SS暫定まとめwiki~みんなでSSを作ろうぜ~バキスレ しけい荘大戦 第三十二話「シコルスキー対純・ゲバル」


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 開始の合図は巨大な爆発音だった。
 互いの激突を本能のレベルで欲していた、しけい荘203号室在住、シコルスキーとゲ
バル。筋力をフル稼働させ、間合いを縮める。
 右拳と右拳。二人は気が合っていた。ゆえに同じ武器を初弾に選んだ。
 カウンター気味に顔面を突き刺し合う両者。
 打撃音に伴い激しく火花が飛び散り、強靭(タフ)な二人の体がぐらりと揺れた。ひと
まず痛み分けといったところか。
「──グゥッ!」
「ガハッ!」
 さっきまでの勢いとは一転、闘争がクールダウンする。
 体勢を立て直し、ゴング代わりとなった爆発について振り返るゲバル。
「さっきの爆発……どうやら向こうは決着したようだな」
「ドイルは敗けない。あいつの負けず嫌いはよく知っている」
「……フッ、あとは俺たちだけだ。始めようか」
「ゲバル。ルームメイトと敵対するってのは嫌なもんだ。なのに俺は今、心底から嬉しん
でいる。ずっと……こうなりたかったのかもしれない」
「俺もだよ。天内に勝利してくれたこと、心から感謝する」
 共に強敵との激戦を制してのコンディション。条件は五分、しけい荘で部屋を同じくす
る者同士の一騎打ちを止められる者はだれもいない。

 低空タックルに打って出るシコルスキー。目線はゲバルの下半身を向いている。組み技
を警戒し、ゲバルが即座に身構える。
 まもなく掴みかかろうという時、なんとシコルスキーは跳んだ。
 ドロップキック。テロリスト軍団のボス天内悠を打倒してのけた得意技が、いきなり火
を噴いた。
 虚を突かれたゲバルはこれをまともに喰らい、五メートル近く吹っ飛んだ。
「チィッ!」
 一方、着地したシコルスキーは一呼吸も置かず、追尾を開始する。起き上がるも未だド
ロップキックのダメージが抜けていないゲバルに、拳のラッシュが迫る。
 ジャブ、ストレート、フック、アッパーと使い分けられる拳に、ゲバルはガードを固め
るしかない。中途半端に手を出せば致命打を許してしまう。
 ゲバルは打たれながら、実感していた。シコルスキーは強くなっている、と。
 天内戦はシコルスキーに負傷と、それを補って余りある成長をもたらしていた。
 ついにゲバルのガードが綻ぶ。すかさずシコルスキーはボディブローでガードを下げさ
せ、心臓部に肘打ちを叩き込んだ。
「ぐふっ……!」
 効いている。嫌がっていると表現した方が正しいかもしれない。ゲバルは柳との戦いで
胸部に深いダメージを刻まれていたからだ。
「パンチを打っていたらなんとなく分かった。ゲバル、おまえが胸部への被弾を特に避け
ていることに」
 天内から体で教わった闘争のコツ「相手がもっとも望まないことの実行」をも披露して
みせる。強くなっただけでなく、巧くなってもいた。
 追い込まれたゲバルだが、ここでいつものフレーズを口ずさむ。
「今日は、死ぬにはいい日だ」
 己が担う勇気を再認識し、ゲバルが初めて攻勢に出る。緩やかな左アッパーをシコルス
キーの顎にコツンと当てる。ダメージ狙いではない。脳をシェイクさせ、ほんの一瞬だけ
無防備にできればよかった。
 ──次こそが本命。
 ゲバルの右アッパーが、顎を激しくもしなやかに打ち抜く。過激すぎる打突音。
 ハイキックによるダメ押し。
 しかし、シコルスキーはかろうじて踏みとどまった。流れを一変させるような打撃をも
らってなお、シコルスキーは倒れない。
「さすが……アンチェインに鍛えられているだけのことはあるな」
 打って変わってゲバルの猛攻である。単純な筋力(パワー)ではシコルスキーの上をゆ
くゲバル。ガードの上からでもお構いなしに、次々と打撃を注ぎ込む。
「グウゥ……ッ!」
「フィナーレだッ!」
 ラッシュが本格化する。防御と生命が削ぎ落とされるのが分かる。
 せめてもう一度、あと一度だけでいいから攻撃チャンスが欲しい。シコルスキーは極限
の集中力下である技の存在を閃いていた。
「強くなるだけじゃ、つまらないぜ。ゲバル……」

 護身開眼──。

 ゲバルは驚きの色を隠せなかった。
 無理もない。今の今まで自分と勇ましく戦っていたシコルスキーが、突然後ろを振り向
いて背中を丸めてしまったのだから。
 しかし、ゲバルは迷わない。相手が敗北を認めていない以上、戦わねばならない。友で
あるならばなおさらだ。
 より強烈になって背面に降り注ぐ乱打に、シコルスキーは必死の形相で持ち応える。
「これがゲバル……ッ! 戦力が七倍になったというのにこれほど効くとは……ッ!」
 タイミングを計り、シコルスキーは大きく息を吸い込んだ。補給した酸素を全て用いる
つもりで、頭を後ろに投げ出した。
 後頭部がゲバルの鼻を強打する。
「ガハァッ!」
 ゲバルが怯む。これぞシコルスキーの反撃の狼煙。
 シコルスキーは丸めた背を伸ばしながら後ろへ振り向き、膝のバネと遠心力をフル活用
した右フックを振るう。クリーンヒット。寂海王直伝の老獪戦法は、風を味方につける海
の賊(おとこ)すら欺く。
 だがゲバルも、焦点が定まらぬ眼球でシコルスキーを捕捉する。
「シコルスキー……これからおまえの自由を奪う」
 トレードマークの青いバンダナを外し、至近距離から目くらましに投げつけようとする。
ところが、シコルスキーはゲバルの手から放たれる寸前であったバンダナを、反射でキャ
ッチしてしまった。
 投げつけようとバンダナをつまむゲバルの指、受け止めようとバンダナをつまむシコル
スキーの指。
「これは……」出来すぎた偶然に、二人は同時に呟いていた。

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