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「遊☆戯☆王 ~超古代決闘神話~ 第二十三話「朗報と凶報」」(2008/12/15 (月) 21:57:56) の最新版変更点
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「ぐ、う、ううう…」
城之内は、尻を押さえて蹲っていた。長く苦しい闘いを物語るように、顔中に脂汗を滴らせている。
「じょ、城之内くん…」
「へへ…遊戯…そんな顔すんな…オレなら、大丈夫だ…ぐっ!」
気丈にも笑い飛ばそうとする城之内だったが、尻を襲う激痛は治まらない。
「くそっ…我ながら信じられねえ…まさか、あんな太くてデカいモノが、オレの腹ん中に入ってたなんてよ…」
(なんてことだ…くっ!オレがもっと注意しておけば…)
己の甘さを痛感し、闇遊戯も今さらながらに嘆く―――だが、遅かった。
全ては、あまりにも遅すぎたのだ…。
城之内は、ぜえぜえと荒く息をつきながら言った。
「まだヒリヒリしやがる…手強い相手だったぜ…一週間の便秘って奴はよ…」
そう。城之内はウ○コが太くてデカくてお尻が痛かったという話をしていたのだ。おホモな御方にヤられちゃったという
わけではないので、皆様ご安心ください。
(やはりオレがもっと注意しておくべきだったぜ…城之内くん、あまり野菜を食べないからな。きちんと食物繊維を摂る
ように言っておくべきだった)
闇遊戯は、眉間に皺を寄せるのだった。
それはさておき。
「我が兄上は…立派であった。強く、勇敢で、忠義心に溢れた、まさに真の騎士であった」
謁見の準備が整うまでの間、王宮の客間でカストルは、涙ながらに遊戯達に向けて熱弁をふるっていた。その話題
は主に、エレフとミーシャの父であり、カストルの兄である、ポリュウデウケスについてである。
―――忘れている読者もいらっしゃると思うので、序章と第十七話を参照していただきたい。双子の父の名はきちん
と明言されているし、カストルがポリュデウケスの弟であると説明している。
ね?そこまで唐突に出てきた設定でもないでしょう?―――言い訳はともかく。
「兄夫婦が死に、行方知れずになってしまったお前達を心配していたが…こんな形で出会えるとは驚いた」
そりゃまあ、姪っ子がコスプレしながら戦場にいたら、驚きもするだろう。
「私も吃驚(びっくり)したわ。お父様や叔父様がアルカディアの騎士で、叔父様が今は将軍をやってるなんて」
「何だよ。ミーシャ、自分の親父さんや叔父さんが何やってるか知らなかったのか?」
城之内の疑問に、ミーシャがこくりと頷く。
「うん…父は優しい人だったけど、昔のことはまるで話してくれなかったから…」
「うむ。そうであろうな…」
カストルは何やら訳ありげに、神妙に顔を伏せる。
(何か、事情がありそうだね)
(ああ…気になるが、無理に訊き出そうとしても、教えちゃくれないだろうな)
(うん。それに当面の問題はそこじゃないもんね)
遊戯と闇遊戯は、そう結論した。次にカストルは遊戯達に向き直ると、深々と頭を下げた。
「お前達に礼を言っておかねばな。レスボスでミーシャの命を救ってくれたこと、本当にありがたく思っておる」
「いやあ、オレ達はただの、通りすがりの正義の味方ですってね」
「そうそう、か弱い女の子を助けるのは当然のことですよ」
ふふん、と胸をそらす城之内とオリオンであった。
「それよりも、もうアルカディアはあんなことをしないですよね?」
「うむ。陛下からも正式に話があると思うが、あれは一部の者の独断と暴走なのだ…だからといって赦されるもの
でないが、どうかもう、ミーシャに対して害意はないことだけは信じてほしい」
遊戯の問いに、カストルも重々しく首肯する。
(問題ないさ、相棒。見る限りあの王様も、良識はあるようだしな…多分)
なんとも自信なさげなのは、城之内に対するあのやたらベタベタした態度を目撃しているからだろう。
「しかし、ミーシャ。お前の兄は…エレフはどうしたのだ?」
ギクッという表情が、恐らくはモロに出てしまっただろう。カストルは顔を強張らせる。
「まさか…死んでしまったなどとは…」
いずれ知れてしまうことだが、ここでいきなり<いやあ、アルカディアを滅ぼすとか息巻いて旅立っちゃったんです
よ、はっはっは>などとは言えなかった。
「あ、いえ。そんなことはないです。むしろ元気すぎるというかヤンチャすぎるというか…あ、そうだ!ここの王様、
若いのに立派ですよね!カッコいいです!憧れちゃうなぁ、ボク!」
慌てて話題を変えた遊戯に、カストルは今度は顔を曇らせる。
「…うむ。あまりにも突然に王位を継ぐこととなってしまったというに、御立派であられる」
「突然?」
「ああ。実はだな…」
―――カストルは、スコルピオスの顛末の一部始終を遊戯達に語った。ある意味で当事者の四人はそれを聞き、
複雑な表情となった。
「まさかレスボスであれだけやられて生きてたとはなあ…しかしあれだけのことやっといて、オレたちとは関係ない
ところで死んじまったか」
「これもまた、運命という奴かね」
オリオンは皮肉だ、とでも言いたげに溜息をついた。
その時、コンコンとドアがノックされた。カストルは顔を引き締めて立ち上がり、遊戯達を促す。
「どうやら準備ができたようだ。では、行こうか」
―――玉座に座ったレオンティウスは、謁見ということで少々畏まっている四人を見回した。
まず遊戯。
(あの少年、戦場とは雰囲気が違うな…しかし、今の少し頼りなげな姿もそそられる…)
次にオリオン。
(彼があの星女神の勇者か…噂通りの美貌だ。こういう男が傍にいたら、毎日楽しかろうな)
そして城之内。
(うむ。この三人の中ではやはり彼が一番タイプだ!)
…断わっておくが、こんなことばかりに現を抜かしているわけではない。彼らがやってきた理由についても、ちゃん
と考えてはいる。
(やはり、叔父上の行なったレスボスへの侵略行為についてだろうな…)
ちらり、とミーシャに目線をやる。
(彼女が星女神の巫女…それに聞くところによると、カストルの姪ということだが…)
―――ドクン、と、心臓が高鳴った。
「な…!?」
思わず、胸を押さえた。レオンティウスは愕然として、目を大きく見開く。
(バカな…まさか、私が母上以外の女に興味を持つなどありえん…!)
レオンティウスは戦慄すら覚える。彼にとって女に興味を持つということは、女の肛門を貫かなくてはならぬという
ことに他ならない。そんな至ってノーマルな性生活など願い下げだ。
(いや…違う!彼女に対する感情は、そうではない…)
歴代・自分の愛した男達を思い出す。彼等への熱い想いと、ミーシャに感じる想いは、似て非なるものだ―――
心はどこか穏やかで、優しさに満ちる。まるで―――
(まるで…家族であるかのような…?)
「あの、どうかしたんですか?」
様子がおかしいレオンティウスを心配してか、ミーシャが声をかけてくる。
「む…すまない。先の戦で少し疲れているのかもしれんな。ボンヤリしていた」
レオンティウスは咳払いし、話を戻した。
「まずはレスボスでの先の一件について侘びよう…謝って済む話ではないだろうが、申し訳ないことをした」
「そりゃもう終わったことだし、あんたが謝っても仕方ねえよ。それよりか、もう二度とあんな真似はしねーって
約束してほしいだけだ」
「そうでなきゃ、ミーシャも安心して暮らせねーってもんだからな」
口を尖らす城之内とオリオンに対し、レオンティウスは神妙に頷く。
「分かっている。あのような愚行は二度と起こさぬ。アルカディアの王として、ここに誓おう」
上っ面でない誠意に満ちた言葉に、遊戯達の顔に笑みが浮かぶ。カストルも、ほっとして胸を撫で下ろしていた。
(ひとまずは安心か…しかし相棒、ここで話を終わらすわけにはいかないぜ)
(うん、分かってるよ。エレフと海馬くんのことも話さないとね)
「さて―――他に用件があるのではないか?」
遊戯の様子を見てとったのか、レオンティウスから話を振ってくれた。ありがたいことである。
「ええ、実は…」
「待って、遊戯―――私が話すわ」
ミーシャが遊戯を押し止めた。
「ミーシャさん…いいの?」
「ええ…私が言うべきだと思うわ。兄のことですもの」
兄という言葉、そしてミーシャの余りにも真剣な表情に、カストルが息を呑むのが分かったが、ミーシャは澱みなく
語り出した。
レスボスでの一件と、それに続く海馬、そしてエレフの行動―――
カストルにとっては甥のことである。話が進むにつれて沈痛な面持ちになっていくのも仕方ないことであろう。話を
聞き終える頃には、彼は掌で顔を覆い嘆いていた。
「なんということだ…そんなことになっていようとは…」
「うむ…」
レオンティウスも口元に手を当て、対応に悩んでいる様子だった。
「正直、国家としては、たった二人の反乱者のためだけに労力を裂くことなどできん…」
ただ、とレオンティウスは付け加える。
「キミ達には負い目もあるし恩もある。あまり大々的な協力はできないが、各地にいる兵や密偵に、それらしき二人
を見かけたら報告するように伝えよう。勿論それは、キミ達にも教える―――残念だが、私には今はそれくらいしか
協力してやれない。申し訳ないが…」
「いやあ、それで十全ですよ。王様」
オリオンはさっぱりした口調だ。
「オレ達だけじゃ、あいつらを探すことさえ難しかったからな。一緒に探してくれるってだけでありがたいぜ」
「それに、ミーシャの身の安全も保障してくれたんだ。これ以上どうにかしてくれなんざ、バチが当たるぜ」
「うん。それだけで、充分に朗報だよ。居場所さえ分かれば、後はボク達で解決するべきだ」
城之内と遊戯もそれに同意する。ミーシャも笑って頷く。それを見て、レオンティウスも安心したようだった。
「そう言ってもらえるとこちらもありがたい…後の処遇についても、カストルの甥というなら、私にとっても身内同然
だ。できる限りの便宜は図ろう。カストル、それでよいな?」
「はっ…ありがたきお言葉です、陛下」
カストルは感激したように言葉を詰まらせる。
(やれやれ。どうなるかと思ったが、どうにか丸く収まりそうだな)
闇遊戯も安堵し、胸を撫で下ろしたその時だった。
「―――陛下!」
バタバタと騒々しく、兵士が王の間へと駆け込んできた。カストルはそれに対し、眉を吊り上げて怒鳴りつけた。
「何事だ!?陛下は今、客人と話をしておられる。後にしろ!」
「はっ…し、しかし、本当に一大事でして…」
縮こまりながらも、兵士は言い募る。
「あ、ボク達なら結構ですから、どうぞ」
可哀想に思い、遊戯が助け舟を出す。レオンティウスも鷹揚に首を縦に振った。
「で、では申し上げます…実は先日イリオンに、二人組の賊が率いる、奴隷の集団が攻め入ったと…」
「なんだと?どういうことだ」
「イリオン?」
聞き耳を立てていた城之内が、首を傾げる。
「おい、オリオン。イリオンってなんだよ?お前の兄貴かなんかか?」
「うむ。実は俺にはアリオン・イリオン・ウリオン・エリオンという四人の兄が―――いねえよ、バカ」
「違うよ、城之内くん。今まで何度か話に出たじゃないか。ほら、風の都のことだよ」
「そう、それさ。ついでに言うと、俺とエレフが不遇の奴隷時代を送った愛すべき場所だよ」
オリオンが皮肉たっぷりに口にする。ミーシャも、彼女には珍しく顔を不快そうに歪めていた。
(そういやミーシャさん、確かそこで、変態神官に乱暴されそうになったんだっけ…)
遊戯はオリオンから聞いた話のことを考えた。イリオンという言葉は、彼女に嫌なことを思い出させてしまったの
かもしれない。
「しかし、よりによってあそこに攻め込むとはどこのバカだ?あそこは世界最強最大の城塞と謳われてるんだぜ。
おまけに、英雄イーリウスまでいるときた」
「イーリウス?それは聞いたことがないなぁ…」
「イリオンを守護する神は、風神(アネモス)。その血を継ぐ、当代随一の武人にして神の眷族。俺も一度だけ奴
の戦いを見たことがあるが―――英雄通り越してバケモンだぜ、ありゃあ。下手すりゃ俺以上の強さかもしれん」
「オリオン以上か…つまり、そんなに大したことないって意味だな」
「城之内…お前、喧嘩売ってんの?」
「怒んなよ。ジョークだって」
コホン、とレオンティウスが咳をする。ちょっと騒ぎすぎたようだった。
「で?その者たちが、どうしたと?まさかイリオンが落とされたなどと冗談を言うわけではあるまい」
「非常に申し上げにくいことですが…仰る通りです」
「なに?」
レオンは聞き返そうとして―――絶句した。その意味するところを、理解してしまったからだ。
「英雄イーリウスは斃れ…イリオンは…風神(アネモス)の加護篤きあの都は、陥落しました…」
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