神奈川県川崎市より、遠く次元を隔てた先の異世界・ルーンハイム。
悪のデルティアナ帝国は、叛旗を翻した皇子ディランによってその野望を挫かれた。
もうボッコボコのギッタギタにされた。
見てて可哀想なくらいだった。
<もうやめてあげて>最終的にはそんな同情の声が上がる始末だった。
だが、悪は踏んづけても踏んづけても潰えることはない。
それはまるで、頑固でしつこい油汚れのように!
悪のデルティアナ帝国は、叛旗を翻した皇子ディランによってその野望を挫かれた。
もうボッコボコのギッタギタにされた。
見てて可哀想なくらいだった。
<もうやめてあげて>最終的にはそんな同情の声が上がる始末だった。
だが、悪は踏んづけても踏んづけても潰えることはない。
それはまるで、頑固でしつこい油汚れのように!
「ふふふ…ディラン。よくぞ決闘の申し出を受けてくれたな。流石は俺の宿敵だ」
セレスティア王国―――王都セイントリア。広場では二人の少年が向かい合う。
二人は全く同じ顔をしていた。
特徴的な銀髪。ややあどけなさを残しながらも端正に整った顔立ち。
違うのは、瞳に込められた意志。
「まだ懲りてなかったか…説教が足りなかったな」
揺るがぬ正義を宿すは、かつてセレスティアの王女ファラと共に神奈川県川崎市溝ノ口を訪れた皇子ディラン。
絶対の悪逆を宿すは、ディランの双子の弟・ラディウス。
彼は生まれた直後に忌み仔として塔に幽閉されて育ったとかどうだかでまあ色々あって兄貴のディランを憎んでいる
のだ。詳しく知りたきゃサモンナイトXを買ってプレイして下さい。
「なんか、俺の悲惨な半生が軽く流された気がする…」
「この屈辱をバネに今後とも頑張れ。俺は兄として応援しているぞ」
「いや、あんたが言うなよ…余計悲しくなるだろ。つーか、兄貴…」
ラディウスはディランの服装を指差す。
Tシャツに半ズボンにサンダル。シャツの文字は<福山潤>である。
(※ディランの声優さんです。反逆のルル様とか蝶々仮面のライバル偽善者くんとか演じてます)
「いつもながら何だ、そのやる気のない格好は!?俺なんて気合入れてお気に入りのオサレな衣装纏ってきたのに!
せめて鎧とか着て来いよ!剣とか装備しろよ!」
「バカを言うな。俺の知る限り最も強い男サンレッドは、よっぽど気が乗らない限りいつもこの格好だったぞ。一度だけ
バトルスーツで闘ってるの見せてくれたけど、その時以外は常にTシャツだった」
「誰だよサンレッドって!生死をかけた決闘に<Tシャツ>で挑むバカなんて見習うな!」
「そういうなよ。俺はあの人の二番弟子だからな…リスペクトってヤツだ」
ディランは少し遠い目をしていた。何を思っているのか、ラディウスには窺い知る事が出来ない。
「それに俺、対決の後で買い物行くから鎧だとしんどくてな。ファラに頼まれてるんだよ」
「俺との決闘より買い物優先か!?どんだけあんたの中のランキング下位に甘んじてるのよ俺は!」
「だってお前…アレだよ」
ディランは顔を曇らせた。
「俺はデルティアナ帝国からの人質としてセレスティアに来ただろう?でも俺、帝国に反逆しちゃったからもう人質と
しての意味ないわけ。それでもまだ王宮に住んでて陛下やファラに養ってもらってるわけだから、せめて家事手伝い
くらいしないと居づらいわけで…」
「…………いや、兄貴。あんた、ルーンハイム救ったヒーローだろ?もっと堂々としてりゃいいんじゃ…」
「それでも世間の連中は喉元過ぎれば熱さ忘れるんだよ!<何でアイツもう帝国の皇子でも何でもないのにまだいる
わけ?世界救ったからって調子乗ってるの?つーかファラ様のヒモ?>みたいに見る奴さえいるの!マトリフ師匠の
気持ちが今なら分かるよチクショー!」
「せ…世知辛いな、そりゃ…苦労してんだ、兄貴も」
「…俺の事はどうでもいいだろ。デルティアナの方はどうなんだ、ラディウス。お前、週に一回のペースで俺の命を
狙ってきてるけど、そんなに暇なのか?」
※要するに週に一回のペースでラディウスはボコボコにされています。実の兄貴に。でもラディウスも実の兄貴の命
を狙ってるのでおあいこです。
「暇ってゆうか…ウチらの方も、世知辛いよ。兄貴にメタメタにされたせいで」
デルティアナ帝国が権勢を振るえたのも、初代皇帝ゴードナーと、そしてその跡を継いだディランの父親である皇帝
グロッケンが創り上げた<強大な帝国>としてのイメージがあったのが大きい。其れ故に人々は恐れ、従った。
されど、今のデルティアナは<Tシャツ着て半ズボンでサンダルの反逆者一人に負けたダメ帝国>である。
こんな帝国に、誰が恐れ入ってくれるものか。デルティアナ帝国はすっかり牙を抜かれたに等しい。
「親父は兄貴がドツキまわしてからというもの、すっかりボケちまったし…俺、今だから言うけどさあ、親父も抹殺して
やるつもりだったんだよ。俺が悲惨な少年時代送ったのも、親父のせいだし…でもさあ…朝メシ食ったばっかなのに
<ラディウスや、晩のご飯はまだかいのお?>なんて言ってる親父見てると、抹殺どころか、俺が末永く面倒を見て
やらないとなあ、なんて思っちまう始末さ…」
「そっか。じゃあ頑張って介護福祉士の資格を取れよ」
「ああ、俺は俺でボチボチやってくよ…資格は取らないけどな。さて―――下らん話はここまでだ。そろそろ殺し合うと
するか、兄貴。とりあえずあんたを抹殺しない事には、セレスティア征服もままならんからな」
「そうだな。俺も買い物に行かなければならない事だし、さっさと決闘済ませるぞ。散々しばき倒して、ロロ雑巾…
ごめん、噛んじゃった。ボロ雑巾のように捨ててやる!」
「セリフが正義じゃないぞ、兄貴…まあいいさ。それでは兄貴抹殺委員会名誉会長・ラディウス、参る」
いつそんなアホな委員会出来たんだ、おい。ディランはそう思ったが、面倒なのでもう突っ込まない事にした。
ラディウスは背にした剣をすいっと抜き去り、構えを取る。
「これぞ我がデルティアナ帝国に代々伝わる宝剣<天の皇剣>…その威力、その身を以て知るがいい!」
※具体的には攻撃力+160です。
神速の踏み込みから放たれる斬撃。
それは人間としての限界を極めていたと評して間違いなかろう。
しかし、残念ながら彼の相手はあのチンピラヒーローを目標として幼少より身体を鍛えていたような男である。
つまりは人間として越えちゃダメなラインを平然と足蹴にしてるような奴である。
ディランは振り下ろされた刃を人差し指と中指で挟んで、くいっと捻った。
ポキッ、と折れた剣身をポイッと投げ捨てる。ラディウスは柄だけになった天の皇剣を握り締めたまま、茫然となる。
「ちょ…兄貴、これはシャレにならないって…どうしてくれんのさ、宝剣折っちゃって…後で返せばいいやーと思って
無断で持ち出したのに…ああもう、アロンアルファでくっつくかな…ほんと、マジでどうし」
セリフを最後まで言う事は出来なかった。脳天にチョップをかまされ、悶絶して地面に転がる。
しかし、それで終わりではない。
某野菜王子風に言うなら、ここからが本当の地獄だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァっ!」
ガスガスガスガスガスガスガスガスッ!倒れたラディウスに向けて容赦なくストンピングをかますディラン。
やがてラディウスがピクピクと痙攣する肉塊に変わったのを見届け、彼は踵を返す。
今日は説教している暇はない。彼には大いなる使命(買い物)があるのだから…。
「あ…兄貴…一つだけ…一つだけ言わせてくれ…」
ラディウスは息も絶え絶えながら、口を開く。
「こんなの、ヒーローの闘い方じゃないだろ…チンピラじゃん、ただの…」
「何を言うか。俺が尊敬し手本とするヒーロー・サンレッドはこうやって悪と闘っていたぞ」
そして諦めるな、ラディウス。ディランはそう言って笑う。
「サンレッドの宿敵であるヴァンプ将軍と怪人達は、どれだけボッコボコにされようが絶対に挫けなかった…お前も
悪を名乗るのなら、彼を見習え」
「…だから誰なの…サンレッドとかヴァンプ将軍とかって…」
「説明すると長いが、ただ一つだけ言えることは…かよ子さんは素晴らしい女性だった。それだけさ」
「…誰だ、かよ子って…」
よく分からないけど、ラディウスはたった一つだけ理解した。
兄貴がこんな事になった諸悪の根源は、間違いなくそいつらであると。
セレスティア王国―――王都セイントリア。広場では二人の少年が向かい合う。
二人は全く同じ顔をしていた。
特徴的な銀髪。ややあどけなさを残しながらも端正に整った顔立ち。
違うのは、瞳に込められた意志。
「まだ懲りてなかったか…説教が足りなかったな」
揺るがぬ正義を宿すは、かつてセレスティアの王女ファラと共に神奈川県川崎市溝ノ口を訪れた皇子ディラン。
絶対の悪逆を宿すは、ディランの双子の弟・ラディウス。
彼は生まれた直後に忌み仔として塔に幽閉されて育ったとかどうだかでまあ色々あって兄貴のディランを憎んでいる
のだ。詳しく知りたきゃサモンナイトXを買ってプレイして下さい。
「なんか、俺の悲惨な半生が軽く流された気がする…」
「この屈辱をバネに今後とも頑張れ。俺は兄として応援しているぞ」
「いや、あんたが言うなよ…余計悲しくなるだろ。つーか、兄貴…」
ラディウスはディランの服装を指差す。
Tシャツに半ズボンにサンダル。シャツの文字は<福山潤>である。
(※ディランの声優さんです。反逆のルル様とか蝶々仮面のライバル偽善者くんとか演じてます)
「いつもながら何だ、そのやる気のない格好は!?俺なんて気合入れてお気に入りのオサレな衣装纏ってきたのに!
せめて鎧とか着て来いよ!剣とか装備しろよ!」
「バカを言うな。俺の知る限り最も強い男サンレッドは、よっぽど気が乗らない限りいつもこの格好だったぞ。一度だけ
バトルスーツで闘ってるの見せてくれたけど、その時以外は常にTシャツだった」
「誰だよサンレッドって!生死をかけた決闘に<Tシャツ>で挑むバカなんて見習うな!」
「そういうなよ。俺はあの人の二番弟子だからな…リスペクトってヤツだ」
ディランは少し遠い目をしていた。何を思っているのか、ラディウスには窺い知る事が出来ない。
「それに俺、対決の後で買い物行くから鎧だとしんどくてな。ファラに頼まれてるんだよ」
「俺との決闘より買い物優先か!?どんだけあんたの中のランキング下位に甘んじてるのよ俺は!」
「だってお前…アレだよ」
ディランは顔を曇らせた。
「俺はデルティアナ帝国からの人質としてセレスティアに来ただろう?でも俺、帝国に反逆しちゃったからもう人質と
しての意味ないわけ。それでもまだ王宮に住んでて陛下やファラに養ってもらってるわけだから、せめて家事手伝い
くらいしないと居づらいわけで…」
「…………いや、兄貴。あんた、ルーンハイム救ったヒーローだろ?もっと堂々としてりゃいいんじゃ…」
「それでも世間の連中は喉元過ぎれば熱さ忘れるんだよ!<何でアイツもう帝国の皇子でも何でもないのにまだいる
わけ?世界救ったからって調子乗ってるの?つーかファラ様のヒモ?>みたいに見る奴さえいるの!マトリフ師匠の
気持ちが今なら分かるよチクショー!」
「せ…世知辛いな、そりゃ…苦労してんだ、兄貴も」
「…俺の事はどうでもいいだろ。デルティアナの方はどうなんだ、ラディウス。お前、週に一回のペースで俺の命を
狙ってきてるけど、そんなに暇なのか?」
※要するに週に一回のペースでラディウスはボコボコにされています。実の兄貴に。でもラディウスも実の兄貴の命
を狙ってるのでおあいこです。
「暇ってゆうか…ウチらの方も、世知辛いよ。兄貴にメタメタにされたせいで」
デルティアナ帝国が権勢を振るえたのも、初代皇帝ゴードナーと、そしてその跡を継いだディランの父親である皇帝
グロッケンが創り上げた<強大な帝国>としてのイメージがあったのが大きい。其れ故に人々は恐れ、従った。
されど、今のデルティアナは<Tシャツ着て半ズボンでサンダルの反逆者一人に負けたダメ帝国>である。
こんな帝国に、誰が恐れ入ってくれるものか。デルティアナ帝国はすっかり牙を抜かれたに等しい。
「親父は兄貴がドツキまわしてからというもの、すっかりボケちまったし…俺、今だから言うけどさあ、親父も抹殺して
やるつもりだったんだよ。俺が悲惨な少年時代送ったのも、親父のせいだし…でもさあ…朝メシ食ったばっかなのに
<ラディウスや、晩のご飯はまだかいのお?>なんて言ってる親父見てると、抹殺どころか、俺が末永く面倒を見て
やらないとなあ、なんて思っちまう始末さ…」
「そっか。じゃあ頑張って介護福祉士の資格を取れよ」
「ああ、俺は俺でボチボチやってくよ…資格は取らないけどな。さて―――下らん話はここまでだ。そろそろ殺し合うと
するか、兄貴。とりあえずあんたを抹殺しない事には、セレスティア征服もままならんからな」
「そうだな。俺も買い物に行かなければならない事だし、さっさと決闘済ませるぞ。散々しばき倒して、ロロ雑巾…
ごめん、噛んじゃった。ボロ雑巾のように捨ててやる!」
「セリフが正義じゃないぞ、兄貴…まあいいさ。それでは兄貴抹殺委員会名誉会長・ラディウス、参る」
いつそんなアホな委員会出来たんだ、おい。ディランはそう思ったが、面倒なのでもう突っ込まない事にした。
ラディウスは背にした剣をすいっと抜き去り、構えを取る。
「これぞ我がデルティアナ帝国に代々伝わる宝剣<天の皇剣>…その威力、その身を以て知るがいい!」
※具体的には攻撃力+160です。
神速の踏み込みから放たれる斬撃。
それは人間としての限界を極めていたと評して間違いなかろう。
しかし、残念ながら彼の相手はあのチンピラヒーローを目標として幼少より身体を鍛えていたような男である。
つまりは人間として越えちゃダメなラインを平然と足蹴にしてるような奴である。
ディランは振り下ろされた刃を人差し指と中指で挟んで、くいっと捻った。
ポキッ、と折れた剣身をポイッと投げ捨てる。ラディウスは柄だけになった天の皇剣を握り締めたまま、茫然となる。
「ちょ…兄貴、これはシャレにならないって…どうしてくれんのさ、宝剣折っちゃって…後で返せばいいやーと思って
無断で持ち出したのに…ああもう、アロンアルファでくっつくかな…ほんと、マジでどうし」
セリフを最後まで言う事は出来なかった。脳天にチョップをかまされ、悶絶して地面に転がる。
しかし、それで終わりではない。
某野菜王子風に言うなら、ここからが本当の地獄だ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァっ!」
ガスガスガスガスガスガスガスガスッ!倒れたラディウスに向けて容赦なくストンピングをかますディラン。
やがてラディウスがピクピクと痙攣する肉塊に変わったのを見届け、彼は踵を返す。
今日は説教している暇はない。彼には大いなる使命(買い物)があるのだから…。
「あ…兄貴…一つだけ…一つだけ言わせてくれ…」
ラディウスは息も絶え絶えながら、口を開く。
「こんなの、ヒーローの闘い方じゃないだろ…チンピラじゃん、ただの…」
「何を言うか。俺が尊敬し手本とするヒーロー・サンレッドはこうやって悪と闘っていたぞ」
そして諦めるな、ラディウス。ディランはそう言って笑う。
「サンレッドの宿敵であるヴァンプ将軍と怪人達は、どれだけボッコボコにされようが絶対に挫けなかった…お前も
悪を名乗るのなら、彼を見習え」
「…だから誰なの…サンレッドとかヴァンプ将軍とかって…」
「説明すると長いが、ただ一つだけ言えることは…かよ子さんは素晴らしい女性だった。それだけさ」
「…誰だ、かよ子って…」
よく分からないけど、ラディウスはたった一つだけ理解した。
兄貴がこんな事になった諸悪の根源は、間違いなくそいつらであると。
―――ルーンハイムにおいて唯一のヒーロー・反逆皇子ディラン。
その闘い振りは、まさに溝ノ口の真っ赤なヒーローを思わせるものだったという…。
彼がこの光景を見れば、満足げにこう語っただろう。
<ディランは(ある意味)俺が育てた>と。
その闘い振りは、まさに溝ノ口の真っ赤なヒーローを思わせるものだったという…。
彼がこの光景を見れば、満足げにこう語っただろう。
<ディランは(ある意味)俺が育てた>と。
さて皆さん。今回のサンレッドはショートショート第二弾だ!
ショートショート①ゴドムとソドラ
「なあ…キャビアとかそんな高級食材あるじゃん?でも俺、ああいうのって高いだけであんまり美味いもんでもない
と思うんだよ。何千円とか、下手したら何万円とか払って、それだけの価値があるのかって話だよ」
「…で?」
「だからあ、そんな金があるなら他に色々出来るって事!同じメシ食うにしても、何千円も払えばさー、ラーメンが
何杯食えるって考えろよ。なあ、そこまでして食いたいか?サメの卵だよ?サメの卵!そんなんに大金使ってお前
の諭吉が泣いてるって言いたいわけよ、俺は。なあ、お前もそう思わねえ?なあ、なあ」
「…言いたい事は分かるけど、人の勝手だろ」
と思うんだよ。何千円とか、下手したら何万円とか払って、それだけの価値があるのかって話だよ」
「…で?」
「だからあ、そんな金があるなら他に色々出来るって事!同じメシ食うにしても、何千円も払えばさー、ラーメンが
何杯食えるって考えろよ。なあ、そこまでして食いたいか?サメの卵だよ?サメの卵!そんなんに大金使ってお前
の諭吉が泣いてるって言いたいわけよ、俺は。なあ、お前もそう思わねえ?なあ、なあ」
「…言いたい事は分かるけど、人の勝手だろ」
ショートショート②カリスマ吸血鬼・レミリア
「お嬢様。どうぞ」
「ありがとう、咲夜」
我が忠実な従者である咲夜が、カップに熱い液体を注ぐ。
―――ここは世俗とかけ離れた楽園・幻想郷。
私は我が城<紅魔館>のテラスの日陰で、午後の気だるい一時を過ごしていた。
愚民共(しんあいなるどくしゃのみなさま)、お元気かしら?私は吸血鬼レミリア。
川崎で私の麗しい姿を目撃した者もいるのではなくて?
あの時は少々取り乱してしまったけれど、あれはちょっとした戯れ…そう、お遊びに過ぎないの。
プリン一つ台無しになったくらいで、この私が本気で我を忘れるわけないでしょう?
如何なる時も優雅。何処までも高貴。選ばれしカリスマ。それがこの私、レミリア・スカーレット。
プリンの事なんかもう、これっぽっちも気にしてないわ。
プリンなんて…プリンなんて…!大好きなのにコンチクショォォォォォォォォォォォォォ!
あら、嫌だ。目からしょっぱい汁が…ハンケチーフでフキフキ。
さて。私はカップを掴み、口元に運ぶ。中身はコーヒー。そう、私はいつもコーヒーよ。
別にショートショートに出演するからって大人ぶってるとかじゃないわ。
勿論ブラックよ。ミルクだの砂糖だの、お子様のやる事。
偉大な吸血鬼たる私は、この夜のように黒く、地獄の如く熱く、初恋を思わせる苦いコーヒーを楽しむの。
それでこそ、カリスマ吸血鬼というもの。ロリリッ!
(※ロリリッ!とは以前も説明した通りロリィな子がキリッ!とした時に何処からか放たれる効果音です)
甘ったるいココアなんてガキの飲み物。そんなものは氷の妖精にでもぶっかけてやればいいのよ。
ぐいっ。ブバアッ!
「なにこれぇぇぇぇぇ!こんなニガいのヤダぁぁぁぁぁっ!」
「お嬢様…だからせめてミルクと砂糖をがんがんどばどば入れて甘ったるくすべきと申し上げたのに」
「そんなのかりしゅまじゃないぃぃぃぃぃ!かりしゅまはかっこよくぶらっくこぉひぃなのぉぉぉぉぉっ!」
「一口でカリスマブレイクするような人に飲ませるブラックコーヒーは存在しません」
「じゃあさくやがぶらっくでもアマアマのこぉひぃつくってぇぇぇぇ!」
「ああ、もう。そんな我儘なお嬢様も…素敵ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ありがとう、咲夜」
我が忠実な従者である咲夜が、カップに熱い液体を注ぐ。
―――ここは世俗とかけ離れた楽園・幻想郷。
私は我が城<紅魔館>のテラスの日陰で、午後の気だるい一時を過ごしていた。
愚民共(しんあいなるどくしゃのみなさま)、お元気かしら?私は吸血鬼レミリア。
川崎で私の麗しい姿を目撃した者もいるのではなくて?
あの時は少々取り乱してしまったけれど、あれはちょっとした戯れ…そう、お遊びに過ぎないの。
プリン一つ台無しになったくらいで、この私が本気で我を忘れるわけないでしょう?
如何なる時も優雅。何処までも高貴。選ばれしカリスマ。それがこの私、レミリア・スカーレット。
プリンの事なんかもう、これっぽっちも気にしてないわ。
プリンなんて…プリンなんて…!大好きなのにコンチクショォォォォォォォォォォォォォ!
あら、嫌だ。目からしょっぱい汁が…ハンケチーフでフキフキ。
さて。私はカップを掴み、口元に運ぶ。中身はコーヒー。そう、私はいつもコーヒーよ。
別にショートショートに出演するからって大人ぶってるとかじゃないわ。
勿論ブラックよ。ミルクだの砂糖だの、お子様のやる事。
偉大な吸血鬼たる私は、この夜のように黒く、地獄の如く熱く、初恋を思わせる苦いコーヒーを楽しむの。
それでこそ、カリスマ吸血鬼というもの。ロリリッ!
(※ロリリッ!とは以前も説明した通りロリィな子がキリッ!とした時に何処からか放たれる効果音です)
甘ったるいココアなんてガキの飲み物。そんなものは氷の妖精にでもぶっかけてやればいいのよ。
ぐいっ。ブバアッ!
「なにこれぇぇぇぇぇ!こんなニガいのヤダぁぁぁぁぁっ!」
「お嬢様…だからせめてミルクと砂糖をがんがんどばどば入れて甘ったるくすべきと申し上げたのに」
「そんなのかりしゅまじゃないぃぃぃぃぃ!かりしゅまはかっこよくぶらっくこぉひぃなのぉぉぉぉぉっ!」
「一口でカリスマブレイクするような人に飲ませるブラックコーヒーは存在しません」
「じゃあさくやがぶらっくでもアマアマのこぉひぃつくってぇぇぇぇ!」
「ああ、もう。そんな我儘なお嬢様も…素敵ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
―――紅魔館。それは、メイドの咲夜さんがブチ撒けた鼻血で真紅に染まったというが、真偽は定かでない。
ショートショート③悪の軍団集結
フロシャイム川崎支部に所属する怪人達。
悪の姫君エニシアを奉る軍団。
魔界より来たれり一匹狼のヒム。
悪の吸血鬼が一員ヤフリー。
あの<アバシリン事変>を生き延びて結束を深めた悪の面々は、とある施設の前に集合していた。
「皆の者、よくぞ集まってくれた…我々<川崎市悪党同盟>は、これより共同作戦を行う!」
一同を代表し、ヴァンプ将軍が指揮を執る。
この悪の化身は、果たしてどんな恐ろしい事を企んでいるのか!?
その時、施設の中からスピーカーを通して音声が響いてきた。
「大変お待たせしました~。ただいまよりスーパー○○、タイムセールを実施しまーす。卵1パックなんと50円で
御提供。その他には牛肉が…」
「よし、では行くぞ!我等フロシャイムとエニシア軍団のメンバーは卵を優先的に狙うのだ!アニマルソルジャー、
お前達はヒム、ヤフリーと共に遊撃部隊として卵以外の商品を確実に仕留めよ!可能ならば、卵は二回並べ!」
「「「「「ラジャー!」」」」」
ヴァンプ将軍の的確な指揮を受けて、一同はスーパーへと突撃する。
世界を狙う恐るべき悪魔達。奴らにとっては、買い物すらも戦場なのだ!
悪の姫君エニシアを奉る軍団。
魔界より来たれり一匹狼のヒム。
悪の吸血鬼が一員ヤフリー。
あの<アバシリン事変>を生き延びて結束を深めた悪の面々は、とある施設の前に集合していた。
「皆の者、よくぞ集まってくれた…我々<川崎市悪党同盟>は、これより共同作戦を行う!」
一同を代表し、ヴァンプ将軍が指揮を執る。
この悪の化身は、果たしてどんな恐ろしい事を企んでいるのか!?
その時、施設の中からスピーカーを通して音声が響いてきた。
「大変お待たせしました~。ただいまよりスーパー○○、タイムセールを実施しまーす。卵1パックなんと50円で
御提供。その他には牛肉が…」
「よし、では行くぞ!我等フロシャイムとエニシア軍団のメンバーは卵を優先的に狙うのだ!アニマルソルジャー、
お前達はヒム、ヤフリーと共に遊撃部隊として卵以外の商品を確実に仕留めよ!可能ならば、卵は二回並べ!」
「「「「「ラジャー!」」」」」
ヴァンプ将軍の的確な指揮を受けて、一同はスーパーへと突撃する。
世界を狙う恐るべき悪魔達。奴らにとっては、買い物すらも戦場なのだ!
ショートショート④結成!赤色戦隊トリプルレッド!
いつもの対決場所・公園。
そこには四人の人影。
かつてイベリアを震撼させた<炎の悪魔>シャイタン。
百年を生きる古き吸血鬼<銀刀>望月ジロー。
そして地上最強のヒーロー<天体戦士>サンレッド。
彼等を見守るのは、ジローの弟である望月コタロウ。
四人は真剣な面持ちで佇む。そして、まずはシャイタンが動いた。彼はやたらかっこいいポーズを決めて叫ぶ。
「全テヲ焼キ尽クス緋色ノ炎!デビルレッド・シャイタン!」
続いてジローが、むっちゃかっこいいポーズを取り、吼える。
「闇夜を駆ける紅き影―――!ヴァンパイアレッド・ジロー!」
最後に我等がヒーロー・レッドさんがとってもかっこいいポーズで咆哮する!
「そして世界を照らす真っ赤な太陽!そう、俺こそがサンレッド!」
そこには四人の人影。
かつてイベリアを震撼させた<炎の悪魔>シャイタン。
百年を生きる古き吸血鬼<銀刀>望月ジロー。
そして地上最強のヒーロー<天体戦士>サンレッド。
彼等を見守るのは、ジローの弟である望月コタロウ。
四人は真剣な面持ちで佇む。そして、まずはシャイタンが動いた。彼はやたらかっこいいポーズを決めて叫ぶ。
「全テヲ焼キ尽クス緋色ノ炎!デビルレッド・シャイタン!」
続いてジローが、むっちゃかっこいいポーズを取り、吼える。
「闇夜を駆ける紅き影―――!ヴァンパイアレッド・ジロー!」
最後に我等がヒーロー・レッドさんがとってもかっこいいポーズで咆哮する!
「そして世界を照らす真っ赤な太陽!そう、俺こそがサンレッド!」
「「「我等、赤色戦隊トリプルレッド!」」」
ババーーーン!と三人の背後でド派手な爆発である(※あくまでもイメージ映像です。御了承下さい)。
ちなみにシャイタンは言うまでもなく鎌仲さんのコンサート出演のため来日です。悪しからず。
コタロウは満面の笑顔でパチパチ手を叩く。
「すごいすごい!皆、かっこいい!」
「ハハハ、ソウカイ?ヤッテミルト面白イネ、コウイウノモ」
白い歯と健康的な歯茎を見せて笑顔で語るシャイタン。悪魔なのにこれでいいのか。
「全く、このバカは…何が<この三人で戦隊組んだら面白くない?>ですか。恥ずかしい」
憎まれ口を叩いてはいるが、結構まんざらでもない顔のジロー。
「なっはっは。しかし、こういうのやってると思いだすな、ウェザー3時代を」
懐かしそうに笑うレッドさんである。
「ウェザースリー?レッドさん、それ何?」
「ああ。俺が昔組んでた戦隊だよ。気象戦隊っつってな。ブルーとイエローがいたんだ」
当時のサンレッドは<晴れの戦士ウェザーレッド>。
残る二人は<雨の戦士ウェザーブルー>と<雷の戦士ウェザーイエロー>である。
二人ともレッドさんに劣らぬ戦闘力と性格のヤバさであったそうな。
「ちなみに、俺がリーダーだったんだぜ」
「へー。さっすが赤色だけはあるねっ。あ…でも」
コタロウはふと思いついて、何気なく口にする。
「この<赤色戦隊>だと、誰がリーダーをやるの?」
シーン…と静まり返る一同。
レッド・ジロー・シャイタンは、お互いを牽制するように鋭く睨み付ける。
「…我、モウ数千年生キテルンダ。間違イナク最年長ダヨネ」
シャイタンが口火を切った。
「此処ハ、長老ノ知恵トイウ事デ、我ニ任セテハドウカナ?」
「いやいや、ちょっと待てシャイタン」
レッドさんがそれを阻む。
「俺はかつてリーダーを務めた実績があるからよ。ここは俺がやるべきだろ?」
「いいえ、それはどうでしょうか」
ジローが異議を申し出る。
「確かに私はシャイタンほど長く生きてはいませんし、レッドのように、何かのリーダーを務めた経験もない―――
だからこそ、未知数に期待しての若きリーダーということでどうでしょうか?」
バチバチバチッ!
三人の視線がぶつかり合い、火花を散らした。
「…コノ年寄リニ譲ッテヤロウトイウ気ハナインダネ。敬老精神ノナイ薄情者ハ、死神(タナトス)ガ迎エニ来ルゾ。
アイツ、ジメジメネチネチデ嫌ナ奴ダゾー。決闘神話読ンデクレタナラ知ッテルダロウケド」
「お前ら、もう十分生きてるだろ?シャイタンは数千年、ジローも百年超え…老い先短いんだから出しゃばってない
で、若者に任せようって気にならねーのか?あ?」
「はっはっは、やだなあ。吸血鬼にとっての百年なんて、やっとこさ一人前と認められる程度ですよ?人間で言えば
どうにか成人式を迎えた程度です。あなたこそ、そろそろ成人病に気を付けねばならないのでは?」
ピキピキピキ。三人の額に、漫画的表現の青筋がバリバリ浮かんでいた。
コタロウはなんかすごい<言わなくていい事を言っちゃった感>に襲われ、身体が灰になる思いだったそうな。
そんなコタロウに、三人は(表面上は)笑顔で詰め寄る。
「コタロウ…我ガ一番リーダーニ相応シイト思ウヨネ?ネ?ウント言ッテヨ。ケチャップ塗リタクッタハンバーガーデモ
奢ッテアゲルカラ」
「我が弟よ…まさか、兄を裏切るような真似はしませんよね?あ、そうだ。特に関係はないけど、今日の献立はミミコ
さんに頼んでケチャップをいつもの二倍使ったナポリタンにしましょうか」
「おいおい、浅ましい事すんなよ、お前ら。コタロウだって嫌がってんじゃねーか…それはそうとコタロウ、今日は帰り
にラーメン屋行こうぜ?ニンニクたっぷりで美味いぞー」
何たる大人気ない大人達であろうか。コタロウは悲しげに顔を伏せる。
そして。
「…こんなんじゃ、ダメだよ。こんなの、正義の戦隊じゃないよ!」
「え…」
コタロウの突然の剣幕に、三人は毒気を抜かれた。
「誰がリーダーかなんて事でケンカして…こんなんじゃ、世界の愛と平和なんて守れっこないじゃん!力を合わせて
悪を討つ―――それが正義のヒーローでしょ!そうじゃないの!?」
ズキューーーーーーーーーーーン!
その言葉は、三人の胸に深く突き刺さった(特に、本職ヒーローであるレッドさんには深刻な言葉である)。
慙愧の念に目線を地に落とし―――そして、再び顔を上げた時、その表情は憑き物が落ちたように晴れやかだった。
レッドさん、シャイタン、ジローさん、そしてコタロウ。漢達は互いの肩を強く抱き合う。
その際、ジローさんはレッドさんの太陽闘気によって割とシャレにならない火傷を負ったが、気にしない方向で。
「コタロウ!我々ガ間違ッテイタヨ!」
「本当に…弟に教わろうとは、情けない兄です」
「全くだ…コタロウ。正義の心得を一番よく分かってたのは、お前だったぜ…」
「いいんだよ、皆…分かり合えたのなら、それでいいんだ…」
ああ、何と美しい光景か。正義を愛する者達の心は今、一つになったのだ!
悪魔と吸血鬼が正義側かどうかはこの際どうでもいいのだ!
「デ、コタロウ。ソレハソッチニ置イトイテ」
「結局、お前はどう思うのです」
「俺達の中で、誰が一番リーダーに向いてるんだ?お前の意見を聞かせろよ」
―――コタロウは思った。
正義の味方も案外楽じゃないんだなあ、と。
ちなみにシャイタンは言うまでもなく鎌仲さんのコンサート出演のため来日です。悪しからず。
コタロウは満面の笑顔でパチパチ手を叩く。
「すごいすごい!皆、かっこいい!」
「ハハハ、ソウカイ?ヤッテミルト面白イネ、コウイウノモ」
白い歯と健康的な歯茎を見せて笑顔で語るシャイタン。悪魔なのにこれでいいのか。
「全く、このバカは…何が<この三人で戦隊組んだら面白くない?>ですか。恥ずかしい」
憎まれ口を叩いてはいるが、結構まんざらでもない顔のジロー。
「なっはっは。しかし、こういうのやってると思いだすな、ウェザー3時代を」
懐かしそうに笑うレッドさんである。
「ウェザースリー?レッドさん、それ何?」
「ああ。俺が昔組んでた戦隊だよ。気象戦隊っつってな。ブルーとイエローがいたんだ」
当時のサンレッドは<晴れの戦士ウェザーレッド>。
残る二人は<雨の戦士ウェザーブルー>と<雷の戦士ウェザーイエロー>である。
二人ともレッドさんに劣らぬ戦闘力と性格のヤバさであったそうな。
「ちなみに、俺がリーダーだったんだぜ」
「へー。さっすが赤色だけはあるねっ。あ…でも」
コタロウはふと思いついて、何気なく口にする。
「この<赤色戦隊>だと、誰がリーダーをやるの?」
シーン…と静まり返る一同。
レッド・ジロー・シャイタンは、お互いを牽制するように鋭く睨み付ける。
「…我、モウ数千年生キテルンダ。間違イナク最年長ダヨネ」
シャイタンが口火を切った。
「此処ハ、長老ノ知恵トイウ事デ、我ニ任セテハドウカナ?」
「いやいや、ちょっと待てシャイタン」
レッドさんがそれを阻む。
「俺はかつてリーダーを務めた実績があるからよ。ここは俺がやるべきだろ?」
「いいえ、それはどうでしょうか」
ジローが異議を申し出る。
「確かに私はシャイタンほど長く生きてはいませんし、レッドのように、何かのリーダーを務めた経験もない―――
だからこそ、未知数に期待しての若きリーダーということでどうでしょうか?」
バチバチバチッ!
三人の視線がぶつかり合い、火花を散らした。
「…コノ年寄リニ譲ッテヤロウトイウ気ハナインダネ。敬老精神ノナイ薄情者ハ、死神(タナトス)ガ迎エニ来ルゾ。
アイツ、ジメジメネチネチデ嫌ナ奴ダゾー。決闘神話読ンデクレタナラ知ッテルダロウケド」
「お前ら、もう十分生きてるだろ?シャイタンは数千年、ジローも百年超え…老い先短いんだから出しゃばってない
で、若者に任せようって気にならねーのか?あ?」
「はっはっは、やだなあ。吸血鬼にとっての百年なんて、やっとこさ一人前と認められる程度ですよ?人間で言えば
どうにか成人式を迎えた程度です。あなたこそ、そろそろ成人病に気を付けねばならないのでは?」
ピキピキピキ。三人の額に、漫画的表現の青筋がバリバリ浮かんでいた。
コタロウはなんかすごい<言わなくていい事を言っちゃった感>に襲われ、身体が灰になる思いだったそうな。
そんなコタロウに、三人は(表面上は)笑顔で詰め寄る。
「コタロウ…我ガ一番リーダーニ相応シイト思ウヨネ?ネ?ウント言ッテヨ。ケチャップ塗リタクッタハンバーガーデモ
奢ッテアゲルカラ」
「我が弟よ…まさか、兄を裏切るような真似はしませんよね?あ、そうだ。特に関係はないけど、今日の献立はミミコ
さんに頼んでケチャップをいつもの二倍使ったナポリタンにしましょうか」
「おいおい、浅ましい事すんなよ、お前ら。コタロウだって嫌がってんじゃねーか…それはそうとコタロウ、今日は帰り
にラーメン屋行こうぜ?ニンニクたっぷりで美味いぞー」
何たる大人気ない大人達であろうか。コタロウは悲しげに顔を伏せる。
そして。
「…こんなんじゃ、ダメだよ。こんなの、正義の戦隊じゃないよ!」
「え…」
コタロウの突然の剣幕に、三人は毒気を抜かれた。
「誰がリーダーかなんて事でケンカして…こんなんじゃ、世界の愛と平和なんて守れっこないじゃん!力を合わせて
悪を討つ―――それが正義のヒーローでしょ!そうじゃないの!?」
ズキューーーーーーーーーーーン!
その言葉は、三人の胸に深く突き刺さった(特に、本職ヒーローであるレッドさんには深刻な言葉である)。
慙愧の念に目線を地に落とし―――そして、再び顔を上げた時、その表情は憑き物が落ちたように晴れやかだった。
レッドさん、シャイタン、ジローさん、そしてコタロウ。漢達は互いの肩を強く抱き合う。
その際、ジローさんはレッドさんの太陽闘気によって割とシャレにならない火傷を負ったが、気にしない方向で。
「コタロウ!我々ガ間違ッテイタヨ!」
「本当に…弟に教わろうとは、情けない兄です」
「全くだ…コタロウ。正義の心得を一番よく分かってたのは、お前だったぜ…」
「いいんだよ、皆…分かり合えたのなら、それでいいんだ…」
ああ、何と美しい光景か。正義を愛する者達の心は今、一つになったのだ!
悪魔と吸血鬼が正義側かどうかはこの際どうでもいいのだ!
「デ、コタロウ。ソレハソッチニ置イトイテ」
「結局、お前はどう思うのです」
「俺達の中で、誰が一番リーダーに向いてるんだ?お前の意見を聞かせろよ」
―――コタロウは思った。
正義の味方も案外楽じゃないんだなあ、と。
赤色戦隊トリプルレッド―――結成後間もなく解散。
その理由はあくまでも<音楽性の違い>と三人は言い張ったという。
その理由はあくまでも<音楽性の違い>と三人は言い張ったという。
ショートショート⑤川崎支部の掟
「ヴァンプ様。頼まれてたもの、買ってきましたー」
フロシャイム怪人・ヴァイヤーは、スーパーの袋をヴァンプ様に渡した。
「ご苦労様。えっと、カレー粉に玉ねぎ…ああっ!」
ヴァンプ様は、恐るべき過ちに気付き、彼には珍しく声を荒げた。
「ヴァ…ヴァイヤーくん!ウチでカレーっていったら鶏肉でしょ!?」
フロシャイム怪人・ヴァイヤーは、スーパーの袋をヴァンプ様に渡した。
「ご苦労様。えっと、カレー粉に玉ねぎ…ああっ!」
ヴァンプ様は、恐るべき過ちに気付き、彼には珍しく声を荒げた。
「ヴァ…ヴァイヤーくん!ウチでカレーっていったら鶏肉でしょ!?」
―――そんなこんなで、神奈川県川崎市溝ノ口。色々あるけど、皆この街が大好きなのだ。