SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 天体戦士サンレッドVS風見幽香


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天体戦士サンレッド・飛翔形態<プロミネンスフォーム>。
熱く輝く太陽の紅き炎を宿す、サンレッドの戦闘形態の一つ。
速度と機動性、そして飛行能力に特化したこのフォームを装着したサンレッドは、正しく大空の覇者。
炎を纏い空を駆けるその姿は、燃え滾る真紅の流星!

「その姿…どうやら空中戦を御望みのようね」
対して、風見幽香は不敵に唇を歪めた。
「いいでしょう、付き合ってあげる―――」
その背中から、服を突き破って一対の翼が広がった。
仄かに輝く、美しき純白の翼―――それだけ見れば、まるで天使のようだ。
そう―――云わば命を刈り取る、告死の天使。
「そして思い知るがいい。幻想郷の住人に対して、空で闘いを挑む愚かさを!」
紅き戦士と大妖怪が、同時に飛翔する。
両者は烈風を巻き起こしながら空中で幾度となくぶつかり合い、火花を散らした。
天は今、強大な力を有した二匹の獣によって荒らされ、乱され、震えていた。
其処に座すであろう神々でさえ、もはやこの闘いを止めることなどできない。
どちらかが、地に堕ちぬ限りは―――闘いは、終わらない。


「ああ~…どうしましょう、紫ぃ~~~…」
情けない声で、白玉楼の主・西行寺幽々子は隣で観戦していた八雲紫に縋り付く。
「このままじゃヴァンプさんが(ピー)されちゃうわ。いいえ、もしかしたら(プー)されるかも…」
「随分心配するのね…いつの間に、そんなに仲良くなったのかしら?」
「だって…だって!」
思い起こす。短いながらも濃密な、ヴァンプ将軍との思い出を。

―――初めて出会った夜に作ってくれた鍋から立ち昇る香りは、今でも鮮明に蘇る。
―――おやつにと用意してくれたサーターアンダギーの甘い味わい。
―――トーナメント予選前の特大のステーキとトンカツ。
―――派手さはないが確かな腕によって生み出される、ヴァンプ将軍の料理の数々。

「ヴァンプさんは…私の専属料理人になってくれるかもしれない怪人なのよ!」
盛大に涎を垂らしながら、幽々子は叫んだ。
ヴァンプ様というより、食事の心配をしているようである。
「どっかで聞いた様なセリフねえ…ま、あんまり深く考えないことよ」
紫は顔を上げて、空を―――正確には、空を舞うサンレッドを見つめる。
「ここは一つ、ヒーローの健闘に期待する事としましょう」


ガシィッ―――!
もはや何度目になるだろうか。サンレッドの繰り出す拳は、悉く幽香の掲げる日傘によって防がれていた。
ドゴォッ―――!
カウンター。レッドは吹っ飛ばされながらも素早く方向転換し、再び幽香へと向かい―――
焼き直しのように、先程と同じ攻防が繰り返された。
『ああーっこれはいけない!サンレッド、またしても返り討ちだぁーっ!どうしたヒーロー、このままではヴァンプ将軍
の命は風前の灯だぞぉーーーっ!巻き返しなるのか!?それともよい子も見ている中で18禁モノの残虐ショーが
始まってしまうのか!?』
果たしてヴァンプ様を心配しているのか、単に開き直って楽しんでいるのかよく分からない(恐らくは後者)実況が
響き渡る。
しかして観客席にいるジロー達は、実況を気にする余裕もない。
空中で火花を散らしながら繰り広げられる激戦を、固唾を呑んで見守るだけだ。

「―――しんどそうじゃない。あいつ」

と―――ジローの<頭上>から声がした。
「…………!」
「ごきげんよう、望月ジロー…今宵の宴は楽しんでるかしら?」
くすくすと。
真紅の吸血姫―――レミリア・スカーレットは笑う。
彼女は誰にも…ジロー本人にも気付かれることなく、いつの間にか彼の頭上で腕を組んで立っていた。
「あら、礼儀正しいあなたらしくもない。返事もしないなんて、紳士失格よ?」
「こ…これは失礼しました…いや、それよりも何故、私の頭の上に…」
「決まってるじゃない。このレミリア・スカーレットの強さをアピールするためよ」
「…………」
「このレミリア・スカーレット、いつ如何なる時もカリスマとしての振る舞いを考えているのよ」
こともなげに、レミリアはそう言った。
嘘だ。ジローは思った。
なら何故にかつてプリンを落とした際、あそこまで狂乱していたのか。
そんなジローの心情を知ってか知らずか、ようやくレミリアはジローから飛び降りた。
「おや、よく見ればお馴染みの顔が揃ってるじゃないの」
「何だ、レミィじゃない」
「パチェ。顔を見ないと思ったら、ここにいたのね」
「よお、お嬢様。今日は咲夜は一緒じゃないのか?」
「あの子は…死んだわ。ある意味」
「お久しぶりですね。あの夜は貴女が暴れ回ったおかげで、お庭の掃除が大変だったんですよ?」
「それはごめんあそばせ」
「また魔理沙に近づく女が…ブツブツ…」
「…もう目を覚ましなさい。色んな意味で」
皆と親しげに話すその様子は、何処にでもいそうな年頃の少女といっても差し支えない。
ジローは意外そうにレミリアを見つめた。
吸血鬼という種族は、排他的な者も数多い。それに加えて、数百年を生きた古血(オールド・ブラッド)ともなれば
感性を磨耗させて、殆ど無感情になってしまう者も少なくはないのだ。
しかし、今のレミリアからはそんな印象はまるで受けない。
「ん?どうしたのかしら、望月ジロー。私の横顔が魅力的なのは自覚してるけど、ジロジロ見るのは少々不躾じゃあ
なくて?」
「…申し訳ない。ただ…失礼ながら、随分と気が若くいらっしゃるようだと」
「ふふ…」
ジローの言いたい事を理解したのか、レミリアは薄く笑う。
「幻想郷は面白おかしい奴らの揃った楽しい所だからね…そうそう無感動になんてなってられないわ。あなたも此処
に住まえば解かると思うわよ。どう?あの方と―――コタロウと共に、移住してみないかしら?なんなら、紅魔館に
来てもいいのよ」
本気なのか、ただからかっているだけなのか分からない。ジローは苦笑する。
「…お誘い感謝します。そうですね、熟考しておきましょう」
「腐れた政治家みたいな事を言っちゃって…まあいいわ、この件についてはいずれまた、ね…そうそう。ここに来る
途中で、コタロウを見つけ

「レッドさーーーん、頑張れーーーっ!」

…たのだけれど」
コタロウは座席の上に立って手を振り上げ、大声を張り上げてレッドを応援していた。
レミリアがジローと話している隙にそそくさと席に戻っていたようである。
「…コタロウ」
「あ、兄者!何してるの、レッドさんとヴァンプさんがピンチだよ、しっかり応援しないと!」
「それよりもお前、何か言わなければならないことが…」
「そこだー、レッドさーん!目だ、耳だ、鼻!」
兄の言葉をガン無視し、謎の声援を張り上げる。
どうやら、すぐに客席に戻ってこなかった事に対する兄からの追求を、勢いでなかった事にしたいらしい。
「全く、こやつは…」
「そう怒りなさんな。教育方針に口出しするつもりはないけど、きつく叱るだけが躾じゃなくてよ」
それに、とレミリアは、空中戦を繰り広げるサンレッドと風見幽香を見上げる。
「今はあの二人の闘いがどうなるか、でしょう?」
「貴女はどう見るのです?ミス・レミリア」
「…コタロウにも同じような事を訊かれたわね。私はこう答えた―――風見幽香に分があると」
「…………」
「あなたも分かっているようね―――奴は、強い」
レミリアは一息ついて、続ける。
「幻想郷において強者と目される者には、大概はそれだけの理由がある」

例えば、境界を操るだとか。
例えば、あらゆるものを破壊するだとか。

「しかし、風見幽香にはそれすらない―――
このレミリア・スカーレットのように運命を操れるわけではない。
或いは八雲紫のように境界を操れるわけではない。
或いは西行寺幽々子のように死を操れるわけではない。
或いは星熊勇儀のように怪力乱心を持つわけではない。
その能力で出来る事といえば、精々が花を操る程度―――」
されど。
「それでも誰もが認めている…認めざるをえない。風見幽香の、絶大な力を」
「それでも勝ちますよ、レッドは」
ジローは言った。
「彼はあれでもヒーローです。ヒーローは…勝つべき時には必ず勝つ。そういうものですから」
「…そう。実を言うと、私もサンレッドに勝ってほしいと思ってるわ」
レミリアは、暗い笑みを浮かべる。
「あいつは我が手でその肉を引き裂き、我が牙でその血を啜ると決めているのだからね―――
ここで終わってもらっちゃ、私も困るのよ」


―――太陽の戦士の拳は、またしても届かない。
それは物質としては頑丈なだけの日傘であるが、風見幽香が持てば磐石の楯となる。
「はあっ!」
気合と共に日傘を振るい、サンレッドを身体ごと押し返した。
背の翼を震わせ、追撃する。日傘を両手で強く握り締めた。
それは物質としては頑丈なだけの日傘であるが、風見幽香が持てば無双の剣となる―――
「花葬―――<鏡花水月><花鳥風月><百花繚乱><柳緑花紅><飛花落葉><錦上添花><落花狼藉>」
一つ一つが一撃必殺の破壊力を秘めた絶技。
それを、瞬きの間に―――七つ。

「―――<七花八裂(しちかはちれつ)>!」

呻き声さえ上げられず、大地に落とされる。それでも歯を食い縛って立ち上がり、幽香を睨み付けた。
幽香はその視線を、値踏みするように見つめる―――そして。
「…それなりに楽しかったけど、ここまでかしら」
トン―――と、軽やかに地に降り立った。
「このまま同じ事を繰り返しても、つまらないわね―――終わらせるとしましょう」
日傘を墓標の如く突き立て、それを通じて大地に己の妖力を注ぎ込んでいく。

「―――月に叢雲 花に風―――」

涼やかにして毒に満ちた言霊が、大妖怪の唇から紡ぎ出される。

「花符―――<幻想郷の開花>!」

大地が割れ、亀裂から何かが飛び出す。
それは―――花。
向日葵、朝顔、紫陽花、桔梗、彼岸花、薔薇、金木犀、百合、鈴蘭、弟切草、杜若、菊、胡蝶蘭、石楠花―――
多種多様、数え切れない程の花が、一瞬にして視界を、世界を埋め尽くす、
その光景は例えようもなく美しく―――吐き気を催す程におぞましい。
咲き誇った花々は、奇怪な生物の触手のように蠢き、這いより、のたうち、サンレッドに絡みつく。
「ぐっ…!?」
ふぅ―――と、身体から精気が抜けていく感覚があった。
まるで、魂ごと吸い出されるような違和感。
何より恐ろしいのは、それは決して不快ではなく、むしろ安らかさすら覚えるものだということだ。
「こ…こいつら…俺の力を、吸ってやがるのか…!」
「うふ…その通りよ。特にあなたの精気は極上だわ。花にとって、太陽の光は何よりの御馳走だもの」
風見幽香は、凶笑を浮かべる。
「さあ。この子達の養分となり、干乾びるがいいわ―――」
更に無数の花が、サンレッドを完全に覆い隠した―――!
「以って五秒…それで、あなたは朽ち果てる」
『サ…サンレッド、大大大大大×10ピンチだぁぁーーーっ!太陽ですらこの究極加虐生物は止められないのか!?
僭越ながら私、射命丸文がカウントダウンをさせていただきましょう!』
1!
2!
3!
4!
「…?」
幽香は、異変に気付いた。宣言した五秒など、アナウンスの間にとっくに経過している。
それでもなお、花々による蹂躙は終わる気配さえ見せない。
この技ならば、並の敵なら一瞬で塵芥と化す。強敵であっても、数秒持てばいい方だ。
なのに、何故―――
『5!』
同時に―――全ての花が、砕け散った。粉々になった欠片は、地に落ちる前に焼け落ちて灰すら残らない。
その中心で、サンレッドは何事もなかったかのように、力強く立っていた。
「なん…ですって…!?」
愕然としながらも、幽香は一瞬で答えを導き出していた。
単純そのもの―――吸収可能なキャパシティを遥かに凌駕する勢いで、闘気を放出させた。
その結果、オーバーフローを起こし、爆発。
理屈はその通りだったが、実行に移すには半端ではない難易度だ。
何しろこれは、そこらの凡夫が繰り出した業ではない―――仮にも大妖・風見幽香が織り成した魔術だ。
それを力ずくで打ち破るなど、不可能と言ってよい。
可能だというならば、それは風見幽香に比肩しうる―――或いは超越する―――怪物のみ。
「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
紅き怪物が、咆哮と共に真っ直ぐ突き進む。
炎を纏い、閃光と化して駆け抜ける。

「紅炎拳―――<ブレイジング・ナックル>!」

打ち込まれた拳に、虚を突かれながらも幽香は殆ど本能だけで対処する。
先程までの攻防と同じく、日傘を楯の様に構え―――
「だらぁぁぁぁぁぁっ!」
中ほどから、日傘がへし折られた。それを突き破った勢いのまま、幽香の心臓の真上に拳を叩き付ける。
錐揉みしながら吹っ飛ばされ、背中から地に叩き付けられた。
窮地に追い込まれていたはずのサンレッドの逆襲劇に、場内から大歓声が上がる。
『サンレッド、怒涛の反撃!風見幽香、今大会初のダウンです!今度は彼女にターンが回るか!?それともこのまま
二回戦で散るのか!?』
「…立てよ。こんなモンでテメーが終わるわけねーだろ」
「そうね…まだまだ楽しめそうだもの」
立ち上がった幽香の顔には、未だに笑みが張り付いている―――否。
これまでよりも更に楽しそうで愉しそうな、狂気と凶気、そして狂喜に満ちた笑みだった。
手に握ったままの、半分になってしまった日傘を見つめる。
「…迂闊だったわ。闇雲に攻めてるように見せて、一点に攻撃を集中していたのね」
「へっ…これでも闘いに関しちゃ、頭は回る方でね」
ニヒルに笑ってみせる。
全くの偶然だった事はナイショである。
「ねえ、サンレッド。幻想郷に生きる者は、大抵は人様から化物と呼ばれるのよ」
唐突に、幽香は語り出した。
「冗談としか思えない身体能力、悪夢としか形容できない異能―――故に、化物」
「それがどーしたよ」
「そんな私の目から見ても…あなたは、おかしい。異常と言い切ってもいいわ」
戦闘能力において最強種族と称えられる鬼―――その中でも最強の一人と称される星熊勇儀と真っ向から殴り合い、
捻じ伏せた腕力。
そしてコメディ・コミックの登場人物だと言われれば信じてしまいそうな桁外れの体力と頑強さ。
「あなたも立派に化物よ、サンレッド」
「ありがとよ。一応、褒めてるんだと思っとくぜ」
「けれど…あなたの勝ちだなんて、まだ誰も言ってない」
スクラップと化した日傘を投げ捨て、幽香は凄絶な妖気を放った。
「この風見幽香―――今だ、全てを見せてはいない」