SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ 【番外編 のび太のホーリーランド】(カイカイさま)


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野々宮拓馬。光臨館初段のリーゼント頭、のび太と同級(タメ)の16歳だ。
「学校の裏山で居なくなったカヨ、お前は何か知っているはずだ」。
のび太に投げかける言葉。カヨは野々宮が光臨館に入る前、美沙に逢う前に好きだった女の子。
「ケンカするつもりはないよ。逃げるつもりもない。だけど、これじゃ不公平だ」。

のび太と野々宮は、練馬区内の駅構内地下街にあるアミューズメントセンターの一角にいる。
隣はパチンコだしゲームコーナーは室内が暗い。筺体がキャラクターたちの狂態を映し出す画面の発光だけが、灯り。
野々宮はイスにも腰掛けず、高校の友達の遊ぶ様を横から見ていたのび太を見下ろし話しかけた。
そして、相手が野比のび太なのを確かめるといきなり本題に入った。
なにせ室内は音が凄まじいから、のび太の友達でさえのび太の知り合いが来てるぐらいにしか思っていない。

「どう不公平なんだ」。野々宮が少しドスの効いた声を出す。漸く、のび太の友達がギョッとし始める。
だが野々宮の疑問は尤もだ。のび太は、既に銃使いとして通学圏内の高校生たちに知られている。
のび太の通う学校でも、のび太への呼び出しや個別の持ち物検査が行われたこともある。
だから本日、のび太はガスガンを持って来てないことを野々宮に伝えるまで一苦労を要した。
そのうえで、野々宮が筺体を隔てた向こう側に行き定額契約の携帯電話のチャットで話し合うことが決った。

「ノノ>こちら、ノノミヤ。」
野々宮のハンドルネームに、軽く噴出してしまうクラスメート。無駄に萌え易いネーミングだ。
慌てて筺体の向こう側を見るが、野々宮はなぜか半笑いだ。
のび太は初対面からの何だろうという感じを崩さず普通に返信する。「Vitter>カヨさんて誰ですか?」
「ノノ>小さいとき、お前らの校区に住んでた女子だ。」「ノノ>裏山は遊び場だった。」
「Vitter>いなくなった、とは?嫌な感じがするけど」「ノノ>話を合わせられても困る。当時の新聞記事もあるけど」
「ノノ>カヨがいなくなった日の、裏山の天気。空模様というか。何か憶えは無いか?」
クラスメートたちは、野々宮は頭がおかしいのかと訝り始める。だが、のび太は野々宮が何を伝えようとしてるのかわかった。
しばし、どうすべきか考える。野々宮は、さきほどの体の向きからして何らかの打撃技を使う。
中学に上がる前、--龍書文のは速すぎて全然見えなかったが--黒川がやってた技のおかげで打撃技には造詣のあるのび太。
野々宮の格闘技術は未知数だが、何か習ってるドキュソ風の奴が業を煮やして何かしてきたら厄介だ。

「Vitter>覚えがある。だが、今それを掘り起こすべきではない。」
「ノノ>わけを、おしえてくれ」「ノノ>だってお前ら」2行目の送信、野々宮が勇み足してしまう。
同時に、「Vitter>カヨさんの新聞記事を持って裏山に来てくれるか。」のび太が返信を滑らせてしまう。
そこから「ノノ>2時間でいける。」は4秒しか間が空かなかった。
のび太が顔を上げて何か言おうとしたが、目の合った野々宮は黙って頷くと電話を畳んで踵を返した。

のび太とドラえもんは、のび太が更生し終えてからも度々会っている。
人の自発的な更生には生憎というか幸いというか、完璧や確実は無いからセワシがドラえもんとのパイプを確保してくれているのだ。
セワシは、22世紀人特有のメタ認識で実家の豊かさや空気がみるみる変わっていくのを感じていた。
それと同時に、“新しい”生活にどことなく寂しさをも感じ始めてもいたのだ。ジャイ子の入所先へ寄り道する日も増えた。

ドラ焼きを齧りながら、ドラえもんは電話に出る。その回線に出るときは、いちいちタイムマシンの座席まで出ねばならないが。
「ククルのこと、憶えてるよね。あのときの裏山で、女の子が一人いなくなってるらしいんだ」。
「そうか、ちょっと待って…」。「データがあったよのび太くん」。その間、2秒。のび太の傍らで、コクピットモニターに画が燈る。
次に出たドラえもんは、『壁紙式の』収納スペースから無線のリピート装置を出してきてセワシたちと一緒に
炬燵で団欒しながら通話してきた。どうやら、22世紀では数時間程度が過ぎていたようだ。

「航事局情報公開受付の検索システムを使った。史料を見てくれ」。
亜光速の周期で明滅する画面の中でドラたちのリビングのシーンが、電子書籍のような物の表紙に変わる。
「いいかい、のび太くん」。それで始まるドラのナビと史料で、以下のことがわかった。
残念ながら、女の子はまだ裏山にいる。のび太が交信してる時刻から約2年後の2008年、自称霊能者のサバイバルゲーマーによって発見される。
20世紀からドラえもんの交信時刻まで、ククルが来たときの空模様は報道されていない。同じく、カヨの仇についても続報なし。
そして、のび太は近況と野々宮の出現をドラに伝える。
「まずいぞ、のび太くん。居住権にまつわる地球の新しい人権のうち『史上いつの日も存在する権利』には、当然義務も伴うんだよね」。
「『戦国自衛隊』作品群(これに着想を得た全く別の作品たちのこと)ファンのギガゾーは論外だけど」。
「僕ら市民もね、未来に関する『決定的な』情報を知的生物に伝えたり記録に残したりしたらやばいんだ」。
「逆に、記憶野やメモリへのエディトリアルな干渉もやばい。思想信条に関るところは、不可侵の聖域なんだ」。
「だから、僕もそっちへ行くときは目撃者に違和感を覚えさせない電磁波…じゃなくて不可視光線を出してるんだよ」。
「いちばんヤバイなのは、人のイキシニに関る事象だな。生かした場合でも、歴史破壊になる」。
「歴史破壊は、自然人(知的生物)もロボットも無しに官民問わずどこの組織も飛びついてくるよ。憲法が根拠法規みたいなもんだな」。
「おおもとの憲法ではプログラム規定じゃないから、ひとたび世界政府…じゃなくて国連の末端運営機関が動いたら最後だと思っていい」。
「ああ、最後といってもそんなに気にしなくていいよ。ただ、とっても寂しくなるよ」。

のび太はしばらく、Ikishinyって何の単語なのか後で聞こうと思ってた。
だが今ののび太は、帝愛の時間貯金箱を使って初めて本当に奮起した頃を思い出していた。
あのときと同じ、親友との時間を守る戦い。
「何かあったら報せるよ。よかったら、見ててくれると嬉しいな」。
そう言って抽斗から畳へと下りるのび太。タイムテレビの存在や、子守ロボットの見守り。
自身が、いつの間にか「逃げ」のベクトルを持ち始めていることに気付いて少し恐れを抱く。
そんなのび太を、昨今の廉価で安定したラジコンヘリの搭載する盗撮用無線カメラで見る者があった。
のび太が入れようはずも無い抽斗から、のび太が出てくるところを見た彼は、それを恐れもせずニヤリと笑った。

「ダメだなぁ、のび太は」。そんな光景を、こんなにも原始的な装置で観て笑ってられる人間は限られてる。
「けど、僕のフェンシングは一人用なんだ。悪いな」。彼は大きくなって、スペアポケットに昔とは違う価値を見い出していた。