修学旅行が終わり、遊戯達はまた学校に通い始めていた。
「―――そしてオレと星女神の巫女・ミーシャが絶体絶命の危機に陥ったその時、颯爽と救世主は現れた!その通り、
彼こそは星女神の勇者・オリオン!そしてもう一人は何を隠そう我が親友・遊戯!」
「はいはい、もう百回は聞いたよ…」
遊戯と城之内の友人である本田は、ウンザリだといわんばかりに両手で耳を塞ぐ。
「オカルト的な事にはオレだって何度も巻き込まれたから、タイムスリップしたとかいう話を疑うわけじゃねーけど、
ここ最近、 お前それしか話してねーじゃんか!」
「そーよねー。ほんともう、耳にタコってカンジ」
仲間内の紅一点・杏子も、ふふんと城之内を嘲笑う。
「そんな事ないよ。ボクは何度聞いてもワクワクするけどなー」
「うう…獏良ぁ~~~!本当のダチ公はお前だけだぁ~~~!」
漢泣きしながらちょっと電波入ってる友人・獏良に縋り付く城之内。暑苦しい男だった。
「ふふ、城之内くんったら…」
(ははは…また、いつもの毎日が戻ってきたってカンジだな)
遊戯、そして闇遊戯は、そんな光景を微笑ましく見つめるのだった。
彼こそは星女神の勇者・オリオン!そしてもう一人は何を隠そう我が親友・遊戯!」
「はいはい、もう百回は聞いたよ…」
遊戯と城之内の友人である本田は、ウンザリだといわんばかりに両手で耳を塞ぐ。
「オカルト的な事にはオレだって何度も巻き込まれたから、タイムスリップしたとかいう話を疑うわけじゃねーけど、
ここ最近、 お前それしか話してねーじゃんか!」
「そーよねー。ほんともう、耳にタコってカンジ」
仲間内の紅一点・杏子も、ふふんと城之内を嘲笑う。
「そんな事ないよ。ボクは何度聞いてもワクワクするけどなー」
「うう…獏良ぁ~~~!本当のダチ公はお前だけだぁ~~~!」
漢泣きしながらちょっと電波入ってる友人・獏良に縋り付く城之内。暑苦しい男だった。
「ふふ、城之内くんったら…」
(ははは…また、いつもの毎日が戻ってきたってカンジだな)
遊戯、そして闇遊戯は、そんな光景を微笑ましく見つめるのだった。
海馬はというと、学校なんぞ目もくれず、本業である海馬コーポレーション社長として仕事に精を出していた。
海馬とて(信じられないかもしれないが)生身の人間である以上、休憩くらいする。
その時間を利用して、彼はとある本を読んでいた。
「あれ?兄サマ、何を読んでるのさ」
「モクバか…何、少々興味深い本だからな」
海馬にとって唯一の肉親であり、ただ一人心を許す存在である海馬モクバ。海馬は彼に、手にした本を見せる。
「<カイバセイア>…?聞いた事ないなー」
「まあ、少し読んでみろ」
受け取ったモクバは、最初こそいまいちピンと来ない様子で本を捲っていたが、次第にその瞳が輝きを増し、文字を
追うスピードが上がる。
「うっわー…これ、すっげー面白い!なんかこの<白龍皇帝>ってヤツ、ちょっと兄サマに似ててかっこいいしさ!
名前まで<カイバ>だし!」
「フン。そうか」
どことなく嬉しそうに海馬は笑い、部屋の一角に目を向ける。
そこには、例の白龍マスクが誇らしげに飾られていた。
(海馬ランドの次のアトラクションは決まりだな…)
その時間を利用して、彼はとある本を読んでいた。
「あれ?兄サマ、何を読んでるのさ」
「モクバか…何、少々興味深い本だからな」
海馬にとって唯一の肉親であり、ただ一人心を許す存在である海馬モクバ。海馬は彼に、手にした本を見せる。
「<カイバセイア>…?聞いた事ないなー」
「まあ、少し読んでみろ」
受け取ったモクバは、最初こそいまいちピンと来ない様子で本を捲っていたが、次第にその瞳が輝きを増し、文字を
追うスピードが上がる。
「うっわー…これ、すっげー面白い!なんかこの<白龍皇帝>ってヤツ、ちょっと兄サマに似ててかっこいいしさ!
名前まで<カイバ>だし!」
「フン。そうか」
どことなく嬉しそうに海馬は笑い、部屋の一角に目を向ける。
そこには、例の白龍マスクが誇らしげに飾られていた。
(海馬ランドの次のアトラクションは決まりだな…)
<正義の味方・カイバーマン>を主役としたヒーローショーは、チビっ子の間で絶大な人気を博したそうな。
―――さて。
ここから先は、神話を生きた者達のそれからの人生―――
ここから先は、神話を生きた者達のそれからの人生―――
奴隷部隊―――彼等が巻き起こした戦乱から、早くも数年の月日が流れていた。
「今思えば、まるで夢のような出来事だったな…」
かつて<紫眼の狼>そして<白龍皇帝>の副官を務めたシリウスは、懐かしむように目を細めた。
「そうだな…けれど」
彼と立場を同じくするオルフは、力強く言った。
「あれは、素晴らしい夢だった。それを見せてくれただけで、私は閣下と皇帝様に感謝している」
「そうか…」
シリウスも、にやりと笑う。
「私もだ。そして…こいつらもな」
後ろを振り向くと、そこには随分と数を減らしてしまったが、奴隷部隊の仲間達がいた。
「―――さて!もうすぐ鉄器の国に着く。そこで我らの新天地を探すのだ!」
おおー!と元気のいい声が返ってくる。
苦しい旅を続けてきた彼らだが、誰一人として弱音など吐いたりしなかった。
奴隷部隊から離れていった者、死んでいった者も多いが、彼らとて、最後まで己の意志で、そのように生きた。
彼らの闘いは、世界に変革をもたらすことはできなかったが―――奴隷達に、前を向いて歩くことを教えた。
もう誰も、いじけた瞳をしていない。澱んでいた彼らの心には、確かに風が吹いたのだ。
「今思えば、まるで夢のような出来事だったな…」
かつて<紫眼の狼>そして<白龍皇帝>の副官を務めたシリウスは、懐かしむように目を細めた。
「そうだな…けれど」
彼と立場を同じくするオルフは、力強く言った。
「あれは、素晴らしい夢だった。それを見せてくれただけで、私は閣下と皇帝様に感謝している」
「そうか…」
シリウスも、にやりと笑う。
「私もだ。そして…こいつらもな」
後ろを振り向くと、そこには随分と数を減らしてしまったが、奴隷部隊の仲間達がいた。
「―――さて!もうすぐ鉄器の国に着く。そこで我らの新天地を探すのだ!」
おおー!と元気のいい声が返ってくる。
苦しい旅を続けてきた彼らだが、誰一人として弱音など吐いたりしなかった。
奴隷部隊から離れていった者、死んでいった者も多いが、彼らとて、最後まで己の意志で、そのように生きた。
彼らの闘いは、世界に変革をもたらすことはできなかったが―――奴隷達に、前を向いて歩くことを教えた。
もう誰も、いじけた瞳をしていない。澱んでいた彼らの心には、確かに風が吹いたのだ。
―――その後の奴隷部隊については、詳細は不明である。無事に新天地に辿り着けたのかもしれないし、或いは荒野
で彷徨った果てに野垂れ死んだのかもしれない。
だが、少なくとも―――彼らは人として生きた。人としての自由を求めて闘い、人としての命を紡いだ。
それは誰にも穢されざる、彼らの生きた証―――
で彷徨った果てに野垂れ死んだのかもしれない。
だが、少なくとも―――彼らは人として生きた。人としての自由を求めて闘い、人としての命を紡いだ。
それは誰にも穢されざる、彼らの生きた証―――
アルカディアでは、国王レオンティウスの結婚式が盛大に行われていた。
相手は、というと。
「おお…何という美しい花嫁か…」
「まるで、女神の様だ…」
「あんな綺麗な人、ほんとにいるもんなんだな…」
「素敵ね…憧れちゃう」
そんな民衆に対して、花嫁は見た目華やかな笑みを浮かべて手を振りつつ、小声でレオンティウスに囁く。
「ははははは、見ろレオンティウス。皆の者が私の見てくれに騙されておるぞ」
「…どうしてこうなった…」
レオンティウスはこめかみをピクピクさせながら、呻くように呟く。
この花嫁、言うまでもなくアレクサンドラである。
「確かに。どういう経緯を辿ってこうなったのだろうな。私にはさっぱり分からん」
「威張って言うな、脳筋女め」
「まあアレだ。私達に関してはいいオチがつかんから、とりあえず結婚させてみましたという思惑が垣間見える」
「身も蓋もないな…」
嘆息するレオンティウスであった。
「ところでレオンティウス。お前の妹…ミーシャとかいったか。確か、あの色男と結婚したんだったな」
「ああ。いざ挙式という段になって、エレフが<やはり納得いかん!>と言い出してな。あの時は大変だった」
レオンティウスがその時の事を思い出して、苦笑する。
「全く、あんなに可愛い義弟が出来るというのに、エレフは何が不満なんだ!」
―――彼のアノ趣味は、今なお現役バリバリである。
「…それはともかく、今では子供も生まれて平穏無事に暮らしておるそうではないか。よかったよかった」
「ああ。私もほっとしているよ」
「やはり可愛い妹の事か…ふふ。お前も立派にシスコンよなあ」
そんな事をのたまいつつ、アレクサンドラは思い出したように言う。
「そういえば、生まれた娘はお前が名付け親になったんだったな」
「そうだとも」
レオンティウスは、笑って胸を張った。
「我が母上のように立派な女性になるようにと、願いを込めてな」
「ふん、マザコンめ」
憎まれ口を叩きながらも、アレクサンドラは屈託なく笑っていた。
相手は、というと。
「おお…何という美しい花嫁か…」
「まるで、女神の様だ…」
「あんな綺麗な人、ほんとにいるもんなんだな…」
「素敵ね…憧れちゃう」
そんな民衆に対して、花嫁は見た目華やかな笑みを浮かべて手を振りつつ、小声でレオンティウスに囁く。
「ははははは、見ろレオンティウス。皆の者が私の見てくれに騙されておるぞ」
「…どうしてこうなった…」
レオンティウスはこめかみをピクピクさせながら、呻くように呟く。
この花嫁、言うまでもなくアレクサンドラである。
「確かに。どういう経緯を辿ってこうなったのだろうな。私にはさっぱり分からん」
「威張って言うな、脳筋女め」
「まあアレだ。私達に関してはいいオチがつかんから、とりあえず結婚させてみましたという思惑が垣間見える」
「身も蓋もないな…」
嘆息するレオンティウスであった。
「ところでレオンティウス。お前の妹…ミーシャとかいったか。確か、あの色男と結婚したんだったな」
「ああ。いざ挙式という段になって、エレフが<やはり納得いかん!>と言い出してな。あの時は大変だった」
レオンティウスがその時の事を思い出して、苦笑する。
「全く、あんなに可愛い義弟が出来るというのに、エレフは何が不満なんだ!」
―――彼のアノ趣味は、今なお現役バリバリである。
「…それはともかく、今では子供も生まれて平穏無事に暮らしておるそうではないか。よかったよかった」
「ああ。私もほっとしているよ」
「やはり可愛い妹の事か…ふふ。お前も立派にシスコンよなあ」
そんな事をのたまいつつ、アレクサンドラは思い出したように言う。
「そういえば、生まれた娘はお前が名付け親になったんだったな」
「そうだとも」
レオンティウスは、笑って胸を張った。
「我が母上のように立派な女性になるようにと、願いを込めてな」
「ふん、マザコンめ」
憎まれ口を叩きながらも、アレクサンドラは屈託なく笑っていた。
―――その後、レオンティウスは勇猛果敢な王として雷名を轟かせ、アレクサンドラは夫と並び戦場を駆ける戦乙女
として、皆から尊敬される王妃になったという。
何だかんだで、二人は仲良くやっているようだった。
として、皆から尊敬される王妃になったという。
何だかんだで、二人は仲良くやっているようだった。
―――アルカディア領のとある街。
広場では、二人の吟遊詩人が軽やかに竪琴を奏で、高らかに歌っている。
まだ年若い兄妹と思しき二人だったが、その技量は一流の詩人と比べても決して遜色はない。
観客は皆、彼等の詠う物語に聴き入っていた。
その内容は主に<白龍皇帝>と呼ばれる英傑を詠ったものだった。
彼の歩んだ軌跡、成し遂げた偉業。その破綻しているとしか思えない、それでいてどこか魅力的な人格に至るまで、
事細かに彼等は語り、詠う。
やがて物語は終わりを告げ、観客達はいくらかのおひねりを詩人の兄妹に手渡して去っていく。
二人が荷物をまとめ、立ち去ろうとすると、服の裾を小さな手が引っ張っていた。
「ねえ、おにいちゃん、おねえちゃん。それから、オオカミさんとこーてー様はどうなったの?」
それは、幼い少女だった。ふわふわした金色の髪に、神秘的な色合いの紫眼。まるで天使のように愛らしい少女。
彼女は笑顔で問いかける。
「二人が、おともだちといっしょにわるい神様をやっつけたんだよね。ねっ?」
詩人の兄妹は、苦笑しながら答えた。
「さあ、どうなったのかな…もう昔の話だから」
「そうね。もう誰も忘れちゃったの」
「ええ~。そんなのずるいよぉ」
「はは…さあ、もうお帰り。父さんと母さんが待っているだろう?」
「はーい…」
渋々といった様子で、少女は去っていく。残された詩人の兄妹は、顔を見合せて笑う。
「ソロル…本当はね、あの頃の事は今でもよく覚えてるよ」
「ええ。私もよ、お兄様」
そう。何もかも印象深く覚えている。思い出すまでもなく、ずっと想っている。
<紫眼の狼>と<白龍皇帝>の強さと、優しさを。
二人は、信じているのだ。
どこか遠い遠い空、白龍の翼は今なお力強く煌いているのだと―――
広場では、二人の吟遊詩人が軽やかに竪琴を奏で、高らかに歌っている。
まだ年若い兄妹と思しき二人だったが、その技量は一流の詩人と比べても決して遜色はない。
観客は皆、彼等の詠う物語に聴き入っていた。
その内容は主に<白龍皇帝>と呼ばれる英傑を詠ったものだった。
彼の歩んだ軌跡、成し遂げた偉業。その破綻しているとしか思えない、それでいてどこか魅力的な人格に至るまで、
事細かに彼等は語り、詠う。
やがて物語は終わりを告げ、観客達はいくらかのおひねりを詩人の兄妹に手渡して去っていく。
二人が荷物をまとめ、立ち去ろうとすると、服の裾を小さな手が引っ張っていた。
「ねえ、おにいちゃん、おねえちゃん。それから、オオカミさんとこーてー様はどうなったの?」
それは、幼い少女だった。ふわふわした金色の髪に、神秘的な色合いの紫眼。まるで天使のように愛らしい少女。
彼女は笑顔で問いかける。
「二人が、おともだちといっしょにわるい神様をやっつけたんだよね。ねっ?」
詩人の兄妹は、苦笑しながら答えた。
「さあ、どうなったのかな…もう昔の話だから」
「そうね。もう誰も忘れちゃったの」
「ええ~。そんなのずるいよぉ」
「はは…さあ、もうお帰り。父さんと母さんが待っているだろう?」
「はーい…」
渋々といった様子で、少女は去っていく。残された詩人の兄妹は、顔を見合せて笑う。
「ソロル…本当はね、あの頃の事は今でもよく覚えてるよ」
「ええ。私もよ、お兄様」
そう。何もかも印象深く覚えている。思い出すまでもなく、ずっと想っている。
<紫眼の狼>と<白龍皇帝>の強さと、優しさを。
二人は、信じているのだ。
どこか遠い遠い空、白龍の翼は今なお力強く煌いているのだと―――
―――紫眼の少女が街中をぽてぽて歩いていると、前方にこちらに向けて手を振る男の姿があった。
「イサドラ。ここにいたのか、探したぞ」
「あ、おじさま!」
元気よく駆け寄り、その胸元に飛びつく。男は少女の金の髪をくしゃくしゃと撫でた。
銀髪に紫のメッシュ。少女と同じ紫眼。
けれどその面立ちは穏やかで、かつて<紫眼の狼>と呼ばれた険しさなど何処にもない。
ただ優しい笑顔で、姪に当たる少女を抱きしめていた。
「今日は皆で出かける約束だったろう?勝手に出歩いて、お父さんとお母さんが怒ってたぞ」
「ええ~…おじさまは、イサドラの味方だよね?いっしょにごめんなさいしてくれるよね?」
「ああ、味方だ」
「わーい!」
「しかし、味方だからこそ甘やかさない!」
「えーん!」
ころころ表情を変える姪っ子に苦笑しつつ、男―――エレフは、イサドラを肩車する。
「ほら、行くよ。二人はもう向こうで待ってる」
「うん!」
「イサドラ。ここにいたのか、探したぞ」
「あ、おじさま!」
元気よく駆け寄り、その胸元に飛びつく。男は少女の金の髪をくしゃくしゃと撫でた。
銀髪に紫のメッシュ。少女と同じ紫眼。
けれどその面立ちは穏やかで、かつて<紫眼の狼>と呼ばれた険しさなど何処にもない。
ただ優しい笑顔で、姪に当たる少女を抱きしめていた。
「今日は皆で出かける約束だったろう?勝手に出歩いて、お父さんとお母さんが怒ってたぞ」
「ええ~…おじさまは、イサドラの味方だよね?いっしょにごめんなさいしてくれるよね?」
「ああ、味方だ」
「わーい!」
「しかし、味方だからこそ甘やかさない!」
「えーん!」
ころころ表情を変える姪っ子に苦笑しつつ、男―――エレフは、イサドラを肩車する。
「ほら、行くよ。二人はもう向こうで待ってる」
「うん!」
―――二人が街外れの丘に辿り着く頃には、もう夕暮れ。西の空が赤く輝いていた。
「きれい…」
「イサドラは、夕焼けが好きかい?」
「うん、とってもすてき!」
「そうか」
エレフは、微笑む。
「それはよかったな」
「おじさまも、好きでしょ?」
「ああ…」
少しだけ言葉に詰まり、けれど答えた。
「夕焼けは、綺麗だから好きだ」
その時だった。
「おーい、エレフ!おせーぞ!」
「イサドラも何処をほっつき歩いてたの、もう!お母さんの鉄拳が火を噴くわよ!」
丘の麓で、二人が声を張り上げる。
オリオンとミーシャ―――笑えるくらいに、あの頃と変わっていない。
変った所といえば夫婦になって、子供…イサドラが生まれた事くらいだ。
「ごめんなさーい…」
「ったくもう。子供一人で出歩いてたら、危ねーだろ。心配かけさせんなよ」
叱りながらも、オリオンとミーシャは優しく笑っていた。
それはただ、ありふれた、ごく普通の家族の姿。
「じゃ、全員揃った所で、行くか」
「え、どこいくの?」
「そうか。イサドラは、ここに来るのは初めてだったな」
「うん」
「そうだったか…いいモノがあるからな、驚くなよ?」
不思議そうに首を傾げるイサドラに、オリオンはそう答える。
「ねえねえ、いいモノって何なの?おいしいもの?」
「がっつくな。食いモンじゃねーよ」
「着いてからのお楽しみよ」
いいモノと聞いて目を輝かせるイサドラを軽くかわしつつ、四人は丘を登っていく。
「ねー、おじさまー。まだかなー?」
「もうすぐだ…ほら。あれを見なさい」
「ん…?」
夕陽に照らされた、丘の頂上。
そこには、三体の石像があった。精巧に彫られたそれは、まるで今にも動き出しそうな程だ。
「わあー…すっごーい!」
「だろう?私が彫ったんだぞ、これは」
「おじさまが!?ふわー、すごいすごい!おじさま、てんさいー!」
「あんま褒めるな、イサドラ。このバカはすぐに調子に乗るからな…いてっ!」
軽口を叩くオリオンの脳天にチョップをお見舞いした。
「何すんだ、バカ!」
「うるさい、大バカめ!」
「ケンカはやめなさい、二大バカ!」
ミーシャのダブルパンチが二人の鳩尾に炸裂し、悶絶させる。そしてここに序列が決定。
ミーシャ>>>>>(越えられない壁)>>>>>野郎二人
それはともかく。
「このおにいちゃんたち、かっこいいね」
石像の精悍な姿に、イサドラはただ見惚れていた。それを見守りながら、オリオンは答える。
「そりゃそうさ。何しろ、神様さえぶっ飛ばした奴らだからな」
そして、エレフに目を向けた。
「しかし、今更だけどさ…お前、何だってこんなモン作ろうと思ったんだ?」
「大した理由じゃないさ」
エレフは、夕焼け空に向けて目を細める。
「ただ、何かの形で残しておきたかったんだ。あいつらの姿を…」
「そっか」
オリオンはミーシャと並んで、懐かしそうにその石像を見つめた。
それは、遊戯たち三人の姿をしていた―――それに向けて、三人は自分たちの想いを込める。
遠い遠い未来で、いつの日か、見つけてくれた時のために―――
「きれい…」
「イサドラは、夕焼けが好きかい?」
「うん、とってもすてき!」
「そうか」
エレフは、微笑む。
「それはよかったな」
「おじさまも、好きでしょ?」
「ああ…」
少しだけ言葉に詰まり、けれど答えた。
「夕焼けは、綺麗だから好きだ」
その時だった。
「おーい、エレフ!おせーぞ!」
「イサドラも何処をほっつき歩いてたの、もう!お母さんの鉄拳が火を噴くわよ!」
丘の麓で、二人が声を張り上げる。
オリオンとミーシャ―――笑えるくらいに、あの頃と変わっていない。
変った所といえば夫婦になって、子供…イサドラが生まれた事くらいだ。
「ごめんなさーい…」
「ったくもう。子供一人で出歩いてたら、危ねーだろ。心配かけさせんなよ」
叱りながらも、オリオンとミーシャは優しく笑っていた。
それはただ、ありふれた、ごく普通の家族の姿。
「じゃ、全員揃った所で、行くか」
「え、どこいくの?」
「そうか。イサドラは、ここに来るのは初めてだったな」
「うん」
「そうだったか…いいモノがあるからな、驚くなよ?」
不思議そうに首を傾げるイサドラに、オリオンはそう答える。
「ねえねえ、いいモノって何なの?おいしいもの?」
「がっつくな。食いモンじゃねーよ」
「着いてからのお楽しみよ」
いいモノと聞いて目を輝かせるイサドラを軽くかわしつつ、四人は丘を登っていく。
「ねー、おじさまー。まだかなー?」
「もうすぐだ…ほら。あれを見なさい」
「ん…?」
夕陽に照らされた、丘の頂上。
そこには、三体の石像があった。精巧に彫られたそれは、まるで今にも動き出しそうな程だ。
「わあー…すっごーい!」
「だろう?私が彫ったんだぞ、これは」
「おじさまが!?ふわー、すごいすごい!おじさま、てんさいー!」
「あんま褒めるな、イサドラ。このバカはすぐに調子に乗るからな…いてっ!」
軽口を叩くオリオンの脳天にチョップをお見舞いした。
「何すんだ、バカ!」
「うるさい、大バカめ!」
「ケンカはやめなさい、二大バカ!」
ミーシャのダブルパンチが二人の鳩尾に炸裂し、悶絶させる。そしてここに序列が決定。
ミーシャ>>>>>(越えられない壁)>>>>>野郎二人
それはともかく。
「このおにいちゃんたち、かっこいいね」
石像の精悍な姿に、イサドラはただ見惚れていた。それを見守りながら、オリオンは答える。
「そりゃそうさ。何しろ、神様さえぶっ飛ばした奴らだからな」
そして、エレフに目を向けた。
「しかし、今更だけどさ…お前、何だってこんなモン作ろうと思ったんだ?」
「大した理由じゃないさ」
エレフは、夕焼け空に向けて目を細める。
「ただ、何かの形で残しておきたかったんだ。あいつらの姿を…」
「そっか」
オリオンはミーシャと並んで、懐かしそうにその石像を見つめた。
それは、遊戯たち三人の姿をしていた―――それに向けて、三人は自分たちの想いを込める。
遠い遠い未来で、いつの日か、見つけてくれた時のために―――
(…やっと、来てくれたね。待ってたんだよ)
(また会えて嬉しいわ、遊戯。城之内。それに海馬も…)
(よう、お前ら。ひっさしぶりだなあ。まさか俺たちのこと、忘れちゃったりしてねーよな?)
(また会えて嬉しいわ、遊戯。城之内。それに海馬も…)
(よう、お前ら。ひっさしぶりだなあ。まさか俺たちのこと、忘れちゃったりしてねーよな?)
<幻想音楽を奏でる吟遊詩人>が紡ぐ、無限にして夢幻の地平(セカイ)。
其の第六の地平線を統べる運命の女神<Moira(ミラ)>。その姿を見たものは未だ誰もいない―――
其の第六の地平線を統べる運命の女神<Moira(ミラ)>。その姿を見たものは未だ誰もいない―――
―――遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~・完―――