SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 裏方、その奮闘


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

―――幻想郷最大トーナメント本戦は、遂に明日まで迫っていた。
参加者達が思い思いに時を過ごす中、トーナメントを成功させるべく、裏方の皆さんは今なお闘っていた。
その奮戦ぶりを、どうか見ていただきたい。


「―――あやややや。これはすごいですね、にとりさん」
鴉天狗の新聞記者―――射命丸文は眼前に聳え立つ巨大な建造物に目を瞠り、手にしたカメラのフラッシュを
次々にたいていく。
「ふふん、そうだろうそうだろう。我ら河童の科学力は幻想郷一ィィィィィッ!」
彼女のすぐ後ろでは、大きなザックを背負い、髪を二つにしばってハンチング帽を被った少女が胸を反り返らせて
いた。天狗と同じく、妖怪の山に棲息する妖怪の一種―――河童である。

「この<超妖怪弾頭>河城(かわしろ)にとり―――お値段以上の仕事はさせてもらったよ」

幻想郷のあらゆる種族の中で最も科学技術に深い造詣を有する妖怪―――それが河童である。
中でもこの河城にとりは若輩ながら卓越した技術と知識を持つ新進気鋭の河童だった。
彼女の発明品は回転寿司のレーン(後の<かっぱ寿司>であった)からペプシキューカンバー、挙句の果ては
光学迷彩スーツに至るまで多岐に渡る。
その実績を見込まれ、幻想郷最大トーナメント本戦会場の設営を一任されたのだった。
「その結果がこれだよ!」
―――古代、剣闘士達が命を賭して死闘を繰り広げた円形闘技場(コロッセオ)―――
本戦会場は、正しくその再現だった。
決して派手ではないが、見る物を圧倒する風格を漂わせるその偉容。
一騎当千の猛者達が激突する闘いの舞台として、これ以上ないように思われた。
「どうだい、中々のモンだろう?我ながら自信作さ」
「うんうん、明日にはここで幻想郷中から集まった強者が鎬を削って闘うのですね!うううう~、記者魂が疼いて
きましたぁ!最近ちっとも面白いネタがありませんでしたからね。このトーナメントの模様、細大漏らさず記事に
させていただきますよ!」
文は瞳に星くん的な炎をメラメラさせつつ、にとりにマイクを突き付ける。
「にとりさん!まずこの会場について質問させていただきますが、よろしいですか!?」
「悪いっつっても無理矢理訊き出すんだろ…いいよ、別に隠す事もないし」
「では、まずお訊きしたいのは安全性です。何しろ、本戦出場者に名を連ねるのははっきり言って怪物としか形容
できない皆様ですからね。闘技場があっさりぶっ壊されるようでは不安でおちおち観戦も出来ませんよ?」
「ふふ、あやや。お前さんはこの河城にとりを侮っているね?」
にやりと笑い、にとりは己の胸を力強く叩く。
「耐久力については無問題(モウマンタイ)!試しにテ○ドンと同等の破壊力を持ったにとり特製ミサイルを十発
ほど撃ち込んでみたけど、小揺るぎもしない程度の強度さ!」
「うわ。明らかに試合が終わる頃にはボロボロになって出場者の強さアピールに使われるフラグですね!」
「うん。正直、私も造ってて思った…」
「あー、まあ、それはともかく、内部はどうなってるんです?」
「今は明日の本番に向けて最後の準備をしてるとこ。見知った連中も何人か顔を出してるから、あややもちょっと
見ていくかい?」
「おお、よろしいので?」
「建前は関係者以外立ち入り禁止なんだけどね…見学したいって奴は通してるよ。まあ、騒ぎを起こさない限りは
黙認って事さね」
「はいはい、心得ていますとも。では、拝見拝見~」


闘技場の入り口を抜けると、広々とした空間に連なる屋台の群れ。
主に飲食物を扱う売店が並んでいるようだった。中には出場選手の絵がプリントされたTシャツを売っている店も
ある。見学者を考慮してか既に開いている店もあるが、多くはまだまだ開店準備で大忙しだ。
とある焼鳥屋台では。
「輝夜…開店の準備を手伝ってくれるのは嬉しいんだ。でもな…」
わなわなと震える妹紅。その手には、空っぽの酒瓶。
「ええ~、な~に~もこた~ん」
白皙の美貌を真っ赤にして、既にへべれけになっている輝夜。
「勝手に酒を呑んでもいいとは言ってないぞ!あーあ、一番高いの空けちゃって…」
がっくり肩を落とす妹紅。その首筋に酒臭い息が生暖かく吐きかけられた。
「いいじゃないかもこ~。ぶれいこう、ぶれいこう」
「慧音!お前まで呑んだのか!?」
青にも銀にも見える艶のある髪。胸元を大きく開けた青いワンピースがやや扇情的だ。
輝夜と一緒に手伝いに来てくれていた妹紅の友人・上白沢慧音(かみしらさわ・けいね)である。
普段は知的な教師である彼女だが、今は単なる酔っ払いへと華麗なクラスチェンジを果たしていた。
「固いこというなよ~。ボディはこ~んなにやわらかなくせに~」
「ひいい!よせ、そんなとこを触るなぁ!」
「いいじゃないかぁ、女同士だろぉ?」
「あ、ずるーい。私も私もー。えへへへぇ、もこたんったら芳しいスメル~」
「二人ともやめろぉ!私を百合畑に誘うんじゃない!そんな事しても喜ぶのはあの百合好きの漢だけだぞ!」


―――その隣にある某クラブの出店では。
「うん、美味い!ロマネだなこりゃ!」
伊吹萃香が盃の中身を飲み干し、ぷはーっと満足げに息をつく。
それを見ながら、手伝いに来ていた少女はその涼しげな表情を変えずに平然と言い放つ。
「いえ、ファンタでございます」
「酒ですらねーのかよ!気付かなかった自分にもビックリだわ!せめてアルコール分を持ってこいよ!」
「失礼ながら萃香様。貴女様は既に酒をリットルにして五、ccにして五千も呑んでおられます。これ以上は健康に
よろしくないかと、空気を読んだ次第でございます」
「その結果がファンタかよ…相変わらず空気を読んだ上でそれを無視する女だね、衣玖ちゃん」
彼女はリュウグウノツカイから変異した妖怪・永江衣玖(ながえ・いく)。
<空気を読む程度の能力>の持ち主ではあるが、読めたからといってそれで空気をよくできるかどうかは別問題
という生きた見本であった。
「衣玖ったら…後で私が八つ当たりされるんだからやめてよ」
「何を言います、天子様。だからこそやってるんじゃないですか」
「イジメだ!職場イジメが発覚した!」
「ははは。皆、仲がいいねえ」
酒を呑みつつテンプレートな感想を述べる星熊勇儀。ちなみに彼女が持っているのは杯でも酒瓶でもなく酒樽だ。
それに直接口を付けてラッパ呑みしているのである。だというのに然程酔った様子も見えない所が恐ろしい。
「勇儀さんも呑気な事言ってないで、ちょっとはあの二人を諌めてくださいよ…」
「いいじゃないか、こうしてバカやれるのも、仲良しの証拠さ」
「かもしれませんけど…」
「その後で天子ちゃんが萃香にドツキ回されるのも、仲良しの証拠さ」
「それは全力で否定させていただきます!」


そんな凄惨な有り様を見ていた文は、やれやれとばかりに両手を広げた。
「うーん、既に酔っ払いの巣窟と化してますねえ…」
「明日が思いやられるねえ」
「ま、酔いどれ共はうっちゃっときましょう。ここもしかと見学させてもらって、我が文々。新聞のネタにさせてもらい
ましょうか!」
その時である。

「天体戦士サンレッド―――あなたは誠に野蛮で、横行跋扈であるッ!」

屋台の一角から響いた、清らかでありながら内に秘めた激情を感じさせる声。
「この声に、このセリフ…もしや!」
目線を向けた先には、夜雀の妖怪でありミスティア・ローレライの経営する八つ目鰻の屋台―――
そのカウンターに座る、一人の女性。
緩くウェーブのかかった亜麻色の長い髪。黒と白を貴重にしたゴスロリ風の装束。
外見のみならず、内面から自然と滲み出すような美を持つ女性だった。
それは、己の信念に全てを捧げる覚悟を持った者だけが手にしうる美―――殉教者の美と言えるかもしれない。

彼女は<ガンガンいく僧侶>聖白蓮(ひじり・びゃくれん)。
新興宗教・命蓮寺(みょうれんじ)の代表者にして神仏も妖怪も人間も全ては平等と謳う、超絶平等主義者。
幻想郷の中では新顔ながら、確かな実力と清廉な人格で一目置かれる存在である。

「…へーへー、分かった分かった。おーこーばっこね、おーこーばっこ…」
その隣でどんより顔をしているのは言うまでもない、サンレッドである。
更にその背後では、予選で彼に敗れた四人組が便乗して大騒ぎしている。
「そーだそーだ!お前はおーこーばっこだぞー!」
「おーこーばっこー!」
「おーこーばっこなのかー!」
「で、おーこーばっこってどういう意味?」
「力に任せて威張り放題のやりたい放題、という意味です。つまり、彼のような人物を指していうのです」
律儀に答える白蓮。淑やかな美貌を凛々しく引き締め、サンレッドに人差し指をビシっと突き付ける。
「聞けば予選で、このか弱くいたいけな子等に容赦なくその拳を振り下ろしたとか―――それだけに留まらず、外
の世界では怪人達にやりたい放題の非道を働いているとも聞きました…天体戦士サンレッド!誠に粗野で、暴虎
馮河(ぼうこひょうが)である!」
なお暴虎馮河とは、血気にはやり無謀な勇を振るうの意である。
そしてサンレッドはそんな彼女の隣で、もはや何度目になるのか分からない溜息をつく。
「…なんで俺は、こんなトコで何処の誰とも分からねー女に説教されてんだろ…ここにゃ大食い亡霊の荷物持ち
で来ただけだってのに…」
「南無三!」
「いてっ!ビール瓶で叩くんじゃねーよ!」
「このようないたいけな者達を虐げておきながら、その態度―――誠に不遜で、厚顔無恥であるッ!」
「…………」
「おや、だんまりを決め込むのですか?誠に無気力で、馬耳東風であるッ!」
「分かってんならもういーだろ…」
「まだまだ言いたい事はたくさんあります。何せあなたは誠にチンピラで、何か縛るモノであるッ!」
「四字熟語ですらなくなったじゃねーか!つーか何で皆、さも当然のようにそれを知ってんだよ!?」

―――説教はまだまだ終わりそうもない。
文とにとりは見なかった事にして、その場を立ち去るのであった。
「…白蓮さんまでいるとは思いませんでした」
「あー。多分、誰かさんへの接待じゃないかね?」
「どういう意味?」
「…大人の事情さ」
ややこしそうな話であった。


―――客席。
「おおー。随分と広いじゃないですか」
「実に五万人が収容可能だからね…それでも前売りチケットはすぐさま売り切れちゃったよ」
「はぁー。やはり皆、トーナメントに興味津々という事ですね?」
「そうなるね…しかしだ、あやや。お前さんは出場しなくてよかったのかい?<幻想郷最速>の名を欲しいままに
するあんたなら、いいとこまでいけると思うんだがね?」
いやいや、と文は笑って首を振った。
「速いだけで勝てるほど、甘いメンツはいませんよ。例えばにとりさん…あれを見てください」
「ん?」
文が指差した先には、二人の少女。
「いよいよ明日ね、幽香。私、ここからたくさん応援するからね!」
究極加虐生物・風見幽香と、その隣には毒人形―――メディスン・メランコリー。
メディスンはそこの売店で買ってきたらしいポップコーンを頬張り、これも売店で購入したと思しき幽香の絵入り
Tシャツに身を包んでいた。
「ありがとう、メディ。でも私はか弱い女の子だから。正直、自信ないわねぇ」
その言葉とは裏腹に、その麗しい横顔には萎縮した様子など欠片もない。
あるのはただ、己が力への絶対の自負と矜持―――
それを知ってか知らずか、メディスンはぶんぶんと首を振って先の幽香の言葉を否定した。
「そんな事ないよ。幽香はとっても強いもの。きっと優勝できるわ!」
「そう?ふふふ…」
「何せ幽香は幻想郷史上最狂・最凶・最恐の妖怪だもの。見た目はともかく分類としてはもう女じゃないって!」
「ふふ…」
笑顔が引き攣る幽香。それに気付かず、メディスンは命知らずにも続ける。
「何ていうか、幽香がか弱いってんなら他の連中はもうお箸も持てない超箱入りお嬢様よ!」
「ふ…」
「ホントなら私、幽香の事は<アニキ>って呼びたいくらいなんだから!男顔負けっていうか、むしろゴリラとか
の域に達してるっていうか…」
「メディ」
「ん?」
幽香の全く笑っていない目を見て、やっとこさ、メディスンは自分が地雷を踏み抜きまくった事に気付く。
「え、えーと…」
必死に言い訳の言葉を探すが、もう遅い。幽香は己の拳を堅く握り締め、高々と掲げていた。
「メディ。私ね、貴女の事はとっても素直で可愛くていい子だと思ってるのよ?本当の妹みたいに想っているわ」
「そ、そう?えへへへへ…」
「でもね…覚えておきなさい」
頭上に振り翳した拳を、一切の躊躇なくメディスンの脳天目掛けて振り下ろす。
メディスンはその場で一回転した後、顔面から地にめり込み、ピクピク痙攣する物体へと姿を変えた。
「口は災いの元―――また一つ賢くなったわね」


その一部始終を見ていた文は、からかうような口調でにとりに問う。
「いくら力があったって、あんなのとガチで闘り合いたいですか?」
「いや…遠慮する」
でしょう、と文は楽しげに笑う。
「それに、まあ…ああいう連中は、傍から見てる方が面白い」
「同意だね」
顔を見合せて笑い合う二人―――そこに。

「お久しぶりですね、河城にとり…それに射命丸文」

「うっ…あ、あんた…じゃない、貴女様は…!」
「ど、どうも…ご無沙汰です…」
文とにとりの表情を一言で表すなら<苦手な先輩とばったり出会っちまった後輩>という感じである。
二人の前にいるのは、厳粛な雰囲気を漂わせる長身の女性。
厳格を絵に描いたような引き締まった顔立ちは、威圧的でこそないものの見る者を否応無しに萎縮させる。
彼女こそは幻想郷における地獄の最高責任者にして、死者達を裁く最大権力者である閻魔が一人―――

<楽園の最高裁判長>四季映姫・ヤマザナドゥその人である。
人格者には違いないが、説教好きが高じて大概の人妖から煙たがられている御方であった。

「い、いやあ。四季様まで見学とは意外ですね、はは…」
「や、やはり四季様もトーナメントに御興味が?」
「そういうわけではありません…おや、まだ知りませんでしたか?」
「はあ…何をでしょう?」
映姫はこほん、と咳払いし、やや気取った仕草で胸を張る。
「この度、私こと四季映姫・ヤマザナドゥは、西行寺幽々子及び八雲紫からの正式な依頼により、この幻想郷最大
トーナメントの審判を務める事と相成りました」
「四季様が審判を…?ははあ、それはまた適材適所ですね」
「まあ、手前味噌ながら言わせてもらうと、これほどクセの強い連中の闘いに白黒つけられるのは私くらいのもの
でしょうからね…」
「能力からして<白黒はっきりつける程度の能力>ですしね…これは楽しみです、ははは。では私共はこれにて。
さあにとりさん、いきましょ…」
「お待ちなさい、射命丸文」
さっさと回れ右して帰ろうとしていた文は、ぐっと足を止め、嫌々ながら振り向く。
「貴女は相変わらず事件とあればそこかしこ飛び回っているようですが…以前、私が言った事をお忘れですか?」
「え、えっとぉ…」
「射命丸文。かつても言いましたが、あなたは事件を果敢に追い掛け回す事で、新たな事件の火種となってしまい
がちです―――そう。貴女は少し、好奇心が旺盛すぎる」
「…………うう~」
反論出来ない―――四季映姫・ヤマザナドゥの言う事は、いつだって正しいのだ。
この場をどうにか切り抜ける方法を、文は必死に考えた。そして―――
「あ、そうだ四季様!実は売店の方に、説教してほしいという男がいまして!」
「ほう?」
ピクリ、と眉を持ち上げる映姫。好機と見た文は畳み掛ける。
「ダメな自分を変えたいと、色々な方々に説教を受けているのです。ここは是非、四季様が有難い説教をかまして
差し上げるべきかと!」
「いいでしょう。迷える子羊に正しい道を説く事も、我が使命」
「さっすがぁ~!あ、その男の名はサンレッドと言いまして、赤いマスクを被ってるからすぐに分かるはずです。
まあかなりのツンデレさんなものですから、説教を嫌がる素振りを見せるかもしれませんが、なに、実の所誘って
るんですよ。どうぞ、心行くまで映姫様の徳高きお話を聞かせて差し上げてくださいな!」
「分かりました…彼の荒みきった心は必ずや、この四季映姫・ヤマザナドゥが救ってみせましょう」
胸を聳やかし、我らが映姫様は出撃していく―――

なお、彼女のサンレッドに対する説教は実に六時間にも及んだそうな。
聖白蓮と四季映姫・ヤマザナドゥのダブルお説教を食らったサンレッドは、トーナメント前日にして多大なる精神的
ダメージを被ったのだった。合掌。

「―――あらあら。貴女ったら、酷い事するのね」
「おや…?」
いつから見ていたのか。気付けば背後に、魂魄妖夢を従えた西行寺幽々子が立っていた。
右手に開いた扇子を持ち、口元を隠して幽雅に微笑みの花を咲かせる。それだけなら格好もつくのだが、左手には
売店で買ったと思しき大量の飲食物が入った袋をぶら下げている辺りがしまらない。
ちなみに、妖夢の両手も食べ物で塞がっている。勿論全て幽々子の分である。
これだけ喰う亡者は彼女の他にはそうそういまい。
「あんまりウチの居候を苛めないでほしいものね?」
「は、それは失礼をば」
「ま、確かに彼にはヤマナザドゥの有難い説法が必要かもね…あの性格じゃ、高確率で地獄に堕ちそうだし」
「ええ。それも一番きっつい阿鼻地獄に」
「正義のヒーローなのに、えらい言われようですね…」
「ヴァンプさんは確実に極楽浄土へ逝けるでしょうけど」
「ええ。死した後、彼は天の国から世界を見守って下さるでしょう」
「悪の将軍なのに!」
名誉なんだか不名誉なんだか分からない話であった。
「それはともかく―――射命丸文。実は貴女に、いいお話を持ってきたのよ」
「はて?それは一体…」
訝しがる文に向けて、くすりと幽々子は微笑んだ。
「トーナメントで、ちょっと仕事をやってもらいたいの…きっと、貴女もノリノリでやってくれる仕事よ」


現と幻想の狭間より、その全てを見つめながら。
境界の賢者は、一人静かに佇む。
「もうすぐよ―――アリス・イヴ」
旧友の名を呼ぶ。月光の化身のように美しかった、彼女の名を。
「もうすぐ始まるわ…幻想郷最大の、お祭り騒ぎが」
盛大に、賑やかに、破天荒に、そして面白おかしく―――
それがきっと、彼女の望んだ事だから。



幻想郷最大トーナメント―――関係者一覧

主催者 八雲紫&西行寺幽々子&賢者イヴ
会場設営担当 河城にとり&河童の皆さん
売店 焼鳥屋台<猛虎譚(もこたん)> 八つ目鰻屋台<みすちー> クラブ・イブキ 他多数
審判 四季映姫・ヤマザナドゥ
出場者 予選を勝ち抜いた総勢32名

「…さてと」
記事を纏め終えた射命丸文は、隠しきれぬ笑みを浮かべて最後にこう書き足した。
「実況アナウンサーは―――コホン。不肖、私こと射命丸文でございます」


―――そして。
ついにトーナメントは、本戦を迎える―――
最後に立つのは人か、妖怪か、はたまたヒーローか。今はまだ、誰も知らない。