「大丈夫ですか?鬼塚先生。」
内山田教頭に追われ続けていた鬼塚は一周廻って屋上に戻っていた。
「大丈夫っすよ冬月ちゃん。それよりさっきの爆発何すか?」
「それが、今日から登校し始めた阿久津って生徒が怪しいって職員室で大騒ぎになってるんですよ。」
それでは何の為に今まで鬼塚達が追い駆け回されていたのだろうか?
「またすぐに生徒疑っちまうってのも、拙いんじゃないですかね。それに阿久津ってうちの生徒じゃないですか。」
とても神崎相手にマジギレしていた男とは思えない。
「鬼塚、追いだせるの?」
相沢が阿久津に問いただす。教師に余程の恨みがあるのだろうか、表情に鬼気迫るものがある。
そんな相沢の問いに阿久津は返事を返さない。
「ねえ、大丈夫なの!?今回の相手は一筋縄じゃいかないって話したでしょう?」
「五月蠅い、大体お前が”あんな事”をしなけりゃ”アイツ”が退学する事はなかったんだ!?
お前にも責任はあるだろう。」
「でも、アンタにだって教師に恨みはあるでしょう。”あんな事件”が起きたんだから。」
阿久津の威圧感に相沢はやや引く。阿久津はその様子を冷たい目線で見つめている。
「明日からでいいだろ、疲れた。」
一言言い残し阿久津は校門を出て行った。
「チッ!」
「あ、薫く~ん!!」
下校時に無免でSTEEDを乗り回している阿久津に野村朋子(通称トロ子)が声を掛ける。
「トロ子、久しぶりじゃねえか、今日来てなかったよな。」
「うん、私いま芸能プロダクションに入ってるんだ。」
思わぬ返答に阿久津は思わず吹き出す。
「お前が芸能人なのかよ!?まあでも昔から人形遊びの演技が上手いからな。。」
今日初めて見せる阿久津の笑顔。
小等部の頃から阿久津は何かと野村とよく話していた。
「せっかくだからよ、飯食いに行かねーか?乗せてやるぜ。」
と、言われるがままに野村は阿久津の後ろに乗る。
「危ねーからよ、ちゃんと捕まっとけよ。」
無免許でバイクに乗った中学生二人を当然周りの大人は白い目で見ていた。
近くのラーメン屋で夕食を済ませた所で沖ノ島マネージャーに野村は連れて行かれる。どうやら雑誌の取材のようだ。
再び一人で国道を走っていると、十五人程の暴走族と運悪く鉢合わせになった。
「オイコラァ!!テメエみてえな中坊がSTEED乗り回して俺達のシマ上がってくるなんてよぉ、ナメてんのかぁ!!」
制裁とばかりに鉄パイプで襲い掛かる男に対し阿久津は一撃でアスファルトに沈める。
「ニィーちゃんよぉ、相手見て喧嘩売った方がいいんじゃねえか?」
族の頭のような男に蹴りを入れる。大したダメージではないがその一撃が男のプライドを打ち砕く。
「上等だぜ貴様、ぶっ殺してやんよぉ!!!!」
「その言葉、そっくりリボンでも付けて返してやるぜ。」
「小僧、そんなに足が曲がっちゃいけねえ方向に曲げて欲しいようだな。」
二人のボルテージがMAXまで高まる。…が、喧嘩の内容は呆気ないものだった。
「こ、このやろ……」
顔面がボコボコに腫れた族の頭が涙目になりながら必死で抵抗する。
「ククク、曲がっちゃいけない方向に足を曲げるのは、アンタの方だったな。」
阿久津は笑いながら男の足を踏み続けた。周りの男達は目の前の光景にただ茫然としていた。
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!」
断末魔が響く。乱闘騒ぎで通行止めを喰らっていた通行人達は思わず耳を塞ぐ。
「いっただろ?相手見て喧嘩売れって。」
阿久津はそのまま走り去って行った。
一足遅く警察が駆けつける。
「お前達だな?こんな所で騒いでいたのは。」
その日暴走族十五人は保護観察処分を受ける事になる。
内山田教頭に追われ続けていた鬼塚は一周廻って屋上に戻っていた。
「大丈夫っすよ冬月ちゃん。それよりさっきの爆発何すか?」
「それが、今日から登校し始めた阿久津って生徒が怪しいって職員室で大騒ぎになってるんですよ。」
それでは何の為に今まで鬼塚達が追い駆け回されていたのだろうか?
「またすぐに生徒疑っちまうってのも、拙いんじゃないですかね。それに阿久津ってうちの生徒じゃないですか。」
とても神崎相手にマジギレしていた男とは思えない。
「鬼塚、追いだせるの?」
相沢が阿久津に問いただす。教師に余程の恨みがあるのだろうか、表情に鬼気迫るものがある。
そんな相沢の問いに阿久津は返事を返さない。
「ねえ、大丈夫なの!?今回の相手は一筋縄じゃいかないって話したでしょう?」
「五月蠅い、大体お前が”あんな事”をしなけりゃ”アイツ”が退学する事はなかったんだ!?
お前にも責任はあるだろう。」
「でも、アンタにだって教師に恨みはあるでしょう。”あんな事件”が起きたんだから。」
阿久津の威圧感に相沢はやや引く。阿久津はその様子を冷たい目線で見つめている。
「明日からでいいだろ、疲れた。」
一言言い残し阿久津は校門を出て行った。
「チッ!」
「あ、薫く~ん!!」
下校時に無免でSTEEDを乗り回している阿久津に野村朋子(通称トロ子)が声を掛ける。
「トロ子、久しぶりじゃねえか、今日来てなかったよな。」
「うん、私いま芸能プロダクションに入ってるんだ。」
思わぬ返答に阿久津は思わず吹き出す。
「お前が芸能人なのかよ!?まあでも昔から人形遊びの演技が上手いからな。。」
今日初めて見せる阿久津の笑顔。
小等部の頃から阿久津は何かと野村とよく話していた。
「せっかくだからよ、飯食いに行かねーか?乗せてやるぜ。」
と、言われるがままに野村は阿久津の後ろに乗る。
「危ねーからよ、ちゃんと捕まっとけよ。」
無免許でバイクに乗った中学生二人を当然周りの大人は白い目で見ていた。
近くのラーメン屋で夕食を済ませた所で沖ノ島マネージャーに野村は連れて行かれる。どうやら雑誌の取材のようだ。
再び一人で国道を走っていると、十五人程の暴走族と運悪く鉢合わせになった。
「オイコラァ!!テメエみてえな中坊がSTEED乗り回して俺達のシマ上がってくるなんてよぉ、ナメてんのかぁ!!」
制裁とばかりに鉄パイプで襲い掛かる男に対し阿久津は一撃でアスファルトに沈める。
「ニィーちゃんよぉ、相手見て喧嘩売った方がいいんじゃねえか?」
族の頭のような男に蹴りを入れる。大したダメージではないがその一撃が男のプライドを打ち砕く。
「上等だぜ貴様、ぶっ殺してやんよぉ!!!!」
「その言葉、そっくりリボンでも付けて返してやるぜ。」
「小僧、そんなに足が曲がっちゃいけねえ方向に曲げて欲しいようだな。」
二人のボルテージがMAXまで高まる。…が、喧嘩の内容は呆気ないものだった。
「こ、このやろ……」
顔面がボコボコに腫れた族の頭が涙目になりながら必死で抵抗する。
「ククク、曲がっちゃいけない方向に足を曲げるのは、アンタの方だったな。」
阿久津は笑いながら男の足を踏み続けた。周りの男達は目の前の光景にただ茫然としていた。
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!」
断末魔が響く。乱闘騒ぎで通行止めを喰らっていた通行人達は思わず耳を塞ぐ。
「いっただろ?相手見て喧嘩売れって。」
阿久津はそのまま走り去って行った。
一足遅く警察が駆けつける。
「お前達だな?こんな所で騒いでいたのは。」
その日暴走族十五人は保護観察処分を受ける事になる。
そして翌日。
「え~本日は授業参観日と言いますか、保護者の方々が見に来られるので、授業一時間に細心の注意を払って下さいね。
特に鬼塚先生!!!あなたのクラスに言っているんですよ。もしも問題を起こすような事があれば…分かっていますね?」
「わ、分かってますよ~。そう心配しないで下さいよ。」
鬼塚は教室に入ると既に一人生徒の保護者と思しき者がいた。
「じゃあじゅぎょ……」
鬼塚は思わず眼を丸くした。それは相手も同じだっただろう。
「阿久津!!?」
「……鬼塚?」
神奈川の湘南で起こった第二次湘南戦争。当時辻堂高校一年(留年)の時に戦った二代目暴走天使。
そのリーダー、阿久津淳也が、六年の時を経て、再会した。
当然事情を知らない大多数の生徒は首を傾げるばかりである。
「ふん、まさかお前が教師やってるなんてな、世の中どうなるか分からねえもんだな。」
「てか何でお前がここにいるんだよ!」
「薫がここのクラスだからだ。」
阿久津(淳)は目線を阿久津(薫)に流す。
「別にこんな所まで来なくていいのによ、俺はもう家を出た身なんだぜ?」
睨みつけるような眼で兄を見る。
「まあ、親父に頼まれてるからな。それに、一人にしておくとまた”やる”んだろ。」
二人の間に不穏な空気が流れる。
「な、何とかならねえのかよこの状況。」
村井は冷や汗を掻いて阿久津兄弟を見つめていた。
その日、授業自体は和やかに進んでいった。この日何の問題も無く終わった事が、内山田教頭にとって何よりの喜びであった。
『ああ、昨日は教室の爆破等危ない事があった。というよりも鬼塚が来てから平和な日など無かったからな。そうだ、今夜は娘に土産でも買って帰ろう。』
そんな事を考えながら盆栽の手入れをしていたら左小指を切ってしまった。
「だあああああ!!!!」
猪木ばりのダーが学園中にこだました。
「で、なんでここに来るんだ。」
鬼塚に続き阿久津までも弾間龍二のバイクショップに来ていた。
「大体俺はな、まだ完全にお前のこと許したっつうわけじゃないぜ。」
六年前、今の龍二の彼女である長瀬渚の第二人格である(夜叉)を引き出させた男であったため、当時は阿久津を殺す決意までしたこともある。
「それはそうとアイツ、お前の弟だったんだな。どっかで見たことあるような気が……」
一度言いかけて止まる。
「おい、どうしたんだ英吉?」
「いや、なんでもねえ。」
初めて阿久津薫を見た時は、阿久津の弟かも知れないという思いはまるで出てこなかった。
もっと異質的な”再会”と呼ぶような思いを、鬼塚は体験していたのだ。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るぞ。」
と、そそくさと阿久津は帰って行った。
「アイツ、結局何しに来たんだ?」
「え~本日は授業参観日と言いますか、保護者の方々が見に来られるので、授業一時間に細心の注意を払って下さいね。
特に鬼塚先生!!!あなたのクラスに言っているんですよ。もしも問題を起こすような事があれば…分かっていますね?」
「わ、分かってますよ~。そう心配しないで下さいよ。」
鬼塚は教室に入ると既に一人生徒の保護者と思しき者がいた。
「じゃあじゅぎょ……」
鬼塚は思わず眼を丸くした。それは相手も同じだっただろう。
「阿久津!!?」
「……鬼塚?」
神奈川の湘南で起こった第二次湘南戦争。当時辻堂高校一年(留年)の時に戦った二代目暴走天使。
そのリーダー、阿久津淳也が、六年の時を経て、再会した。
当然事情を知らない大多数の生徒は首を傾げるばかりである。
「ふん、まさかお前が教師やってるなんてな、世の中どうなるか分からねえもんだな。」
「てか何でお前がここにいるんだよ!」
「薫がここのクラスだからだ。」
阿久津(淳)は目線を阿久津(薫)に流す。
「別にこんな所まで来なくていいのによ、俺はもう家を出た身なんだぜ?」
睨みつけるような眼で兄を見る。
「まあ、親父に頼まれてるからな。それに、一人にしておくとまた”やる”んだろ。」
二人の間に不穏な空気が流れる。
「な、何とかならねえのかよこの状況。」
村井は冷や汗を掻いて阿久津兄弟を見つめていた。
その日、授業自体は和やかに進んでいった。この日何の問題も無く終わった事が、内山田教頭にとって何よりの喜びであった。
『ああ、昨日は教室の爆破等危ない事があった。というよりも鬼塚が来てから平和な日など無かったからな。そうだ、今夜は娘に土産でも買って帰ろう。』
そんな事を考えながら盆栽の手入れをしていたら左小指を切ってしまった。
「だあああああ!!!!」
猪木ばりのダーが学園中にこだました。
「で、なんでここに来るんだ。」
鬼塚に続き阿久津までも弾間龍二のバイクショップに来ていた。
「大体俺はな、まだ完全にお前のこと許したっつうわけじゃないぜ。」
六年前、今の龍二の彼女である長瀬渚の第二人格である(夜叉)を引き出させた男であったため、当時は阿久津を殺す決意までしたこともある。
「それはそうとアイツ、お前の弟だったんだな。どっかで見たことあるような気が……」
一度言いかけて止まる。
「おい、どうしたんだ英吉?」
「いや、なんでもねえ。」
初めて阿久津薫を見た時は、阿久津の弟かも知れないという思いはまるで出てこなかった。
もっと異質的な”再会”と呼ぶような思いを、鬼塚は体験していたのだ。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るぞ。」
と、そそくさと阿久津は帰って行った。
「アイツ、結局何しに来たんだ?」