アクナディンは愕然とする。千年魔道書に書かれた古の魔術とその儀式。
千年アイテムを造る為に必要なもの、それは九十九人の人間の生贄。その魔道書に書かれた闇の錬金術、
それは神と悪魔の契約の儀式。金を創り出す為に異種の金属を変成させる際に魔術的儀式により……
人間の生贄が必要となる。
そしてその事実を、国王であるアクナムカノン、アクナディンの実兄は知る由も無かった。
アクナディンはこの事実を王に伝える事をしなかった。伝えれば必ず王はその正義感から非人道的行為であるとし、他の方法を模索させる。
だが王国はもう時間が無い。例え罪無き人々を殺してでも国を守らなければならない。
翌日、謁見の間でアクナディンはアクナムカノンに魔術書に書かれた内容を、生贄を必要とする最重要の秘密を隠し、『闇の錬金術』を行う許しを乞うた。
千年アイテムを造る為に必要なもの、それは九十九人の人間の生贄。その魔道書に書かれた闇の錬金術、
それは神と悪魔の契約の儀式。金を創り出す為に異種の金属を変成させる際に魔術的儀式により……
人間の生贄が必要となる。
そしてその事実を、国王であるアクナムカノン、アクナディンの実兄は知る由も無かった。
アクナディンはこの事実を王に伝える事をしなかった。伝えれば必ず王はその正義感から非人道的行為であるとし、他の方法を模索させる。
だが王国はもう時間が無い。例え罪無き人々を殺してでも国を守らなければならない。
翌日、謁見の間でアクナディンはアクナムカノンに魔術書に書かれた内容を、生贄を必要とする最重要の秘密を隠し、『闇の錬金術』を行う許しを乞うた。
「七日程あれば、古の魔術を復活させることが出来ます」
『だが…それほどの強大な力を生み出すことはこの世に災いを招く恐れも…』
『だが…それほどの強大な力を生み出すことはこの世に災いを招く恐れも…』
眼を閉じ、アクナムカノンは悩んでいたが、シモンがアクナムカノンに決断を促す。
「アクナムカノン王、もはや時間はありませぬ…ご決断を!!」
シモンの一言にアクナムカノンは決意する。国の一大事に、指を加えて傍観している訳にはいかない。
「我が王国の平和を七つの秘宝に委ねる!!」
「は!」
「は!」
その後、アクナディンは馬に跨り、兵士を集めて王宮の入り口に出た。
「よいか!! 我々は王家の谷近くのクル・エルナ村に向かう!」
「よいか!! 我々は王家の谷近くのクル・エルナ村に向かう!」
アクナディンが兵士達に号令を掛ける。兵士達は何故盗賊村と呼ばれる場所に行かなければならないのかと困惑していた。
出立の時、アクナディンはふと後ろを見やる。そこには愛する妻と、息子のセトがいた。
出立の時、アクナディンはふと後ろを見やる。そこには愛する妻と、息子のセトがいた。
『セト…私はこの国の為に自らの手を血で染めねばならぬ…兄が国王に即位した日から…私は影を歩む運命』
アクナディンは太陽に向かい走り出す。その顔はただひたすらに険しい。
『私もお前も王になれぬ身…さらばだ…息子よ…』
その頃クル・エルナ村ではいつもの朝の風景が広がっていた。
戦争が目前に迫っているというのにこの盗賊村は妙に呑気であり、先日、女の子の赤ん坊が生まれ、
やっとこの村も人口が『百人』になったなどと村人は昨晩からお祭り騒ぎである。
勿論、バクラの家も例外ではなく、村のますますの発展を願って、この良き日を嬉しそうに過ごしていた。
この様に村は変わらず平和で、その後に降り掛かる惨劇など予想だにしていなかったのだ。
今日も雲ひとつ無い晴天である。盗賊村の罪人と蔑まれている者達も、歌い、踊る。
快晴の空は人々の心を象徴しているようであった。
当然、王国の方より近づいてきた軍隊と、その頭上を覆うように広がる暗雲には気付かなかった。
戦争が目前に迫っているというのにこの盗賊村は妙に呑気であり、先日、女の子の赤ん坊が生まれ、
やっとこの村も人口が『百人』になったなどと村人は昨晩からお祭り騒ぎである。
勿論、バクラの家も例外ではなく、村のますますの発展を願って、この良き日を嬉しそうに過ごしていた。
この様に村は変わらず平和で、その後に降り掛かる惨劇など予想だにしていなかったのだ。
今日も雲ひとつ無い晴天である。盗賊村の罪人と蔑まれている者達も、歌い、踊る。
快晴の空は人々の心を象徴しているようであった。
当然、王国の方より近づいてきた軍隊と、その頭上を覆うように広がる暗雲には気付かなかった。
「今日は無礼講だ! 新たに生まれた100人目の命と、村の益々の発展を祈ろう」
長老のこの無礼講という言葉に反応したバクラは、大人達に混じって葡萄酒を呑む。酔っているのか、気分が高揚しているのか、
沈む夕日のように顔が赤い。
沈む夕日のように顔が赤い。
「もう、バクラったら、お酒なんて飲んじゃって!」
「へへ~、いいのいいの~」
「へへ~、いいのいいの~」
同年代のおませな少女も、参ったものだと言わんばかりに溜め息をつく。
そんな時だった。村の中心で村人たちが集まっているときに、王国の兵団が到着した。
これには村人も良い感じはしなかった。もうすぐ、敵国との戦争も始まるというし、もし、巻き込まれたならば少数の、王国から追われた者達の
村など一溜まりもないだろう。
兵団が2列縦隊に並び、奥からアクナディンが歩を進めてくる。
そんな時だった。村の中心で村人たちが集まっているときに、王国の兵団が到着した。
これには村人も良い感じはしなかった。もうすぐ、敵国との戦争も始まるというし、もし、巻き込まれたならば少数の、王国から追われた者達の
村など一溜まりもないだろう。
兵団が2列縦隊に並び、奥からアクナディンが歩を進めてくる。
「長老よ、確か、この村の人口は『九十九』人だったな」
正確に言えば女の子が産まれたので百人であるが、王国には情報は届いていないようだった。
「一体何を仰っておるのでしょう?」
長老がアクナディンに問いかけた瞬間、彼の額が赤く染めあがった。
血である。夥しい量の血が彼の顔に広がり続ける。彼の額には矢が刺さっていた。
弓兵が放っていたのだ。だが、村人達は、何が起きたのかは全くもって理解できてはいなかった。
勿論、バクラも例外ではない。
地に堕ちていく天使の様に崩れ落ちる長老。村人達は、声を上げて逃げる。
弓兵が放っていたのだ。だが、村人達は、何が起きたのかは全くもって理解できてはいなかった。
勿論、バクラも例外ではない。
地に堕ちていく天使の様に崩れ落ちる長老。村人達は、声を上げて逃げる。
「うわあああああああ!!!!!」
余りにも原始的な悲鳴。物心ついた幼児も、思慮分別の分かる者も等しく同じ悲鳴を上げる。
だが、無情にも彼等が救われることは無かった。
千年魔術書に書かれた九十九人の生贄となることを余儀なくされたのである。
産まれたばかりの赤子も、盲目の老婆も、村一番の力持ちも、皆等しく殺されていく。
気付いた時には太陽は隠れ、積乱雲が盗賊村を包み込む。やがて、冷たい雨が降り注いだ。
だが、無情にも彼等が救われることは無かった。
千年魔術書に書かれた九十九人の生贄となることを余儀なくされたのである。
産まれたばかりの赤子も、盲目の老婆も、村一番の力持ちも、皆等しく殺されていく。
気付いた時には太陽は隠れ、積乱雲が盗賊村を包み込む。やがて、冷たい雨が降り注いだ。
「くそ、さっきまでいい天気だったのに」
バクラが苦虫を噛みしめるような顔で天を見つめる。誰も救わない天を。
「バクラ!!」
少女がバクラに駆けよる。バクラもそれに気付く。鬼気迫る表情で、バクラは少女を見る。
「やめろ! こっちに来るな!!」
時は既に遅かった。駆けよった少女は、左胸を、矢によって貫かれる。即死だった。
バクラは、泣いた。涙が止め処なく溢れ流れた。恐ろしい程に大きな声を上げてその場を走り去った。
目の前で友人を殺された。王国が憎い、憎い、憎い!
だが、『恐怖』が、バクラの心を支配していた。目の前で次々に死んでいく人々。
少年は、この世の地獄の真っ只中にその身を置いていたのだ。
右を見ても、左を見ても、死体。今日の朝まで一緒になって笑っていた友人達の死体。
精霊超獣を自分だけが見えてしまう特異な人間であっても、まるで変わりなく自分と関わってくれた人々。
最愛の両親。先に殺されたのは母親だったのだろう。そして覆いかぶさるように父親が倒れ伏していた。
バクラの涙はもう枯れていた。彼の瞳には既に『光』など、宿ってはいなかった。
バクラは、泣いた。涙が止め処なく溢れ流れた。恐ろしい程に大きな声を上げてその場を走り去った。
目の前で友人を殺された。王国が憎い、憎い、憎い!
だが、『恐怖』が、バクラの心を支配していた。目の前で次々に死んでいく人々。
少年は、この世の地獄の真っ只中にその身を置いていたのだ。
右を見ても、左を見ても、死体。今日の朝まで一緒になって笑っていた友人達の死体。
精霊超獣を自分だけが見えてしまう特異な人間であっても、まるで変わりなく自分と関わってくれた人々。
最愛の両親。先に殺されたのは母親だったのだろう。そして覆いかぶさるように父親が倒れ伏していた。
バクラの涙はもう枯れていた。彼の瞳には既に『光』など、宿ってはいなかった。
「どうやら、これで九十九人、生贄を創ることが出来ましたね」
「うむ…」
「うむ…」
兵士の問いかけに、小さく頷くアクナディン。仕方がなかった。
王国の為には、無くてはならない犠牲だった。そう解釈し、無理やり、自分の罪悪を胸の内に収め、クルエルナの地下の神殿に向かう。
王国の為には、無くてはならない犠牲だった。そう解釈し、無理やり、自分の罪悪を胸の内に収め、クルエルナの地下の神殿に向かう。
王国の為に、王の影となり、自ら闇の道を歩みだした神官。
恐怖と復讐心にその身を支配され、やがて光すらも消えた哀れな少年。
恐怖と復讐心にその身を支配され、やがて光すらも消えた哀れな少年。
その奥に佇む、一切の光をも逃がさず呑みこむ邪神が、高らかに嘲笑していた。