【9月12日】 朝
────銀成学園までバスで7分。山あいのログハウス前で────
「厳しい修行だった……」
「だが、確かにこれならパピヨンに対抗できる!!」
そこには。
秋水と斗貴子、そして六舛の姿があった。何があったのか。最初の2人は全身のいたるところに包帯や絆創膏が見られた。
徹夜でアクションの修行をする──昨晩の修行の苛烈さが伺えた。
「斗貴子さん! 最近のジャンプの修行って過程見せないコトが多いよね! でも何をどうやってどうパワーアップしたか分
からないまま急に強くなって敵さん倒してもいまいちカタルシスないよ!」
「今度はまひろちゃんの声音か! いい加減にしろ!」
斗貴子はがなるが──…
彼女と秋水の顔はどこか明るい。直立不動の秋水は「いい試合をした」という顔である。俯き加減で拳を眺める斗貴子の
瞳で確信の光が赤々と燃えているのを認めたのは六舛で、彼もほんのわずかだけ口元を綻ばさせた。
「相変わらず上々だな。ありがと木場空牙」
ログハウスの玄関前、斗貴子たちからは階段3段ほど上。そこにいる人物へ六舛は声をかけた。
木場空牙と呼ばれたにこやかな青年は「いやいや」と軽く手を振った。
「いやはやそれにしてもいい朝で! 空は灰色太陽も灰色! いつもの如くくすんだいい朝で!」
「いやなコトをいうな! 空は青いし太陽だって綺麗な……綺麗な山吹色だ!」
「おっと世間的にゃそーでしたね。いやいやこれは失礼」
彼は六舛曰く演技の神様だそうだ。
そして最近演劇部を席捲するパピヨンに対抗すべく修行したい斗貴子と秋水の面倒を見た、という訳である。
「とりあえず礼は例のアレでいい? 」
ワシントン条約とかにはちょっと引っかかるけど……六舛の言葉に斗貴子は「待て!」と声を荒げかけたが、それはどこ
か間のびした返事にかき消された。
「いやいやそれは六っちと俺っちの間柄、お礼はなしでいいってもんで」
それに第一、感動してるんでさ……と演技の神様、上膊部で両目を拭う真似をした。感涙を示すには大仰な仕草だが、
続く涙声もまたまったく大袈裟、ウソ大袈裟まぎらわしい、公共広告機構カンカンの小芝居だ。
「演技の神様などと呼ばれて幾星霜! にも関わらず俺っちの特訓メニューについてこれる人ってのはリバっち以外まったく
いなかったか訳でありやして。ほとんどの方という奴ぁそりゃあヒドい! 耐えれば限りなき上達が待ち受けていると申します
のに途中で根を上げ脱落し、自分の身の丈よりちょい下ぐらいのらくらくメニューを選ぶ始末聞いて下せえこの前などは」
愚痴は、5分ほど続いた。
開始後5秒で「どうでもいい長話に発展するなコレは」と判断した斗貴子は迷うコトなく聞き流した。
要するにかい摘まむに「みんな俺っちのコト神様神様って呼んでるのにいざ厳しい特訓つきつけたら妥協……。それって
どーなんですかい? 苦痛感じてまで慕情貫かねー訳で?」という些か自己愛に満ちた物であった。
いつもの斗貴子なら怒鳴ってさっさと中断させるが、一応彼は一晩とはいえ師匠だったので自重する。
「されどここにいるお二方は苦痛を超えて俺っちの指示に従ってくれやした! これがまあ感動というか? 認めてくれてる
んだありがとうって奴なんでさ! 奴なんでさ!」
「なぜ二度言う!?」
階段から飛び降りた「演技の神様」こと木場空牙は斗貴子と秋水の手を取りぴょこぴょこ振った。屈託ない笑いだ。斗貴
子はやや気押されながらもあまり悪い気分はしなかった。眼前の男は黙ってさえいればそこそこ端正な顔立ちだが、いちいち
毒のない、極論すれば好々爺のような笑みで造詣を台無しにしている。もっともそういう『虚飾』のなさあればこそ、当初文句
ばかりだった短気な斗貴子が一晩限定とはいえ師事できたのも明らかだ。
「ところで、少し質問したいが……」
一方の秋水は「どうしても最後に聞きたい」と粛然たる面持ちで呟いた。
「へえ。答えられる範囲でなら何でも。あ! リバっちのスリーサイズはダメっすからね! あらぁ俺っちだけが秘蔵秘匿の
限りを尽くし密かに楽しむものでして!」
ムンと身を乗り出し必死に口角泡を飛ばす神様に「いや、そうではなく」と秋水は(上体をななめ38度ぐらいの角度で後ろ
に追いやられながら)……質問した。
「小札零、という少女を知っているだろうか? 小柄で、おさげ髪で、シルクハットとタキシードの」
「……」
「知らなかったらすまない。知り合いと喋り方がよく似ていて気になった。それだけだ」
「……」
演技の神様は笑顔のまま動きを止めた。悪意のない、笑みのままで。
違和感。斗貴子の聴覚からさっと音が消えた。直感が告げる。「何かがおかしい」。演技の神様の表情はまったく動いて
いない。笑ったまま、あらゆる疑問もリアクタンスも肯定も弾き出さないまま……ニコニコと。秋水を見ている。
表情は変わっていない。だが、「変わっていない」コト自体がひどくおぞましく思えた。
「性格がというよりは、たとえば……たとえばそう。同じ門下の噺家の調子が似通うように、君と彼女の語調は似ている」
「あー。それはっすねえ」
徹夜でアクションの修行をする──昨晩の修行の苛烈さが伺えた。
「斗貴子さん! 最近のジャンプの修行って過程見せないコトが多いよね! でも何をどうやってどうパワーアップしたか分
からないまま急に強くなって敵さん倒してもいまいちカタルシスないよ!」
「今度はまひろちゃんの声音か! いい加減にしろ!」
斗貴子はがなるが──…
彼女と秋水の顔はどこか明るい。直立不動の秋水は「いい試合をした」という顔である。俯き加減で拳を眺める斗貴子の
瞳で確信の光が赤々と燃えているのを認めたのは六舛で、彼もほんのわずかだけ口元を綻ばさせた。
「相変わらず上々だな。ありがと木場空牙」
ログハウスの玄関前、斗貴子たちからは階段3段ほど上。そこにいる人物へ六舛は声をかけた。
木場空牙と呼ばれたにこやかな青年は「いやいや」と軽く手を振った。
「いやはやそれにしてもいい朝で! 空は灰色太陽も灰色! いつもの如くくすんだいい朝で!」
「いやなコトをいうな! 空は青いし太陽だって綺麗な……綺麗な山吹色だ!」
「おっと世間的にゃそーでしたね。いやいやこれは失礼」
彼は六舛曰く演技の神様だそうだ。
そして最近演劇部を席捲するパピヨンに対抗すべく修行したい斗貴子と秋水の面倒を見た、という訳である。
「とりあえず礼は例のアレでいい? 」
ワシントン条約とかにはちょっと引っかかるけど……六舛の言葉に斗貴子は「待て!」と声を荒げかけたが、それはどこ
か間のびした返事にかき消された。
「いやいやそれは六っちと俺っちの間柄、お礼はなしでいいってもんで」
それに第一、感動してるんでさ……と演技の神様、上膊部で両目を拭う真似をした。感涙を示すには大仰な仕草だが、
続く涙声もまたまったく大袈裟、ウソ大袈裟まぎらわしい、公共広告機構カンカンの小芝居だ。
「演技の神様などと呼ばれて幾星霜! にも関わらず俺っちの特訓メニューについてこれる人ってのはリバっち以外まったく
いなかったか訳でありやして。ほとんどの方という奴ぁそりゃあヒドい! 耐えれば限りなき上達が待ち受けていると申します
のに途中で根を上げ脱落し、自分の身の丈よりちょい下ぐらいのらくらくメニューを選ぶ始末聞いて下せえこの前などは」
愚痴は、5分ほど続いた。
開始後5秒で「どうでもいい長話に発展するなコレは」と判断した斗貴子は迷うコトなく聞き流した。
要するにかい摘まむに「みんな俺っちのコト神様神様って呼んでるのにいざ厳しい特訓つきつけたら妥協……。それって
どーなんですかい? 苦痛感じてまで慕情貫かねー訳で?」という些か自己愛に満ちた物であった。
いつもの斗貴子なら怒鳴ってさっさと中断させるが、一応彼は一晩とはいえ師匠だったので自重する。
「されどここにいるお二方は苦痛を超えて俺っちの指示に従ってくれやした! これがまあ感動というか? 認めてくれてる
んだありがとうって奴なんでさ! 奴なんでさ!」
「なぜ二度言う!?」
階段から飛び降りた「演技の神様」こと木場空牙は斗貴子と秋水の手を取りぴょこぴょこ振った。屈託ない笑いだ。斗貴
子はやや気押されながらもあまり悪い気分はしなかった。眼前の男は黙ってさえいればそこそこ端正な顔立ちだが、いちいち
毒のない、極論すれば好々爺のような笑みで造詣を台無しにしている。もっともそういう『虚飾』のなさあればこそ、当初文句
ばかりだった短気な斗貴子が一晩限定とはいえ師事できたのも明らかだ。
「ところで、少し質問したいが……」
一方の秋水は「どうしても最後に聞きたい」と粛然たる面持ちで呟いた。
「へえ。答えられる範囲でなら何でも。あ! リバっちのスリーサイズはダメっすからね! あらぁ俺っちだけが秘蔵秘匿の
限りを尽くし密かに楽しむものでして!」
ムンと身を乗り出し必死に口角泡を飛ばす神様に「いや、そうではなく」と秋水は(上体をななめ38度ぐらいの角度で後ろ
に追いやられながら)……質問した。
「小札零、という少女を知っているだろうか? 小柄で、おさげ髪で、シルクハットとタキシードの」
「……」
「知らなかったらすまない。知り合いと喋り方がよく似ていて気になった。それだけだ」
「……」
演技の神様は笑顔のまま動きを止めた。悪意のない、笑みのままで。
違和感。斗貴子の聴覚からさっと音が消えた。直感が告げる。「何かがおかしい」。演技の神様の表情はまったく動いて
いない。笑ったまま、あらゆる疑問もリアクタンスも肯定も弾き出さないまま……ニコニコと。秋水を見ている。
表情は変わっていない。だが、「変わっていない」コト自体がひどくおぞましく思えた。
「性格がというよりは、たとえば……たとえばそう。同じ門下の噺家の調子が似通うように、君と彼女の語調は似ている」
「あー。それはっすねえ」
傍観者の斗貴子はおろか、正面切って話していた秋水でさえ咄嗟に反応はできなかった。
やや離れて淡々と彼らを観察していた六舛に至っては、総ての状況を成す術なく”押しつけられた”
やや離れて淡々と彼らを観察していた六舛に至っては、総ての状況を成す術なく”押しつけられた”
演技の神様はひょいと右手を突き出した。
「こっからは秘密事項。500円くれたら教えやす。へへ」
とでも言いたげな軽やかな手つき。敵意も悪意もない、日常の所作。
戦闘に慣れ過ぎた斗貴子や秋水だからこそ、出遅れた。
演技の神様の掌には。
戦闘に慣れ過ぎた斗貴子や秋水だからこそ、出遅れた。
演技の神様の掌には。
いつの間に出したのだろう。
『核鉄』が握られていた。
何が起こっている!? 愕然と固める戦士2人と一般人1人を「作り物のような笑顔」が一瞥し
「武装錬金!」
叫んだ。
転瞬、稲妻が槍のような武器から放たれ、3人に絡み付き。
森から無数の鳥が飛び立った。
それきり辺りは静かになった。
異常なほど。
異常なほど。
異常なほど可憐な少女を前に、防人はポンと手を叩いた。
きっかけはよくあるコトだ。もし斗貴子に話せば「ベタですね」と無表情に答えるだろう。
防人は寄宿舎管理人だ。
そしてもうすぐ「6人」ほど新しい住民がやってくる。5体、という方が正しいが、とにかく新しい住民が来るのは間違いない。
お祭り騒ぎの好きな防人は歓迎会をやるべく──最近カレーパーティもやった。途中からそれはヴィクトリアの歓迎会に
もした──必要な物を調達すべく街をブラブラしていた。余談だが、ブラブラするのは彼の渾名の由来でもある。かつて任務
で潜入した津村家の住み込みの老人たちは、あちこち徘徊(もっともコレはジョギングや聞き込み調査のせいだったが)する
防人を「ブラブラ坊主」と揶揄した。そして……当時まだ10歳だった斗貴子が「ブラブラ坊主」を略して「ブラ坊」と呼んだ。
防人の渾名、キャプテンブラボーはここから来ているのである。
それはともかく。
知り合いから頼まれた用事もついでに片付けよう。そう歩いていると、路地裏から下卑た大声がした。行った。するとガラ
の悪い「いかにも」な男どもが少女を取り囲んで何やら言っているではないか。
後はまあ、こういう場合のお決まりを踏襲するだけだった。
防人は寄宿舎管理人だ。
そしてもうすぐ「6人」ほど新しい住民がやってくる。5体、という方が正しいが、とにかく新しい住民が来るのは間違いない。
お祭り騒ぎの好きな防人は歓迎会をやるべく──最近カレーパーティもやった。途中からそれはヴィクトリアの歓迎会に
もした──必要な物を調達すべく街をブラブラしていた。余談だが、ブラブラするのは彼の渾名の由来でもある。かつて任務
で潜入した津村家の住み込みの老人たちは、あちこち徘徊(もっともコレはジョギングや聞き込み調査のせいだったが)する
防人を「ブラブラ坊主」と揶揄した。そして……当時まだ10歳だった斗貴子が「ブラブラ坊主」を略して「ブラ坊」と呼んだ。
防人の渾名、キャプテンブラボーはここから来ているのである。
それはともかく。
知り合いから頼まれた用事もついでに片付けよう。そう歩いていると、路地裏から下卑た大声がした。行った。するとガラ
の悪い「いかにも」な男どもが少女を取り囲んで何やら言っているではないか。
後はまあ、こういう場合のお決まりを踏襲するだけだった。
声をかける。「何をやっている」 → 男たち激昂 → 軽く叩きのめす → 奴ら退散。
以上。
「怪我はないか?」
そういって少女を見た防人は、「ほう」と軽く息を呑んだ。
彼は別に女たらしではなく千歳一筋だが、そんな彼でさえ一瞬見とれるほど目の前の少女は綺麗だった。
ふわふわとウェーブの掛った髪を肩のあたりまで垂らした笑顔の少女。
とても大人しそうで、清楚な雰囲気だ。それでいて頭頂部から延びる長大な癖っ毛が愛嬌を醸し出している。
やや笑顔が引き攣っているのはやはり「いかにも」な連中に絡まれたせいだろう。防人はそう判断した。
服装も路地裏にはまったく相応しくない。飾り気のないジーンズにフード付きのゆったりとしたパーカー。注視するのも悪い
と思ったが、客観的な事実としてかなりスタイルも良かった。総合的にいえば桜花よりやや上かも知れないとさえ思った。
桜花の総合点を下げているのはもちろんあの腹黒さだが、要するに目の前の少女にはそれがないので、何か言いがかり
をつけられ引きずり込まれたに違いない。
そういって少女を見た防人は、「ほう」と軽く息を呑んだ。
彼は別に女たらしではなく千歳一筋だが、そんな彼でさえ一瞬見とれるほど目の前の少女は綺麗だった。
ふわふわとウェーブの掛った髪を肩のあたりまで垂らした笑顔の少女。
とても大人しそうで、清楚な雰囲気だ。それでいて頭頂部から延びる長大な癖っ毛が愛嬌を醸し出している。
やや笑顔が引き攣っているのはやはり「いかにも」な連中に絡まれたせいだろう。防人はそう判断した。
服装も路地裏にはまったく相応しくない。飾り気のないジーンズにフード付きのゆったりとしたパーカー。注視するのも悪い
と思ったが、客観的な事実としてかなりスタイルも良かった。総合的にいえば桜花よりやや上かも知れないとさえ思った。
桜花の総合点を下げているのはもちろんあの腹黒さだが、要するに目の前の少女にはそれがないので、何か言いがかり
をつけられ引きずり込まれたに違いない。
一方、少女はしばらく防人を怪訝そうに見ていたが──…
『大丈夫です。ありがとうございます。助けてくれて。
........................』
........................』
足元から拾い上げたスケッチブックに、そう書いた。
(喋れないのか?)
それも気にはなったが、防人の意識を引いたのはスケッチブックの片隅にある黒い点だ。
確かにあった。ゴミがついただけかと一瞬思ったがそれは『やけに整然とならんでいた』
しかも少女は、防人の鍛え抜いた動体視力が「黒い点」の正体を見抜く前にページを捲った。
確かにあった。ゴミがついただけかと一瞬思ったがそれは『やけに整然とならんでいた』
しかも少女は、防人の鍛え抜いた動体視力が「黒い点」の正体を見抜く前にページを捲った。
『ところでこの近くに、孤児院はありますか? 門の近くにひまわりの絵がある所なんですけど』
異常なほど可憐な少女を前に、防人はポンと手を叩いた。
「そういえばちょうどパピ……知り合いから言伝を頼まれていたな。もしキミが良かったら送っていこう。何しろ──…」
【外出の慣習上、シルバースキンを纏っていた】防人、力強く呼びかけた。
「さっきの不審な連中が来たら危ない!」
少女は軽く「う」と呻いた。心底困った、何か言いたげな表情だった。笑顔だがちょっと泣きたい。そんな表情だった。頭頂
部から伸びるアホ毛がみるみるとしおれた。
部から伸びるアホ毛がみるみるとしおれた。
『はい……。お願いします……』
笑みに細めた瞳から滝のような涙を流し、彼女はよろよろとお辞儀をした。
頼むというより観念したという言葉こそふさわしい態度だった。
頼むというより観念したという言葉こそふさわしい態度だった。
「可哀相に……。よほど怖かったんだな」
防人はとても気の毒そうに呟いた。気の毒なのは彼の頭であろう。
だからか彼は、知らなかった。
『はい! お願いします!!』
の2ページ前。
『大丈夫です。ありがとうございます。助けてくれて.』
片端に打たれた点を拡大すると、こう書かれていたコトに。
『あの人たちを助けてくれて本当にありがとうございます』
「ぬぬっ。今日は東の端を調べに行こうとすれば。あれにこの上なく見えるはリバースさんじゃないですかディプレスさん!」
全身フード姿の女性が叫ぶと、ディプレスと呼ばれたフード姿が「ちょwww」と口をふさぎにかかった。
「静かにしろwww 横にいるのは防人衛wwww アイツ耳がいいからなあww 下手に叫べば気付かれる。ああ憂鬱」
全身フード姿の女性が叫ぶと、ディプレスと呼ばれたフード姿が「ちょwww」と口をふさぎにかかった。
「静かにしろwww 横にいるのは防人衛wwww アイツ耳がいいからなあww 下手に叫べば気付かれる。ああ憂鬱」
彼らは、路地裏の遥か上にいた。路地裏を作る建物の屋上にいた。
「すいません。でもこの上なく妙です!! あの人はブレイク君と手分けしてですよ、ウィル君の武装錬金を『建てる』場所を
探している筈なのに、錬金戦団の戦士長と接触しちゃうなんて。裏切りデス! 裏切りの夕焼けデス!」
声を潜めて騒ぐフードの女性にディプレスは「まwwww 偶然だろうなwwww」と答えた。幸い防人たちが気付いた様子はなく
ゆっくりとだが遠ざかっていく。防人は何か話しかけているようだが、「リバース」と呼ばれた女性が決して答えないコトもディプ
レスたちは知っている。義理で彼らを裏切らず、家庭的な問題で裏切れないコトも。
「でも、私達みたくフード被ってないような。あ、違いました。服にフード付いてますねこの上なく。ぬぬ? いやそこは全身フード
で行きましょうよリバースさん!」
「あれか。普通の服のフード被ってたけど絡まれた時点で取れたようだなwww いいんじゃないのwww 防人に顔見られた
けど正体バレてないしwww 楯山千歳はしばらくイソゴばーさん追跡で忙しいから捕捉できないだろうしwww」
探している筈なのに、錬金戦団の戦士長と接触しちゃうなんて。裏切りデス! 裏切りの夕焼けデス!」
声を潜めて騒ぐフードの女性にディプレスは「まwwww 偶然だろうなwwww」と答えた。幸い防人たちが気付いた様子はなく
ゆっくりとだが遠ざかっていく。防人は何か話しかけているようだが、「リバース」と呼ばれた女性が決して答えないコトもディプ
レスたちは知っている。義理で彼らを裏切らず、家庭的な問題で裏切れないコトも。
「でも、私達みたくフード被ってないような。あ、違いました。服にフード付いてますねこの上なく。ぬぬ? いやそこは全身フード
で行きましょうよリバースさん!」
「あれか。普通の服のフード被ってたけど絡まれた時点で取れたようだなwww いいんじゃないのwww 防人に顔見られた
けど正体バレてないしwww 楯山千歳はしばらくイソゴばーさん追跡で忙しいから捕捉できないだろうしwww」
それに。
彼女は逆鱗に触れない限り、「ある一言」を言わない限りは大人しい少女のままだ。
ディプレスはそう呟いた。
彼女は逆鱗に触れない限り、「ある一言」を言わない限りは大人しい少女のままだ。
ディプレスはそう呟いた。
「で、リバースが喋らない限り防人も地雷は踏まないwwww 踏みようがないwwww だからフードなくても大丈夫だろwwwww」
「それは些細な問題です!」
「え! 些細なの!?」
「私がいいたいのは未知の敵集団は全員全身フード! それです! 普通の服で妥協なんてまったく許されません!」
「そっち!?」
「そっちです!!」
黒フードの女性──クライマックス──は力強く頷いた。
「そりゃあ正体バレした敵集団が個別ばらばらな格好っていうのも素敵ですよ! でもだからこそ正体バレる前はみんなお
そろいの全身フードにしましょうよ!! ロックマンメガミックスだって第1話のラストで2のボスたち全身フードだったじゃな
いですか! それです! それこそ未知の敵集団って感じで素敵なのに!」
「でもなあwww リバースはヤンデレで肉食系で妹萌えでゲーム好きだけどオタじゃないしwwwwww」
「まったくリバースさん、自分が二次元臭いくせにライトなオタですね!! お約束は例え陳腐でも全力で守りましょうよ!
いまのジャンプの新人さんの漫画がほこほこ打ち切られるのはお約束とかテーマとか題材とか、「これ描きゃウケるだろう」っ
て選定の時点で妥協して! どうすれば面白くなるか全力で模索しないからじゃあないですかーっ!!」
「いやwww勝手に決め付けんなwwwそして俺の肩揺すんなwwww 仕事やろうぜ仕事www 無駄口はよくねーってwwww」
「そんな私のこの上ないお薦めは週刊少年チャンピオンのケルベロスですがっ!! とにかくリバースさんは一度私謹製の
エロゲで声優やるべきです! 元声優の私さえこの上なく感動するほど声綺麗ですし、ブレイク君の特訓で発声練習のつ
いで程度に演技のイロハ覚えたんですから! エロゲでショタやってガンガン喘いでこちら側に堕ちましょうよ!!」
「ショタかいwwwww」
「それは些細な問題です!」
「え! 些細なの!?」
「私がいいたいのは未知の敵集団は全員全身フード! それです! 普通の服で妥協なんてまったく許されません!」
「そっち!?」
「そっちです!!」
黒フードの女性──クライマックス──は力強く頷いた。
「そりゃあ正体バレした敵集団が個別ばらばらな格好っていうのも素敵ですよ! でもだからこそ正体バレる前はみんなお
そろいの全身フードにしましょうよ!! ロックマンメガミックスだって第1話のラストで2のボスたち全身フードだったじゃな
いですか! それです! それこそ未知の敵集団って感じで素敵なのに!」
「でもなあwww リバースはヤンデレで肉食系で妹萌えでゲーム好きだけどオタじゃないしwwwwww」
「まったくリバースさん、自分が二次元臭いくせにライトなオタですね!! お約束は例え陳腐でも全力で守りましょうよ!
いまのジャンプの新人さんの漫画がほこほこ打ち切られるのはお約束とかテーマとか題材とか、「これ描きゃウケるだろう」っ
て選定の時点で妥協して! どうすれば面白くなるか全力で模索しないからじゃあないですかーっ!!」
「いやwww勝手に決め付けんなwwwそして俺の肩揺すんなwwww 仕事やろうぜ仕事www 無駄口はよくねーってwwww」
「そんな私のこの上ないお薦めは週刊少年チャンピオンのケルベロスですがっ!! とにかくリバースさんは一度私謹製の
エロゲで声優やるべきです! 元声優の私さえこの上なく感動するほど声綺麗ですし、ブレイク君の特訓で発声練習のつ
いで程度に演技のイロハ覚えたんですから! エロゲでショタやってガンガン喘いでこちら側に堕ちましょうよ!!」
「ショタかいwwwww」
こいつはアホだ。ディプレスはつくづくそう思った。(ちなみにクライマックス作のエロゲは毎年コミケで250本ほど売れる)
「しかし残念wwww リバースの奴がチンピラ蹴散らすの見たかったのになあwwww」
「この上なく余計な手助けでした! リバースさん、武装錬金なしでもあのこの上なく馬鹿強い妹さんに勝てるのに!」
「まwww あれは精神的な物もあwるwけwどwwwwww ちょっとした共同体なら素手で殲滅できるわなwwww」
「この上なく余計な手助けでした! リバースさん、武装錬金なしでもあのこの上なく馬鹿強い妹さんに勝てるのに!」
「まwww あれは精神的な物もあwるwけwどwwwwww ちょっとした共同体なら素手で殲滅できるわなwwww」
だってアイツ怖いもんwwww ディプレスはそうあざけ笑い、相方と共にどこかへ消えた。