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天体戦士サンレッド外伝・東方望月抄 ~惑いて来たれ、遊惰の宴~ 幕間劇(インターミッション)
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furari
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予選から、丸一日が経過した。
重傷を負ったジローではあるが、吸血鬼―――それも齢百年を超える古き牙の再生能力は伊達ではない。
既に、己の足で歩き回れるまでに回復していた。
月灯りが照らす白玉楼の庭園。縁側にそっと腰を下ろし、坐禅を組む。
涼やかな風が頬を優しく撫でる、いい夜だった。
月の光は、彼の身体を優しく包んでくれる。
その祝福の中、しばしジローは思索に耽った。
「ジローさん」
「ん…?」
呼びかけられ、思索を中断する。そこには、半人半霊の少女が立っていた。
「御身体の方、もう大丈夫なんですか?」
「ええ。心配をおかけしました」
「か、勘違いしないでよねっ!べっ、別にあんたの心配なんてしてないんだからねっ!」
「…妖夢さん。属性は無闇にたくさん付ければいいものではありませんよ」
「そりゃそうです。眼鏡っ子でお嬢様で優等生で知恵袋で天然で健気でスタイル抜群でドジっ子と、ハイブリッド
で完全無欠の萌えキャラになるはずだった幸運☆の某ピンクさんなんて、人気的な意味で悲惨でしたもんね」
「どうしてそう無駄に敵を増やす発言を…」
「ま、某みゆきさんの話なんてよして、本題に入ります。これをどうぞ」
「む…」
妖夢が差し出したのは、一振りの刀―――望月ジローの愛刀にして、彼の二つ名の由来でもある<銀刀>。
受け取ったジローは、それを鞘から抜き出す。
銀のコーティングを施された傷一つない刀身が、月の光に煌めいた。
「しかしこれは、レッドとの闘いで折れたはず…何故?」
「幻想郷には様々な異能を持った連中が百花繚乱ですから―――<壊れた物を直す程度の能力>の持ち主くらい、
探せばいるものです」
値は少々張りましたが、と妖夢は親指と人差し指で円を作ってみせた。
「それはかたじけない。ただ、その…情けない話ですが、私は手持ちが…」
「んなもん、ミミコさんに養われてるヒモ吸血鬼のあなたに期待しちゃいませんよ」
「むっ…!」
容赦ない言い草に、日頃は温厚なジローも流石に腹に据えかねた。
ここは一つ、ガツンとかまさねば漢(おとこ)ではない!
重傷を負ったジローではあるが、吸血鬼―――それも齢百年を超える古き牙の再生能力は伊達ではない。
既に、己の足で歩き回れるまでに回復していた。
月灯りが照らす白玉楼の庭園。縁側にそっと腰を下ろし、坐禅を組む。
涼やかな風が頬を優しく撫でる、いい夜だった。
月の光は、彼の身体を優しく包んでくれる。
その祝福の中、しばしジローは思索に耽った。
「ジローさん」
「ん…?」
呼びかけられ、思索を中断する。そこには、半人半霊の少女が立っていた。
「御身体の方、もう大丈夫なんですか?」
「ええ。心配をおかけしました」
「か、勘違いしないでよねっ!べっ、別にあんたの心配なんてしてないんだからねっ!」
「…妖夢さん。属性は無闇にたくさん付ければいいものではありませんよ」
「そりゃそうです。眼鏡っ子でお嬢様で優等生で知恵袋で天然で健気でスタイル抜群でドジっ子と、ハイブリッド
で完全無欠の萌えキャラになるはずだった幸運☆の某ピンクさんなんて、人気的な意味で悲惨でしたもんね」
「どうしてそう無駄に敵を増やす発言を…」
「ま、某みゆきさんの話なんてよして、本題に入ります。これをどうぞ」
「む…」
妖夢が差し出したのは、一振りの刀―――望月ジローの愛刀にして、彼の二つ名の由来でもある<銀刀>。
受け取ったジローは、それを鞘から抜き出す。
銀のコーティングを施された傷一つない刀身が、月の光に煌めいた。
「しかしこれは、レッドとの闘いで折れたはず…何故?」
「幻想郷には様々な異能を持った連中が百花繚乱ですから―――<壊れた物を直す程度の能力>の持ち主くらい、
探せばいるものです」
値は少々張りましたが、と妖夢は親指と人差し指で円を作ってみせた。
「それはかたじけない。ただ、その…情けない話ですが、私は手持ちが…」
「んなもん、ミミコさんに養われてるヒモ吸血鬼のあなたに期待しちゃいませんよ」
「むっ…!」
容赦ない言い草に、日頃は温厚なジローも流石に腹に据えかねた。
ここは一つ、ガツンとかまさねば漢(おとこ)ではない!
「何たる無礼か、魂魄妖夢!誇り高き<賢者>の血統に連なるこの望月ジローを愚弄するとは、言語道断っ!ええ、
認めましょう。確かに私は弟共々ミミコさんに生活基盤の全てを委ねている―――しかし!それはお互いの信頼と
同意の上に成り立つ尊き関係なのです!それを<ヒモ>などと侮蔑的な一言で表すとは、笑止千万っ!そもそも
が私はミミコさんの護衛役として日々を誠実に勤勉に送っているのです!いやまあ確かに遅刻率ほぼ100%ですし、
そのせいでミミコさんは下手すれば死んでた事もありますし、とある水曜日には機関銃をぶっぱなして建物を倒壊
させ、危うくミミコさんを巻き添えにしかけた事とかもありますが―――それでも私は断じて<何か縛るモノ>など
ではないのですっ!半人半霊の剣士・魂魄妖夢っ!先刻の貴女の悪意と偏見に満ち満ちた発言に対して、私は
正式に謝罪と賠償を要求させて頂くっ!」
認めましょう。確かに私は弟共々ミミコさんに生活基盤の全てを委ねている―――しかし!それはお互いの信頼と
同意の上に成り立つ尊き関係なのです!それを<ヒモ>などと侮蔑的な一言で表すとは、笑止千万っ!そもそも
が私はミミコさんの護衛役として日々を誠実に勤勉に送っているのです!いやまあ確かに遅刻率ほぼ100%ですし、
そのせいでミミコさんは下手すれば死んでた事もありますし、とある水曜日には機関銃をぶっぱなして建物を倒壊
させ、危うくミミコさんを巻き添えにしかけた事とかもありますが―――それでも私は断じて<何か縛るモノ>など
ではないのですっ!半人半霊の剣士・魂魄妖夢っ!先刻の貴女の悪意と偏見に満ち満ちた発言に対して、私は
正式に謝罪と賠償を要求させて頂くっ!」
と、颯爽と立ち上がり妖夢に向けて毅然と言い放つ―――事が出来たらいいなあ、と空想してみた。
もちろん空想してみるだけであり、実際は何も言えずに口をへの字にしただけである。
<空しい想像>と書いて空想。
もちろん空想してみるだけであり、実際は何も言えずに口をへの字にしただけである。
<空しい想像>と書いて空想。
「ともかく、お金に関してはジローさんに請求するつもりはありませんよ」
「はあ。しかし、それでは…」
「この刀の修理を依頼してきた男とその友人達が、支払ってくれています」
「え?」
「ただ、彼等も懐具合が芳しくなかったので…労働という形で返す事と相成りました」
「それは一体、どういう…」
「まあ、別に難しい話じゃありません。要するに―――」
「はあ。しかし、それでは…」
「この刀の修理を依頼してきた男とその友人達が、支払ってくれています」
「え?」
「ただ、彼等も懐具合が芳しくなかったので…労働という形で返す事と相成りました」
「それは一体、どういう…」
「まあ、別に難しい話じゃありません。要するに―――」
「あー、チクショウ!何だってこんな無駄にデケーんだよ、この家は!」
―――サンレッドは手にした雑巾を放り投げて、大の字になった。
「朝から三人がかりで掃除してんのに、全然終わんねーぞ!?どーせここにゃ大食い亡霊と毒吐き従者の二人
しか住んでねーんだから、もっと慎ましやかな家に引っ越せよ!」
「あらあら、サンレッドったら」
くすくすと、様子を見守っていた幽々子が笑う。
「あなたが自分で言ったことでしょ?<銀刀を直すのにかかった金の分、働いて返す>って。だからこの白玉楼
の大掃除を頼んだんじゃない」
「そりゃそーだけど…ここまで広いとは思わなかったんだよ、くそっ」
「まあまあ、レッドさん。これもジローさんのためですよ」
ハタキを持ったヴァンプ様が、レッドさんを宥める。
「うるせーよ、ヴァンプ。つーかお前、何を当然のように正義の味方の手伝いやってんだ。悪の将軍のくせに」
「いや、それはほら。レッドさんとジローさんは<正義の味方>である前に、ご近所さんですから。ははは」
「そう!友情には正義も悪もないんだよ、レッドさん」
箒を握り締めたコタロウが、力強い笑顔で語る。
彼もまた敬愛する兄のため、過酷な労働に精を出しているのである。
「ったく…この脳味噌お花畑コンビが」
起き上がり、雑巾を拾って掃除を再開するレッドさん。
はあ~、と溜息をつきながら呟きを洩らす。
「俺、こんな他人のために身を粉にするお人好しなキャラだったっけ…」
―――サンレッドは手にした雑巾を放り投げて、大の字になった。
「朝から三人がかりで掃除してんのに、全然終わんねーぞ!?どーせここにゃ大食い亡霊と毒吐き従者の二人
しか住んでねーんだから、もっと慎ましやかな家に引っ越せよ!」
「あらあら、サンレッドったら」
くすくすと、様子を見守っていた幽々子が笑う。
「あなたが自分で言ったことでしょ?<銀刀を直すのにかかった金の分、働いて返す>って。だからこの白玉楼
の大掃除を頼んだんじゃない」
「そりゃそーだけど…ここまで広いとは思わなかったんだよ、くそっ」
「まあまあ、レッドさん。これもジローさんのためですよ」
ハタキを持ったヴァンプ様が、レッドさんを宥める。
「うるせーよ、ヴァンプ。つーかお前、何を当然のように正義の味方の手伝いやってんだ。悪の将軍のくせに」
「いや、それはほら。レッドさんとジローさんは<正義の味方>である前に、ご近所さんですから。ははは」
「そう!友情には正義も悪もないんだよ、レッドさん」
箒を握り締めたコタロウが、力強い笑顔で語る。
彼もまた敬愛する兄のため、過酷な労働に精を出しているのである。
「ったく…この脳味噌お花畑コンビが」
起き上がり、雑巾を拾って掃除を再開するレッドさん。
はあ~、と溜息をつきながら呟きを洩らす。
「俺、こんな他人のために身を粉にするお人好しなキャラだったっけ…」
「―――確かに、あなたのキャラではありませんね」
そう言ったのは、黒い髪と瞳を持つ、赤いスーツの吸血鬼―――望月ジロー。
いつの間に現れたのか、彼はモップを手にしてそこにいた。
「ジローさん!」
「兄者!もう起きて大丈夫なの?」
「ええ。もうすっかり良くなりました」
駆け寄る悪の将軍と弟に、ジローは笑顔を返した。
「だから、私も手伝いが出来ればと思いまして、ね」
「そんな…ダメですよ、まだ安静にしてなきゃ!」
「いいんです。我が愛刀の修理代くらい、自分で捻出しますよ」
構いませんよね、と、ジローはレッドとコタロウに目を向けた。
「まっ、本人がやるっていうんなら手伝ってもらおーや」
「そうだね。でも、無理はしちゃダメだよ、兄者」
「何を言います、コタロウ。お前は兄を甘く見ていますね?このくらいが無理なら、私はとっくの昔に灰になって
いますよ」
「それもそっか…じゃ、兄者も一緒に大掃除~♪」
バスバス箒を振り回すコタロウである。余計な埃を撒き散らしているも同然であった。
ジローはふっと笑い、最愛の弟の脳天にエルボーをムエタイ式に鋭角で決めた。
コタロウは浜に打ち揚げられたカニのように泡を吹いて失神・昏倒する。
床にだくだくと赤色が嫌な感じに広がった。
それを見下ろし、ジローは真面目くさった顔つきで言い放つ。
「コタロウ。掃除は真剣に、そして丁寧にやりなさい」
「あのー、ジローさん…スパルタ教育にも程があるのでは…」
「ヴァンプ将軍。昔の人はこう言いました…痛くなければ覚えませぬ、と」
「…お前は大丈夫なのかよ、ジロー。掃除が得意そうには見えねーぞ」
「心配なさらず」
にやりとほくそ笑むジローさん。
「これでもミミコさんから給料を頂く前日には、自主的に家の掃除をしているのですよ?」
「そ…そうか…」
俺もかよ子の給料日には掃除してる、とは言えないレッドさん。
そんな二人を見ながら、ヴァンプ様はこっそり呟くのであった。
「この二人が妙に仲良しなのは、ヒモ共鳴してるからなのかも…」
「おい。何か言ったか、ヴァンプ。正義を行使しなきゃならねー気がすんだけどよ?」
「直ったばかりの銀刀の試し斬りをしなければならない気もしますが?」
※レッドイヤーと吸血鬼は地獄耳です。
「いえ、何も。あは、あはは…」
日本人的な笑顔を浮かべるヴァンプ様。ちょっぴり殺気を発しながら詰め寄るレッドとジロー。
そして、未だに泡を吹き続けるコタロウ。
彼等を微笑ましく見つめながら、幽々子はそっとその場を後にするのだった。
いつの間に現れたのか、彼はモップを手にしてそこにいた。
「ジローさん!」
「兄者!もう起きて大丈夫なの?」
「ええ。もうすっかり良くなりました」
駆け寄る悪の将軍と弟に、ジローは笑顔を返した。
「だから、私も手伝いが出来ればと思いまして、ね」
「そんな…ダメですよ、まだ安静にしてなきゃ!」
「いいんです。我が愛刀の修理代くらい、自分で捻出しますよ」
構いませんよね、と、ジローはレッドとコタロウに目を向けた。
「まっ、本人がやるっていうんなら手伝ってもらおーや」
「そうだね。でも、無理はしちゃダメだよ、兄者」
「何を言います、コタロウ。お前は兄を甘く見ていますね?このくらいが無理なら、私はとっくの昔に灰になって
いますよ」
「それもそっか…じゃ、兄者も一緒に大掃除~♪」
バスバス箒を振り回すコタロウである。余計な埃を撒き散らしているも同然であった。
ジローはふっと笑い、最愛の弟の脳天にエルボーをムエタイ式に鋭角で決めた。
コタロウは浜に打ち揚げられたカニのように泡を吹いて失神・昏倒する。
床にだくだくと赤色が嫌な感じに広がった。
それを見下ろし、ジローは真面目くさった顔つきで言い放つ。
「コタロウ。掃除は真剣に、そして丁寧にやりなさい」
「あのー、ジローさん…スパルタ教育にも程があるのでは…」
「ヴァンプ将軍。昔の人はこう言いました…痛くなければ覚えませぬ、と」
「…お前は大丈夫なのかよ、ジロー。掃除が得意そうには見えねーぞ」
「心配なさらず」
にやりとほくそ笑むジローさん。
「これでもミミコさんから給料を頂く前日には、自主的に家の掃除をしているのですよ?」
「そ…そうか…」
俺もかよ子の給料日には掃除してる、とは言えないレッドさん。
そんな二人を見ながら、ヴァンプ様はこっそり呟くのであった。
「この二人が妙に仲良しなのは、ヒモ共鳴してるからなのかも…」
「おい。何か言ったか、ヴァンプ。正義を行使しなきゃならねー気がすんだけどよ?」
「直ったばかりの銀刀の試し斬りをしなければならない気もしますが?」
※レッドイヤーと吸血鬼は地獄耳です。
「いえ、何も。あは、あはは…」
日本人的な笑顔を浮かべるヴァンプ様。ちょっぴり殺気を発しながら詰め寄るレッドとジロー。
そして、未だに泡を吹き続けるコタロウ。
彼等を微笑ましく見つめながら、幽々子はそっとその場を後にするのだった。
「おや幽々子様。そんなゴキゲンな様子でどうしました?」
主の姿を見つけた妖夢は、開口一番にそう言った。
「あら、分かるかしら?ふふ」
主の姿を見つけた妖夢は、開口一番にそう言った。
「あら、分かるかしら?ふふ」
「分かるわよ、そりゃ。にやけた顔しちゃって」
虚空にぽっかり開いた<スキマ>―――そこからぬうっと、八雲紫が顔を出した。
「…もっと普通に現れて頂く訳にはいきませんか、紫様。貴女様の登場の仕方は非常に心臓に悪いのですが」
「スキマ妖怪としてのレゾンデートルよ、これは」
「は、それは失礼をば」
反論はしない。この大妖怪に、自分如きが何を言おうがどうにもならない事など、妖夢とて弁えている。
「で、幽々子様は何故にそんな今にもマッパでリンボーダンスしそうな程に浮かれているのです?」
「長い亡霊生活の中でも未だかつてそこまで浮かれた事はないわよ…それはともかく、コタロウがね」
ふふ、と幽々子は優しげに微笑む。
それはただ純粋に、友の幸せを祝福するための笑顔だった。
「あの子は家族や友達に恵まれてるな、と思って」
「恵まれてる…そうですか?周りにいるのは甲斐性のない兄に、ヒモでチンピラのヒーロー、うだつの上がらない
悪の将軍ですよ?ミミコさんという方はどうだか知りませんが、恐らく一見まともそうでいて問題大ありの女性で
ある可能性大です。むしろ残念な人間関係しか築けていない気もしますが…」
「貴女も意外に見る目がないわね」
クスクスと、紫は笑う。
「あんな混沌として面白い連中が周りにいてくれるなんて、最高じゃない―――ねえ、幽々子」
「ええ。きっと退屈とは無縁の毎日を送ってる事でしょうね。羨ましいくらいだわ」
「楽しければそれでよし…そういう事ですか?」
「そうよ」
「その通り」
境界を司る遊惰なる大賢者と、死を司る幽雅なる亡霊姫は、あっけらかんと答えた。
「…もっと普通に現れて頂く訳にはいきませんか、紫様。貴女様の登場の仕方は非常に心臓に悪いのですが」
「スキマ妖怪としてのレゾンデートルよ、これは」
「は、それは失礼をば」
反論はしない。この大妖怪に、自分如きが何を言おうがどうにもならない事など、妖夢とて弁えている。
「で、幽々子様は何故にそんな今にもマッパでリンボーダンスしそうな程に浮かれているのです?」
「長い亡霊生活の中でも未だかつてそこまで浮かれた事はないわよ…それはともかく、コタロウがね」
ふふ、と幽々子は優しげに微笑む。
それはただ純粋に、友の幸せを祝福するための笑顔だった。
「あの子は家族や友達に恵まれてるな、と思って」
「恵まれてる…そうですか?周りにいるのは甲斐性のない兄に、ヒモでチンピラのヒーロー、うだつの上がらない
悪の将軍ですよ?ミミコさんという方はどうだか知りませんが、恐らく一見まともそうでいて問題大ありの女性で
ある可能性大です。むしろ残念な人間関係しか築けていない気もしますが…」
「貴女も意外に見る目がないわね」
クスクスと、紫は笑う。
「あんな混沌として面白い連中が周りにいてくれるなんて、最高じゃない―――ねえ、幽々子」
「ええ。きっと退屈とは無縁の毎日を送ってる事でしょうね。羨ましいくらいだわ」
「楽しければそれでよし…そういう事ですか?」
「そうよ」
「その通り」
境界を司る遊惰なる大賢者と、死を司る幽雅なる亡霊姫は、あっけらかんと答えた。
「楽しくおかしく面白く―――それこそ生きる醍醐味でしょう?」
「ま、私はもう死んでるけれどね」
「ま、私はもう死んでるけれどね」
「…貴女方は偉大な御方です。それは心の底から認めています。けど、その思考はよく分かりません」
妖夢は無駄と知りつつ、言い募る。
「楽しいだけじゃあ、やってけないでしょう」
「そう―――楽しいだけじゃ、やっていけないの」
「特に、コタロウは―――<賢者イヴ>の血統は、ね…」
返って来たその言葉は、妖夢にとって意外なものだった。
「あの子の未来に待ち受ける宿命は…とても重い」
「…………」
「だからこそ、ああいう友達は貴重なのよ」
幽々子は笑みを消して、遥か未来に想いを馳せるように月を仰ぐ。
「コタロウに何があろうとも…きっと、サンレッドやヴァンプさん、それにミミコさんとやらは、変わらずあの子の傍
にいてくれるでしょう。あの子の友達であり続けてくれるでしょう―――」
「そんな得難い仲間達を、コタロウは手にしている…それはそれは、有難い話だわ」
紫は目を閉じ、黙祷するように両手を合わせる。
妖夢はまだ納得できない、とばかりに仏頂面をしていたが、やがて。
「まあ、確かに」
渋々という様子ではあったが、こう言ったのだった。
「ヒモだったり悪の将軍だったり、その割にお人好しで―――面白い連中には、違いありませんね」
「でしょう」
紫は楽しげに答える。
「特にサンレッドには期待しているわ。どれだけカオスな事をやってくれるのか―――本当に、楽しみ」
「結局、御自分の享楽優先じゃないですか…」
やれやれだぜ、と言わんばかりに妖夢は深く溜息をつくのだった。
妖夢は無駄と知りつつ、言い募る。
「楽しいだけじゃあ、やってけないでしょう」
「そう―――楽しいだけじゃ、やっていけないの」
「特に、コタロウは―――<賢者イヴ>の血統は、ね…」
返って来たその言葉は、妖夢にとって意外なものだった。
「あの子の未来に待ち受ける宿命は…とても重い」
「…………」
「だからこそ、ああいう友達は貴重なのよ」
幽々子は笑みを消して、遥か未来に想いを馳せるように月を仰ぐ。
「コタロウに何があろうとも…きっと、サンレッドやヴァンプさん、それにミミコさんとやらは、変わらずあの子の傍
にいてくれるでしょう。あの子の友達であり続けてくれるでしょう―――」
「そんな得難い仲間達を、コタロウは手にしている…それはそれは、有難い話だわ」
紫は目を閉じ、黙祷するように両手を合わせる。
妖夢はまだ納得できない、とばかりに仏頂面をしていたが、やがて。
「まあ、確かに」
渋々という様子ではあったが、こう言ったのだった。
「ヒモだったり悪の将軍だったり、その割にお人好しで―――面白い連中には、違いありませんね」
「でしょう」
紫は楽しげに答える。
「特にサンレッドには期待しているわ。どれだけカオスな事をやってくれるのか―――本当に、楽しみ」
「結局、御自分の享楽優先じゃないですか…」
やれやれだぜ、と言わんばかりに妖夢は深く溜息をつくのだった。
<境界の妖怪>八雲紫。
サンレッドと彼女の対決は、正しく頂上決戦―――トーナメント決勝戦にて実現する事となる。
サンレッドと彼女の対決は、正しく頂上決戦―――トーナメント決勝戦にて実現する事となる。