SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 遊☆戯☆王  ~超古代決闘神話~   終章1「帰るべき場所へ」


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あの<冥王タナトス>との闘いからしばし時は流れ―――レスボス島。
星女神の神殿。
その中庭では、この世界を去り往く遊戯達に最後の別れを告げんと、多くの者達が集まっていた。
「ふふ。これだけの面々が一斉にこの神殿に集まるなんて、もうないでしょうね」
<詩を詠む聖女>ソフィアは、相変わらず大人の微笑みを浮かべていた。
そして彼女は、ミーシャの頬にそっと手を添える。
「ミーシャ…今のあなたを見れば分かるわ。本当に、強くなったわね」
「ソフィア様。私だけでは、この時を迎えることなんて出来ませんでした」
ミーシャは静かに語った。
「素晴らしい仲間達が―――友達が、いてくれたからです」
「そうね…」
二人は、遊戯達を見る。彼等は集まってくれた皆と共に、最後の時を過ごしていた。
「あなたも行ってきなさい、ミーシャ。私となら、いつでも話せるでしょう?」
「はい、ソフィア様」
ミーシャは人だかりの中に駆け寄り、自らもその一員となった。
「お、ミーシャか。ソフィア先生と何を話してたんだ?」
「ふふ、女同士の会話を探るものじゃないわよ」
「ちぇっ、ケチ。それにしても…とうとう、この世界ともお別れか…」
城之内が名残惜しげにつぶやく。
「うん…やっと元の時代に戻れるのは嬉しいけど、オリオン達とお別れって事だもんね」
遊戯もそんな事を言うと、オリオンは眉根を寄せて詰め寄った。
「なあ…お前ら。ほんとに行っちまうのか?」
「あ?そりゃそーだろ。未練はあるけど、もうこの世界でオレ達がやれることは全部やっちまったからな」
「それに、元の時代で待っていてくれる皆がいるから」
「フン…オレがいなくては海馬コーポレーションも成り立たんからな」
遊戯達は、名残惜しそうなオリオンにそう答えた。
「そっか…やっぱそうだよな」
「オリオン様。無理を言ってはなりません」
横からミーシャと同じく星女神の巫女が一人、フィリスが口を挟む。
「彼等は天界の住人…俗世での使命を終えられた以上、これ以上人間の世界に引き留めてはなりません。我々は
その御姿を、ただ小さき心の内に残しておきましょう…」
多分、今の彼女の脳内では、徐々に奇妙な感じになった遊戯達が決め顔で親指を立てつつ天に昇っているのだろう。
それでいいのだ。彼女はそれで幸せなのである。
「この人、まだボクらのことを勘違いしてたんだ…」
「いいんじゃないか?このまま神様で。少なくとも…我々にとってお前達は、神以上の事をしてくれた」
エレフはそう言って、深々と頭を下げた。
「みんな―――ありがとう。お前達に会えなければ、私達はきっと見るに堪えないくらい酷いことになっていた」
「フン…思えば、貴様には世話ばかり焼かされたものだ」
海馬は憎まれ口を叩くが、その横顔は少しだけ―――ほんの少しだけ、寂しげだった。
エレフは海馬に、右手を差し出す。海馬は迷ったものの、その手を握り返した。
「さよなら…遥か遠き時代を生きる友よ」
「…フン」
オリオンはそれを横目に、ミーシャと顔を見合わせて、お互いに少し悲しそうに笑う。
「まあ…仕方ねえか。けどお前ら。俺というハンサムガイがいた歴史的事実を、あっちに戻っても語り継げよな」
「私というキュートガールがいた神話的事実も、覚えていてね」
「ガールって年じゃねえだろ…いてぇっ!」
ミーシャの鉄拳が火を噴き、城之内の顔面を陥没させた。某ガキ大将クラスの破壊力である。
「全く、最後の一時だというのに賑やかだな」
レオンティウスは呆れたように言いつつ、顔は和やかに笑っていた。
「しかし、それもまた彼等の強さなのでしょう」
彼の傍に付き従うカストルは、今さらながらに感嘆していた。
「その力こそが、強大なる冥王すらも撃ち破った―――そう思えて、なりませぬ」
「そうだな…さて。私も挨拶を済ませてこようか」
そしてレオンティウスは、遊戯達三人の肩を優しく叩いた。
「遊戯、城之内、そして海馬…キミ達に言っておきたい事があるんだ。聞いてくれるか?」
「何だよ、改まって」
彼は、三人の顔をじっと見つめて。
「わ、私は…キミ達の事を、す、す…」
「す?」
「す…」
そして、ぐっと唇を噛んだ。
「す…素晴らしい友だと思っているぞ!」
空気を読んでちょっと妥協した。ノーマルな友人達に対して、アブノーマルな男のせめてもの気遣いであった。
対して城之内と遊戯はニコリと笑って、握手を求めた。
「ああ。最高の男だったぜ、アンタ!」
「かっこよかったよ、レオンさん!」
「そ、そうか…そう言ってもらえると、嬉しい」
レオンティウスは顔を赤くし、右手で城之内の手を、左手で遊戯の手を握った。
「おい、海馬。お前も握手くらいしろよ?」
「誰がやるか…その男からは、危険な匂いがするからな!」
「…それは否定しねえけど、気のせいだって…多分」
城之内も自信なさ気である。
「ふふん。しかしまあ、相変わらず面白いなあ、お前達は」
そこに割り込んできたのは<女傑部隊の女王>アレクサンドラだ。
「アンタか…正直、顔を合わせずに帰りたかったぜ」
城之内はゲンナリしていたが、勿論アレクサンドラは気にしちゃいない。
「露骨に嫌そうな顔をしおって、可愛い奴め。本当は麗しのお姉様に構ってもらえて嬉しいくせに。お前の本音など
私には分かっているのだぞ?」
「ほー。一応訊こうか?」
訊きたくねえけど。どうせロクでもない答えしか返らないし。空気読まないだろうし。
「<この女、頼んだら童貞捨てさせてくれるんじゃねえかなあ>」
「ロクでもなさすぎるし空気のくの字も読んでねえ!アンタの中でオレはどういうキャラなんだよ!」
「え…違うのか?」
「何で意外そうな顔を!?マジでオレがそんな事を考えてると思ってたのかよ!」
「…本気で嫌なのか…残念だ」
アレクサンドラは、溜息と共に言った。
「お前は嫌がってる振りして私を誘ってるのだとばかり思ってたんだが」
「ポジティブシンキングにも程があるわ!」
「じゃ、じゃあ乳ぐらいは記念に揉んでいかないか?いや、揉んでください、お願いします!」
「キャラを変えるくらい揉まれたいのか!?何がアンタをそこまでさせる!?」
「いや、これで帰るんなら童貞を頂いておかないと勿体無い気がして。それもダメなら乳くらい揉ませようかと」
「ぶっちゃけられたー!」
そのやり取りをみていた遊戯は、クスクスと笑う。
「二人とも、ホントに仲がいいね」
「ゆ…遊戯ー!お前までオレを裏切るのかー!?」
「いや、だって」
遊戯は、城之内の顔を指差す。
「結構楽しそうだもん、城之内くん」
「む…」
確かに、話自体は非常に楽しいかもしれない。
「こほん…まあ、私も少々冗談がすぎたのは謝ろう」
「冗談に聴こえなかったぜ…」
「まあそういうな…乳を揉む揉まないはともかく」
アレクサンドラは、二人に向けてそっと両手を伸ばした。
「握手くらいは、していってもいいだろう?」
「…へっ。そうだな」
「うん!」
そして差し出しされた二人の手。アレクサンドラはにやりと口の端を吊り上げ、その手首を掴み―――
自分の胸に、押し当てた。
「うっ…」
「わっ…」
素晴らしい柔軟性と弾力に、頭がクラクラしそうだった。十秒ほど経過して、ようやく彼女は手首を離した。
「どうだ?記念に揉んでいってよかっただろう?」
そして、スカっと爽やかな笑顔で決めた。
「「…コクリ」」
二人とも、思わず首を縦に振っていた。だってしょうがないじゃない、男の子なんだもの。
「この際だから童貞を捨てていってもいいかと思っただろう?」
「いえ」
「遠慮します」
そこは譲れない一線だった。お子様も読んでるだろうしね!
「ちっ…下らん事ばかりしおって。もう下らんおしゃべりは済ませただろう。早くせんと置いていくぞ!」
「わ、分かってるよ!」
「今行くってば!」
本当に置いていきそうな剣幕の海馬に対し、慌てて駆け出していく二人。そして三人は、清らかな泉の畔に立った。
「星女神<アストラ>―――」
遊戯は天を仰ぎ、静かに、されど力強く語りかける。
「ボク達は、この世界でやれるべきことはやり終えた。全てが上手くいったとは言えないけれど…だけど、精一杯に
闘い抜いたよ」
「そうだな。我ながら、ここまでよくやってこれたもんだと思うぜ」
城之内もそれに続く。
「フン…出番を終えた役者がいつまでも舞台に居座ることほど見苦しいものはないからな。古代妄想ツアーもここら
で幕引きとさせてもらおうか」
海馬は彼らしい憎まれ口だが、その横顔には、僅かながらの哀愁があった。

『神話を生きる者達―――そして、遠き明日を生きる者達よ』

天から、慈愛に満ちた女性の声が響いてくる。
「星女神…アストラ」
『あなた達は、この神話の時代を全力で駆け抜けた。時に迷い、傷つき、失いながら―――それでも誰一人も諦める
事無く、残酷な運命にそれぞれが向き合った。その結果が善であれ、悪であれ―――偽りなど、ありません』
星女神は、その姿を見せることはなかった。けれど、彼女はきっと微笑んでいる。
『遊戯…城之内…海馬…あなた達がこの世界から去っても、あなた達が関わった者達の心に、あなた達は色褪せる
事なく、存在し続けるでしょう。だから―――あなた達も、我々の事を、どうか末永く覚えておいてくださいね』
「忘れねえよ!ぜってぇ、忘れるもんか…!」
城之内は、今まで堪えていた涙を乱暴に拭いながら叫んだ。
「ボクも、忘れたりしない!皆…ボクらの、大事な友達だ!」
遊戯は溢れる涙をそのままに、神話の時代の仲間達に向き直って笑いかけた。
「フン…精々、バカバカしい世界にバカバカしい奴等がいたとだけ、覚えておいてやるさ」
最後まで素直ではない海馬だった。
そんな三人を見つめる<神話を生きた者達>は、一様に笑っていた。
最後は笑顔で、見送ってあげたかったから。
だから、本当は泣きそうだったけど、心から笑った。
その時だった。遊戯達の身体が、眩い光に包まれたのだ。
それはあたかも、この時代に飛ばされてしまった、あの時と同じように―――
その光の中で、遊戯は皆に精一杯手を振った。
直後に闇遊戯に入れ替わり、彼はニヤリと笑って別れの挨拶とした。
城之内は盛大に泣きながら、仲間達の名を呼んでいた。
海馬は口の端に少しだけ笑みを浮かべ、人差し指と中指を揃えて立てた。
そして光は太陽の如くに一際強く輝き―――
まるで、何事もなかったかのように消えた。
最初から、何も存在していなかったかのように、何もなかった。
「だけど…確かに、いた」
「ああ。いたよ」
エレフの言葉に、オリオンが続いた。
「あいつらは…此処に、いたんだ」
「そして今もまだ、いるわ」
ミーシャは己の胸に手を当てる。
「私達の心に…いつまでも」


―――そして、夕暮れ。
海を望む丘の上でエレフは一人佇み、沈みゆく太陽を見つめていた。
「エレフ」
声をかけられて振り向くと、そこにはミーシャがいた。
「隣、いい?」
「悪いわけがないだろう」
ミーシャは嬉しそうに笑って、エレフの隣に立った。
「皆は、帰っていったか」
「ええ…ただ、フィリスが」
ミーシャがちょっと頬をひくつかせる。
「五体投地したまま、動こうとしないの。なんていうか、次の太陽が昇るまで、神子様に感謝の祈りを捧げるとか…」
「そ…そうか」
それ以上の追及はしなかった。なんかもう、詳しく訊いたら色々ヤバすぎると思えたのだ。
「…綺麗な夕焼けね」
「キミの方が綺麗だよ」
「それは恋人に対して言いなさいよ」
「生憎、そんな女がいない」
「じゃあフィリスかアレクサンドラ様を紹介してあげる」
「勘弁してください」
二人でこんなバカな会話が出来る事が、何よりも嬉しかった。
二人が望んでいたものは、こんなに平凡で―――こんなに、素晴らしかった。
残酷な運命に翻弄され続けた双子は、今はただ二人寄り添い、海に沈んでいく太陽を静かに見つめていた。
「夕焼けは…正直、嫌いだ」
エレフは、誰にともなく呟いた。
「あの幼き日…父と母を失った事を、思い出してしまう」
「エレフ…」
「けれど、ミーシャ」
ミーシャに向けたその顔は、悲しげに、だけど少しだけ笑っていた。
「今の夕焼けは…お前の言う通り、綺麗だと思えるんだ」
「そっか」
ミーシャは、優しく微笑む。
「じゃあいつか、好きになれるといいね」
「ああ。いつか…心から幸せだと、そう思えたなら―――きっと、もっと綺麗に見えるだろう」


―――この罪深き身に、そんな日々が果たして訪れるのか。
それでも、信じてみよう。
いつか―――穏やかに笑える日が来る事を。
この命、ある限り―――ただ、懸命に生きていこう。
遠い世界からやって来て、そして帰っていった彼等のように。

それは、小さな身体に無限の勇気を秘めた少年のように。
それは、どこまでも折れない不屈の心を持った凡骨のように。
それは、誰よりも強く何よりも気高き皇帝のように。

(しあわせにおなりなさい)

母が遺した11文字の伝言を、叶えられるように―――