪のすだれの中で貴信は目を剥いた。すぐ眼前には見なれすぎた端正な顔。総角が余裕の笑みで囁いている。
 どうやら屋上の隅から一足飛びにきたらしい。面喰らった岡倉と大浜が「見たかよ今の動き!?」「早っ!」とざわつく中
音楽隊のリーダーは貴信の肩に手を置いた。
「弱さゆえに節義と正しさを守らんとするお前はその美点を知られさえすれば確かな信頼を得るコトができる。自信を持て。
たまには心を開いてみろ。人間だった頃とはもう違う。いまは仲間を、俺を頼れる。ヘマをやっても庇ってやるさ。頑張ろう。
俺たちと共に、楽しい学園生活のために」


(俺たちと共に……)


「フ。まだ復帰していないか小札。少々やりすぎてしまったかな?」
 目で追った総角は、ややバツの悪そうな笑みをしながらも小札の頭をくしゃりと撫でていた。彼女の耳が甲高い音と共に
蒸気を噴く中、香美は後頭部(貴信の頬の辺り)をぽりぽり掻きつつ、呆れたように呟いた。
「あのさもりもり。いまのあやちゃんにじゃれたいからじゃないでしょ? ご主人になーんかいいコトいったけど恥ずかしいから
ゴマカしてるって感じじゃん。恥ずかしいならいわなきゃいいじゃんあんた」
「フ。さあな。ところでそこの眼鏡の少年──…」
 細い後ろ髪をピンと跳ね上げた総角は告げる。音楽隊の命運を変えるかも知れない言葉を、六舛に告げる。

「演劇部の話は聞いた。俺たちも入部させて貰いたいが、いいかな?」

 貴信は確かに聞いた。総角と斗貴子の”密談”がこう締めくくられるのを。

「要は俺たちが演劇部に入ればいい。されば監視もやりやすい。特訓についてはアレだな。アクション。アクションの練
習のフリしてやろう。なぁに。銀成市民はノリがいい。鐶が変形しても貴信が手から光球出してもあまり深く突っ込まないさ」




【銀成学園の『地下』】


 時は少し巻き戻る。

「呆れた。保健室が嫌なんて」
「大仰なのは嫌いなんでね。なぁに。血を吐いた拍子に眠くなり倒れこんだだけさ。少々眠ればすぐ良くなる」

 真っ白な部屋だった。ベッドと、部屋の隅に洗面台がある以外はまったく何もない部屋だった。
 そんな部屋に『椅子を作って座りながら』ヴィクトリアはやれやれと微苦笑した。ベッドの上のパピヨンは強がっているが、
覆面(マスク)越しにもクマが見えるほどやつれている。
 原因は簡単で、最近彼は演劇部の監督と白い核鉄の精製を同時にこなしている。授業のある時間は研究室に引きこもり
放課後は銀成学園で監督業。それが終わればまた研究。ほとんど寝ていないようだった。
 ヴィクトリアとしては研究室を空にする是非も問いたいが、基本的に彼不在の時はヴィクトリアが研究室で番をしているし、
特に口やかましくいう必要もないとも思っている。加えて昨晩遅くようやく「嘗て彼の配下だったという」5体のホムンクルスの
クローンが完成した。ヴィクトリアの見るところカエル型はどうしようもない作るだけムダな役立たずのごみくずホムンクルスだが
他はなかなか強い。特にワシ型に至っては尋常ならざる忠誠心をパピヨンに抱いているようで、正に番人は適任といえた。
(もっともおかげで仕事が増えたわ。アイツらのエサを作るのも私じゃない)
 聞けばクローン元どもは無差別に銀成市民を喰い散らかしていたようだが、いまは時期が時期である。たかが動植物型の
食人衝動で騒ぎを起こし、戦団と対立するようなコトは避けたい……そういうパピヨンの意向を汲み、目下ヴィクトリアは
ママ味のミートパイを量産中である。

「しばらく寝る。起こすな」
 言うが早いかパピヨンはうつぶせになり、鼻提灯を出し始めた。
「器用ね……」
 目を見張りながら率直な感想を漏らすヴィクトリアは、そこできゅっと唇を結びゆっくりと上体を乗り出した。そして耳を澄まし
パピヨンが正体をなくしているのを認めると、視線を彼の掛け布団に移した。

(一番高くて柔らかいの買ってみたけど……寝心地、いい?)

 午前中の授業が終わるなりパピヨンからメールが来た。「手伝え」。訳も分からず指定の場所に行くと口から大量の血を
流し倒れているパピヨンが居た。ひとまず1階に運び更にアンダーグラウンドサーチライトの地下世界へ。しかし内装を
変えるコトのできる武装錬金といえど布団のような柔らかな物についてヴィクトリアは自信が持てず、取り急ぎ既製品を
買い求めた。店は遠かったし布団はかさばったが、その辺りの問題はホムンクルスの膂力と武装錬金の地下道を駆使
して何とかした。昨日聞いた総角のアドバイスを、実行した。

 パピヨンの寝息はまろやかだ。少なくても寝具が睡眠を妨げるほど劣悪というコトはなさそうだ。
(良かった)
 安らかな笑みを湛えながらしばらくヴィクトリアは鼻提灯を眺めた。安堵が全身に広がっているようだった。
(久しぶりねこの気分。ママを看病している頃……熱が下がったり、呼吸が安定したりした時の)
 ひょっとしたらこういうカオのできるのが本当の自分かも知れない。とりとめもない考えを巡らせながらそっとパピヨンの
肩に布団を掛け、ヴィクトリアは地上に戻るコトにした。武装錬金の特性上、パピヨンはしばらく地下に閉じ込められるコト
になってしまうが、寧ろ外敵から守れるような気がして、それがヴィクトリアには誇らしかった。
(ま、目覚めたらすぐ出してあげるわよ。どうせ携帯電話で連絡してくるでしょうし)

 ヴィクトリアは無言で腕を振った。壁にも床にも天井にも、思いつく限りの防音設備を施して、それから外へ出た。



【銀成学園 華道部部室】

 華道部部室は騒然としていた。突然のガス騒ぎで多くの生徒が昏倒したため保健室だけでは処理しきれず、応急処置と
して畳のある華道部の部室に布団を敷き負傷者の介助に当てているのだ。
 その一角でヴィクトリアは歯がみしていた。


(今度は私が看護される番……? どうなってるのよ本当)


 恨めしい気分でいっぱいだった。戦士! 彼らの不手際のせいでヴィクトリアは療養を余儀なくされている。
 シャっという音がした。布団の周りを囲う水色のカーテンから栗毛の少女の首だけが生えていた。
「大丈夫びっきー? 一番高くて柔らかいの選んでみたけど……寝心地、いい?」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」
 ヴィクトリアは本当に心からまひろを怒鳴りつけたくなったが、それが原因で墓穴を掘るのも馬鹿馬鹿しいので取りあえず
頭まで布団をかぶった。そして真赤な顔で縋るように思った。
(だだだ大丈夫よ。偶然の一致に決まってるじゃない。だって私言ってないもの。言ってないもの……)