SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ ジョジョの奇妙な冒険第4部―平穏な生活は砕かせない― 第20話


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眠気にふら付く帰り道、次に店を訪れる日を心待ちにしながら歩いていた。

「ほらっ、早人! フラフラしないでちゃんと歩きなさい!」
「ハッハッハ、眠いのかな? よぉーし、またパパがおぶってやろう」

店に来たときと同じように、奴が僕の前に立ち背を向ける。
だがこの背にもたれ掛かることを恐れる日々も、きっと終わる。
希望を胸に、今度は震えることなく獣の背に身を任せる。

「フフフ、震えないのか? やはりそういうことか……『でかしたぞ』早人」

ドクン、僕の心臓が強く脈打つ。
『でかしたぞ』とは何に対していっているのだ?
『バイツァ・ダスト』は発動していない、時間は巻き戻っていない。
トニオさんが奴の正体を掴んだとは知られていない筈だ。

「私にも見えない『スタンド』だったのか、それともあの料理がスタンドの正体か?
お前が見破ったのか操られたのかは判らないが、お前の変化には気付いていたよ」

僕の変化? 料理を食べた後のあの異常に気付いていたのか?
いや、もしそうなら何が起こるか判らない料理など口に含むはずがない。

「サラダやパスタ、お前は必ず私たちに先に料理を食べさせていたな……親を毒見に使うとは悪い子だ。
だがトイレから帰ってきた時、お前の怯える様子は消えた………こう言ってしまうとお前が怯えてしまうかな?」

体に震えが戻ってくる、奴が怖いんじゃあない。
僕はまた同じ過ちを繰り返してしまったのではないだろうか。
僕の心を見透かしたように殺人鬼が口の端を吊り上げて笑う、奴の一言が不安を確信へと変えた。

「彼はもう始末されているよ……後片付けをしている筈だ、爆弾になった皿が磨かれているってことさ」

僕は殺人鬼の背から飛び降り、トニオさんの店へと駆け出した。

「ちょっと? 早人!?」
「どうやら忘れ物をしたようだ、私は早人と一緒に行くから先に帰ってくれ」

不思議そうにしながらも、しのぶは言われた通りに一人で帰る。
惜しい事をした、最高の料理を安価で気軽に楽しめる名店だった。
だが、私に仇なす者が存在することは許されない。

吉良吉影は『トラサルディー』に向かう道へ振り返り、早人を追うようにトニオの店へ向かった。

僕は忘れない、今日という日を。
僕のせいで罪のない人の命が、また奪われたこの日を。
強く握られた拳の中で、真っ白なコック帽がしわくちゃになっていた。

トニオ・トラサルディーはもう居ない、僕のせいで殺された。

「トニオさん……僕のせいだ………」

血の一滴も残さず、帽子だけがこの場に残っている。
奴が殺した証拠は何もない、完璧な殺人を可能にする能力。
この能力に抗える人は、後どのくらい居るのだろう。

生きていることが辛い、奴と戦うことの孤独に耐え切れない。
『バイツァ・ダスト』によって自殺もままならない僕はやり場のない怒りに掻き立てられる。
地面に這い蹲り、頭を床に叩きつけるべく振り下ろす。

額に強い衝撃が走る、目眩と痛みに視界が揺れるがそれどころではない。
奴の『バイツァ・ダスト』が僕を守っている筈。
この痛みはどういうことだろうか。

テーブルの上からフォークを取り、自分の腕に突き刺す。
カッターの先端を止めたあの力は現れない、真っ赤な血が流れる。

「『バイツァ・ダスト』はもう……居ない」

忌まわしい力から解放されたが、そこに喜びは無く虚しいだけだった。
彼が死んだのは僕のせいだ、『バイツァ・ダスト』は関係なかった。

自責の念に押しつぶされそうになる僕を腕から流れる血が支えてくれていた。
奴の企みを潰せることを、この血が証明してくれている。
恐怖は消えた……心に残るのは復讐の意志。

トニオさんの言っていた『ジョースター』という人物と連絡を取るべく家屋を調べる。
まずは厨房からだ、血を吐いていた筈の子犬が尻尾を振り息を荒げながらこちらを見ている。

彼の飼い主を思い浮かべ、再びこみ上げて来る涙を拭う。
主人を失った彼はこの先どうなるのか、行方不明として警察の捜査が入れば保健所行きだろう。
こうなった責任を取らねばならないが、家はペット禁止だ……にも関わらずママはネコを飼っているが。
取り合えず飼い主となってくれる人物を探すまでは何とかして自分で面倒を見なければならない。
彼の住まいと思わしき小さな檻に鍵をかけると、不安そうに辺りを見回している。
それはまるで、この世から去った主人を探しているようだった。

一通り店を探し終え冷静になった僕は時計を見て就寝時間が迫っている事に気づく。
表の表札を閉店にしておけばすぐに行方不明の届けが出る事は無いだろう。
ママを心配させないためにも一度、家へ帰ることにした。

店を出ようとドアノブに手をかける、扉を開くと反対側から押し返されるような圧力を感じた。
扉に物理的干渉を受けているわけではない、ドス黒い威圧感に押されているのだ。
初めて『バイツァ・ダスト』を取り憑けられた日と同じ、奴が扉の裏で僕を待ち構えていた。

「探し物は見つかったのか早人? まさか彼のペットを取りにここまで時間を掛けた訳じゃないだろう」

暗闇に、ピアニストを連想させる白い肌が光ると女性とは違った妖しい色気が奴から際立つ。
だがそれは獲物を引き寄せる撒き餌にすぎず、こいつの内面はこの世のどんな物より醜悪なのだ。
肌は薄明かりに照らされても、その漆黒に包まれた目に決して光は通らなかった。

「フフフ、そうか探し物はペットだったか……私はこっちだとばかり思っていたよ」

ポケットからノートのような物を取り出す、表紙にはこう書かれていた……『電話帳』と。
奴は知っている、奴を倒せる最後の希望が存在する事を。
一体、どこまで――「ジョセフ・ジョースター」――知って……。
奴の言葉が僕の思考を遮る、考えても無駄な事を悟ってしまった。

「死んだ億泰の父はジョセフや承太郎に敵対するディオという人物の手下だった。
私の父がこの世を去る前に調べておいてくれたよ……お前にとって残念な知らせだがジョセフの『能力』は戦闘用ではない。
更に言うと現在は79歳の老人、耳は遠くなり白内障を患い杖が無くては歩けないほど足腰は弱りおまけにボケているらしい」

電話帳が地面に投げ捨てられる、拾おうと手を伸ばすと目の前で粉々に砕け散った。
膝を突き地面に突っ伏すと冷えた大地に体が沈んでいくような感覚に囚われる。
内側からの衝撃で膨れ上がり、ひび割れてバラバラに弾け飛んだ最後の希望。
薄っぺらな紙の中に爆薬でも詰め込んだように吹き飛ばす、現実にありえない事を可能とする異能。

「諦めたか……それでいい、心配しなくても私はお前やしのぶに危害は加えないさ」

絶望の淵で奴の冷たい手が慰めるように僕の背をさすると、ゾッとする寒気と吐き気に襲われる。
静寂に包まれた闇の中、僕の頭には勝ち誇る奴の高笑いが響いていた。
ここまでだ、僕にできる事は何も無い……奴の気分が変わらないことを願うしかない。

「そうじゃな、アンタが諦めて檻に繋がれば彼や母親にも危害は及ばんじゃろう」

突然に響くしわがれ声、その隠者は足音一つなく現れた。

闇夜に目を凝らすと屈強な体つきの老人が発したようで、地味な服装に時代遅れのカウボーイの被るような汚い帽子。
帽子の下から輝きに満ちた瞳が覗く、その眼差しは月の光より強く……太陽の様に煌いていた。
輝かしい黄金が僕の暗闇を取り払っていく、この人が町の闇に立ち向かう最後の戦士。

「この服も、帽子も久々じゃわい……難聴で聞いててもサッパリだったビートルズの『ゲットバック』も久々に聞けたしの」
「貴様がジョセフ!? ありえん……DIOという吸血鬼を討伐した際、既に七十の老人だったのにその若さは!?」
「バカをいうな! 当時はまだ六十八だったわい!」
「た……大して変わらないんじゃ………」

助けに現れたと思われる聖戦士は僕の余計な一言に気分を害したのか冷たい視線を送る。
少しの沈黙が続くと気まずい空気を振り払うように咳払いして視線を殺人鬼へと向ける。

「ワシも妻と同じ時の流れに生きたかった……ストレイツォのように若さの充実に餓える事なく天命に身を委ねたかった。
もう二度と『波紋の呼吸』は使いたくなかったがこの町の人々、そして孫………更には息子までも殺した貴様だけは許さん」

彼の人物像がユーモラスな老人から一転、この世の邪悪に立ち向かう救世主へと変わる。
彼から感じ取れる怒りは復讐の怒りではあったがこの世に存在する白と黒の存在の中で彼は間違いなく『白』にいた。

「訳の分からんことをゴチャゴチャと言ってくれるが要するに復讐ということか。
念写しか取り柄のないスタンドで、どうやって私と戦う気なのかな?」

奴が余裕の笑みを浮かべている、僕に取り憑いていた『バイツァ・ダスト』は奴に戻っている。
直々に手を下す勝負で相手を侮るタイプではない……もしやと思い耳を済ませると謎の空気音が確かに聞こえた。

「ジョセフさん! 逃げてッッ! 奴の爆弾が飛んでくる!」
「もう遅い、着弾地点に到達した! 貴様のスタンドに仗助のようなパワーとスピードはないッ!」

隠者の目の前で爆発が起こる、颯爽と現れた希望はこんなにも脆いものだったのか?
辛うじて生き延びていても深刻なダメージを負っている筈だ、勝負は決してしまったのか?

「フハハハハハ! 最期の断末魔すら上げず吹っ飛んだぞ!」
「ほぉ~ワシにはそんなの見えなかったが……誰が吹っ飛んだって?」

頭上から声が響く、隠者は一瞬にして屋根の上に乗っていた。
あの爆発を避けつつ一瞬で屋根まで飛べて、パワーのないスタンド?
僕は彼の能力の謎が全くわからなかったが、奴には何をしたのか見えていたのだろうか。

「バ、バカな……『ハーミット・パープル』を伸ばして跳躍することは可能だろうが爆破を回避するそのスピードは!?」
「フフフ……このジョセフ・ジョースター老いて益々健在というところか」