『助けて……お兄ちゃああああああああああん!!!!!!!!!』
「はぁ!!!ふぅ………」
朝五時、まだ陽も完全には昇らず、薄暗い中にある一筋の光が阿久津の部屋に入る。
寝不足なのだろうか、眼の下にうっすらと隅が出来、ふらついた足取りで部屋を出る。
しかし彼の中に未だに燃え続ける『復讐』という名の炎は燻ぶることを知らない。
彼は今、月五万のアパートに、かつて存在していた兄弟達の幻を見ながら一人で暮らしている。
前に住んでいた阿久津家には住まず、父母はせめてもの援助にと学費を出している。
今日も一人、阿久津薫は瞳の奥にかつての幸福な思い出をを押し込め、物悲しい表情で家を出る。
「ふぁああ……」
所変わって吉祥学苑、屋上に住んでいる鬼塚は昨日の事を思い返していた。
阿久津淳也の弟、薫。彼が一瞬の内に見せた背中の刺青、一面に色濃く描かれていた漆黒の天使……
しかしそれ以上に彼が気になったことは、彼の『眼』だった。
「あの眼、何回か、見たことがある……」
急に鬼塚を襲う言い知れぬ不安、そしてその不安を消し去るかのようにドアを開けた人物が一人。
「鬼塚先生~~~!!!!!生徒と殴り合いのケンカをするとは~…」
「ゲッきっ教頭!!!」
「もう我慢ならん!!!ワンダーフォーゲル部本主将の私が、シデムシに鉄槌をくらわせてれるわ~!!!!!」
二人が早朝から毎朝懲りずに鬼ごっこをして一時間もすれば生徒達も登校し始める。
こうしていつもよりもデンジャラスな一日が始まる。
「マジで鬼塚の奴、阿久津に因縁吹っ掛けられたな。」
「アイツ、一度キレたら何するかわからないのよね。手加減ってものを知らないし。」
いささか現状に不安を抱いている菊池と神埼。特に神埼は小等部の頃から阿久津を知っている事が、
その不安を多く募らせる。
「あれ~どうしたのかな?2人とも。」
後ろから相沢雅が2人に声を掛ける。
「あ!そういえばあんた達、鬼塚の仲間になったんだっけ?それじゃ不安よね~
阿久津だったら鬼塚追放なんて、簡単に出来そうだしね。」
余裕たっぷりといった様子で菊池に顔を近付ける。
「あら~、人の手借りなきゃ教師一人追放出来ないの雅?これだからお嬢様は…」
神埼が若干声を大きくして挑発めいた言動を発する。
「フン、そんな事を言っていられるのも今のうちよ。」
相沢は一足先に学苑へ入っていく。
『そうよ、今度こそ鬼塚を追放しなきゃ、この学園から!!!』
瞳をギラつかせる相沢、その瞳に映るものは教師への復讐か、それとも………
生徒が教室に入り、鬼塚も教室に入ろうとすると目の前に阿久津が立っていた。
すっと後ろに下がる鬼塚、しかし阿久津は鬼塚の顔を見ても笑ったままだった。
「昨日はすみませんでした、鬼塚先生。まさかあんなことになるなんて思わなくて。」
眼前で頭を下げられ、困惑しそうになった鬼塚だった。
「お前、あれだけの事しといて笑ってんじゃねえよ。それに、ポーカーフェイスだろ?そのツラァ。」
鬼塚の眼の先には、バタフライナイフを掴んだ阿久津の右腕が映っていた。
「嘘が下手だなテメー!!」
阿久津の手を掴みあげる鬼塚、しかし阿久津はなおも笑っている。
「すみませんね。相対性理論の本を入れてるポケットと間違えちゃったみたいでね。」
見え透いた嘘と馬鹿でも分かる。しかし常に余裕を持った態度であること、そして『例の眼』が脅威的だった。
「なんだあ?お前も頭良いような奴か?全くこいつにしろ神埼にし………」
直後、鬼塚の後頭部を何者かが殴りつける。
「これでいいんスよね。」
気づけば教室の前には大勢の人間が集まっていた。
「せ、先生~!!!」
村井、藤吉、草野が急いで鬼塚の元に駆け寄る。
「あっ阿久津、らしくねえ真似してくれるじゃねえか。」
阿久津は先程までの様に笑みをこぼしてはいない。冷たい視線で、鬼塚を見下している。
「さーって、先生には死んで貰わねえとな。あんた殺せば、活きのいい女と強姦せてくれるっていうしよお!!」
「あ、あんた等、高等部の鬼畜クラブじゃ……」
「う、嘘…………」
普段、吉学名物の調教活動と銘打って女生徒を強姦している高等部のグループ、鬼畜クラブ。
その為中等部の女子には特に恐れられているグループでもあった。
「つまりテメーが俺を殺すために女子共をコイツ等に売ったんだろ?阿久津よぉ!!!」
「そうだと言ったら?どうするんですか?先生。」
鬼塚に顔を近付ける阿久津。
「お前は後でぶっ殺してやるが……」
鬼塚の拳が鬼畜クラブの一人に飛ぶ。
「ぐがぁ!!は、鼻がァ…」
「先にお前らから片付けてやらねえとな。」
「まとめてかかって来いよぉ!!!」
一気に2人の人間を殴り飛ばす鬼塚、鬼畜クラブも少し後ずさっていく。
「カーーっぺ、コイツは俺が殺してやるよ、この駄々島様のバタフライ拳でなぁ!!」
両手にバタフライナイフを仕込んで鬼塚に殴りかかる。
「ククククク、死ねやサルがあ!!」
しかし、いくら飛び込んだ所で鬼塚に勝てるわけもなく。カウンター気味に入ったボディで悶絶した。
「悪いなあ、テメエ等みてーな奴も嫌いじゃねえけどよ、いつまでも遊んでるわけにいかねえだろ。
なあ、阿久津よお。」
煙草に火を付けながら鬼塚は阿久津を見やる。しかし阿久津は表情を変えない。
「すました顔してねえでよ、昨日の決着付けようぜ阿久津ぅ。」
すると阿久津は鬼塚の後頭部を小突く。
「ぐあっ!!」
「阿久津!!テメエエエエ!!!!!」
村井が阿久津を殴る。しかし阿久津にダメージはない。
「あ?まさかテメエ等全員先公の肩持つのか!?こんなヤンキー教師のよぉ。
率先して教師イジメやってた奴らがどういう風の吹きまわしだ?」
阿久津はさらに鬼塚の脇腹を蹴る。と、後ろから阿久津の股間を蹴りあげる者がいた。
「はうっ!!!!」
「こうでもしないと、アンタ止まらないでしょ。」
「か、神埼!!この野郎~~。」
村井は改めて神埼を敵に回すべきではないと悟った。
「はぁ!!!ふぅ………」
朝五時、まだ陽も完全には昇らず、薄暗い中にある一筋の光が阿久津の部屋に入る。
寝不足なのだろうか、眼の下にうっすらと隅が出来、ふらついた足取りで部屋を出る。
しかし彼の中に未だに燃え続ける『復讐』という名の炎は燻ぶることを知らない。
彼は今、月五万のアパートに、かつて存在していた兄弟達の幻を見ながら一人で暮らしている。
前に住んでいた阿久津家には住まず、父母はせめてもの援助にと学費を出している。
今日も一人、阿久津薫は瞳の奥にかつての幸福な思い出をを押し込め、物悲しい表情で家を出る。
「ふぁああ……」
所変わって吉祥学苑、屋上に住んでいる鬼塚は昨日の事を思い返していた。
阿久津淳也の弟、薫。彼が一瞬の内に見せた背中の刺青、一面に色濃く描かれていた漆黒の天使……
しかしそれ以上に彼が気になったことは、彼の『眼』だった。
「あの眼、何回か、見たことがある……」
急に鬼塚を襲う言い知れぬ不安、そしてその不安を消し去るかのようにドアを開けた人物が一人。
「鬼塚先生~~~!!!!!生徒と殴り合いのケンカをするとは~…」
「ゲッきっ教頭!!!」
「もう我慢ならん!!!ワンダーフォーゲル部本主将の私が、シデムシに鉄槌をくらわせてれるわ~!!!!!」
二人が早朝から毎朝懲りずに鬼ごっこをして一時間もすれば生徒達も登校し始める。
こうしていつもよりもデンジャラスな一日が始まる。
「マジで鬼塚の奴、阿久津に因縁吹っ掛けられたな。」
「アイツ、一度キレたら何するかわからないのよね。手加減ってものを知らないし。」
いささか現状に不安を抱いている菊池と神埼。特に神埼は小等部の頃から阿久津を知っている事が、
その不安を多く募らせる。
「あれ~どうしたのかな?2人とも。」
後ろから相沢雅が2人に声を掛ける。
「あ!そういえばあんた達、鬼塚の仲間になったんだっけ?それじゃ不安よね~
阿久津だったら鬼塚追放なんて、簡単に出来そうだしね。」
余裕たっぷりといった様子で菊池に顔を近付ける。
「あら~、人の手借りなきゃ教師一人追放出来ないの雅?これだからお嬢様は…」
神埼が若干声を大きくして挑発めいた言動を発する。
「フン、そんな事を言っていられるのも今のうちよ。」
相沢は一足先に学苑へ入っていく。
『そうよ、今度こそ鬼塚を追放しなきゃ、この学園から!!!』
瞳をギラつかせる相沢、その瞳に映るものは教師への復讐か、それとも………
生徒が教室に入り、鬼塚も教室に入ろうとすると目の前に阿久津が立っていた。
すっと後ろに下がる鬼塚、しかし阿久津は鬼塚の顔を見ても笑ったままだった。
「昨日はすみませんでした、鬼塚先生。まさかあんなことになるなんて思わなくて。」
眼前で頭を下げられ、困惑しそうになった鬼塚だった。
「お前、あれだけの事しといて笑ってんじゃねえよ。それに、ポーカーフェイスだろ?そのツラァ。」
鬼塚の眼の先には、バタフライナイフを掴んだ阿久津の右腕が映っていた。
「嘘が下手だなテメー!!」
阿久津の手を掴みあげる鬼塚、しかし阿久津はなおも笑っている。
「すみませんね。相対性理論の本を入れてるポケットと間違えちゃったみたいでね。」
見え透いた嘘と馬鹿でも分かる。しかし常に余裕を持った態度であること、そして『例の眼』が脅威的だった。
「なんだあ?お前も頭良いような奴か?全くこいつにしろ神埼にし………」
直後、鬼塚の後頭部を何者かが殴りつける。
「これでいいんスよね。」
気づけば教室の前には大勢の人間が集まっていた。
「せ、先生~!!!」
村井、藤吉、草野が急いで鬼塚の元に駆け寄る。
「あっ阿久津、らしくねえ真似してくれるじゃねえか。」
阿久津は先程までの様に笑みをこぼしてはいない。冷たい視線で、鬼塚を見下している。
「さーって、先生には死んで貰わねえとな。あんた殺せば、活きのいい女と強姦せてくれるっていうしよお!!」
「あ、あんた等、高等部の鬼畜クラブじゃ……」
「う、嘘…………」
普段、吉学名物の調教活動と銘打って女生徒を強姦している高等部のグループ、鬼畜クラブ。
その為中等部の女子には特に恐れられているグループでもあった。
「つまりテメーが俺を殺すために女子共をコイツ等に売ったんだろ?阿久津よぉ!!!」
「そうだと言ったら?どうするんですか?先生。」
鬼塚に顔を近付ける阿久津。
「お前は後でぶっ殺してやるが……」
鬼塚の拳が鬼畜クラブの一人に飛ぶ。
「ぐがぁ!!は、鼻がァ…」
「先にお前らから片付けてやらねえとな。」
「まとめてかかって来いよぉ!!!」
一気に2人の人間を殴り飛ばす鬼塚、鬼畜クラブも少し後ずさっていく。
「カーーっぺ、コイツは俺が殺してやるよ、この駄々島様のバタフライ拳でなぁ!!」
両手にバタフライナイフを仕込んで鬼塚に殴りかかる。
「ククククク、死ねやサルがあ!!」
しかし、いくら飛び込んだ所で鬼塚に勝てるわけもなく。カウンター気味に入ったボディで悶絶した。
「悪いなあ、テメエ等みてーな奴も嫌いじゃねえけどよ、いつまでも遊んでるわけにいかねえだろ。
なあ、阿久津よお。」
煙草に火を付けながら鬼塚は阿久津を見やる。しかし阿久津は表情を変えない。
「すました顔してねえでよ、昨日の決着付けようぜ阿久津ぅ。」
すると阿久津は鬼塚の後頭部を小突く。
「ぐあっ!!」
「阿久津!!テメエエエエ!!!!!」
村井が阿久津を殴る。しかし阿久津にダメージはない。
「あ?まさかテメエ等全員先公の肩持つのか!?こんなヤンキー教師のよぉ。
率先して教師イジメやってた奴らがどういう風の吹きまわしだ?」
阿久津はさらに鬼塚の脇腹を蹴る。と、後ろから阿久津の股間を蹴りあげる者がいた。
「はうっ!!!!」
「こうでもしないと、アンタ止まらないでしょ。」
「か、神埼!!この野郎~~。」
村井は改めて神埼を敵に回すべきではないと悟った。