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天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 天体戦士サンレッドVS星熊勇儀
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furari
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「ああ~…いよいよ始まっちゃいましたね」
ヴァンプ様は落ち着きなくそわそわしながら、闘技場に立つレッドを見つめる。
「ね、ね。大丈夫ですよね、レッドさん。ああ~、あの人の強さを疑うわけじゃないけれど心配だなあ…もし殺られ
ちゃったりしたら大変だよ。抹殺すべきヒーローを他の人に倒されたなんてなったら、皆にどう言えばいいのか…
あ、そうなったらなったで世界征服に一歩近づくわけだし、ここはむしろあっちの星熊勇儀さんを応援すべきかも。
でも私達以外の誰かがレッドさんに勝っちゃうってのも複雑な気分だし…あ~も~、ホントどうしよう、私」
「…とりあえず、静かに観戦してはいかがでしょう」
「そ、そうですね、ジローさん!よーし、見るぞー!」
身を乗り出し、食い入るように闘技場を睨み付けるヴァンプ様である。
そんな彼を呆れ顔で見つめて、魔理沙はジローとコタロウに小声で問うた。
「なあ。このオッサン、ちゃんと世界征服できてるのか?」
「…ノーコメントとさせていただきます」
「…ま、毎日頑張ってるんだよ、ヴァンプさんは」
「そっか…」
それで全てを察した魔理沙は、静かに口を閉ざしたのだった…。
「それにしても、いきなり星熊勇儀とは…サンレッドも運がないわね」
「ふむ。それは聞き捨てなりませんね」
パチュリーのその言葉に、ジローは少々気分を害したように反論する。
「身内贔屓と誹られるかもしれませんが、私はレッドの戦闘力は幻想郷に在ってもそうそう並ぶ者はいないと見て
いますよ」
「そうですよ。レッドさん、おっそろしいくらい強いんですから!」
ヴァンプ様もジローに続くが、パチュリーは首を横に振った。
「別に、彼が弱いなんて誰も言ってないわ…レミィが気にかけているくらいだもの。相当の力の持ち主なのは確か
でしょうね。だけど<語られる怪力乱神>星熊勇儀が相手となれば、分が悪いと私は見るわ」
「その、星熊勇儀さんって…そこまで強いんですか?」
「まあ、口で説明したってピンと来ないでしょうけど―――」
ヴァンプ様は落ち着きなくそわそわしながら、闘技場に立つレッドを見つめる。
「ね、ね。大丈夫ですよね、レッドさん。ああ~、あの人の強さを疑うわけじゃないけれど心配だなあ…もし殺られ
ちゃったりしたら大変だよ。抹殺すべきヒーローを他の人に倒されたなんてなったら、皆にどう言えばいいのか…
あ、そうなったらなったで世界征服に一歩近づくわけだし、ここはむしろあっちの星熊勇儀さんを応援すべきかも。
でも私達以外の誰かがレッドさんに勝っちゃうってのも複雑な気分だし…あ~も~、ホントどうしよう、私」
「…とりあえず、静かに観戦してはいかがでしょう」
「そ、そうですね、ジローさん!よーし、見るぞー!」
身を乗り出し、食い入るように闘技場を睨み付けるヴァンプ様である。
そんな彼を呆れ顔で見つめて、魔理沙はジローとコタロウに小声で問うた。
「なあ。このオッサン、ちゃんと世界征服できてるのか?」
「…ノーコメントとさせていただきます」
「…ま、毎日頑張ってるんだよ、ヴァンプさんは」
「そっか…」
それで全てを察した魔理沙は、静かに口を閉ざしたのだった…。
「それにしても、いきなり星熊勇儀とは…サンレッドも運がないわね」
「ふむ。それは聞き捨てなりませんね」
パチュリーのその言葉に、ジローは少々気分を害したように反論する。
「身内贔屓と誹られるかもしれませんが、私はレッドの戦闘力は幻想郷に在ってもそうそう並ぶ者はいないと見て
いますよ」
「そうですよ。レッドさん、おっそろしいくらい強いんですから!」
ヴァンプ様もジローに続くが、パチュリーは首を横に振った。
「別に、彼が弱いなんて誰も言ってないわ…レミィが気にかけているくらいだもの。相当の力の持ち主なのは確か
でしょうね。だけど<語られる怪力乱神>星熊勇儀が相手となれば、分が悪いと私は見るわ」
「その、星熊勇儀さんって…そこまで強いんですか?」
「まあ、口で説明したってピンと来ないでしょうけど―――」
「―――見りゃ分かるさ。嫌でもね」
答えたのは、幼い少女の声。一同が振り向けば、そこには長い二対の角を備えた小さな鬼。
彼女―――伊吹萃香は瓢箪に口を付け、酒を煽りながら語る。
「百聞は一見に如かず。千聞とてまた然り。いくら言葉を重ねようと、あいつの―――星熊勇儀の力を計り知る事
は出来ないさ。ま、それを知るのは…あの赤マスクが大地に沈む瞬間だろうけどね」
「あ、あの…」
ヴァンプ様は、遠慮がちに萃香に話しかける。
「確か、トーナメントに出ていらっしゃる…伊吹メロンさんでしたっけ?」
「…あん?」
ぴくりと、萃香は眉を持ち上げた。
「あんた…今、なんつった?」
「え?伊吹メロンさんじゃ…」
「違います…伊吹萃香ですよ、ヴァンプさん」
妖夢が、冷汗と共に訂正した。
星熊勇儀と並び称される伊吹萃香―――彼女がその気になれば、ここにいる全員が束になっても敵うまい。
この場において怒らせてはならない危険人物№1は、間違いなく彼女である。
「す、すいません!人様の名前を間違えるだなんて、とんだ失礼を…<スイカ>と<メロン>を間違えるなんて…
ぷ、ぷぷ…ご、ごめんなさい…スイカとメロンって…ぷーっ!す、すいませんすいません!笑ったりして私ったら
ほんと…で、でも…ひーひひひ!すいません萃香さん!」
謝りつつ、自分の発言に大ウケするヴァンプ様。彼は今、自分がすごい勢いで地雷を踏み抜いている事に気づいて
いない。萃香はといえば、身体をぷるぷると震わせて今にも噴火寸前といった有様である。
誰もが血の海に倒れ込むヴァンプ様の無残な姿を思い浮かべたその時。
「ぎゃははははっははははっはははははははははっはっはははひぃぃーーーひひひひっひっひいひいいいい!」
当のメロン、もとい萃香は、腹を抱えて笑い転げた。
「い…い…<いぶきスイカ>だから<いぶきメロン>ってか…ぷ、ぷ…あはははは!ダメだぁ、可笑しすぎるぅ!
さてはあんた、私を笑い殺す気だね!?うわははははははは!は、腹がヤバい、捩れるぅ!スイカにメロンって…
これはイケる!今世紀一番の大ヒット!あははははは!よーし、後で勇儀や天子ちゃんにも教えてやろうっと!」
見てる方がドン引きするような勢いで大笑いする萃香。
どうやら震えていたのは怒っていたのではなく、バカ受けしていたからのようであった。
恐るべきは、鬼のギャグセンスである。
とにもかくにも、ヴァンプ様は生命の危機を乗り切ったのであった。めでたしめでたし。
「…まあ、こいつはほっとくとして。一回戦からヤバい相手に当たったって事だけは確かだぜ?」
「そうね。はるばる外の世界から参戦したっていうのに、気の毒に」
「大丈夫」
悲観的な意見を述べる魔理沙とアリスに対し、コタロウはにっこりと笑った。
「レッドさんだって、ムチャクチャ強いもの」
「―――そうだよね」
ヴァンプ様はコタロウを見つめ、しっかりと頷いた。
「相手が誰だって…レッドさんなら、きっと勝ってくれるよ!」
「私は心配など、これっぽっちもしていませんよ」
ジローは不安の欠片も見せず、牙を見せて不敵に言い放つ。
「我々が星熊勇儀の力を知らぬように、貴女方とてサンレッドの強さを知らない―――予告しましょう。彼はこの
闘いに必ずや勝利し、皆を驚かせると」
「ふーん…これも美しい友情ってやつかね」
意地悪く言いながらも、魔理沙はどこか優しげに顔を綻ばせた。
「ま、ここで知り合えたのも縁か。この試合、私もサンレッドを応援してやるよ」
「うん!バッチリ応援よろしくね、魔理沙ちゃん!」
コタロウがグイっと立てた親指に、魔理沙も笑って親指を立て返す。
それを横目に、アリスは呟いた。
「それにしても、長々と話し込んで大丈夫なの?試合はもう始まってるのに」
「そうよ!こんなバカ話してる間に見逃したなんてなったらいい笑い者だわ」
「アリス、そしてメディスン。それについては無問題ですよ」
やたら自信ありげに妖夢が言い放つ。
「漫画的時空の発生によりまして、我々がさっきまでだらだらとくっちゃべっていたのは現実時間にしてたったの
2~3秒ということになっております」
「私達、すごい早口だったんだ…」
(※このセリフはメディスン・メランコリーのものですが、これも現実時間にして0.01秒の間に放たれました)
彼女―――伊吹萃香は瓢箪に口を付け、酒を煽りながら語る。
「百聞は一見に如かず。千聞とてまた然り。いくら言葉を重ねようと、あいつの―――星熊勇儀の力を計り知る事
は出来ないさ。ま、それを知るのは…あの赤マスクが大地に沈む瞬間だろうけどね」
「あ、あの…」
ヴァンプ様は、遠慮がちに萃香に話しかける。
「確か、トーナメントに出ていらっしゃる…伊吹メロンさんでしたっけ?」
「…あん?」
ぴくりと、萃香は眉を持ち上げた。
「あんた…今、なんつった?」
「え?伊吹メロンさんじゃ…」
「違います…伊吹萃香ですよ、ヴァンプさん」
妖夢が、冷汗と共に訂正した。
星熊勇儀と並び称される伊吹萃香―――彼女がその気になれば、ここにいる全員が束になっても敵うまい。
この場において怒らせてはならない危険人物№1は、間違いなく彼女である。
「す、すいません!人様の名前を間違えるだなんて、とんだ失礼を…<スイカ>と<メロン>を間違えるなんて…
ぷ、ぷぷ…ご、ごめんなさい…スイカとメロンって…ぷーっ!す、すいませんすいません!笑ったりして私ったら
ほんと…で、でも…ひーひひひ!すいません萃香さん!」
謝りつつ、自分の発言に大ウケするヴァンプ様。彼は今、自分がすごい勢いで地雷を踏み抜いている事に気づいて
いない。萃香はといえば、身体をぷるぷると震わせて今にも噴火寸前といった有様である。
誰もが血の海に倒れ込むヴァンプ様の無残な姿を思い浮かべたその時。
「ぎゃははははっははははっはははははははははっはっはははひぃぃーーーひひひひっひっひいひいいいい!」
当のメロン、もとい萃香は、腹を抱えて笑い転げた。
「い…い…<いぶきスイカ>だから<いぶきメロン>ってか…ぷ、ぷ…あはははは!ダメだぁ、可笑しすぎるぅ!
さてはあんた、私を笑い殺す気だね!?うわははははははは!は、腹がヤバい、捩れるぅ!スイカにメロンって…
これはイケる!今世紀一番の大ヒット!あははははは!よーし、後で勇儀や天子ちゃんにも教えてやろうっと!」
見てる方がドン引きするような勢いで大笑いする萃香。
どうやら震えていたのは怒っていたのではなく、バカ受けしていたからのようであった。
恐るべきは、鬼のギャグセンスである。
とにもかくにも、ヴァンプ様は生命の危機を乗り切ったのであった。めでたしめでたし。
「…まあ、こいつはほっとくとして。一回戦からヤバい相手に当たったって事だけは確かだぜ?」
「そうね。はるばる外の世界から参戦したっていうのに、気の毒に」
「大丈夫」
悲観的な意見を述べる魔理沙とアリスに対し、コタロウはにっこりと笑った。
「レッドさんだって、ムチャクチャ強いもの」
「―――そうだよね」
ヴァンプ様はコタロウを見つめ、しっかりと頷いた。
「相手が誰だって…レッドさんなら、きっと勝ってくれるよ!」
「私は心配など、これっぽっちもしていませんよ」
ジローは不安の欠片も見せず、牙を見せて不敵に言い放つ。
「我々が星熊勇儀の力を知らぬように、貴女方とてサンレッドの強さを知らない―――予告しましょう。彼はこの
闘いに必ずや勝利し、皆を驚かせると」
「ふーん…これも美しい友情ってやつかね」
意地悪く言いながらも、魔理沙はどこか優しげに顔を綻ばせた。
「ま、ここで知り合えたのも縁か。この試合、私もサンレッドを応援してやるよ」
「うん!バッチリ応援よろしくね、魔理沙ちゃん!」
コタロウがグイっと立てた親指に、魔理沙も笑って親指を立て返す。
それを横目に、アリスは呟いた。
「それにしても、長々と話し込んで大丈夫なの?試合はもう始まってるのに」
「そうよ!こんなバカ話してる間に見逃したなんてなったらいい笑い者だわ」
「アリス、そしてメディスン。それについては無問題ですよ」
やたら自信ありげに妖夢が言い放つ。
「漫画的時空の発生によりまして、我々がさっきまでだらだらとくっちゃべっていたのは現実時間にしてたったの
2~3秒ということになっております」
「私達、すごい早口だったんだ…」
(※このセリフはメディスン・メランコリーのものですが、これも現実時間にして0.01秒の間に放たれました)
―――と、いうわけで。試合開始から数秒。
先に動いたのは、勇儀だ。
「ここは、先手必勝でいかせてもらうよ―――」
空に舞い上がり、抑えていた妖力を解き放つ。漏れ出した強大な気配は竜巻の如き圧力を伴い、勇儀を中心に
うねり、渦巻き、蹂躙する。この勢力圏内に迂闊に立ち入ろうものなら、それなりに力のある妖怪であっても瞬時
に灰と化すだろう。
だがレッドはそれを、微動だにする事なく受け止めていた。荒れ狂う大蛇を思わせる力の奔流をかわすのではなく、
むしろ真正面から迎え撃ち、己の闘気で逆に抑え込む。
ひゅう、と勇儀は口を鳴らした。
「そう来ないとね。これくらいの脅しで顔色を変えるようなら、興醒めしてたところだ」
「ガタガタ言ってんじゃねー。さっさと来いよ」
「ははは、急くな急くな。勝負はこれから、これから―――」
勇儀は指先に妖力を込め、宙に円を描くようにくるくると回す。
その軌跡は、光を纏う無数の円輪と化す。
先に動いたのは、勇儀だ。
「ここは、先手必勝でいかせてもらうよ―――」
空に舞い上がり、抑えていた妖力を解き放つ。漏れ出した強大な気配は竜巻の如き圧力を伴い、勇儀を中心に
うねり、渦巻き、蹂躙する。この勢力圏内に迂闊に立ち入ろうものなら、それなりに力のある妖怪であっても瞬時
に灰と化すだろう。
だがレッドはそれを、微動だにする事なく受け止めていた。荒れ狂う大蛇を思わせる力の奔流をかわすのではなく、
むしろ真正面から迎え撃ち、己の闘気で逆に抑え込む。
ひゅう、と勇儀は口を鳴らした。
「そう来ないとね。これくらいの脅しで顔色を変えるようなら、興醒めしてたところだ」
「ガタガタ言ってんじゃねー。さっさと来いよ」
「ははは、急くな急くな。勝負はこれから、これから―――」
勇儀は指先に妖力を込め、宙に円を描くようにくるくると回す。
その軌跡は、光を纏う無数の円輪と化す。
「怪輪―――<地獄の苦輪>」
数十、数百の光輪が一斉にサンレッド目掛けて飛来する。レッドは一瞬でその動きを読み切った。
最小限の動きでかわし、掻い潜り、避けられぬなら自らの拳で粉砕する。
「いい動きだね―――なら、これはどうだ?」
「っ!」
見れば、レッドの周囲を取り囲むように光輪が集まっていた。それは次々に融け合い、混ざり合い、一つの巨大な
円環となる。
最小限の動きでかわし、掻い潜り、避けられぬなら自らの拳で粉砕する。
「いい動きだね―――なら、これはどうだ?」
「っ!」
見れば、レッドの周囲を取り囲むように光輪が集まっていた。それは次々に融け合い、混ざり合い、一つの巨大な
円環となる。
「枷符―――<咎人の外さぬ枷>」
勇儀が右拳を強く握り締めると同時に、光の円環が収縮し、レッドを締め上げ、身動きを封じる。
『おっと、サンレッド油断したか!これでは動けないぞ!』
「ちっ…!好き勝手言ってんじゃねー!」
忌々しげに実況席を睨み付けるが、相手はその間も待ってはくれない。
「続けていくよ…今度はちょっと、派手にね」
動けないレッドに向けて、その両掌を向ける。それはまるで、標的を捉えた砲門だった。
『おっと、サンレッド油断したか!これでは動けないぞ!』
「ちっ…!好き勝手言ってんじゃねー!」
忌々しげに実況席を睨み付けるが、相手はその間も待ってはくれない。
「続けていくよ…今度はちょっと、派手にね」
動けないレッドに向けて、その両掌を向ける。それはまるで、標的を捉えた砲門だった。
「力業―――<大江山嵐>」
掌から放たれた、無限に等しい妖力弾がレッドに叩きこまれる。
大地が抉られ、巻き上がる土砂が、レッドの姿を覆い隠した。
『こ…これは終わったか!?星熊勇儀、試合開始早々の怒涛の攻撃だ!サンレッド、果たして無事か!?第一
試合からいきなり死者が出てしまうのかっ!?』
実況アナ・射命丸文の解説にも力が入る。だが、次の瞬間。
「―――っらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
土砂の中から飛び出す、赤い影。レッドは全身の力を込めて己を縛る枷を引き千切り、鬼へと迫る。
「しゃあっ!」
強烈なヒジ打ちが、勇儀の顎を捉えた。さしもの鬼も衝撃を殺せず、地に落ちる。
間髪入れず、太陽の戦士が追撃する。
「ダララララァッ!」
目にも止まらぬ左のハイキックの三連撃。
「かはっ…」
「おおおおおっ!」
渾身の力を以て、鳩尾に右のショートアッパー。たまらず膝を折り、体を折り曲げる。
その隙に、既にサンレッドは勇儀の目の前から消えていた。
垂直にジャンプし、太陽闘気(コロナ)を燃え上がらせる。
「―――コロナアタック!」
火花を散らして猛る大火球を、大地目掛けて投げつける。
破壊をもたらす光が激しく明滅し、世界は真紅に染まり、轟音が闘技場を揺さぶった。
跡には、隕石が激突したかのようなクレーター。星熊勇儀はその中心で倒れ伏し、指一本動かない。
『サンレッド、防戦から一転して凄まじいまでの猛攻!最強妖怪の一角・星熊勇儀がまさかの大苦戦だぁ!勝負
はここで決まるの』
かぁ!?と、言い切る事は出来なかった。倒れていた勇儀がバネ仕掛けの如く飛び起きたからだ。
首をコキコキと鳴らしながら、口に溜まった血をぺっと吐き出す。
全身に傷を負い、衣服は既に襤褸切れと化していたが、その覇気に満ちた横顔には一切の翳りがない。
「今のはちょっと、効いたよ。けど、これで終わりと思ってもらっちゃ困るね」
笑ってそう言ってのける。
その頑強さに観客達はどよめくが、闘技場に立つサンレッドには動揺は見えなかった。
「だろうな…アレで決まってたら、ガックリくるトコだ」
「そりゃあ杞憂というものさ」
肩を回しながら、美しき鬼は天体戦士の前に立つ。
瞬間、レッドの全身を貫くような悪寒が奔った。
「サンレッド…あんたは、確かに強い」
勇儀の全身から、暴風雨の如く鬼気が漏れ出していた。
それは永き時の中で熟成された、不動にして不滅の鬼気だ。
「久々だよ。あたしの全部を見せられる相手は…全力で闘える敵は―――!」
勇儀が放つ妖力が膨れ上がり、大地が揺れる。天には乱雲が渦巻き、雷鳴が轟く。
「とくと見よ…鬼族が四天王・星熊勇儀―――<怪力乱神を持つ程度の能力>を!」
大地が抉られ、巻き上がる土砂が、レッドの姿を覆い隠した。
『こ…これは終わったか!?星熊勇儀、試合開始早々の怒涛の攻撃だ!サンレッド、果たして無事か!?第一
試合からいきなり死者が出てしまうのかっ!?』
実況アナ・射命丸文の解説にも力が入る。だが、次の瞬間。
「―――っらぁぁぁぁぁぁぁっ!」
土砂の中から飛び出す、赤い影。レッドは全身の力を込めて己を縛る枷を引き千切り、鬼へと迫る。
「しゃあっ!」
強烈なヒジ打ちが、勇儀の顎を捉えた。さしもの鬼も衝撃を殺せず、地に落ちる。
間髪入れず、太陽の戦士が追撃する。
「ダララララァッ!」
目にも止まらぬ左のハイキックの三連撃。
「かはっ…」
「おおおおおっ!」
渾身の力を以て、鳩尾に右のショートアッパー。たまらず膝を折り、体を折り曲げる。
その隙に、既にサンレッドは勇儀の目の前から消えていた。
垂直にジャンプし、太陽闘気(コロナ)を燃え上がらせる。
「―――コロナアタック!」
火花を散らして猛る大火球を、大地目掛けて投げつける。
破壊をもたらす光が激しく明滅し、世界は真紅に染まり、轟音が闘技場を揺さぶった。
跡には、隕石が激突したかのようなクレーター。星熊勇儀はその中心で倒れ伏し、指一本動かない。
『サンレッド、防戦から一転して凄まじいまでの猛攻!最強妖怪の一角・星熊勇儀がまさかの大苦戦だぁ!勝負
はここで決まるの』
かぁ!?と、言い切る事は出来なかった。倒れていた勇儀がバネ仕掛けの如く飛び起きたからだ。
首をコキコキと鳴らしながら、口に溜まった血をぺっと吐き出す。
全身に傷を負い、衣服は既に襤褸切れと化していたが、その覇気に満ちた横顔には一切の翳りがない。
「今のはちょっと、効いたよ。けど、これで終わりと思ってもらっちゃ困るね」
笑ってそう言ってのける。
その頑強さに観客達はどよめくが、闘技場に立つサンレッドには動揺は見えなかった。
「だろうな…アレで決まってたら、ガックリくるトコだ」
「そりゃあ杞憂というものさ」
肩を回しながら、美しき鬼は天体戦士の前に立つ。
瞬間、レッドの全身を貫くような悪寒が奔った。
「サンレッド…あんたは、確かに強い」
勇儀の全身から、暴風雨の如く鬼気が漏れ出していた。
それは永き時の中で熟成された、不動にして不滅の鬼気だ。
「久々だよ。あたしの全部を見せられる相手は…全力で闘える敵は―――!」
勇儀が放つ妖力が膨れ上がり、大地が揺れる。天には乱雲が渦巻き、雷鳴が轟く。
「とくと見よ…鬼族が四天王・星熊勇儀―――<怪力乱神を持つ程度の能力>を!」
<怪力乱神>
<怪>即ち、怪異にして超常たる存在。
<力>即ち、並ぶものなき剛力。
<乱>即ち、天地を乱すが如く。
<神>即ち、神妙不可思議なる全て。
総じて人智を、理解を、現実を超越せし概念。
古の賢人が語らざる物語。
その体現者にして語り部こそが星熊勇儀。
故に、彼女を知る者はこう謳う―――<語られる怪力乱神>!
古の賢人が語らざる物語。
その体現者にして語り部こそが星熊勇儀。
故に、彼女を知る者はこう謳う―――<語られる怪力乱神>!
獅子の鬣(たてがみ)の如く逆立つ金の髪。
大きく、長く伸びていく爪牙。
血のように紅く染まる瞳が、大きく見開かれた―――
大きく、長く伸びていく爪牙。
血のように紅く染まる瞳が、大きく見開かれた―――
「…ここまでだね」
観客席で、伊吹萃香はそう呟いた。
「勇儀がああなった以上、サンレッドにはもう、勝ち目はない」
「な、何を言ってるんです!まだ分かりませんよ!」
「そうだよ!レッドさんは負けないもん!」
「分かるさ」
ヴァンプとコタロウの抗議を遮り、短くそう答えた。
「あいつの<怪力乱神を持つ程度の能力>ってのは、妖力を使って説明のつかない、不可思議な現象を起こす
能力―――今の勇儀の姿は、それを純粋に戦闘能力の強化につぎ込んだ状態だ」
そして、続けた。
「あいつがこの世に生まれ落ちて数百年―――誰が相手だろうと、あれを使った勇儀が力勝負で負けた事なんざ
一度もないんだよ」
観客席で、伊吹萃香はそう呟いた。
「勇儀がああなった以上、サンレッドにはもう、勝ち目はない」
「な、何を言ってるんです!まだ分かりませんよ!」
「そうだよ!レッドさんは負けないもん!」
「分かるさ」
ヴァンプとコタロウの抗議を遮り、短くそう答えた。
「あいつの<怪力乱神を持つ程度の能力>ってのは、妖力を使って説明のつかない、不可思議な現象を起こす
能力―――今の勇儀の姿は、それを純粋に戦闘能力の強化につぎ込んだ状態だ」
そして、続けた。
「あいつがこの世に生まれ落ちて数百年―――誰が相手だろうと、あれを使った勇儀が力勝負で負けた事なんざ
一度もないんだよ」
変貌した星熊勇儀の姿を目にしたサンレッドが次に視界に捉えたのは、迫り来る拳だった。
「くっ…!」
両腕を上げてガードするが、何の意味もなかった。
身体そのものが力任せに吹き飛ばされ、世界がぐらりと回る。
音を置き去りにする速度で弾き出されたレッドに、勇儀は一瞬で追い付いた。
「くっ…!」
両腕を上げてガードするが、何の意味もなかった。
身体そのものが力任せに吹き飛ばされ、世界がぐらりと回る。
音を置き去りにする速度で弾き出されたレッドに、勇儀は一瞬で追い付いた。
「力業―――<大江山颪(おろし)>!」
妖力を全身に纏わせ、一撃で山をも砕く拳を、雨霰と降らせる。
散々に打ち据えられたレッドは耐え切れずに苦鳴を洩らす。
その首元を右手で掴まれ、宙吊りにされた。
不意に、その手が離され―――
散々に打ち据えられたレッドは耐え切れずに苦鳴を洩らす。
その首元を右手で掴まれ、宙吊りにされた。
不意に、その手が離され―――
「四天王奥義―――」
右の一撃が、サンレッドの脇腹を砕いた。
身悶える暇も与えてくれず、左の拳が側頭部(テンプル)を痛打。
そして、最後の三撃目。
地球の核をブチ抜くような踏み込みから放たれたのは、天を貫くような右のアッパーカット。
レッドはたっぷり十秒もの間、発射されるロケットの気分を味わい―――
同じ時間をかけて、飛び降り自殺者の気分を味わい―――
大地に、叩き付けられた。
身悶える暇も与えてくれず、左の拳が側頭部(テンプル)を痛打。
そして、最後の三撃目。
地球の核をブチ抜くような踏み込みから放たれたのは、天を貫くような右のアッパーカット。
レッドはたっぷり十秒もの間、発射されるロケットの気分を味わい―――
同じ時間をかけて、飛び降り自殺者の気分を味わい―――
大地に、叩き付けられた。
「―――<三歩必殺>!」
破壊的にして圧倒的。
太陽は今、恐るべき力を持つ鬼の前に、砕かれた―――
誰もがそう思い、ある者は星熊勇儀に歓声を送り、またある者は必死にサンレッドの名を呼んだ。
文は興奮を隠しきれない様子で叫ぶ。
『星熊勇儀、恐るべし!その真の力の前にサンレッド、手も足も出ず!今度こそ勝負ありか!?』
「…いや。まだだな」
呟き、戦況を見守る審判・映姫に目をやった。
「決着が付いたなら、あんたが黙って見てやしないさ―――なあ、閻魔様」
「その通りです。まだ、白黒はっきり付いてはいない」
幻想郷の審判全てを司る存在は、答えた。
「彼にはまだ、闘う意志がある―――白か黒かは、まだ分かりません」
「どっちでもねえ。赤だよ、俺は」
そう言って。
サンレッドは、立ち上がった。
「一見かっこよさげですが、よく考えると何を言いたいのかよく分からないセリフですね」
「ほっとけよ。あんたと話してる暇はねー」
相当なダメージを被ったはずだが、その言葉に怯えの響きは一切ない。
絶望的なまでの力の差を見せつけられたにも関わらず―――まるで、心が折れていない。
眼光鋭く、星熊勇儀を睨み付けた。人差し指を、彼女に向けて力強く突き付ける。
「こちとら、あのバケモンを倒さなくちゃならねーんだからな」
『お…驚きました!サンレッド、まだやる気だ!しかし、彼我の力の差は歴然としている!何か策があるのか!?
それとも自棄になったのか!?彼の真意はどっちだ!』
「策なんざ、ねーよ」
レッドはそう吐き捨てる。
「へえ…けど、自棄になったって顔でもないね」
勇儀は、楽しげに口の端を吊り上げる。
「全力で、やるだけだ」
熱い風が、吹き抜ける。
「星熊勇儀―――俺はきっと、期待してた。テメーみたいな奴が現れるのを、待ってたんだ」
異常なまでの力を持て余す日々。
ヒーローとしてこれ以上なく恵まれた才能を持ちながら、それを発揮する機会もなかった。
強敵が欲しい―――
その思いは彼の中で、ずっと燻っていた。
そして、今。
太陽は今、恐るべき力を持つ鬼の前に、砕かれた―――
誰もがそう思い、ある者は星熊勇儀に歓声を送り、またある者は必死にサンレッドの名を呼んだ。
文は興奮を隠しきれない様子で叫ぶ。
『星熊勇儀、恐るべし!その真の力の前にサンレッド、手も足も出ず!今度こそ勝負ありか!?』
「…いや。まだだな」
呟き、戦況を見守る審判・映姫に目をやった。
「決着が付いたなら、あんたが黙って見てやしないさ―――なあ、閻魔様」
「その通りです。まだ、白黒はっきり付いてはいない」
幻想郷の審判全てを司る存在は、答えた。
「彼にはまだ、闘う意志がある―――白か黒かは、まだ分かりません」
「どっちでもねえ。赤だよ、俺は」
そう言って。
サンレッドは、立ち上がった。
「一見かっこよさげですが、よく考えると何を言いたいのかよく分からないセリフですね」
「ほっとけよ。あんたと話してる暇はねー」
相当なダメージを被ったはずだが、その言葉に怯えの響きは一切ない。
絶望的なまでの力の差を見せつけられたにも関わらず―――まるで、心が折れていない。
眼光鋭く、星熊勇儀を睨み付けた。人差し指を、彼女に向けて力強く突き付ける。
「こちとら、あのバケモンを倒さなくちゃならねーんだからな」
『お…驚きました!サンレッド、まだやる気だ!しかし、彼我の力の差は歴然としている!何か策があるのか!?
それとも自棄になったのか!?彼の真意はどっちだ!』
「策なんざ、ねーよ」
レッドはそう吐き捨てる。
「へえ…けど、自棄になったって顔でもないね」
勇儀は、楽しげに口の端を吊り上げる。
「全力で、やるだけだ」
熱い風が、吹き抜ける。
「星熊勇儀―――俺はきっと、期待してた。テメーみたいな奴が現れるのを、待ってたんだ」
異常なまでの力を持て余す日々。
ヒーローとしてこれ以上なく恵まれた才能を持ちながら、それを発揮する機会もなかった。
強敵が欲しい―――
その思いは彼の中で、ずっと燻っていた。
そして、今。
「ありがとよ―――おかげでやっと…本気のブン殴り合いができるぜ!」
サンレッドの太陽闘気(コロナ)が、極限まで高まった。
より真紅(あか)く。
更に灼熱(あつ)く。
遥か頂点(たか)く。
何処までも強靭(つよ)く!
荒ぶる太陽神(ヒュペリオン)の名を受けて、今、紅き勇者は焔の戦神と化した!
より真紅(あか)く。
更に灼熱(あつ)く。
遥か頂点(たか)く。
何処までも強靭(つよ)く!
荒ぶる太陽神(ヒュペリオン)の名を受けて、今、紅き勇者は焔の戦神と化した!
「雄々しく激しく、正義が吼える―――!」
情熱が漲る。灼熱が溢れる。爆熱が荒ぶる。
日輪の煌きの中、サンレッドがその姿を変えていく。
両腕と両脚に、古代ギリシャ神殿の支柱を模した装甲。
胸部を覆う、頑強な鎧(アーマー)。
頭部には、無骨な兜を思わせるオーバーメットが装着された。
今まさに、天体戦士サンレッドがその真の力を解き放つ時が来たのだ!
日輪の煌きの中、サンレッドがその姿を変えていく。
両腕と両脚に、古代ギリシャ神殿の支柱を模した装甲。
胸部を覆う、頑強な鎧(アーマー)。
頭部には、無骨な兜を思わせるオーバーメットが装着された。
今まさに、天体戦士サンレッドがその真の力を解き放つ時が来たのだ!
「天体戦士サンレッド・剛力形態―――<ヒュペリオンフォーム>!」