仮○ライ○ーとかが闘っていそうな、人里離れた岩山。そこは地獄と化していた。
辺り一面に散らばる残骸―――<アームスレイブ>と呼ばれる巨大人型兵器のなれの果て・およそ十機分―――と、
半死半生で地を舐める無数のヒーロー。
その中心で、一人の男が嘲笑する。
「ハッ…地上の兵器やらヒーローってのは、こんなにも脆いのかよ。これじゃはるばる魔界から来た甲斐がねえな」
銀色に輝く、傷一つない超金属のボディ。精悍な顔には己の力に対する揺るぎない自信が溢れている。
「これでこの辺りのヒーローやら正義の組織はあらかた潰したな…さて」
そして、奴の次なる目的は―――
「今度は川崎…天体戦士サンレッドの首を貰うぜ」
「う…うう…」
倒れ伏すヒーローの中の一人が、呻きながら顔を上げた。
「お…お前は一体…何者なんだ…」
その問い掛けに対し、男は不敵に笑った。
「オレの名はヒム―――やがては世界を征服する男だ。覚えときな」
辺り一面に散らばる残骸―――<アームスレイブ>と呼ばれる巨大人型兵器のなれの果て・およそ十機分―――と、
半死半生で地を舐める無数のヒーロー。
その中心で、一人の男が嘲笑する。
「ハッ…地上の兵器やらヒーローってのは、こんなにも脆いのかよ。これじゃはるばる魔界から来た甲斐がねえな」
銀色に輝く、傷一つない超金属のボディ。精悍な顔には己の力に対する揺るぎない自信が溢れている。
「これでこの辺りのヒーローやら正義の組織はあらかた潰したな…さて」
そして、奴の次なる目的は―――
「今度は川崎…天体戦士サンレッドの首を貰うぜ」
「う…うう…」
倒れ伏すヒーローの中の一人が、呻きながら顔を上げた。
「お…お前は一体…何者なんだ…」
その問い掛けに対し、男は不敵に笑った。
「オレの名はヒム―――やがては世界を征服する男だ。覚えときな」
突如現れた謎の超戦士・ヒム!我らがサンレッドはこの強敵に勝てるのか!?
「オラァッ!」←レッドさんはせいけんづきを放った!
「グハァッ!」←ヒムに99999ポイントのダメージを与えた!ヒムを倒した!
―――そんな僕たち凡人の心配なんて何処吹く風。レッドさんはヒムをあっさりワンパンKOして、今日も世界を
守って下さったとさ。めでたしめでたし。
「オラァッ!」←レッドさんはせいけんづきを放った!
「グハァッ!」←ヒムに99999ポイントのダメージを与えた!ヒムを倒した!
―――そんな僕たち凡人の心配なんて何処吹く風。レッドさんはヒムをあっさりワンパンKOして、今日も世界を
守って下さったとさ。めでたしめでたし。
天体戦士サンレッド ~魔界からの刺客!超金属戦士ヒム登場
「…………」
自宅(駅から徒歩10分・家賃3万円・フロなしの安アパート)で布団に寝転がり、ヒムは茫然と天井を見つめる。
「チクショウ…何なんだ、あいつは…あんなん魔界にだっていなかったぞ」
ケンカだけは、誰にも負けた事がなかった―――<タコ殴りのヒム>の名を聞けば、魔界の誰もが震え上がった。
それなのに、このザマはなんだ。
「くそっ!くそっ!くそっ…!」
負けた悔しさと自身への情けなさに、涙が滲む。
「こんなんじゃ…こんなんじゃ、快く魔界から送り出してくれた皆に、申し訳がねえっ…!」
ヒムは、思い出していた。
魔界で待つ、大切な仲間達の事を―――
自宅(駅から徒歩10分・家賃3万円・フロなしの安アパート)で布団に寝転がり、ヒムは茫然と天井を見つめる。
「チクショウ…何なんだ、あいつは…あんなん魔界にだっていなかったぞ」
ケンカだけは、誰にも負けた事がなかった―――<タコ殴りのヒム>の名を聞けば、魔界の誰もが震え上がった。
それなのに、このザマはなんだ。
「くそっ!くそっ!くそっ…!」
負けた悔しさと自身への情けなさに、涙が滲む。
「こんなんじゃ…こんなんじゃ、快く魔界から送り出してくれた皆に、申し訳がねえっ…!」
ヒムは、思い出していた。
魔界で待つ、大切な仲間達の事を―――
―――数ヶ月前・魔界。ハドラー製鉄所(株)にて。
「ヒム…お前、本気なのか?ここでの仕事を辞めて、地上に行くって」
「何を考えておるんだ!それがどういう事か分かってるのか!?」
「ブローム!(訳:同じような事を言って北海道に旅立ち、アバシリンとかいうヒーローによってこれ以上はない
ほど惨たらしく殺られたフレイザード先輩を忘れたのか!?)」
仲間からの糾弾に、ヒムは唇を噛み締める。
「自分勝手は分かってる…だけど、オレはどうしても世界征服の道を歩みたいんだ!」
「バカ野郎!」
「グッ…!」
手加減なしの一撃だった。
「お前はハドラー社長から受けた恩を忘れたのか!?この魔界始まって以来の就職難の時代に、中卒でケンカ
しか取り柄のないワシらを雇ってくれた社長に対してどう言い訳するつもりだ!」
「そうだ!社長の奥さんだって、親からも見放された我々みたいな不良に、まるで本当の母親のように優しくして
くれたというのに…」
「ブローム!(訳:そうだそうだ!アルビナスさんの作ってくれたナスの味噌汁を思い出せ!)」
「うっ…」
ヒムは後ずさり、顔を背ける。そのまま皆に背を向けて走り去った。
「すまん…すまん、皆!」
「あ、ヒム!」
「待つんだ、ヒム!」
「ブローム!(訳:…皆、もうほっとけ!)」
「し、しかし…」
「ブローム…(訳:あいつだってもう子供じゃないんだ…社長やアルビナスさんへの義理を忘れたわけでもないさ。
それでも、あいつは夢に生きる事を選んだ…仕方ない)
「…………ヒム…」
「くそっ…あのバカ…」
「ヒム…お前、本気なのか?ここでの仕事を辞めて、地上に行くって」
「何を考えておるんだ!それがどういう事か分かってるのか!?」
「ブローム!(訳:同じような事を言って北海道に旅立ち、アバシリンとかいうヒーローによってこれ以上はない
ほど惨たらしく殺られたフレイザード先輩を忘れたのか!?)」
仲間からの糾弾に、ヒムは唇を噛み締める。
「自分勝手は分かってる…だけど、オレはどうしても世界征服の道を歩みたいんだ!」
「バカ野郎!」
「グッ…!」
手加減なしの一撃だった。
「お前はハドラー社長から受けた恩を忘れたのか!?この魔界始まって以来の就職難の時代に、中卒でケンカ
しか取り柄のないワシらを雇ってくれた社長に対してどう言い訳するつもりだ!」
「そうだ!社長の奥さんだって、親からも見放された我々みたいな不良に、まるで本当の母親のように優しくして
くれたというのに…」
「ブローム!(訳:そうだそうだ!アルビナスさんの作ってくれたナスの味噌汁を思い出せ!)」
「うっ…」
ヒムは後ずさり、顔を背ける。そのまま皆に背を向けて走り去った。
「すまん…すまん、皆!」
「あ、ヒム!」
「待つんだ、ヒム!」
「ブローム!(訳:…皆、もうほっとけ!)」
「し、しかし…」
「ブローム…(訳:あいつだってもう子供じゃないんだ…社長やアルビナスさんへの義理を忘れたわけでもないさ。
それでも、あいつは夢に生きる事を選んだ…仕方ない)
「…………ヒム…」
「くそっ…あのバカ…」
―――翌日・魔界駅前。
「ハドラー社長…それに奥さんまで本当にすいません。見送りにまで来ていただいて…」
「そんな顔をするな、ヒム」
頭を下げるヒムに対し、ハドラー社長は優しく肩に手を置いた。
「オレにも覚えがある…世界征服の野望を胸に抱いた、若かりし頃が…ふふ、だからかな。今のお前を見ていると、
昔のオレを思い出してしまうんだ」
「社長…」
「ほら、受け取ってくれ」
差し出された封筒。中を覗くと、福沢諭吉が十枚。
「少ないが、退職金だ」
「そ、そんな…!突然仕事を辞めて迷惑かけたのに、こんなの受け取れません!それに…それに…!」
ヒムは知っていた。ハドラー製鉄所(株)は現在、大手取引先のバーン商事(株)やヴェルザー社(株)から受注を
減らされ、更にはアバン鋼業(有)といったライバルの台頭により、経営が決して楽ではない事を…。
しかし、そんなヒムに対してハドラー社長は豪快に笑い飛ばした。
「なあに、お前が世界征服に成功したら、この貸しは世界の半分で返してもらうからな。ハハハ」
「全く、何を言ってるんですかあなたは…ヒム。これを電車の中で食べなさい」
社長の奥さんが差し出した包みの中には、大きなおにぎりが三つ入っていた。
「辛いこともあるでしょうが、挫けず頑張りなさい。私も応援していますよ」
「奥さん…!」
ヒムは大粒の涙を流しながら、何度も頭を下げる。やがて発車のベルが鳴り響き、ヒムは地上へと旅立っていった。
「ハドラー社長…それに奥さんまで本当にすいません。見送りにまで来ていただいて…」
「そんな顔をするな、ヒム」
頭を下げるヒムに対し、ハドラー社長は優しく肩に手を置いた。
「オレにも覚えがある…世界征服の野望を胸に抱いた、若かりし頃が…ふふ、だからかな。今のお前を見ていると、
昔のオレを思い出してしまうんだ」
「社長…」
「ほら、受け取ってくれ」
差し出された封筒。中を覗くと、福沢諭吉が十枚。
「少ないが、退職金だ」
「そ、そんな…!突然仕事を辞めて迷惑かけたのに、こんなの受け取れません!それに…それに…!」
ヒムは知っていた。ハドラー製鉄所(株)は現在、大手取引先のバーン商事(株)やヴェルザー社(株)から受注を
減らされ、更にはアバン鋼業(有)といったライバルの台頭により、経営が決して楽ではない事を…。
しかし、そんなヒムに対してハドラー社長は豪快に笑い飛ばした。
「なあに、お前が世界征服に成功したら、この貸しは世界の半分で返してもらうからな。ハハハ」
「全く、何を言ってるんですかあなたは…ヒム。これを電車の中で食べなさい」
社長の奥さんが差し出した包みの中には、大きなおにぎりが三つ入っていた。
「辛いこともあるでしょうが、挫けず頑張りなさい。私も応援していますよ」
「奥さん…!」
ヒムは大粒の涙を流しながら、何度も頭を下げる。やがて発車のベルが鳴り響き、ヒムは地上へと旅立っていった。
電車の中でおにぎりを頬張りながら、ヒムは窓の外を眺めていた。
(さよなら…魔界)
そんな時だった。
「え…あ、あれは…まさか、そんな…!」
土手の上で手を振っている三人の男。紛れもなく、ヒムの仲間達だった。
「ヒムー!都会に負けるんじゃないぞー!」
「ワシらの事を忘れるなよー!」
「ブロームー!(訳:ヒムばんざーい!)」
「お…お前ら…」
ヒムの目に、熱い涙が込み上げる。それは彼の頬を優しく濡らした。
「世界を征服したら、オーストラリアをよこせよー!」
「ワシにはハワイとグアムをくれよー!」
「ブロームー!(訳:エジプトはオレのモンだー!)」
「へっ…バカ野郎!アメリカだろうがヨーロッパだろうがくれてやるぜ!」
ヒムは泣きながら、笑顔で手を振り返す。素晴らしき友の姿が見えなくなるまで、ずっと―――
(さよなら…魔界)
そんな時だった。
「え…あ、あれは…まさか、そんな…!」
土手の上で手を振っている三人の男。紛れもなく、ヒムの仲間達だった。
「ヒムー!都会に負けるんじゃないぞー!」
「ワシらの事を忘れるなよー!」
「ブロームー!(訳:ヒムばんざーい!)」
「お…お前ら…」
ヒムの目に、熱い涙が込み上げる。それは彼の頬を優しく濡らした。
「世界を征服したら、オーストラリアをよこせよー!」
「ワシにはハワイとグアムをくれよー!」
「ブロームー!(訳:エジプトはオレのモンだー!)」
「へっ…バカ野郎!アメリカだろうがヨーロッパだろうがくれてやるぜ!」
ヒムは泣きながら、笑顔で手を振り返す。素晴らしき友の姿が見えなくなるまで、ずっと―――
パシン!とヒムは自分の頬を叩き、挫けかけた心に喝を入れる。
「そうだ…もうオレの夢だけじゃない…オレの肩には、あいつらの想いも乗っかってるんだ!」
力一杯に玄関のドアを開け、外へと飛び出す。
「強くなる…オレは強くなって、必ずあの赤マスクを倒し、先へ進む!」
ヒムの眼には、熱く燃える炎の輝き。
それは彼が秘める、不屈の魂の証明だった。
「そうだ…もうオレの夢だけじゃない…オレの肩には、あいつらの想いも乗っかってるんだ!」
力一杯に玄関のドアを開け、外へと飛び出す。
「強くなる…オレは強くなって、必ずあの赤マスクを倒し、先へ進む!」
ヒムの眼には、熱く燃える炎の輝き。
それは彼が秘める、不屈の魂の証明だった。
それから、一週間が過ぎて。いつもの公園。
レッドさんはいつものようにフロシャイム怪人をボコってヴァンプ様達を正座させて説教していた。
今回のTシャツは<オリハルコン>である。
「お前らはホント懲りねーなー、ヴァンプよ」
「ええ、まあ…懲りちゃったら世界征服の野望も終わってしまいますし」
「終われよ、どーせできっこねーんだから」
「いえ、一念岩をも通すと言いますし。諦めたら夢はそこまでですよ」
「言う事だけはいっちょまえなんだからなー、お前ら…」
レッドがはあー、とわざとらしい溜息をついた時、その男はやってきた。
「久しぶりだな…サンレッド!」
「ん?あれ、お前…」
そう。超金属戦士・ヒムである。レッドとて、彼の顔は覚えていた。
「知り合いですか、レッドさん?」
「ああ、こないだ話しただろ?先週いきなり襲ってきた金属野郎だよ」
「へー。というと、もしかしてキミもレッドさんの命を?」
「その通りだ。前回はブザマにやられちまったが、今度はそうはいかないぜ」
「ほー。そりゃ楽しみだ。そうまで言うからには、ちょっとは強くなったんだろうな?」
「へっ、調子に乗ってられるのも今のうちだ。先週までのオレとは違うぜ!山籠りの成果を見せてやる!」
具体的に言うと、ふさふさのロンゲになっていた。
原作<ダイの大冒険>を読んだ方なら、どのくらいパワーアップしたのか説明せずとも分かるはずだ。
サンレッドもその気配を感じ取り、にやりと笑って指をポキポキと鳴らした。
ヴァンプ様をはじめとするフロシャイム一同は、激闘の気配にごくりと唾を呑んだ。
ヒムは大きく息を吸い込み、天を仰ぐ。
(皆、見ていてくれ…オレの闘いを!)
そう。行く手にどんな苦難があろうとも、彼はその道を真っすぐに進むだろう。
彼の胸に、夢という名の光が宿っている限り―――
レッドさんはいつものようにフロシャイム怪人をボコってヴァンプ様達を正座させて説教していた。
今回のTシャツは<オリハルコン>である。
「お前らはホント懲りねーなー、ヴァンプよ」
「ええ、まあ…懲りちゃったら世界征服の野望も終わってしまいますし」
「終われよ、どーせできっこねーんだから」
「いえ、一念岩をも通すと言いますし。諦めたら夢はそこまでですよ」
「言う事だけはいっちょまえなんだからなー、お前ら…」
レッドがはあー、とわざとらしい溜息をついた時、その男はやってきた。
「久しぶりだな…サンレッド!」
「ん?あれ、お前…」
そう。超金属戦士・ヒムである。レッドとて、彼の顔は覚えていた。
「知り合いですか、レッドさん?」
「ああ、こないだ話しただろ?先週いきなり襲ってきた金属野郎だよ」
「へー。というと、もしかしてキミもレッドさんの命を?」
「その通りだ。前回はブザマにやられちまったが、今度はそうはいかないぜ」
「ほー。そりゃ楽しみだ。そうまで言うからには、ちょっとは強くなったんだろうな?」
「へっ、調子に乗ってられるのも今のうちだ。先週までのオレとは違うぜ!山籠りの成果を見せてやる!」
具体的に言うと、ふさふさのロンゲになっていた。
原作<ダイの大冒険>を読んだ方なら、どのくらいパワーアップしたのか説明せずとも分かるはずだ。
サンレッドもその気配を感じ取り、にやりと笑って指をポキポキと鳴らした。
ヴァンプ様をはじめとするフロシャイム一同は、激闘の気配にごくりと唾を呑んだ。
ヒムは大きく息を吸い込み、天を仰ぐ。
(皆、見ていてくれ…オレの闘いを!)
そう。行く手にどんな苦難があろうとも、彼はその道を真っすぐに進むだろう。
彼の胸に、夢という名の光が宿っている限り―――
―――天体戦士サンレッド。
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!
…え、勝負の結果ですか?可哀想で書けませんよ、またしてもワンパンKOされたなんて…。
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!
…え、勝負の結果ですか?可哀想で書けませんよ、またしてもワンパンKOされたなんて…。