地面に広がる黒い血痕に、真新しい鮮血が上塗りされる。
『ハイウェイ・スター』で作られた波が崩れ去って倒れこんでくる。
……何故? 本体が死ねばスタンドは消える筈、『倒れる』ことはない。
私の体に『ハイウェイ・スター』が張り付いている。
『ハイウェイ・スター』で作られた波が崩れ去って倒れこんでくる。
……何故? 本体が死ねばスタンドは消える筈、『倒れる』ことはない。
私の体に『ハイウェイ・スター』が張り付いている。
ドドドドドドドドドド……
勝利を祝福してくれていた暗黒の世界に奇怪な、聞きなれた『音』が響いた。
目を開けば死体が転がっている、少しすれば『ハイウェイ・スター』も消える筈だ。
噴出す汗が目に入らない様に、ゆっくりと目を開いた。
目を開けば死体が転がっている、少しすれば『ハイウェイ・スター』も消える筈だ。
噴出す汗が目に入らない様に、ゆっくりと目を開いた。
思い描いたとおり血を流しながら地面に突っ伏す墳上裕也。
だが想像と完璧な一致はしていない、頭に穴があいていない。
代わりに彼の背中には『矢』が刺さっていた。
だが想像と完璧な一致はしていない、頭に穴があいていない。
代わりに彼の背中には『矢』が刺さっていた。
上を見上げると、『父』が笑っていた。
弓を持ってゲラゲラと笑っていた。
弓を持ってゲラゲラと笑っていた。
「ウワッハハハハ! 思い知ったかぁ――――!」
上を向いていた墳上裕也、その頭部目掛けて空気を『爆破』した。
上から矢が降ってきて、墳上裕也を地面に縫い付けた。
そして頭が吹き飛んでいない……『爆破』は当たっていない。
上から矢が降ってきて、墳上裕也を地面に縫い付けた。
そして頭が吹き飛んでいない……『爆破』は当たっていない。
「キ……キラークイー………ッッ!」
『キラークイーン』の手から百円玉が落ちると、チャリンという漫画の擬音の様な音が鳴り響く。
それと同時に、脱出不可能な底なし沼に沈み込むような音が聞こえた。
それは私に張り付いていた『ハイウェイ・スター』が肉体へと潜り込む音だった。
それと同時に、脱出不可能な底なし沼に沈み込むような音が聞こえた。
それは私に張り付いていた『ハイウェイ・スター』が肉体へと潜り込む音だった。
体に入り込む『ハイウェイ・スター』から生命の消滅を感じ取る。
ボロボロの肉体に打ち込まれた矢、出血に重なる出血は死を確実な物にした。
私の養分を全て奪ったとしても墳上はじきに死ぬだろう、だがそれよりも早く私は干物になる。
ボロボロの肉体に打ち込まれた矢、出血に重なる出血は死を確実な物にした。
私の養分を全て奪ったとしても墳上はじきに死ぬだろう、だがそれよりも早く私は干物になる。
「たぶん……てめーは最初から………人質なんかとっちゃ…………いねぇ」
奴を攻撃するには……『シアーハートアタック』ならば。
だが、死に行く奴の体、街灯の温度、猫草の体温……どれが一番高い?
だが、死に行く奴の体、街灯の温度、猫草の体温……どれが一番高い?
「………俺を殺す…手段を……不確実な方法で………減らすはずがねぇ……」
猫草の『ストレイ・キャット』……地面に転がり眠っている。
街灯の明かりの下にいるが全く反応していない。
街灯の明かりの下にいるが全く反応していない。
「それはわかっていたんだ………そうなんだよなあ~~~……」
『キラークイーン』に持たせていた百円玉を飛ばそう。
地面を這いずる芋虫のように、百円玉へと手を伸ばす。
地面を這いずる芋虫のように、百円玉へと手を伸ばす。
「しかしよォー……ひょっとしたら………万が一にも……って思ったらよぉ」
地面をカリカリと弱々しく掻き毟る、もう少しで指が届くのに。
私の勝利は目の前なのに……体はピクリとも動かせない。
私の勝利は目の前なのに……体はピクリとも動かせない。
「俺の女を………助けねぇわけには…いかねぇだろう……!」
「黙れぇ――――ッッ! 貴様がその甘ったれた考えで死ぬことに代わりはなぁいんだァ―――!」
「黙れぇ――――ッッ! 貴様がその甘ったれた考えで死ぬことに代わりはなぁいんだァ―――!」
だが、今追い込まれてるのは……この私だ。
「よっ、吉影ぇ――――ッ!」
一枚の写真が飛んでくる、その中に写る人物が血相を変えていた。
『父』だ、私をこんな状況に追い込んだのはこいつだ。
今まで私を助けたことなどない癖に、余計なことをするから私の平穏は遥か彼方に遠のいてしまった。
『父』だ、私をこんな状況に追い込んだのはこいつだ。
今まで私を助けたことなどない癖に、余計なことをするから私の平穏は遥か彼方に遠のいてしまった。
スタンドの発現にしても、今の状況にしてもこいつが原因なのだ。
こいつが墳上にスタンド能力を与えなければ、こいつが私の邪魔をしなければ。
何の役にも立たない、無能で無価値な『父』……今、私が苦しんでいるのはこいつのせいだ。
こいつが墳上にスタンド能力を与えなければ、こいつが私の邪魔をしなければ。
何の役にも立たない、無能で無価値な『父』……今、私が苦しんでいるのはこいつのせいだ。
「ワシが拾ってやる! これをあのクソガキに飛ばすんじゃぁ―――っ!」
爆弾にする予定だった百円玉を掴み取る『父』を見て閃く。
こんなことになる原因を作った父への復讐と、この状況からの脱出方法。
『キラークイーン』の右手にすがりつく写真を掴む。
こんなことになる原因を作った父への復讐と、この状況からの脱出方法。
『キラークイーン』の右手にすがりつく写真を掴む。
「な、何を………」
「行け……」
「行け……」
ぽかんと口を開く父は、上空へ舞い上がった百円玉を見つめる墳上より滑稽だった。
生涯忘れることはないと思い、心の底から笑ってやった墳上よりずっとマヌケな顔だ。
だが笑えない……今それを見て感じるのは理解の遅い役立たずのクズへの怒りだった。
生涯忘れることはないと思い、心の底から笑ってやった墳上よりずっとマヌケな顔だ。
だが笑えない……今それを見て感じるのは理解の遅い役立たずのクズへの怒りだった。
「行け………私を想うなら……」
「吉影……ま、まさか………」
「吉影……ま、まさか………」
私はついに手に入れた、『シアーハートアタック』よりも猫草の『空気弾』よりも正確に相手を爆破する爆弾。
スピードもパワーもないが確実に狙った標的へと向かう一発限りの爆弾……。
先ほどまで抱いていた憎しみを笑顔にして向ける……自分の『父』に向かって。
スピードもパワーもないが確実に狙った標的へと向かう一発限りの爆弾……。
先ほどまで抱いていた憎しみを笑顔にして向ける……自分の『父』に向かって。
どんな『物体』も『キラークイーン』の右手にかかれば爆弾になる。
石ころも、コインも、ありとあらゆる物は爆弾になる………そして写真も例外ではない。
父は既に死んでいてスタンドの能力で写真の中にいる、写真は『物体』だ。
石ころも、コインも、ありとあらゆる物は爆弾になる………そして写真も例外ではない。
父は既に死んでいてスタンドの能力で写真の中にいる、写真は『物体』だ。
「こ、この百円で……」
「行け……」
「行け……」
父の手から硬貨が滑り落ち、聞いたばかりのチャリンという音が再び鳴り響く。
何かの冗談かと問いかけるような視線を私に向ける。
何かの冗談かと問いかけるような視線を私に向ける。
「ワシはおまえの………」
「行け……!」
「行け……!」
私を助けるという父の願いを成就させてやろうというのに何をためらうのか。
『キラークイーン』の活動限界は刻一刻と迫っている……笑みを消し、突き放すように言い放つ。
爆弾となった父の顔が涙と鼻水に濡れた。
『キラークイーン』の活動限界は刻一刻と迫っている……笑みを消し、突き放すように言い放つ。
爆弾となった父の顔が涙と鼻水に濡れた。
「ようやく………私の役にたてるじゃあないか……」
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「う……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
叫びながら写真が飛んだ、墳上とは別の方向へ。
父を呪った……迫る死に信じてもいない神を祈った。
初めて祈った神への願いは『父の死』だった。
父を呪った……迫る死に信じてもいない神を祈った。
初めて祈った神への願いは『父の死』だった。
その時、風が父を墳上の下へと運んだ。
墳上の頬に父の写真が張り付き、父と墳上が私を見つめていた。
私はそれを、笑顔で見送ってやった。
墳上の頬に父の写真が張り付き、父と墳上が私を見つめていた。
私はそれを、笑顔で見送ってやった。
「私の最高の味方……やはり父ではなく、『運命』だった」