悪の組織・フロシャイム川崎支部。
その一室に怪人達を集め、ヴァンプ将軍はいつになく引き締まった顔である。
「フロシャイムの精鋭達よ…次なる作戦を発表する!」
厳かに告げられた言葉に、怪人達はざわめく。次の瞬間、備え付けのモニターに画像が映し出された。
「これは…幼稚園の送迎バスですか?」
「そうだ―――これ以上は、言わなくても分かるだろう?」
そして悪の将軍ヴァンプは、非情なる命令を下した―――!
「決行の日は明日!我らは園児達を人質として、バスジャックを行う!」
その一室に怪人達を集め、ヴァンプ将軍はいつになく引き締まった顔である。
「フロシャイムの精鋭達よ…次なる作戦を発表する!」
厳かに告げられた言葉に、怪人達はざわめく。次の瞬間、備え付けのモニターに画像が映し出された。
「これは…幼稚園の送迎バスですか?」
「そうだ―――これ以上は、言わなくても分かるだろう?」
そして悪の将軍ヴァンプは、非情なる命令を下した―――!
「決行の日は明日!我らは園児達を人質として、バスジャックを行う!」
ついに悪の本性を現したフロシャイム!今、園児達の悲鳴がバキスレに木霊する!
…なんて展開にはなりませんので、読者の皆様方は今回も安心して、お子様にもお勧めのほのぼの牧歌的癒し系
小説<天体戦士サンレッド>を御堪能ください。
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小説<天体戦士サンレッド>を御堪能ください。
天体戦士サンレッド ~卑劣なる策略!悪夢のバスジャック事件
翌日。
送迎バスは園児達を乗せ、今にも出発しようとしていた。ここまでは普段通りだが、今日はここからが違う。
「はーい、みんなー。今日は本物の悪の組織の皆さんが、バスジャックにやってきてくれますよー」
「わーい!」
「どこどこ、かいじんどこー?」
「ほらほら、慌てないで。さあ、今から怪人さん達が来てくれますから、みんなで拍手しましょうねー」
引率の保母さんが、ドア横でそわそわしながら待機している連中に声をかける。
「それではフロシャイムの皆さーん、お願いしまーす」
「あ、はーい!」
いそいそとバスに乗り込むヴァンプ様、それに怪人達が続く。
「どうもー、私フロシャイムで将軍やってるヴァンプです。バスジャックなんて初めてで、ちょっとドキドキしてるけど、
今日は皆さん、仲良くしましょうね!」
わーっと拍手が巻き起こり、ヴァンプ様はぽっと顔を赤らめてモジモジするのだった。
「こちらこそよろしく、ヴァンプさん。それではバスジャック開始の挨拶をお願いします」
「はい、それじゃ…おっほん!このバスは我々フロシャイムが乗っ取った!命が惜しくば大人しくしていることだな
―――我々は子供であろうが、いざとなれば容赦はせん!」
子供達の間からは、どっかんどっかん大爆笑が起きた。完全に遊園地のアトラクション扱いである。
「あーコラ!命が惜しくば大人しくしろって言ったばかりじゃない、もう!」
「わー、ショーグンがおこったー!」
「こわーい!」
「わー!」
その時だった。怪人達の中から、歩み出る影があった。
「コラー!ヴァンプ様が大人しくしろって言ってるんだから、大人しくしなよー!」
「静かにしないと、今日がお前達の命日だよ!」
「おまえたち コロス」
「ふもっふー!」
そう、フロシャイムが誇る最強の殺戮集団・アニマルソルジャーの面々である。なお喋れないのでセリフはないが、
Pちゃん改もきちんといるのであしからず。
「わー、ぬいぐるみだー!かわいー!」
「ウサちゃんだー!」
「ネコちゃんとワンちゃんとトリさんもいるよ!」
「ボン太くんもいるー!」
「あたし、だっこするー!」
「じゃあぼく、ボン太くんにだっこしてもらうー!」
「ちょ、ちょっとやめてよ!大人しくしないとぶっ殺すって言ってるじゃないかー!」
子供達にあっという間に揉みくちゃにされるアニマルソルジャー。その有様に、ボン太くんの中の人は戦慄した。
(これがフロシャイムのやり方か…こうして幼い子供達に<フロシャイムは善良な悪の組織>だと刷り込みを行い、
彼らが大人になる頃には<フロシャイムになら世界征服されてもいいか>と思わせるのが目的…なんという遠大
かつ恐ろしい策謀だ!)
彼の脳内でのフロシャイム評価はウナギ登りだ。今、日本で最もフロシャイムを警戒している男といっても過言で
ないだろう(他に警戒してる奴もいないだろうが)。
数分後、ようやく子供達をアニソルから引き剥がした保母さんは申し訳なさそうに頭を下げる。
「もう、この子達ったら…すいません。ヴァンプさん。折角バスジャックに来てくださったのに」
「いえいえ、いいんですよ。子供は元気が一番!ね、みんな!」
「んー…ヴァンプ様がそう言うなら…」
「だけど、こいつらが大人になったらぶっ殺すからね!覚えてなよ!」
「ヴァンプさま スキ」
「もっふー!」
送迎バスは園児達を乗せ、今にも出発しようとしていた。ここまでは普段通りだが、今日はここからが違う。
「はーい、みんなー。今日は本物の悪の組織の皆さんが、バスジャックにやってきてくれますよー」
「わーい!」
「どこどこ、かいじんどこー?」
「ほらほら、慌てないで。さあ、今から怪人さん達が来てくれますから、みんなで拍手しましょうねー」
引率の保母さんが、ドア横でそわそわしながら待機している連中に声をかける。
「それではフロシャイムの皆さーん、お願いしまーす」
「あ、はーい!」
いそいそとバスに乗り込むヴァンプ様、それに怪人達が続く。
「どうもー、私フロシャイムで将軍やってるヴァンプです。バスジャックなんて初めてで、ちょっとドキドキしてるけど、
今日は皆さん、仲良くしましょうね!」
わーっと拍手が巻き起こり、ヴァンプ様はぽっと顔を赤らめてモジモジするのだった。
「こちらこそよろしく、ヴァンプさん。それではバスジャック開始の挨拶をお願いします」
「はい、それじゃ…おっほん!このバスは我々フロシャイムが乗っ取った!命が惜しくば大人しくしていることだな
―――我々は子供であろうが、いざとなれば容赦はせん!」
子供達の間からは、どっかんどっかん大爆笑が起きた。完全に遊園地のアトラクション扱いである。
「あーコラ!命が惜しくば大人しくしろって言ったばかりじゃない、もう!」
「わー、ショーグンがおこったー!」
「こわーい!」
「わー!」
その時だった。怪人達の中から、歩み出る影があった。
「コラー!ヴァンプ様が大人しくしろって言ってるんだから、大人しくしなよー!」
「静かにしないと、今日がお前達の命日だよ!」
「おまえたち コロス」
「ふもっふー!」
そう、フロシャイムが誇る最強の殺戮集団・アニマルソルジャーの面々である。なお喋れないのでセリフはないが、
Pちゃん改もきちんといるのであしからず。
「わー、ぬいぐるみだー!かわいー!」
「ウサちゃんだー!」
「ネコちゃんとワンちゃんとトリさんもいるよ!」
「ボン太くんもいるー!」
「あたし、だっこするー!」
「じゃあぼく、ボン太くんにだっこしてもらうー!」
「ちょ、ちょっとやめてよ!大人しくしないとぶっ殺すって言ってるじゃないかー!」
子供達にあっという間に揉みくちゃにされるアニマルソルジャー。その有様に、ボン太くんの中の人は戦慄した。
(これがフロシャイムのやり方か…こうして幼い子供達に<フロシャイムは善良な悪の組織>だと刷り込みを行い、
彼らが大人になる頃には<フロシャイムになら世界征服されてもいいか>と思わせるのが目的…なんという遠大
かつ恐ろしい策謀だ!)
彼の脳内でのフロシャイム評価はウナギ登りだ。今、日本で最もフロシャイムを警戒している男といっても過言で
ないだろう(他に警戒してる奴もいないだろうが)。
数分後、ようやく子供達をアニソルから引き剥がした保母さんは申し訳なさそうに頭を下げる。
「もう、この子達ったら…すいません。ヴァンプさん。折角バスジャックに来てくださったのに」
「いえいえ、いいんですよ。子供は元気が一番!ね、みんな!」
「んー…ヴァンプ様がそう言うなら…」
「だけど、こいつらが大人になったらぶっ殺すからね!覚えてなよ!」
「ヴァンプさま スキ」
「もっふー!」
―――こうして、恐怖のバスジャックは幕を開けた。
バスはそのまま予定のコースを進み、お昼の時間となった。
「おなかすいたー!」
「せんせー、ごはんはー?」
「はいはい。今日はなんとヴァンプさんが、お弁当を用意してくれましたー!」
わー!と子供達から歓声が上がる中、ヴァンプ様がはにかみながらお弁当を配る。
奇麗な俵型のおむすびに、甘い味付けの卵焼き。タコさんウィンナーに手作りのミートボール。大好物ばかり
で子供達は大喜びだ。
そんな園児達の姿を、保母さんとフロシャイム一同は微笑ましく見守っていた。
「ふふ…こうしてると、天使みたいに可愛らしいんだから」
「本当にねえ。この笑顔を私達大人が守っていかなきゃいけませんよね!」
(作者注:この御方は世界征服を企む悪の権化・ヴァンプ将軍です)
バスはそのまま予定のコースを進み、お昼の時間となった。
「おなかすいたー!」
「せんせー、ごはんはー?」
「はいはい。今日はなんとヴァンプさんが、お弁当を用意してくれましたー!」
わー!と子供達から歓声が上がる中、ヴァンプ様がはにかみながらお弁当を配る。
奇麗な俵型のおむすびに、甘い味付けの卵焼き。タコさんウィンナーに手作りのミートボール。大好物ばかり
で子供達は大喜びだ。
そんな園児達の姿を、保母さんとフロシャイム一同は微笑ましく見守っていた。
「ふふ…こうしてると、天使みたいに可愛らしいんだから」
「本当にねえ。この笑顔を私達大人が守っていかなきゃいけませんよね!」
(作者注:この御方は世界征服を企む悪の権化・ヴァンプ将軍です)
その後もバスジャックは何事もなく予定通りにスケジュールを消化し、いよいよクライマックスを迎えた。
「さあみんな。今日のバスジャックはどうでしたかー?」
「たのしかったー!」
「ウサちゃんたち、かわいかったー!」
「お弁当、おいしかったー!」
「うふふ、よかったわね。それじゃあ最後に、ヒーローに助けに来てもらいましょう!」
「わーい!」
はしゃぐ園児達の前に、ヴァンプ様がにこにこ笑いながら最後の挨拶に向かった。
「えー、それでは不肖ながら、私が音頭を取りますよ。さあ、皆で川崎を守るあの人を呼びましょう!せーの!」
「「「たすけてー、サンレッドー!」」」
その声に応え、我らがヒーロー・サンレッドが颯爽と…否。鬱陶しそうに、ドアからのっそりバスに乗り込んだ。
なお、今日のTシャツは<まじこい>。意味が分からなくても、大きなお友達しか検索しちゃいけません。
「ちょちょ…ちょっとレッドさんったら!カッコ良く登場して下さいねってお願いしたじゃないですか!どうして
普通にドアから入ってきたりしちゃうんですか、もう…」
―――この先はどう詳しく書いても<レッドさんが怪人全員ワンパンで昏倒させた>以外に書くことはないので、
割愛させていただくことにしよう。
こうしてフロシャイムの恐るべき計画は、我らがサンレッドの活躍によって食い止められたのだった。
正義と悪、双方の名誉のためにもそういうことにしといてあげて。
「さあみんな。今日のバスジャックはどうでしたかー?」
「たのしかったー!」
「ウサちゃんたち、かわいかったー!」
「お弁当、おいしかったー!」
「うふふ、よかったわね。それじゃあ最後に、ヒーローに助けに来てもらいましょう!」
「わーい!」
はしゃぐ園児達の前に、ヴァンプ様がにこにこ笑いながら最後の挨拶に向かった。
「えー、それでは不肖ながら、私が音頭を取りますよ。さあ、皆で川崎を守るあの人を呼びましょう!せーの!」
「「「たすけてー、サンレッドー!」」」
その声に応え、我らがヒーロー・サンレッドが颯爽と…否。鬱陶しそうに、ドアからのっそりバスに乗り込んだ。
なお、今日のTシャツは<まじこい>。意味が分からなくても、大きなお友達しか検索しちゃいけません。
「ちょちょ…ちょっとレッドさんったら!カッコ良く登場して下さいねってお願いしたじゃないですか!どうして
普通にドアから入ってきたりしちゃうんですか、もう…」
―――この先はどう詳しく書いても<レッドさんが怪人全員ワンパンで昏倒させた>以外に書くことはないので、
割愛させていただくことにしよう。
こうしてフロシャイムの恐るべき計画は、我らがサンレッドの活躍によって食い止められたのだった。
正義と悪、双方の名誉のためにもそういうことにしといてあげて。
「―――ヴァンプさんにレッドさん、それに怪人の皆さん。今日は本当にありがとうございました」
「いえいえ。私達も初めてバスジャックをやらせていただいて、本当にいい経験になりましたよ」
「子供達も喜んでましたよ。次の機会もまたヴァンプさん達に頼もうかしら、うふっ」
「ははは、じゃあ次はもっと上手くジャックできるように練習しますんで。その時はレッドさんも、また協力して
くださいね…いたっ!もー、どうして殴ったりするんですか!」
ヴァンプ様の抗議の声を無視し、サンレッドは一人、背中にヒーローの哀愁を漂わせつつ夕暮れの道を歩く。
(俺、このままだと一生ファイアーバードフォームなんて使う機会ないんじゃねーかな…)
どうせなら決闘神話の方に出演したかったなどと思いつつ、レッドは虚しさを持て余すのだった。
「いえいえ。私達も初めてバスジャックをやらせていただいて、本当にいい経験になりましたよ」
「子供達も喜んでましたよ。次の機会もまたヴァンプさん達に頼もうかしら、うふっ」
「ははは、じゃあ次はもっと上手くジャックできるように練習しますんで。その時はレッドさんも、また協力して
くださいね…いたっ!もー、どうして殴ったりするんですか!」
ヴァンプ様の抗議の声を無視し、サンレッドは一人、背中にヒーローの哀愁を漂わせつつ夕暮れの道を歩く。
(俺、このままだと一生ファイアーバードフォームなんて使う機会ないんじゃねーかな…)
どうせなら決闘神話の方に出演したかったなどと思いつつ、レッドは虚しさを持て余すのだった。
―――天体戦士サンレッド。
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!
これは神奈川県川崎市で繰り広げられる、善と悪の壮絶な闘いの物語である!