川崎市街地より離れた山中―――そこでは川崎市の悪党達が集結し、大きな円陣を組んでいた。
その中心では、二人の男が睨み合っている。
一人は超金属戦士・ヒム。
もう一方は、まるで冗談のように巨大な男だった。長身のヒムが、子供のように小さく見える。
(サンレッド抹殺のための、新しい刺客か…その実戦訓練の相手役を買って出たはいいが…)
異様なのはその身体の大きさだけではない。筋骨隆々とした肉体の上に乗っているのは、獰猛な野獣の頭部だ。
闘争心と覇気に満ちた瞳に射抜かれ、ヒムは戦慄する。
(ただデケえってだけじゃねえ…コイツの発する闘気が、実際以上に大きく見せてやがるんだ!)
震えが止まらない。だが、それは恐怖に起因するものではない―――
(こんな野郎がいたとはな…面白ぇ!)
ヒムは戦士だ。その冷たい金属の身体に、熱き魂を宿す闘士だ。強敵との闘争は彼にとって忌避でなく、むしろ歓迎
すべきことだった。
ザッ!両雄は大地を踏み締め、拳を固く、硬く、堅く握る。
(これ程の相手に、小手調べなんざ意味がねえ。オレの最強の技で、一気に勝負をかけるぜ!)
ヒムの右手に闘気が集中し、恒星の如く眩い光を放ち始める。
それこそが彼の編み出した奥義―――真っ向から全ての力を込めて、敵をブチ抜く―――
単純明快、されど一撃必殺!
その中心では、二人の男が睨み合っている。
一人は超金属戦士・ヒム。
もう一方は、まるで冗談のように巨大な男だった。長身のヒムが、子供のように小さく見える。
(サンレッド抹殺のための、新しい刺客か…その実戦訓練の相手役を買って出たはいいが…)
異様なのはその身体の大きさだけではない。筋骨隆々とした肉体の上に乗っているのは、獰猛な野獣の頭部だ。
闘争心と覇気に満ちた瞳に射抜かれ、ヒムは戦慄する。
(ただデケえってだけじゃねえ…コイツの発する闘気が、実際以上に大きく見せてやがるんだ!)
震えが止まらない。だが、それは恐怖に起因するものではない―――
(こんな野郎がいたとはな…面白ぇ!)
ヒムは戦士だ。その冷たい金属の身体に、熱き魂を宿す闘士だ。強敵との闘争は彼にとって忌避でなく、むしろ歓迎
すべきことだった。
ザッ!両雄は大地を踏み締め、拳を固く、硬く、堅く握る。
(これ程の相手に、小手調べなんざ意味がねえ。オレの最強の技で、一気に勝負をかけるぜ!)
ヒムの右手に闘気が集中し、恒星の如く眩い光を放ち始める。
それこそが彼の編み出した奥義―――真っ向から全ての力を込めて、敵をブチ抜く―――
単純明快、されど一撃必殺!
「オォォォォォォォォラナックルゥゥゥゥゥゥッ!」
咆哮と共に叩き込まれた拳―――直撃すれば山の一つや二つは軽く消し飛ばす破壊力を秘めた驚異の必殺技。
それを、眼前の野獣に向けて渾身の力で撃ち抜いた。
「…な…!」
驚愕の呻きは、攻撃した側であるヒムから洩れた。
全力の闘気拳を―――野獣はその分厚い胸板で、あっさりと受け止めていた。
「かんたんナこトだヨ」
野獣の口から、不明瞭な発音で言葉が漏れる。
「キミの闘気ヲ、もっト強い闘気デ、おさエ込んダだケ」
そして野獣のターンが始まる。
「ガアアアアアアアアアアアッ!」
天地を引き裂く野獣の雄叫び。
撃ち込まれた腕を引っ掴み、まるで子供が人形を振り回すような動作で、ヒムの身体を大地に叩き付けた。
「が…はっ…!」
凄まじい衝撃に息が詰まり、全身が錆び付いたように動かない。
それで、決着だった。
「…なるほど。あれが<獣皇カサス>か」
その成り行きを見守っていたフロシャイム川崎支部・ヴァンプ将軍は、傍らに佇むエニシアに目を落とす。
「奴の噂は私も聞いた事がある。ルール無用の地下怪人闘技場において五百戦無敗を記録したという生ける伝説…
まさか<エニシア軍団>に身を寄せていたとは思わなかったがな」
悪の姫君・エニシアは誇らしげに頷く。
「そう。彼こそは我等の軍団において最強の漢…パワーとスピードに優れた獣人型の怪人。その中でもトップクラス
の戦闘力を誇る、恐るべき狂戦士。それが<獣皇カサス>よ。今までは外国で活動してもらってたけど、サンレッド
抹殺のため、此度川崎へと来てもらったわ」
「しかし…あんなとんでもない奴をよく配下にできましたね」
「一体、どうやって味方に引き入れたんです?」
それを、眼前の野獣に向けて渾身の力で撃ち抜いた。
「…な…!」
驚愕の呻きは、攻撃した側であるヒムから洩れた。
全力の闘気拳を―――野獣はその分厚い胸板で、あっさりと受け止めていた。
「かんたんナこトだヨ」
野獣の口から、不明瞭な発音で言葉が漏れる。
「キミの闘気ヲ、もっト強い闘気デ、おさエ込んダだケ」
そして野獣のターンが始まる。
「ガアアアアアアアアアアアッ!」
天地を引き裂く野獣の雄叫び。
撃ち込まれた腕を引っ掴み、まるで子供が人形を振り回すような動作で、ヒムの身体を大地に叩き付けた。
「が…はっ…!」
凄まじい衝撃に息が詰まり、全身が錆び付いたように動かない。
それで、決着だった。
「…なるほど。あれが<獣皇カサス>か」
その成り行きを見守っていたフロシャイム川崎支部・ヴァンプ将軍は、傍らに佇むエニシアに目を落とす。
「奴の噂は私も聞いた事がある。ルール無用の地下怪人闘技場において五百戦無敗を記録したという生ける伝説…
まさか<エニシア軍団>に身を寄せていたとは思わなかったがな」
悪の姫君・エニシアは誇らしげに頷く。
「そう。彼こそは我等の軍団において最強の漢…パワーとスピードに優れた獣人型の怪人。その中でもトップクラス
の戦闘力を誇る、恐るべき狂戦士。それが<獣皇カサス>よ。今までは外国で活動してもらってたけど、サンレッド
抹殺のため、此度川崎へと来てもらったわ」
「しかし…あんなとんでもない奴をよく配下にできましたね」
「一体、どうやって味方に引き入れたんです?」
「それハ…ボクたちノ夢のたメ…」
戦闘員1号・2号が口にした疑問に対し、答えたのはカサス自身だ。
「夢?」
「そウ…夢」
遠い目をして、カサスは言い募る。
「どうセ世界征服すルなラ…カワいイ女の子と共ニ…そんナ想いデ、ボクたちハ姫様ニ従っテいル」
「…ああ。そっか」
「理解できました…」
要するにエニシア軍団とは、世界征服願望を持ったロリコン共の集会なのか。
何だかなあ。
「だが…確かに、強え…それも、とんでもなく」
ようやく立ち上がったヒムは、荒く息をつきながら語る。
「確かにコイツなら、倒しちまうかもしれねえ…サンレッドを!」
そう―――<獣皇>の二つ名は伊達ではない。
彼は間違いなく、サンレッド抹殺のために降り立った最強の魔人だ。
「クククク…しかし、頼もしくも恐ろしい漢よ。サンレッドを抹殺した暁には、その力で我等フロシャイムに牙を剥こう
というのだからな…くくく」
「忘れたわけではないでしょう?我々は所詮、サンレッドを葬るまでの仮初の同盟…覚えておくことね。世界を支配
するのは、私達の方よ」
挑発的に口の端を吊り上げるヴァンプ様に対し、挑戦的に言い放つエニシア。
(今の私達、すっごく悪の組織っぽくない?)と二人はちょっと自分に感激しちゃったりしていた。
「夢?」
「そウ…夢」
遠い目をして、カサスは言い募る。
「どうセ世界征服すルなラ…カワいイ女の子と共ニ…そんナ想いデ、ボクたちハ姫様ニ従っテいル」
「…ああ。そっか」
「理解できました…」
要するにエニシア軍団とは、世界征服願望を持ったロリコン共の集会なのか。
何だかなあ。
「だが…確かに、強え…それも、とんでもなく」
ようやく立ち上がったヒムは、荒く息をつきながら語る。
「確かにコイツなら、倒しちまうかもしれねえ…サンレッドを!」
そう―――<獣皇>の二つ名は伊達ではない。
彼は間違いなく、サンレッド抹殺のために降り立った最強の魔人だ。
「クククク…しかし、頼もしくも恐ろしい漢よ。サンレッドを抹殺した暁には、その力で我等フロシャイムに牙を剥こう
というのだからな…くくく」
「忘れたわけではないでしょう?我々は所詮、サンレッドを葬るまでの仮初の同盟…覚えておくことね。世界を支配
するのは、私達の方よ」
挑発的に口の端を吊り上げるヴァンプ様に対し、挑戦的に言い放つエニシア。
(今の私達、すっごく悪の組織っぽくない?)と二人はちょっと自分に感激しちゃったりしていた。
※この世界の悪は、様式美を重んじています。御了承下さい。
―――さて、気になる獣皇カサス対サンレッドの結果は?
それは戦闘開始から五秒。
レッドさんの閃光のようなボディブローで膝が落ちた所を、狙い澄ましたアッパーカットで顎を砕かれ、獣皇カサス
は多摩川上流河川敷にて怪人生初のKO負けを喫したのでした。
か、勘違いしないでよねっ!これはレッドさんが強かっただけでカサスが弱いんじゃないんだからねっ!
と、ツンデレ風に決めてみても結果は変わらない。
今日も青い空と燦々輝く太陽の下で、悪の皆さんは正座させられ、真っ赤なヒーローに説教されるのだった。
それは戦闘開始から五秒。
レッドさんの閃光のようなボディブローで膝が落ちた所を、狙い澄ましたアッパーカットで顎を砕かれ、獣皇カサス
は多摩川上流河川敷にて怪人生初のKO負けを喫したのでした。
か、勘違いしないでよねっ!これはレッドさんが強かっただけでカサスが弱いんじゃないんだからねっ!
と、ツンデレ風に決めてみても結果は変わらない。
今日も青い空と燦々輝く太陽の下で、悪の皆さんは正座させられ、真っ赤なヒーローに説教されるのだった。
天体戦士サンレッド ~偽サンレッド現る!?フロシャイム、驚愕の思惑
たっぷり一時間の説教が終わり、レッドさんは帰っていった。
その後姿を見送りながら、世界征服を企む悪党共はやっとこ一息つく。
「いたたたた…足が痺れちゃったよ、もう…」
「レッドの奴、本当に説教好きですよねー…」
「自分はヒモのくせして…」
もはや御馴染の光景、ブー垂れるヴァンプ様と戦闘員である。
「つーか、何でオレまで説教されなきゃいけなかったんだ…」
完全に巻き添え食らった形のヒム。さっさと帰ればよかったのに、律儀な男であった。
「…ごめン…なんカ…ボクガあっさリ負けちゃっタせいデ…みんナ、説教さレちゃっテ…」
ションボリするカサスだが、皆はそんな彼に優しい声をかけた。
「そんな事ないよ、カサスくん。君はすごく頑張ったよ!」
「そうっすよ!あんなん、レッドの奴がどっかおかしいだけですよ!」
「気にする事ないよ、カサス。それより病院行かないと…ええっと、保険証持ってたっけ?」
「ウン、姫様…ボク、ちゃんト<国民健康保険>入ってルかラ。アフ○ックにモ加入してルかラ(笑)」
その後姿を見送りながら、世界征服を企む悪党共はやっとこ一息つく。
「いたたたた…足が痺れちゃったよ、もう…」
「レッドの奴、本当に説教好きですよねー…」
「自分はヒモのくせして…」
もはや御馴染の光景、ブー垂れるヴァンプ様と戦闘員である。
「つーか、何でオレまで説教されなきゃいけなかったんだ…」
完全に巻き添え食らった形のヒム。さっさと帰ればよかったのに、律儀な男であった。
「…ごめン…なんカ…ボクガあっさリ負けちゃっタせいデ…みんナ、説教さレちゃっテ…」
ションボリするカサスだが、皆はそんな彼に優しい声をかけた。
「そんな事ないよ、カサスくん。君はすごく頑張ったよ!」
「そうっすよ!あんなん、レッドの奴がどっかおかしいだけですよ!」
「気にする事ないよ、カサス。それより病院行かないと…ええっと、保険証持ってたっけ?」
「ウン、姫様…ボク、ちゃんト<国民健康保険>入ってルかラ。アフ○ックにモ加入してルかラ(笑)」
※世界征服も身体が資本です。
「そっか。じゃあヴァンプさん、私はカサスに付き添って病院に行くんで、今日はお疲れ様でしたー」
「うん。エニシアちゃんにカサスくん、お疲れ様ー」
病院へと向かう二人を見送って、残されたヴァンプ様一行は溜息をつく。
「今回は、結構いけるかと思ったのになあ…」
「ほんと、どうやったらレッド倒せますかねえ」
「もう核兵器でも落としますか?じゃなかったら、Pちゃんのソーラーレイとか!」
「ダメだよ。そんな事したら、罪のない川崎市の皆さんまで死んじゃうでしょ?」
「そっかー。一般人巻き込むわけにはいきませんよねー」
「うーん、じゃあどうします?」
「こんなんはどうだ?並行世界から別のサンレッドを連れて来て、この世界のサンレッドと闘わせるんだ」
「もう、ヒムさんったら。スパ○ボじゃないんですから」
「ははは、悪い悪い。冗談だよ」
「…え?ちょっと待って、ヒムくん」
その会話の何処かが、ヴァンプ様の琴線に触れたらしい。ヒムの肩を叩き、真面目な顔で問う。
「今、何て言ったの?もう一度お願い」
「え…?いや、サンレッドとサンレッドを闘わせたらどうかって…」
「それだよ!どうして今まで思いつかなかったんだろ!」
ポンっと手を叩き、ヴァンプ様は小躍りする。
「レッドさんを倒すにはレッドさんだよ!もうそれしかないよ!」
「え?え?あの、話が見えてこないんですけど…」
「もしかして、本当に並行世界に行こうってんですか?いくらフロシャイムの科学力でも、それは…前に使った例の
異次元への扉を開ける装置も、動作が不安定という事で使用禁止になりましたし…」
「違う違う。そういうんじゃなくて<サンレッドでサンレッドを倒す>っていう発想の事を言ってるの―――
ヒーロー物じゃ定番のアレだよ、アレ」
ヴァンプ様は、大きく手を広げて宣言した―――
「私達で造ればいいんだよ!偽サンレッド…そう、サンブラックを!」
「うん。エニシアちゃんにカサスくん、お疲れ様ー」
病院へと向かう二人を見送って、残されたヴァンプ様一行は溜息をつく。
「今回は、結構いけるかと思ったのになあ…」
「ほんと、どうやったらレッド倒せますかねえ」
「もう核兵器でも落としますか?じゃなかったら、Pちゃんのソーラーレイとか!」
「ダメだよ。そんな事したら、罪のない川崎市の皆さんまで死んじゃうでしょ?」
「そっかー。一般人巻き込むわけにはいきませんよねー」
「うーん、じゃあどうします?」
「こんなんはどうだ?並行世界から別のサンレッドを連れて来て、この世界のサンレッドと闘わせるんだ」
「もう、ヒムさんったら。スパ○ボじゃないんですから」
「ははは、悪い悪い。冗談だよ」
「…え?ちょっと待って、ヒムくん」
その会話の何処かが、ヴァンプ様の琴線に触れたらしい。ヒムの肩を叩き、真面目な顔で問う。
「今、何て言ったの?もう一度お願い」
「え…?いや、サンレッドとサンレッドを闘わせたらどうかって…」
「それだよ!どうして今まで思いつかなかったんだろ!」
ポンっと手を叩き、ヴァンプ様は小躍りする。
「レッドさんを倒すにはレッドさんだよ!もうそれしかないよ!」
「え?え?あの、話が見えてこないんですけど…」
「もしかして、本当に並行世界に行こうってんですか?いくらフロシャイムの科学力でも、それは…前に使った例の
異次元への扉を開ける装置も、動作が不安定という事で使用禁止になりましたし…」
「違う違う。そういうんじゃなくて<サンレッドでサンレッドを倒す>っていう発想の事を言ってるの―――
ヒーロー物じゃ定番のアレだよ、アレ」
ヴァンプ様は、大きく手を広げて宣言した―――
「私達で造ればいいんだよ!偽サンレッド…そう、サンブラックを!」
後日。かよ子さんのマンション。
「…で?そのサンブラックだかブラックサンだか造るのに、何で俺んトコに来てんだよ」
イライラした様子の―――つまりはいつものレッドさんが、ヴァンプ様を睨む。
今日のTシャツは<爆破オチ>だ。
「ええ、ですから…完全にレッドさんそのものの偽者を造りたいんです。それで…」
ヴァンプ様はへらへらにこにこ、揉み手しながらレッドさんにレポート用紙を差し出す。
「これにレッドさんの詳細なデータを記入していただければ、と」
「…お前…俺がんなもん書くと思ってんのか…?」
「ええ、どうかお願いします。レッドさん抹殺のためにも、レッドさんの力を貸してください!」
「ヴァンプ…お前、矛盾って言葉知ってるか?」
「え、そりゃあ知ってますよ。それが何か?」
「何か、じゃねー!何処の世界に命を狙ってるヒーローを抹殺するのに、そのヒーローの協力を仰ごうとする悪党が
いるんだよ!」
「目の前にいるじゃないですか」
「開き直ってんじゃねーよ!その顔面を麻酔抜きで人力整形したろか!?」
レッドさん、当然の事ながらブチ切れである。
「もう、そんなイジワル言わないで協力してあげなさいよ」
と、お茶と一緒に助け船を出したのは、かよ子さん。
「<正義と悪>の前に<ご近所さん>でしょ?これも付き合いよ」
「付き合いで抹殺されろっていうのかよ」
「抹殺されないように闘えばいいじゃないの」
「…かよ子…お前、どっちの味方だよ…」
「んー…どっちかというとヴァンプさんの味方かしら」
ヒーロー物の定番・ヒロインの裏切りであった。レッドさんは文句を言う気力もなくしてお茶を啜る。
「あの…レッドさん。この用紙は置いていきますんで…ほんと、気が向いたらでいいんで」
「帰れ」
「…えーと」
「か・え・れ」
静かな声が、逆に恐ろしかったという…。
「…お、お邪魔しましたー」
そそくさと帰っていくヴァンプ様を尻目に、レッドさんは頬杖をついて舌打ちする。
そして、レポート用紙に目を落とした。
「はい」
ボールペンを差し出し、微笑むかよ子さん。
「分かってるわよ、あんたの性格くらい。ねっ、優しいヒーローさん」
「…ちっ」
「…で?そのサンブラックだかブラックサンだか造るのに、何で俺んトコに来てんだよ」
イライラした様子の―――つまりはいつものレッドさんが、ヴァンプ様を睨む。
今日のTシャツは<爆破オチ>だ。
「ええ、ですから…完全にレッドさんそのものの偽者を造りたいんです。それで…」
ヴァンプ様はへらへらにこにこ、揉み手しながらレッドさんにレポート用紙を差し出す。
「これにレッドさんの詳細なデータを記入していただければ、と」
「…お前…俺がんなもん書くと思ってんのか…?」
「ええ、どうかお願いします。レッドさん抹殺のためにも、レッドさんの力を貸してください!」
「ヴァンプ…お前、矛盾って言葉知ってるか?」
「え、そりゃあ知ってますよ。それが何か?」
「何か、じゃねー!何処の世界に命を狙ってるヒーローを抹殺するのに、そのヒーローの協力を仰ごうとする悪党が
いるんだよ!」
「目の前にいるじゃないですか」
「開き直ってんじゃねーよ!その顔面を麻酔抜きで人力整形したろか!?」
レッドさん、当然の事ながらブチ切れである。
「もう、そんなイジワル言わないで協力してあげなさいよ」
と、お茶と一緒に助け船を出したのは、かよ子さん。
「<正義と悪>の前に<ご近所さん>でしょ?これも付き合いよ」
「付き合いで抹殺されろっていうのかよ」
「抹殺されないように闘えばいいじゃないの」
「…かよ子…お前、どっちの味方だよ…」
「んー…どっちかというとヴァンプさんの味方かしら」
ヒーロー物の定番・ヒロインの裏切りであった。レッドさんは文句を言う気力もなくしてお茶を啜る。
「あの…レッドさん。この用紙は置いていきますんで…ほんと、気が向いたらでいいんで」
「帰れ」
「…えーと」
「か・え・れ」
静かな声が、逆に恐ろしかったという…。
「…お、お邪魔しましたー」
そそくさと帰っていくヴァンプ様を尻目に、レッドさんは頬杖をついて舌打ちする。
そして、レポート用紙に目を落とした。
「はい」
ボールペンを差し出し、微笑むかよ子さん。
「分かってるわよ、あんたの性格くらい。ねっ、優しいヒーローさん」
「…ちっ」
―――翌朝。
新聞受けを覗いたヴァンプ様は、そこにレポート用紙を見つけて、大いに喜んだという。
そして用紙に記載されたデータを元に、フロシャイム本部の脅威の科学力によって、遂にサンブラックが完成した!
新聞受けを覗いたヴァンプ様は、そこにレポート用紙を見つけて、大いに喜んだという。
そして用紙に記載されたデータを元に、フロシャイム本部の脅威の科学力によって、遂にサンブラックが完成した!
対決の日。いつもの公園。
「くっくっく、見よサンレッド…これがサンブラックだ!」
―――そこには、バトルスーツを着たサンレッドそっくりのロボットがあった。
違いといえば名前の通り、色だけ真っ黒な所だ。
「ほ~…よくできてるけどよ、俺はもうちょいハンサムじゃねーの?」
マスクにハンサムもクソもなかろうが、まあお約束のセリフである。
「それよか、問題は性能の方だろ?俺そっくりってんならよ、強さも同じなんだろうな?手間かけさせておいていつもの
通りワンパンチで終わりってんなら、説教じゃすまねーからな」
「ふふふ…そのような心配などせずともよいわ。この対決が終われば赤き太陽は堕ち、世界を闇で包むべく、暗黒の
太陽が新たに昇るのだ!」
※ヴァンプ様はこの口上を徹夜して考えました。
「さあ、往けい!悪しき漆黒の太陽・サンブラック!真紅の太陽を絶望の闇で塗り潰すのだ!」
スイッチ・ON。
遂に!遂に!遂にサンブラックが起動―――
「くっくっく、見よサンレッド…これがサンブラックだ!」
―――そこには、バトルスーツを着たサンレッドそっくりのロボットがあった。
違いといえば名前の通り、色だけ真っ黒な所だ。
「ほ~…よくできてるけどよ、俺はもうちょいハンサムじゃねーの?」
マスクにハンサムもクソもなかろうが、まあお約束のセリフである。
「それよか、問題は性能の方だろ?俺そっくりってんならよ、強さも同じなんだろうな?手間かけさせておいていつもの
通りワンパンチで終わりってんなら、説教じゃすまねーからな」
「ふふふ…そのような心配などせずともよいわ。この対決が終われば赤き太陽は堕ち、世界を闇で包むべく、暗黒の
太陽が新たに昇るのだ!」
※ヴァンプ様はこの口上を徹夜して考えました。
「さあ、往けい!悪しき漆黒の太陽・サンブラック!真紅の太陽を絶望の闇で塗り潰すのだ!」
スイッチ・ON。
遂に!遂に!遂にサンブラックが起動―――
プシューッ…………プスプスプスプス
「あ、あれ?動かないし、何か煙が出てるんだけど…どうしましょう、レッドさん」
「どうしましょう、じゃねーよ!そっちが造ったもんだろーが、ったく…」
ゴンゴンとサンブラックを叩くレッドさん。
その拍子か、サンブラックの目が怪しく輝き―――
足裏のジェット噴射が作動し、大空へとかっ飛んで―――
爆発した。
「…えーと。これはその、つまり…」
ヴァンプ様は必死に言い訳を探していた。まー何言っても無駄だろうなーとは薄々分かっちゃいるんだけど。
「いずれはレッドさんも、あんな風に爆殺してやるぞ!という心意気の現れでして…ははは…」
「…遺言はそれだけか…?」
「…………(通夜のような沈痛な面持ち)」←ヴァンプ様
「…………(鬼神のような憤怒の面持ち)」←レッドさん
「どうしましょう、じゃねーよ!そっちが造ったもんだろーが、ったく…」
ゴンゴンとサンブラックを叩くレッドさん。
その拍子か、サンブラックの目が怪しく輝き―――
足裏のジェット噴射が作動し、大空へとかっ飛んで―――
爆発した。
「…えーと。これはその、つまり…」
ヴァンプ様は必死に言い訳を探していた。まー何言っても無駄だろうなーとは薄々分かっちゃいるんだけど。
「いずれはレッドさんも、あんな風に爆殺してやるぞ!という心意気の現れでして…ははは…」
「…遺言はそれだけか…?」
「…………(通夜のような沈痛な面持ち)」←ヴァンプ様
「…………(鬼神のような憤怒の面持ち)」←レッドさん
この日のサンレッドの説教は、実に五時間にも及んだという。
―――天体戦士サンレッド。
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!