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天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ ヴァンプと幽香の密約・そしてとある吸血鬼の憂鬱
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furari
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二回戦第一試合―――サンレッドと風見幽香の死闘。
それは、太陽の戦士の勝利で幕を閉じた。
興奮覚めやらぬ中、サンレッドは両手をゆっくりと下ろし、ようやく息をついたのだった。
『天体戦士サンレッド、一回戦に続いてまたしても大番狂わせをやってのけたぁ!幻想郷最強とも噂される風見幽香
を激闘の果てに捻じ伏せ、準々決勝への進出を決めました!まさに彼こそはドSを越えた超絶ドS―――
真・究極加虐生物サンレッドの誕生だッ―――!』
「フン!」
元ネタ通りに鼻を鳴らしてノリのいい所を見せるレッドさんである。
彼は倒れた幽香を見下ろし、口を開いた。
「どうだ、風見…最初に言った通り、俺の拳がおかしくなるまでボコってやったぜ…」
そう語るレッドの両手からは、ポタポタと血が零れ落ちている。
単に皮が破れているだけではない。折れた骨が、肉を突き破っていた。
「あと、もう少し…もう少しだけテメーがしぶとかったら、俺の負けだったよ」
「そう…惜しかったわ。けどね…その、ほんの少しの差こそが、全て…」
「…………」
「ああすればよかっただの、こうすれば勝ってただの、下らない言い訳などしない。負けたわ…サンレッド」
「なら…今すぐあいつを解放しろ。忘れたとは言わさねーぞ」
「解放…?ああ、ヴァンプ将軍の事ね」
何がおかしいのか、幽香はくすりと笑う。
「それについて、あなたに言わなければならない事があるの」
「何だと?」
「実はね、彼は…」
それは、太陽の戦士の勝利で幕を閉じた。
興奮覚めやらぬ中、サンレッドは両手をゆっくりと下ろし、ようやく息をついたのだった。
『天体戦士サンレッド、一回戦に続いてまたしても大番狂わせをやってのけたぁ!幻想郷最強とも噂される風見幽香
を激闘の果てに捻じ伏せ、準々決勝への進出を決めました!まさに彼こそはドSを越えた超絶ドS―――
真・究極加虐生物サンレッドの誕生だッ―――!』
「フン!」
元ネタ通りに鼻を鳴らしてノリのいい所を見せるレッドさんである。
彼は倒れた幽香を見下ろし、口を開いた。
「どうだ、風見…最初に言った通り、俺の拳がおかしくなるまでボコってやったぜ…」
そう語るレッドの両手からは、ポタポタと血が零れ落ちている。
単に皮が破れているだけではない。折れた骨が、肉を突き破っていた。
「あと、もう少し…もう少しだけテメーがしぶとかったら、俺の負けだったよ」
「そう…惜しかったわ。けどね…その、ほんの少しの差こそが、全て…」
「…………」
「ああすればよかっただの、こうすれば勝ってただの、下らない言い訳などしない。負けたわ…サンレッド」
「なら…今すぐあいつを解放しろ。忘れたとは言わさねーぞ」
「解放…?ああ、ヴァンプ将軍の事ね」
何がおかしいのか、幽香はくすりと笑う。
「それについて、あなたに言わなければならない事があるの」
「何だと?」
「実はね、彼は…」
「あ、幽香さんはお疲れでしょうし、そこからは私がレッドさんに説明しときます」
―――そう言いながら、入場門から現れたのは、囚われの身であった筈のヴァンプ様であった。
「レッドさん、二回戦突破おめでとうございます!いやー、素晴らしい闘いでした!」
彼はニコニコしながら、レッドをねぎらう。
レッドさんはというと、口をパクパクさせながら彼の顔を指差すばかりだ。
「お、おい…どういうこった…いや…正直、もう、可能性は一つしかねーって分かるんだけどよ…」
「その通りよ」
幽香が頷く。
「グルだったの、私とヴァンプ将軍」
「ええ。端的に言うとレッドさんを騙してました、すいません」
「端的に言わなくても分かるよバカ野郎!じゃあ何か!?磔になってたヴァンプは何なんだよ!?」
「ああ。あれは幽香さんが植物を変化させて作った人形なんですよ。よく出来てたでしょ?」
「…………おい。まさか」
レッドは全ての表情が消えた顔で、審判・四季映姫を見た。
果たして彼女は、したり顔で頷く。
「はい。私も事前に演出として説明されていました。でなければ、風見幽香を反則負けにしていますよ」
「おい…」
「なお、八雲紫もこの事は了承済みです」
「あいつもグルかぁぁぁぁぁっ!」
自分が完全にピエロであった事を知り、レッドは腹立たしいやら悔しいやら情けないやら、散々な気分である。
何故、勝利したというのに、こんなやるせない気持ちにならなければならないのか。
「…私も、最初は本気で拉致するつもりだったんだけどね。ヴァンプ将軍と話してると、あんまりなお人好しぶりに
そんな気分も失せちゃって。ほんとに悪の将軍なのかしら、この人…」
「えーっ、それは酷いですよ、幽香さん。私はいずれこの幻想郷だって征服するつもりですから(笑)」
何気に壮大な野望を語るヴァンプ様に、会場の皆からも暖かい笑いが贈られた。
ヴァンプ様はテレテレした様子で手を振ってそれに応える。
「ね、こんな調子よ…何だか自分がどうしようもない極悪人に思えてきちゃって。予定を変更して、こういう演出に
なったというわけ」
「ええ、そうなんですよレッドさん。いやあ、しかし感激です。私に危機が迫った事でレッドさんがあんなに怒って
下さるだなんて。普段は厳しい事を言ってても、やっぱりレッドさんは優しいヒーローだったんですね(ポッ)」
「…………ヴァンプ」
「はい?」
「言いたい事は山ほどあるけど、とりあえず、殴るぞ」
ガツンッ。
最後の力を振り絞り、砕けた拳でヴァンプ様をブン殴って―――
レッドは遂に、精根尽きて倒れたのだった。
「レッドさん、二回戦突破おめでとうございます!いやー、素晴らしい闘いでした!」
彼はニコニコしながら、レッドをねぎらう。
レッドさんはというと、口をパクパクさせながら彼の顔を指差すばかりだ。
「お、おい…どういうこった…いや…正直、もう、可能性は一つしかねーって分かるんだけどよ…」
「その通りよ」
幽香が頷く。
「グルだったの、私とヴァンプ将軍」
「ええ。端的に言うとレッドさんを騙してました、すいません」
「端的に言わなくても分かるよバカ野郎!じゃあ何か!?磔になってたヴァンプは何なんだよ!?」
「ああ。あれは幽香さんが植物を変化させて作った人形なんですよ。よく出来てたでしょ?」
「…………おい。まさか」
レッドは全ての表情が消えた顔で、審判・四季映姫を見た。
果たして彼女は、したり顔で頷く。
「はい。私も事前に演出として説明されていました。でなければ、風見幽香を反則負けにしていますよ」
「おい…」
「なお、八雲紫もこの事は了承済みです」
「あいつもグルかぁぁぁぁぁっ!」
自分が完全にピエロであった事を知り、レッドは腹立たしいやら悔しいやら情けないやら、散々な気分である。
何故、勝利したというのに、こんなやるせない気持ちにならなければならないのか。
「…私も、最初は本気で拉致するつもりだったんだけどね。ヴァンプ将軍と話してると、あんまりなお人好しぶりに
そんな気分も失せちゃって。ほんとに悪の将軍なのかしら、この人…」
「えーっ、それは酷いですよ、幽香さん。私はいずれこの幻想郷だって征服するつもりですから(笑)」
何気に壮大な野望を語るヴァンプ様に、会場の皆からも暖かい笑いが贈られた。
ヴァンプ様はテレテレした様子で手を振ってそれに応える。
「ね、こんな調子よ…何だか自分がどうしようもない極悪人に思えてきちゃって。予定を変更して、こういう演出に
なったというわけ」
「ええ、そうなんですよレッドさん。いやあ、しかし感激です。私に危機が迫った事でレッドさんがあんなに怒って
下さるだなんて。普段は厳しい事を言ってても、やっぱりレッドさんは優しいヒーローだったんですね(ポッ)」
「…………ヴァンプ」
「はい?」
「言いたい事は山ほどあるけど、とりあえず、殴るぞ」
ガツンッ。
最後の力を振り絞り、砕けた拳でヴァンプ様をブン殴って―――
レッドは遂に、精根尽きて倒れたのだった。
―――担架で運ばれていくレッドと幽香。そしてコブが出来た頭を押さえつつそれに付き添うヴァンプ様。
それを見つめ、心から安堵している女がここに一人。
「もぉ~っ!紫ったら、仕込みならそうと早く言ってよ。幽々子、本気で心配しちゃったじゃない!」
白玉楼の主・西行寺幽々子である。
「ああ~、よかった!ほんっとうによかった!これでまたヴァンプさんの手料理が食べられるわ!」
「そんな事言ってると、妖夢が泣くわよ?白玉楼の台所を任されてるのは本来、あの子でしょうに」
「それがね、あの子ったら<ヴァンプさんが来てから楽でいいですねー>なんて平然と言ってるのよ。誰があんな風
に育てたのかしら!」
「鏡を見なさい。ほら」
「まあ、この世の者とも思えない美少女ね!」
「ぎゃはははははは!ヒィ~ひっひっひっひ!wwwwwwwwwwwww!」
「そこまで爆笑するこたないじゃない!」
「ごめんごめん。とにかくこれで太陽の戦士・サンレッドも八強入り。それも、星熊勇儀と風見幽香を倒して―――
いいわ。とてもいいわね、彼は。予想以上にトーナメントを引っ掻き回して、混沌とさせてくれてるじゃないの」
「楽しそうねぇ、紫…ま、貴女はそういう子だから」
そうのたまう幽々子自身も、どこか楽しげに語る。
「目的も過程も結果も、貴女は重視しない…幻想郷が楽しければ、それでいい。それだけで、貴女は動いてる」
「今回に限っては、純粋に彼女の…アリス・イヴの遺志を汲んだつもりだったのだけどね。気付けば、この通りよ」
だけどね、と八雲紫は―――幻想郷の賢者は言う。
「きっと彼女も、このとてつもなく楽しい空気を味わいたかった事でしょう。この上なく楽しい時間を幻想郷の皆に
味わわせたかったのでしょう―――だからこれでいいの。だから、もっと楽しませて頂戴な」
それを見つめ、心から安堵している女がここに一人。
「もぉ~っ!紫ったら、仕込みならそうと早く言ってよ。幽々子、本気で心配しちゃったじゃない!」
白玉楼の主・西行寺幽々子である。
「ああ~、よかった!ほんっとうによかった!これでまたヴァンプさんの手料理が食べられるわ!」
「そんな事言ってると、妖夢が泣くわよ?白玉楼の台所を任されてるのは本来、あの子でしょうに」
「それがね、あの子ったら<ヴァンプさんが来てから楽でいいですねー>なんて平然と言ってるのよ。誰があんな風
に育てたのかしら!」
「鏡を見なさい。ほら」
「まあ、この世の者とも思えない美少女ね!」
「ぎゃはははははは!ヒィ~ひっひっひっひ!wwwwwwwwwwwww!」
「そこまで爆笑するこたないじゃない!」
「ごめんごめん。とにかくこれで太陽の戦士・サンレッドも八強入り。それも、星熊勇儀と風見幽香を倒して―――
いいわ。とてもいいわね、彼は。予想以上にトーナメントを引っ掻き回して、混沌とさせてくれてるじゃないの」
「楽しそうねぇ、紫…ま、貴女はそういう子だから」
そうのたまう幽々子自身も、どこか楽しげに語る。
「目的も過程も結果も、貴女は重視しない…幻想郷が楽しければ、それでいい。それだけで、貴女は動いてる」
「今回に限っては、純粋に彼女の…アリス・イヴの遺志を汲んだつもりだったのだけどね。気付けば、この通りよ」
だけどね、と八雲紫は―――幻想郷の賢者は言う。
「きっと彼女も、このとてつもなく楽しい空気を味わいたかった事でしょう。この上なく楽しい時間を幻想郷の皆に
味わわせたかったのでしょう―――だからこれでいいの。だから、もっと楽しませて頂戴な」
「楽しくなかったわね」
レミリア・スカーレットは、そう嘯いて鼻を鳴らす。
「とんだ茶番劇だったわ。苛立ちさえも覚える」
「レミリアちゃんったら…」
しょうがないなあ、という顔のコタロウ。
「すごい闘いだったねー、ヴァンプさんが無事でよかったねーって、素直に言えばいいじゃない」
「如何にあなたの御言葉でも、奴を…サンレッドを褒めるような事だけは言いたくありません」
「ガンコだなあ…何でそんなにレッドさんを嫌うのさ」
「奴は、太陽の戦士です。そして、私は吸血鬼です」
太陽は我々にとって不朽の怨敵―――レミリアは、そう語る。
「そんな事ないよ」
コタロウは、微笑む。
「ぼくも兄者も、レッドさんと仲良しだもの。レミリアちゃんだって、きっと仲良くなれるよ」
「…………残念ながら、ありえません。サンレッドは私にとっては、永遠に敵でしかないでしょう」
それだけ言って、レミリアはコタロウに背を向けた。
「それでも―――少なくとも、あなたやジローとは仲良くしたいと思っていますわ」
「もっちろんだよ!ねえ、兄者」
「ええ。私のような若輩者でよろしいのなら」
天真爛漫に答えるコタロウと、礼儀正しく頷くジロー。
好対照な兄弟の姿に、レミリアは微笑んだ。そして歩き去りながら、言い残した。
「いずれ我が棲処―――紅魔館へと招待しましょう。幻想郷には私以外の吸血鬼はいませんから―――これでも、
寂しい思いをしておりまして。その折には是非、楽しい一時を」
その言葉には、遥か悠久を生きてきた古血(オールド・ブラッド)としての寂莫と孤独が込められていた。
ジローはレミリアの背中を見送りながら、彼女が生きてきたであろう長い、永い時を想う。
彼女の周囲には、友人と言える存在はそれなりにいるだろう。
誰かと一緒にいて、心安らぐ瞬間もあるかもしれない。
レミリア・スカーレットは、そう嘯いて鼻を鳴らす。
「とんだ茶番劇だったわ。苛立ちさえも覚える」
「レミリアちゃんったら…」
しょうがないなあ、という顔のコタロウ。
「すごい闘いだったねー、ヴァンプさんが無事でよかったねーって、素直に言えばいいじゃない」
「如何にあなたの御言葉でも、奴を…サンレッドを褒めるような事だけは言いたくありません」
「ガンコだなあ…何でそんなにレッドさんを嫌うのさ」
「奴は、太陽の戦士です。そして、私は吸血鬼です」
太陽は我々にとって不朽の怨敵―――レミリアは、そう語る。
「そんな事ないよ」
コタロウは、微笑む。
「ぼくも兄者も、レッドさんと仲良しだもの。レミリアちゃんだって、きっと仲良くなれるよ」
「…………残念ながら、ありえません。サンレッドは私にとっては、永遠に敵でしかないでしょう」
それだけ言って、レミリアはコタロウに背を向けた。
「それでも―――少なくとも、あなたやジローとは仲良くしたいと思っていますわ」
「もっちろんだよ!ねえ、兄者」
「ええ。私のような若輩者でよろしいのなら」
天真爛漫に答えるコタロウと、礼儀正しく頷くジロー。
好対照な兄弟の姿に、レミリアは微笑んだ。そして歩き去りながら、言い残した。
「いずれ我が棲処―――紅魔館へと招待しましょう。幻想郷には私以外の吸血鬼はいませんから―――これでも、
寂しい思いをしておりまして。その折には是非、楽しい一時を」
その言葉には、遥か悠久を生きてきた古血(オールド・ブラッド)としての寂莫と孤独が込められていた。
ジローはレミリアの背中を見送りながら、彼女が生きてきたであろう長い、永い時を想う。
彼女の周囲には、友人と言える存在はそれなりにいるだろう。
誰かと一緒にいて、心安らぐ瞬間もあるかもしれない。
それでも―――レミリア・スカーレットは、孤独だ。
一人ぼっちで―――独りぼっちだ。
先の言葉は、それを否も応もなく痛感させるものだった。
と―――魔理沙が、こちらを怪訝な様子で見つめているのに気付いた。正確には、コタロウを、だ。
コタロウもその視線に気づき、きょとんとして見つめ返した。
「魔理沙ちゃん、どうかした?」
「いや…お前さあ。ただのバカなガキかと思ってたけど、何者?」
「え、何者って?」
「だってさぁ、あのワガママ娘があんなに謙(へりくだ)って敬語まで使っちゃってるんだぜ?気になるだろ」
「―――バカです」
ジローが、ややぶっきらぼうに答えた。
「こやつは、単なるバカです」
「兄者ったら、ひどーい!」
「いや、単なるバカです」
抗議を無視して、繰り返す。その態度に、魔理沙もそれ以上はこの話題を追及してこなかった。
はっきり言って性格の悪い彼女ではあるが、軽々しく立ち入ってはならない領域なのだと察したのだろう。
「…気になるといえば、もう一つ気になるんだが」
魔理沙はそう言って、話を変えた。
「あいつ、自分以外に吸血鬼がいないとか言ってたけど―――確か、妹がいたはずだぜ?なあ、パチュリー」
「ええ。レミィに輪をかけて問題児の妹―――フランドール・スカーレットがね…」
「何ですって…?それは、初耳だ」
なら、何故―――あのような事を?
「気にしない方がいいんじゃないですか?ああいうタイプは平然と、意味もなく、嘘を吐くものですから」
妖夢はそう言ったが、ジローには納得できない。
少なくとも―――最後にレミリアが見せたあの背中は。
痛々しいほど孤独に塗れたあの姿は、嘘ではなかった。
勿論、たかだか百年しか生きていない自分が、その五倍を生きた遥か年長の吸血鬼の心情など、完全に分かる
はずもないのだが。
「それでも…彼女が嘘を言ったとは、思えない」
「…考えても仕方ないでしょう。もっと考えるべき事は、あるはずです」
妖夢はどこか物憂げだ。彼女なりに、思う所があるのかもしれない。
「例えば、東京レイヴンズは、いつアニメになるんでしょうか、とか」
「そんな事を物憂げに考えていたのですか…」
「そんな事とはなんですか。ジローさんの後輩でしょうが」
「それはそうですが、彼等はまだ三巻が出たばかりなんです。気が早いですよ」
「いや、実際に相当期待されてると思うんですよ。シリーズ開始とほぼ同時にコミカライズしたり」
「ふむ…確かに、漫画版も好評のようですしね」
「漫画版第一巻の帯の文句は、正直コアな層を狙い過ぎだと思いますが」
「公式で残念幼なじみ呼ばわりですからね…夏目さん」
「そっち系の新規開拓を相当意識してますよね。狐耳と尻尾の美幼女を書くとは流石に思ってませんでした」
「世の風潮というものでしょうか」
「まあ私が一番グっときたのは京子のパンチラですが」
「何気にパンツネタが好きですね、貴女…」
「正直、パンツとBLとファッションセンターしまむら以外の話はしたくありません」
「もっと他の世界にも目を向けなさい!」
「そんな事言われても困りますよ!」
「逆ギレされたっ!?というか貴女、しまむらの話なんて一度もしたことないでしょう!」
「何を仰る、ジローさん。妖夢といえばしまむら、しまむらといえば妖夢じゃあないですか。2011年度のしまむらの
マスコットキャラクターとして、この魂魄妖夢が選ばれた平行世界もきっとあるはず」
「この世界では違うという自覚はあるんですね」
「大のしまむらファンだというのは違いありません。今も服の下にヒートテックを着てるくらいですよ?」
「それはユニクロだーっ!」
「閑話休題(それはともかく)。しかし、あざの先生は三巻からという格言があるものの、今回はイマイチだった気も
しますね…面白いのは間違いないんですが、期待しすぎたというか」
「それは辛辣な。まだまだ土台作りの段階と考えるべきでしょう」
「とはいえ、専門用語ばかり羅列されても、正直ついていけないと感じる部分が多いのですよ」
「ふむ。確かに…」
「そこへいくと<力場思念(ハイド・ハンド)>や<視経侵攻(アイ・レイド)>は専門用語でありつつどんな能力なのか
簡単な説明だけで分かる好例でしたね。如何にも吸血鬼的な能力ですし」
「恐縮です」
「あ、いや。ジローさんを褒めたわけじゃないですから。その辺勘違いされても困るというか」
「ツンデレじゃない娘に勘違いしないでと言われると、辛いですね…」
「専門用語の話は置いといて、三巻がショボいと感じた一番の要因は<最凶の十二神将>という仰々しい触れ込み
で登場した鏡さんが単なるチンピラだったせいだと思うんですが、ジローさんとしては如何でしょうか?」
「弱い者いじめ大好きで、強い者には弱かったりと、普通にヤな奴ですしね…個人的には、ああいうタイプもいた方
が話の幅が広がるとは思いますが」
「ま、扱い切れずにハンパなキャラのままでリタイアなんて醜態だけは晒さないでほしいものです」
「…妖夢さん。さっきから、やたら厳しい意見ばかりじゃありませんか?」
「ファンだからこそ見る目が厳しくなるのですよ…話をアニメ化の方向に戻すと、やはり気になるのは声優ですね」
「なるほど。それは大事な要素です。かくいう私もアニメでは声優の熱演に随分助けられましたから」
「まあ、ここで声優妄想するというエロ漫画描いてた頃の的良みらんみたいな事はやめるとして」
「ここまで好き勝手言っておきながら、最後の一線は守るんですね」
「あれは正直、相当イタイ行為だったと本人も反省してるだろうし、寛大な精神で赦してやりましょうや」
「何という上から目線…」
「実を言うと一般誌で描き始めてからは、全然あの人の漫画見てないんですが」
「貴女、最低です!」
「とにかく、東京レイヴンズがアニメ化される日が楽しみですね。OPがどんな電波ソングになるのか、考えただけ
でワクワクしてきます。きっとパンツが空を飛びますよ」
「そういうノリの作品でもないはずですが」
「春虎くんや夏目さんがEDでデフォルメされてどんなダンスを踊るのかを想像しただけで萌えてきちゃいます」
「それは一昔前のセンスのような」
「コミケが春虎×冬児の強気受けな薄い本で溢れ返る日も近いでしょう」
「私はむしろ鏡×冬児の鬼畜攻めだと思うわ!」
「パチュリーさんが鼻息荒くしてこの話題に喰い付いてきたっ!?」
しかも、コアな分野で。
「これでも読書家だからね。実はさっきからどのタイミングで話に入ったものか見計らってたのよ」
「このタイミングで、ですか」
「じゃあ訊くけど、他にどのタイミングがあったというの?」
「…腐ってやがる…遅すぎたんだ…」
色んな事が。
「ほほぉ…とすると、パチュリーさんとしては純愛系より無理矢理迫られた方がいいと」
「モノにもよるわ」
「カズキの相手は誰だと思いますか?」
「パピヨンよりはブラボーね」
「一人前の戦士になるための特訓と称してアレコレですね、分かります」
スター○ストさんが怒りだしそうな会話だった。
「逆に尋ねるけど、一護の相手は?」
「浦原さん…と見せて更木隊長でいきましょうか!」
「いいわね、それ!」
ゴチン、と拳を打ちつけ合う二人。
腐った系統の話題で意気投合し、盛り上がり始めた妖夢とパチュリー。
ジローは流石に、この話に加わる気にはなれなかった(なってたら色々な意味でヤバい)。
ふと、周りを見ると。
コタロウと魔理沙、アリスは、ドン引きした目でこちらを見つめていた。
ジョジョ的に言うと<養豚場へ運ばれる豚を見るような>そんな目だ。
サンホラ的に言うと<この人達は何を喚いているんだろう…気持ち悪い…>そんな目だ。
「兄者達が何を言ってるのか、全然わかんないよ…」
「数十行かけて、こんなとこで力説することでもないよなぁ…」
「キモい(ばっさり)」
「…………」
何故、自分がこのような視線に晒されなくてはならないのか。
自分はただ日々の些細な出来事に小さな喜びと幸福を見出し、慎ましく生きているというのに。
ジローは石像のように黙りこくり、静かに、この話題が時と共に風化するのを待つ他ないのだった…。
と―――魔理沙が、こちらを怪訝な様子で見つめているのに気付いた。正確には、コタロウを、だ。
コタロウもその視線に気づき、きょとんとして見つめ返した。
「魔理沙ちゃん、どうかした?」
「いや…お前さあ。ただのバカなガキかと思ってたけど、何者?」
「え、何者って?」
「だってさぁ、あのワガママ娘があんなに謙(へりくだ)って敬語まで使っちゃってるんだぜ?気になるだろ」
「―――バカです」
ジローが、ややぶっきらぼうに答えた。
「こやつは、単なるバカです」
「兄者ったら、ひどーい!」
「いや、単なるバカです」
抗議を無視して、繰り返す。その態度に、魔理沙もそれ以上はこの話題を追及してこなかった。
はっきり言って性格の悪い彼女ではあるが、軽々しく立ち入ってはならない領域なのだと察したのだろう。
「…気になるといえば、もう一つ気になるんだが」
魔理沙はそう言って、話を変えた。
「あいつ、自分以外に吸血鬼がいないとか言ってたけど―――確か、妹がいたはずだぜ?なあ、パチュリー」
「ええ。レミィに輪をかけて問題児の妹―――フランドール・スカーレットがね…」
「何ですって…?それは、初耳だ」
なら、何故―――あのような事を?
「気にしない方がいいんじゃないですか?ああいうタイプは平然と、意味もなく、嘘を吐くものですから」
妖夢はそう言ったが、ジローには納得できない。
少なくとも―――最後にレミリアが見せたあの背中は。
痛々しいほど孤独に塗れたあの姿は、嘘ではなかった。
勿論、たかだか百年しか生きていない自分が、その五倍を生きた遥か年長の吸血鬼の心情など、完全に分かる
はずもないのだが。
「それでも…彼女が嘘を言ったとは、思えない」
「…考えても仕方ないでしょう。もっと考えるべき事は、あるはずです」
妖夢はどこか物憂げだ。彼女なりに、思う所があるのかもしれない。
「例えば、東京レイヴンズは、いつアニメになるんでしょうか、とか」
「そんな事を物憂げに考えていたのですか…」
「そんな事とはなんですか。ジローさんの後輩でしょうが」
「それはそうですが、彼等はまだ三巻が出たばかりなんです。気が早いですよ」
「いや、実際に相当期待されてると思うんですよ。シリーズ開始とほぼ同時にコミカライズしたり」
「ふむ…確かに、漫画版も好評のようですしね」
「漫画版第一巻の帯の文句は、正直コアな層を狙い過ぎだと思いますが」
「公式で残念幼なじみ呼ばわりですからね…夏目さん」
「そっち系の新規開拓を相当意識してますよね。狐耳と尻尾の美幼女を書くとは流石に思ってませんでした」
「世の風潮というものでしょうか」
「まあ私が一番グっときたのは京子のパンチラですが」
「何気にパンツネタが好きですね、貴女…」
「正直、パンツとBLとファッションセンターしまむら以外の話はしたくありません」
「もっと他の世界にも目を向けなさい!」
「そんな事言われても困りますよ!」
「逆ギレされたっ!?というか貴女、しまむらの話なんて一度もしたことないでしょう!」
「何を仰る、ジローさん。妖夢といえばしまむら、しまむらといえば妖夢じゃあないですか。2011年度のしまむらの
マスコットキャラクターとして、この魂魄妖夢が選ばれた平行世界もきっとあるはず」
「この世界では違うという自覚はあるんですね」
「大のしまむらファンだというのは違いありません。今も服の下にヒートテックを着てるくらいですよ?」
「それはユニクロだーっ!」
「閑話休題(それはともかく)。しかし、あざの先生は三巻からという格言があるものの、今回はイマイチだった気も
しますね…面白いのは間違いないんですが、期待しすぎたというか」
「それは辛辣な。まだまだ土台作りの段階と考えるべきでしょう」
「とはいえ、専門用語ばかり羅列されても、正直ついていけないと感じる部分が多いのですよ」
「ふむ。確かに…」
「そこへいくと<力場思念(ハイド・ハンド)>や<視経侵攻(アイ・レイド)>は専門用語でありつつどんな能力なのか
簡単な説明だけで分かる好例でしたね。如何にも吸血鬼的な能力ですし」
「恐縮です」
「あ、いや。ジローさんを褒めたわけじゃないですから。その辺勘違いされても困るというか」
「ツンデレじゃない娘に勘違いしないでと言われると、辛いですね…」
「専門用語の話は置いといて、三巻がショボいと感じた一番の要因は<最凶の十二神将>という仰々しい触れ込み
で登場した鏡さんが単なるチンピラだったせいだと思うんですが、ジローさんとしては如何でしょうか?」
「弱い者いじめ大好きで、強い者には弱かったりと、普通にヤな奴ですしね…個人的には、ああいうタイプもいた方
が話の幅が広がるとは思いますが」
「ま、扱い切れずにハンパなキャラのままでリタイアなんて醜態だけは晒さないでほしいものです」
「…妖夢さん。さっきから、やたら厳しい意見ばかりじゃありませんか?」
「ファンだからこそ見る目が厳しくなるのですよ…話をアニメ化の方向に戻すと、やはり気になるのは声優ですね」
「なるほど。それは大事な要素です。かくいう私もアニメでは声優の熱演に随分助けられましたから」
「まあ、ここで声優妄想するというエロ漫画描いてた頃の的良みらんみたいな事はやめるとして」
「ここまで好き勝手言っておきながら、最後の一線は守るんですね」
「あれは正直、相当イタイ行為だったと本人も反省してるだろうし、寛大な精神で赦してやりましょうや」
「何という上から目線…」
「実を言うと一般誌で描き始めてからは、全然あの人の漫画見てないんですが」
「貴女、最低です!」
「とにかく、東京レイヴンズがアニメ化される日が楽しみですね。OPがどんな電波ソングになるのか、考えただけ
でワクワクしてきます。きっとパンツが空を飛びますよ」
「そういうノリの作品でもないはずですが」
「春虎くんや夏目さんがEDでデフォルメされてどんなダンスを踊るのかを想像しただけで萌えてきちゃいます」
「それは一昔前のセンスのような」
「コミケが春虎×冬児の強気受けな薄い本で溢れ返る日も近いでしょう」
「私はむしろ鏡×冬児の鬼畜攻めだと思うわ!」
「パチュリーさんが鼻息荒くしてこの話題に喰い付いてきたっ!?」
しかも、コアな分野で。
「これでも読書家だからね。実はさっきからどのタイミングで話に入ったものか見計らってたのよ」
「このタイミングで、ですか」
「じゃあ訊くけど、他にどのタイミングがあったというの?」
「…腐ってやがる…遅すぎたんだ…」
色んな事が。
「ほほぉ…とすると、パチュリーさんとしては純愛系より無理矢理迫られた方がいいと」
「モノにもよるわ」
「カズキの相手は誰だと思いますか?」
「パピヨンよりはブラボーね」
「一人前の戦士になるための特訓と称してアレコレですね、分かります」
スター○ストさんが怒りだしそうな会話だった。
「逆に尋ねるけど、一護の相手は?」
「浦原さん…と見せて更木隊長でいきましょうか!」
「いいわね、それ!」
ゴチン、と拳を打ちつけ合う二人。
腐った系統の話題で意気投合し、盛り上がり始めた妖夢とパチュリー。
ジローは流石に、この話に加わる気にはなれなかった(なってたら色々な意味でヤバい)。
ふと、周りを見ると。
コタロウと魔理沙、アリスは、ドン引きした目でこちらを見つめていた。
ジョジョ的に言うと<養豚場へ運ばれる豚を見るような>そんな目だ。
サンホラ的に言うと<この人達は何を喚いているんだろう…気持ち悪い…>そんな目だ。
「兄者達が何を言ってるのか、全然わかんないよ…」
「数十行かけて、こんなとこで力説することでもないよなぁ…」
「キモい(ばっさり)」
「…………」
何故、自分がこのような視線に晒されなくてはならないのか。
自分はただ日々の些細な出来事に小さな喜びと幸福を見出し、慎ましく生きているというのに。
ジローは石像のように黙りこくり、静かに、この話題が時と共に風化するのを待つ他ないのだった…。