その瞬間、天地が鳴動する。大地が揺らぎ、天に黒き雷光が迸る。
「な、なんだ!?」
「―――いかん!」
エレフが飛び起き、天を睨む。
「タナトスは私の中から出ていっただけだ…奴はまだ生きている!」
そして一際激しい雷鳴と共に、漆黒の雷が天を切り裂いて大地に突き立つ。否―――それは雷ではなく、先刻エレフ
の身体から脱け出ていった、あの黒い瘴気だ。
それはもぞもぞと不気味に蠢きながら、次第に形を成していく。
細胞が生じ、心臓が脈打ち、血が湧き、骨が組み合わさり、臓物が収まり、肉が覆い、皮膚が張り巡らされ―――
彼が、その真の姿を露わにした。
闇そのものを具現化したような、黒のローブ。そこから覗くのは、枯れ木のように細い木乃伊の如き指先。
その静謐に整った面立ちは、異様なまでの血の気のなさと相まって、さながらよく出来た彫像のようだ。
人間達に死を告げる紫の瞳は、妖しいほどに美しく輝いている。
彼こそが亡者達の王―――冥府の支配者―――死を司る神―――冥王タナトス。
タナトスは肩で息をしながら、信じられないとばかりにただ茫然と呟く。
「バカナ…何故、コンナ事ガ…」
「バカでも何故でもねえよ…当たり前だろうが!」
城之内がタナトスに向けて指を突き出し、吼える。
「兄貴ってのはな―――弟やら妹やらのためなら、なんだって出来るんだよ!」
「その通り!このバカのシスコンっぷりを計算してなかったみてえだなぁ、神様よぉ!」
オリオンも城之内に続けて叫ぶ。エレフはそれを苦々しい顔で横目にしながら呟く。
「誰がシスコンだ…誰が」
「貴様に決まっておろう。しかし、女…」
海馬はエレフの背後に立つミーシャを眺めた。その目には、僅かだが、賞賛の色がある。
「クク…ようやく凡骨レベルというところか」
「…褒めてるのかしら、それ…?」
ミーシャは釈然としなかった。ある意味城之内に対しても失礼である。
「エレフ…」
レオンティウスが、エレフの名を呼ぶ。エレフもレオンティウスを見つめ返した。
「…色々話したいことがある。だが、今は―――」
「分かっている」
エレフは黒い双剣を構え、レオンティウスは雷槍を構えた。そうして二人は、並び立つ。
「全ては、この闘いが終わってからだ…それでいいだろう」
「ああ」
タナトスはそれを見据え、唇を噛み締める。
「エレウセウス…我ガ器ヨ…今一度、我ガ手ニ戻ルガヨィ!」
いつの間にかタナトスの両手には、漆黒の大鎌が握られていた。尋常ではない重さのそれを小枝のように投擲する。
音を置き去りにして迫る二つの大鎌。エレフはそれを軽々と弾き落とす。
「…ェ」
ただそれだけのやり取りだったが、タナトスは明らかに動揺していた。唇が微かに震えている。
「今ノハ…マサカ…」
「?どうしたんだ。何だかびびってやがるぞ」
「…皆。下がっているんだ」
エレフが一歩、前に出る。
「奴とは、私がケリを付ける」
「な…エレフ、あいつを甘く見るな!俺達が全員でかかっても、まるで相手にならなかったんだぜ!?」
「大丈夫だ、オリオン」
エレフは、自信ありげに笑った。
「今まで、私が一番楽をしていたからな…後は、任せておけ」
「けどよ…」
「大丈夫だ」
そう、繰り返した。
「先の一撃で分かった。今の私とタナトスなら、私が勝つ」
言うが早いか地を蹴り、神速と化して狼は死神に迫る。
「ハァッ!」
気合と共に振り下ろされた剣は複雑な軌跡を描き、タナトスの全身を斬り裂く。
「…チッ!」
タナトスは呻きながら飛退き、黒き刃から逃れる。その傷は既に回復を始めているが、明らかに今までよりも遅い。
額から滴り落ちる血を手で拭い、タナトスはその顔を歪める。
「お、おい。エレフの奴、あんなに強かったのかよ…」
「違う」
レオンティウスがその疑問に答えた。
「イリオンで私と闘った時とは、明らかに動きが違う…エレフにあそこまでの力はなかったはずだ」
「…我ノ所為カ」
タナトスは息を乱しながら語る。
「先程マデ、エレフハ其ノ身ニ我ヲ宿シティタ…其ノ影響デ、彼ハ更ニ力ヲ増シタンダ」
「それだけじゃない」
エレフが引き継ぐ。
「自分でも分かっているはずだ。今のお前は、力を殆ど使い切ってしまっている」
「フフ…其ノ通リサ。ォ前ト引キ剥ガサレソゥニナル度、結合ヲ保ツ為ニ相当ノ消耗ヲ強ィラレタカラネ…我ナガラ
情ケナィ限リダ…<顔ガ濡レテ力ガ出ナィ>ソンナ気分ダヨ」
「ならば理解できるはずだ、タナトス」
エレフは切っ先を、タナトスに向けて突き付けた。
「もはやお前に勝ち目はない…ここまでだ」
「…………」
その宣告を、タナトスはどう受け止めたのか。彼は何も語らず俯き、身を震わせていた。
「けっ!どうした、散々いばっといて今更泣き事でも言う気か?それともこの人間風情がーとでも言いたいのかよ!
そんなザマで怒ろうがどうしようが、こちとらちっとも怖く―――」
「ハハハ」
城之内の悪態を遮るように、タナトスの唇から響いたのは笑い声。
それも自嘲の笑いだの、苦し紛れの笑いなどではない。
「ァハハハハハハハハハ!」
ただ、楽しいから笑う。愉快だから笑う。
そんな純朴なまでの笑顔で、彼は思うがままに笑っていた。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――!
最高ダ!ヤハリ我ガ見込ンダ通リ、キミ達ハ本当ニ最高ダッタ!凄ィ、本当ニ凄ィ奴等ダ、キミ達ハ!」
「な、な、な、何だよ、これ…何で褒められてんだよ、オレ達…」
城之内は顔を引き攣らせ、だらだらと冷汗を流す。それは闇遊戯達も同じだった。
「ソゥカ…ヨゥヤク分カッタヨ!バカダ…キミ達ハバカナンダネ!」
タナトスは満面の笑顔と共に、そう言った。
「ソゥ…ソレモ半端デナィ大バカダ…ァァ…素晴ラシィ…ナント図抜ケタバカナノカ…!ダガ其レガィィ!勝算モ打算モ
何一ツ考ェズ、只管ニ己ノ信ズル道ヲ突キ進ミ、遂ニハ我ガ目論見ノ全テヲ打チ砕ィテミセタ!人間デァルキミ達ガ、
神デァル我ニ勝ッタノダ!正シク偉業…奇跡ト呼ンデモ過言デハナィヨ!嗚呼、我ハ今、猛烈ニ感動シティル!
嗚呼―――バカダ、バカバカ…最高ノ大バカ野郎共ダ!我ハキミ達ヲ心カラ尊敬シ、キミ達ノ前ニ跪ク!」
その眼から涙さえ零しながら、タナトスは歓喜に打ち震えていた。
「最高ダ…マサニキミ達コソハ人類バカ代表!我ニ欠ケティタノハ其レダ…本当ニ必要ダッタノハ器デハナク、キミ達
ノヨゥナ大バカダッタノダ!嗚呼、素晴ラシキ<偉大ナル可能性(グランディア)>ヨ!」
「うっ…!」
闇遊戯達は戦慄し、我知らず後ずさる。タナトスが自分達に襲いかかる気配はない。それどころか、彼からは自分達
に対する畏敬の念さえ感じられる。にも関わらず、かつてない程の恐怖が空間を支配していた。
「こいつ、どうかしてやがる…こんなんなら、ブチ切れてくれた方がよっぽどマシだったぜ…!」
城之内が冷汗をかきながら放ったその言葉が、全員の総意だった。
彼は―――<冥王>タナトスは、余りにも危険すぎる。
力や思想、そういった次元ではなく。その存在そのものが、果てなく禁忌。
最も忌まわしく、最も恐るべき神―――故に―――死神!
冥王―――タナトス!
「ヤリ直シダ!我ハ人間ヲ殺メル事デ運命カラ救ゥツモリダッタガ―――何ノ事ハナィ。運命カラ救ィタィノナラ、
話ハモット簡単ダッタノニ―――運命(ミラ)ヲ殺セバ其レデ済ム事ジャナィカ!」
運命を殺す―――そんな途方もない事を、タナトスはあっさりと言い放った。
「ソンナ事ニモ気付カナカッタトハ、自分ガ恥ズカシィ…穴ガァッタラ入リタィヨ!其レニ気付カセテクレタノハ、紛レモ
ナクキミ達ダ!キミ達ノバカバカシクモ勇気ニ満チ溢レタ行為ガ、我ノ目ヲ覚マシテクレタンダ!我モキミ達ヲ見習ィ、
バカニナロゥジャナィカ…万物ノ母ナル創造主…運命ノ女神<ミラ>―――我ハ彼女ヲ殺メ、残酷ナ運命ヲ破壊スル」
「運命を壊す…だと?壊してどうすんだよ。テメエが新しい運命の神様になろうってのか?とんだ冥王計画もあった
もんだぜ」
城之内の言葉に、タナトスは首肯する。
「フフ…其レモ又良キ哉。運命ノ白キ糸―――其ノ新タナル紡ギ手トシテ、人間達ニ不幸ト涙デナク、幸福ト笑顔ヲ
与ェ続ケル。願ッタ事全テガ叶ゥ、優シィ世界ヲ創ルノサ。嗚呼、素晴ラシィジャナィカ」
「ふざけるな」
海馬がそう言い放つ。
「不幸がなければ幸福もあるものか。涙なくして、笑顔などあるものか。願いが全て叶う世界など、何一つ叶わない
不毛の世界と同じだ。妄言もここに極まったな」
「妄言デモ妄想デモナィサ。キミ達ガ協力シテクレルナラ、不可能ナド無ィ」
そして死の神は人間達を見つめ、手を伸ばしながら微笑みかける。
「ソゥ…我ニハキミ達ノ力ガ必要ダ。我ト友達ニナロゥ。ソシテ我ト共ニ―――運命(ミラ)ヲ殺ソゥ」
伸ばした手。その指先がぱっくりと裂け、血が滴り落ちる。
カラン、カラン、カラン―――
その雫はタナトスの魔力によって固められ、真紅の宝石と化した。地面を転がりながら、紅の輝石は一同の足元へと
意志を持つかのように引き寄せられていく。
「サァ、受ケ取リ給ェ。ドレダケノ人間ガ求メタダロゥ―――紛ゥ事ナキ、神ノ血ダ」
「神の血…だと?」
「ソゥ。其レヲ手ニセント、或ル者ハ巨万ノ富ヲ捧ゲ、或ル者ハ己ノ命スラ賭シテ―――結局ハ誰モ、手ニスル事ハ
叶ワナカッタ神ノ力…」
タナトスは悲しむような、憐れむような声で語る。
「我ガ血ヲ口ニスレバ、其レガキミ達ノ物ダ」
「要するに…こいつを飲めば、強くなれるってのか?レオンやエレフみてーに…」
「ソンナ次元デハナィ。彼等ノ力モ確カニ神ノ血ヲ引クガ故ノ恩恵ダガ、残念ナガラ其ノ血ハ悠久ノ時ヲ経テ薄マリ、
弱クナッテシマッティル。純粋ナ神ニハ、トテモ及バナィ―――神ノ力トハ、斯クモ遥カ高ミニァル」
だからこそ、数多の人間が追い求めた神の力。それは例えば、あの赤髪の蠍のように。
其れを、惜しげもなく与えよう。だから。
「サァ…今此ノ時ヨリ、我々ハ友達ダ」
「―――バカめ」
海馬はそう言い捨てて、足を上げ―――神の血を、躊躇も忌憚もなく踏み付けた。
「貴様の血なんぞ、誰が飲むか」
「へっ…初めて意見が合ったな、海馬」
続いて、城之内が神の血を踏み砕く。
「俺は俺だ。神様なんて柄じゃないね」
と、オリオンも神の血を蹴り飛ばす。
「私に流れる血は雷神の血だ。それを混ぜ返すわけにはいかんな」
レオンティウスは丁重に神の血を手にしたかと思えば、あっさり投げ捨てた。
「ごめんなさい。私も、遠慮するわ」
ミーシャは足で砂をかけ、神の血を埋めた。
「もうこの身を、貴様の好きにさせてなるものか」
エレフは剣を振るい、神の血を粉々に斬り刻んだ。
「そういうわけだ…タナトス。こんなものは、オレ達には必要ない」
闇遊戯はもはや、神の血には目もくれなかった。
彼らは揃いも揃って―――神を容赦なく、冒涜した。そして、タナトスは。
「ソゥ、ソゥダロゥネ…キミ達ナラバソゥスルト、我ハ解ッティタヨ」
果たして彼は、まるで気分を害した様子もなく微笑みを絶やさなかった。
「ダケド我ハ我儘ナンダ…欲スルナラバ、力尽クデモ奪ィ取ル」
タナトスの指先が、複雑な印を結ぶ。膨大な魔力が迸り、邪気が噴き出す。
「な…何だ!?」
「来タレ…永遠ノ魔術師ガ記セシ<否定接続詞デ綴ジタ書物><黒キ女神ヲ宿ス禁書>―――」
黒い風が吹き抜けた。空中に亀裂が走り、そこから何かが飛び出してくる。
「…本?」
「其レハ存在シテハナラナィ書物。全二十四巻カラ成ル黒ィ表紙ノ予言書。或ル種ノ整合性ヲ持ツ歴然トシタ年代記。
有史以来ノ全テヲ網羅シタ記述ハ遥カ未来ニマデ及ビ、地平線(セカイ)ヲ余ス事ナク支配スル。
何時ノ頃カラカ、其レハコゥ呼バレル事ト為ッタ―――」
「な、なんだ!?」
「―――いかん!」
エレフが飛び起き、天を睨む。
「タナトスは私の中から出ていっただけだ…奴はまだ生きている!」
そして一際激しい雷鳴と共に、漆黒の雷が天を切り裂いて大地に突き立つ。否―――それは雷ではなく、先刻エレフ
の身体から脱け出ていった、あの黒い瘴気だ。
それはもぞもぞと不気味に蠢きながら、次第に形を成していく。
細胞が生じ、心臓が脈打ち、血が湧き、骨が組み合わさり、臓物が収まり、肉が覆い、皮膚が張り巡らされ―――
彼が、その真の姿を露わにした。
闇そのものを具現化したような、黒のローブ。そこから覗くのは、枯れ木のように細い木乃伊の如き指先。
その静謐に整った面立ちは、異様なまでの血の気のなさと相まって、さながらよく出来た彫像のようだ。
人間達に死を告げる紫の瞳は、妖しいほどに美しく輝いている。
彼こそが亡者達の王―――冥府の支配者―――死を司る神―――冥王タナトス。
タナトスは肩で息をしながら、信じられないとばかりにただ茫然と呟く。
「バカナ…何故、コンナ事ガ…」
「バカでも何故でもねえよ…当たり前だろうが!」
城之内がタナトスに向けて指を突き出し、吼える。
「兄貴ってのはな―――弟やら妹やらのためなら、なんだって出来るんだよ!」
「その通り!このバカのシスコンっぷりを計算してなかったみてえだなぁ、神様よぉ!」
オリオンも城之内に続けて叫ぶ。エレフはそれを苦々しい顔で横目にしながら呟く。
「誰がシスコンだ…誰が」
「貴様に決まっておろう。しかし、女…」
海馬はエレフの背後に立つミーシャを眺めた。その目には、僅かだが、賞賛の色がある。
「クク…ようやく凡骨レベルというところか」
「…褒めてるのかしら、それ…?」
ミーシャは釈然としなかった。ある意味城之内に対しても失礼である。
「エレフ…」
レオンティウスが、エレフの名を呼ぶ。エレフもレオンティウスを見つめ返した。
「…色々話したいことがある。だが、今は―――」
「分かっている」
エレフは黒い双剣を構え、レオンティウスは雷槍を構えた。そうして二人は、並び立つ。
「全ては、この闘いが終わってからだ…それでいいだろう」
「ああ」
タナトスはそれを見据え、唇を噛み締める。
「エレウセウス…我ガ器ヨ…今一度、我ガ手ニ戻ルガヨィ!」
いつの間にかタナトスの両手には、漆黒の大鎌が握られていた。尋常ではない重さのそれを小枝のように投擲する。
音を置き去りにして迫る二つの大鎌。エレフはそれを軽々と弾き落とす。
「…ェ」
ただそれだけのやり取りだったが、タナトスは明らかに動揺していた。唇が微かに震えている。
「今ノハ…マサカ…」
「?どうしたんだ。何だかびびってやがるぞ」
「…皆。下がっているんだ」
エレフが一歩、前に出る。
「奴とは、私がケリを付ける」
「な…エレフ、あいつを甘く見るな!俺達が全員でかかっても、まるで相手にならなかったんだぜ!?」
「大丈夫だ、オリオン」
エレフは、自信ありげに笑った。
「今まで、私が一番楽をしていたからな…後は、任せておけ」
「けどよ…」
「大丈夫だ」
そう、繰り返した。
「先の一撃で分かった。今の私とタナトスなら、私が勝つ」
言うが早いか地を蹴り、神速と化して狼は死神に迫る。
「ハァッ!」
気合と共に振り下ろされた剣は複雑な軌跡を描き、タナトスの全身を斬り裂く。
「…チッ!」
タナトスは呻きながら飛退き、黒き刃から逃れる。その傷は既に回復を始めているが、明らかに今までよりも遅い。
額から滴り落ちる血を手で拭い、タナトスはその顔を歪める。
「お、おい。エレフの奴、あんなに強かったのかよ…」
「違う」
レオンティウスがその疑問に答えた。
「イリオンで私と闘った時とは、明らかに動きが違う…エレフにあそこまでの力はなかったはずだ」
「…我ノ所為カ」
タナトスは息を乱しながら語る。
「先程マデ、エレフハ其ノ身ニ我ヲ宿シティタ…其ノ影響デ、彼ハ更ニ力ヲ増シタンダ」
「それだけじゃない」
エレフが引き継ぐ。
「自分でも分かっているはずだ。今のお前は、力を殆ど使い切ってしまっている」
「フフ…其ノ通リサ。ォ前ト引キ剥ガサレソゥニナル度、結合ヲ保ツ為ニ相当ノ消耗ヲ強ィラレタカラネ…我ナガラ
情ケナィ限リダ…<顔ガ濡レテ力ガ出ナィ>ソンナ気分ダヨ」
「ならば理解できるはずだ、タナトス」
エレフは切っ先を、タナトスに向けて突き付けた。
「もはやお前に勝ち目はない…ここまでだ」
「…………」
その宣告を、タナトスはどう受け止めたのか。彼は何も語らず俯き、身を震わせていた。
「けっ!どうした、散々いばっといて今更泣き事でも言う気か?それともこの人間風情がーとでも言いたいのかよ!
そんなザマで怒ろうがどうしようが、こちとらちっとも怖く―――」
「ハハハ」
城之内の悪態を遮るように、タナトスの唇から響いたのは笑い声。
それも自嘲の笑いだの、苦し紛れの笑いなどではない。
「ァハハハハハハハハハ!」
ただ、楽しいから笑う。愉快だから笑う。
そんな純朴なまでの笑顔で、彼は思うがままに笑っていた。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――!
最高ダ!ヤハリ我ガ見込ンダ通リ、キミ達ハ本当ニ最高ダッタ!凄ィ、本当ニ凄ィ奴等ダ、キミ達ハ!」
「な、な、な、何だよ、これ…何で褒められてんだよ、オレ達…」
城之内は顔を引き攣らせ、だらだらと冷汗を流す。それは闇遊戯達も同じだった。
「ソゥカ…ヨゥヤク分カッタヨ!バカダ…キミ達ハバカナンダネ!」
タナトスは満面の笑顔と共に、そう言った。
「ソゥ…ソレモ半端デナィ大バカダ…ァァ…素晴ラシィ…ナント図抜ケタバカナノカ…!ダガ其レガィィ!勝算モ打算モ
何一ツ考ェズ、只管ニ己ノ信ズル道ヲ突キ進ミ、遂ニハ我ガ目論見ノ全テヲ打チ砕ィテミセタ!人間デァルキミ達ガ、
神デァル我ニ勝ッタノダ!正シク偉業…奇跡ト呼ンデモ過言デハナィヨ!嗚呼、我ハ今、猛烈ニ感動シティル!
嗚呼―――バカダ、バカバカ…最高ノ大バカ野郎共ダ!我ハキミ達ヲ心カラ尊敬シ、キミ達ノ前ニ跪ク!」
その眼から涙さえ零しながら、タナトスは歓喜に打ち震えていた。
「最高ダ…マサニキミ達コソハ人類バカ代表!我ニ欠ケティタノハ其レダ…本当ニ必要ダッタノハ器デハナク、キミ達
ノヨゥナ大バカダッタノダ!嗚呼、素晴ラシキ<偉大ナル可能性(グランディア)>ヨ!」
「うっ…!」
闇遊戯達は戦慄し、我知らず後ずさる。タナトスが自分達に襲いかかる気配はない。それどころか、彼からは自分達
に対する畏敬の念さえ感じられる。にも関わらず、かつてない程の恐怖が空間を支配していた。
「こいつ、どうかしてやがる…こんなんなら、ブチ切れてくれた方がよっぽどマシだったぜ…!」
城之内が冷汗をかきながら放ったその言葉が、全員の総意だった。
彼は―――<冥王>タナトスは、余りにも危険すぎる。
力や思想、そういった次元ではなく。その存在そのものが、果てなく禁忌。
最も忌まわしく、最も恐るべき神―――故に―――死神!
冥王―――タナトス!
「ヤリ直シダ!我ハ人間ヲ殺メル事デ運命カラ救ゥツモリダッタガ―――何ノ事ハナィ。運命カラ救ィタィノナラ、
話ハモット簡単ダッタノニ―――運命(ミラ)ヲ殺セバ其レデ済ム事ジャナィカ!」
運命を殺す―――そんな途方もない事を、タナトスはあっさりと言い放った。
「ソンナ事ニモ気付カナカッタトハ、自分ガ恥ズカシィ…穴ガァッタラ入リタィヨ!其レニ気付カセテクレタノハ、紛レモ
ナクキミ達ダ!キミ達ノバカバカシクモ勇気ニ満チ溢レタ行為ガ、我ノ目ヲ覚マシテクレタンダ!我モキミ達ヲ見習ィ、
バカニナロゥジャナィカ…万物ノ母ナル創造主…運命ノ女神<ミラ>―――我ハ彼女ヲ殺メ、残酷ナ運命ヲ破壊スル」
「運命を壊す…だと?壊してどうすんだよ。テメエが新しい運命の神様になろうってのか?とんだ冥王計画もあった
もんだぜ」
城之内の言葉に、タナトスは首肯する。
「フフ…其レモ又良キ哉。運命ノ白キ糸―――其ノ新タナル紡ギ手トシテ、人間達ニ不幸ト涙デナク、幸福ト笑顔ヲ
与ェ続ケル。願ッタ事全テガ叶ゥ、優シィ世界ヲ創ルノサ。嗚呼、素晴ラシィジャナィカ」
「ふざけるな」
海馬がそう言い放つ。
「不幸がなければ幸福もあるものか。涙なくして、笑顔などあるものか。願いが全て叶う世界など、何一つ叶わない
不毛の世界と同じだ。妄言もここに極まったな」
「妄言デモ妄想デモナィサ。キミ達ガ協力シテクレルナラ、不可能ナド無ィ」
そして死の神は人間達を見つめ、手を伸ばしながら微笑みかける。
「ソゥ…我ニハキミ達ノ力ガ必要ダ。我ト友達ニナロゥ。ソシテ我ト共ニ―――運命(ミラ)ヲ殺ソゥ」
伸ばした手。その指先がぱっくりと裂け、血が滴り落ちる。
カラン、カラン、カラン―――
その雫はタナトスの魔力によって固められ、真紅の宝石と化した。地面を転がりながら、紅の輝石は一同の足元へと
意志を持つかのように引き寄せられていく。
「サァ、受ケ取リ給ェ。ドレダケノ人間ガ求メタダロゥ―――紛ゥ事ナキ、神ノ血ダ」
「神の血…だと?」
「ソゥ。其レヲ手ニセント、或ル者ハ巨万ノ富ヲ捧ゲ、或ル者ハ己ノ命スラ賭シテ―――結局ハ誰モ、手ニスル事ハ
叶ワナカッタ神ノ力…」
タナトスは悲しむような、憐れむような声で語る。
「我ガ血ヲ口ニスレバ、其レガキミ達ノ物ダ」
「要するに…こいつを飲めば、強くなれるってのか?レオンやエレフみてーに…」
「ソンナ次元デハナィ。彼等ノ力モ確カニ神ノ血ヲ引クガ故ノ恩恵ダガ、残念ナガラ其ノ血ハ悠久ノ時ヲ経テ薄マリ、
弱クナッテシマッティル。純粋ナ神ニハ、トテモ及バナィ―――神ノ力トハ、斯クモ遥カ高ミニァル」
だからこそ、数多の人間が追い求めた神の力。それは例えば、あの赤髪の蠍のように。
其れを、惜しげもなく与えよう。だから。
「サァ…今此ノ時ヨリ、我々ハ友達ダ」
「―――バカめ」
海馬はそう言い捨てて、足を上げ―――神の血を、躊躇も忌憚もなく踏み付けた。
「貴様の血なんぞ、誰が飲むか」
「へっ…初めて意見が合ったな、海馬」
続いて、城之内が神の血を踏み砕く。
「俺は俺だ。神様なんて柄じゃないね」
と、オリオンも神の血を蹴り飛ばす。
「私に流れる血は雷神の血だ。それを混ぜ返すわけにはいかんな」
レオンティウスは丁重に神の血を手にしたかと思えば、あっさり投げ捨てた。
「ごめんなさい。私も、遠慮するわ」
ミーシャは足で砂をかけ、神の血を埋めた。
「もうこの身を、貴様の好きにさせてなるものか」
エレフは剣を振るい、神の血を粉々に斬り刻んだ。
「そういうわけだ…タナトス。こんなものは、オレ達には必要ない」
闇遊戯はもはや、神の血には目もくれなかった。
彼らは揃いも揃って―――神を容赦なく、冒涜した。そして、タナトスは。
「ソゥ、ソゥダロゥネ…キミ達ナラバソゥスルト、我ハ解ッティタヨ」
果たして彼は、まるで気分を害した様子もなく微笑みを絶やさなかった。
「ダケド我ハ我儘ナンダ…欲スルナラバ、力尽クデモ奪ィ取ル」
タナトスの指先が、複雑な印を結ぶ。膨大な魔力が迸り、邪気が噴き出す。
「な…何だ!?」
「来タレ…永遠ノ魔術師ガ記セシ<否定接続詞デ綴ジタ書物><黒キ女神ヲ宿ス禁書>―――」
黒い風が吹き抜けた。空中に亀裂が走り、そこから何かが飛び出してくる。
「…本?」
「其レハ存在シテハナラナィ書物。全二十四巻カラ成ル黒ィ表紙ノ予言書。或ル種ノ整合性ヲ持ツ歴然トシタ年代記。
有史以来ノ全テヲ網羅シタ記述ハ遥カ未来ニマデ及ビ、地平線(セカイ)ヲ余ス事ナク支配スル。
何時ノ頃カラカ、其レハコゥ呼バレル事ト為ッタ―――」
「黒キ予言書―――<ブラック・クロニクル>ト!」
合計二十四冊に及ぶ黒い書物はふわふわと宙に浮かび、不気味に佇んでいる。それを見つめる者達の脳裏に向け、
鮮烈なイメージが叩き付けられた。
それは少女。
黒い服と黒い髪、身震いするほどに美しい少女だ。彼女は艶然と微笑む。小さき者達を憐れむように、嘲るように。
「天地ノ開闢カラ終焉マデヲ網羅シタ年代記。其ノ最後ハ、黒キ獣ガ世界ヲ蹂躙シ、歴史ハ闇ヘト葬ラレル」
そしてタナトスは、朗々と謳い上げる。
鮮烈なイメージが叩き付けられた。
それは少女。
黒い服と黒い髪、身震いするほどに美しい少女だ。彼女は艶然と微笑む。小さき者達を憐れむように、嘲るように。
「天地ノ開闢カラ終焉マデヲ網羅シタ年代記。其ノ最後ハ、黒キ獣ガ世界ヲ蹂躙シ、歴史ハ闇ヘト葬ラレル」
そしてタナトスは、朗々と謳い上げる。
「我等ハ書ニ拠リテ祝福ヲ約サレシ者―――我等ハ書ニ拠リテ断罪ヲ約サレシ者―――
数多ノ記憶―――歴史ヲ呑ミ込ンデ―――猶、書ノ魔獣ハ止マラナィ―――
其レ即チ―――光ヲモ逃ガサヌ暗黒ノ超重力―――其レ即チ―――時ノ歩ミヲモ赦サヌ暗黒ノ反重力!
<唯一神(クロニカ)>ヨ―――今キミガ望ムナラ、歴史ノ地平マデ逝コゥ!」
数多ノ記憶―――歴史ヲ呑ミ込ンデ―――猶、書ノ魔獣ハ止マラナィ―――
其レ即チ―――光ヲモ逃ガサヌ暗黒ノ超重力―――其レ即チ―――時ノ歩ミヲモ赦サヌ暗黒ノ反重力!
<唯一神(クロニカ)>ヨ―――今キミガ望ムナラ、歴史ノ地平マデ逝コゥ!」
其れは地平線を奔る奔る―――其れは際限なく猛る猛る―――其れは全てを屠る屠る!
暴風のような狂気が黒き書物―――<ブラック・クロニクル>から迸り、タナトスに力を与える。
黒き書が一斉に開き、ぱらぱらと頁が風に舞って散らばっていく。
視界を埋め尽くすのはただ、黒い文字で記された記述―――
暴風のような狂気が黒き書物―――<ブラック・クロニクル>から迸り、タナトスに力を与える。
黒き書が一斉に開き、ぱらぱらと頁が風に舞って散らばっていく。
視界を埋め尽くすのはただ、黒い文字で記された記述―――
―――気付けば闇遊戯達は、暗闇の中にいた。否。そうではなかった。
それはただ、黒。
闇ですらない、純潔にして純血なる黒。
あらゆる存在を呑み込む黒。
万物を己の色へと塗り潰す黒。
それはただ、黒。
闇ですらない、純潔にして純血なる黒。
あらゆる存在を呑み込む黒。
万物を己の色へと塗り潰す黒。
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
クロが全てを呑み込み、支配する!
「何だよこりゃあ…タナトス、何処にいやがるんだ!」
「此処サ」
その声は極めて近く、且つ限りなく遠くから聴こえてくる。
「全テヲ喰ラゥ絶対ナル<黒>コソガ<ブラック・クロニクル>ダ。其レト融合シタ我モ又、黒―――ソゥ。キミ達ヲ包ム
黒、全テガ我ダ。数多ノ世界ト歴史ヲ呑ミ込ンダ<魔獣>ト、我ハ一ツニ為ッタ」
「よく分かんねえけど…要するに、これがテメエの奥の手ってわけか!」
「ソゥ。今度コソ最後ノ勝負ダ、死セル者達ヨ。キミ達ガ勝テバ、我ハ計画ノ全テヲ諦メヨゥ…但シ」
我ガ勝ッタナラ。
「其ノ時ハォメデトゥ…晴レテキミ達ハ、我ノ友達ダ」
「何だよこりゃあ…タナトス、何処にいやがるんだ!」
「此処サ」
その声は極めて近く、且つ限りなく遠くから聴こえてくる。
「全テヲ喰ラゥ絶対ナル<黒>コソガ<ブラック・クロニクル>ダ。其レト融合シタ我モ又、黒―――ソゥ。キミ達ヲ包ム
黒、全テガ我ダ。数多ノ世界ト歴史ヲ呑ミ込ンダ<魔獣>ト、我ハ一ツニ為ッタ」
「よく分かんねえけど…要するに、これがテメエの奥の手ってわけか!」
「ソゥ。今度コソ最後ノ勝負ダ、死セル者達ヨ。キミ達ガ勝テバ、我ハ計画ノ全テヲ諦メヨゥ…但シ」
我ガ勝ッタナラ。
「其ノ時ハォメデトゥ…晴レテキミ達ハ、我ノ友達ダ」