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「60分で書く! ③」(2008/08/16 (土) 09:54:23) の最新版変更点
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江田島平八は男塾の塾長になる前、雀荘の店長をやっていた。高田馬場のノース
ウエストという雀荘だ。ある日の夜、この雀荘で究極の闘牌が行われた。
「わしゃ打たんぞー!」
江田島は最初、対局を嫌がった。他のメンツはのび太、ドラえもん、アカギとい
う顔ぶれで、みんなマナーのマの字も知らない迷惑千万な客だった。江田島も客を
いじめるのが趣味だったのでそこに文句はないのだが、アカギにさんざんカモられ
たのはショックだった。最後にもう半荘やりましょう、と誘われているのだが、も
うアカギとは打ちたくない。始めに10万点もらったとしても絶対に打ちたくない。
「じゃあ100万点あげる」
「そんなもんはいらんわー!」
江田島は雀卓にどっかと座ってサイコロを回した。起家は江田島になった。点箱
にはのび太からもらった100万点分の点棒が山盛りになっている。
「あ、100万点もらったからやる気になったんだ」
「貴様らがピーピーうるさいからしょうがなく混ざってやるんじゃ! 100万点なん
ぞなくったって、ワシが本気で打ったらどいつもこいつも犬のクソじゃい!」
「じゃあ100万点返して」
「それとこれとは話が別じゃー!」
東1局、親の江田島の第1打、西。
「貴様らさんざんワシを侮辱しおって、もう許せん! 本気の本気で実力で勝つ!
そして100万点は絶対に返さん!」
気がついたら対局が始まっていた。東1局にして江田島が100万点のトップという、
圧倒的な展開だった。
「ねえねえドラえもん。江田島さんはトップを取れると思う?」
「思う思う。それロン」
一二二三三四(999)77西西
「ふーんそっか。アカギさんも江田島さんがトップだと思う?」
東2局、江田島の第5打、二筒。
「ああ。ロン」
(1345556789)中中中
アカギとドラえもんは、江田島から暴風のようにアガりまくった。そしてオーラ
スが終了した。
「結果」
江田島 350,100点
アカギ 350,000点
ドラえもん 349,900点
のび太 25,000点
アカギとドラえもんの猛追及ばず、江田島が辛くも勝利した。
「わーい! やっぱり江田島さんの優勝だー! さっすがー!」
のび太は江田島に抱きついて喜んだ。アカギとドラえもんも江田島に拍手を送っ
た。江田島がんばった! 江田島えらい!
「全然嬉しくないわー!」
江田島は全身から怒りの炎を吹き上げて厨房にかけ込んだ。厨房から猫の鳴き声
みたいな絶叫が聞こえてきて、少しして江田島が戻ってきた。体中に茶色と赤の染
みがついている。厨房ではセワシが夜食のカレーを作っているはずだった。
「100万点もらって100点差のトップってなんじゃそれ! わしゃどんだけカモにさ
れとんじゃ!」
「わかったらそこに座りなさい」
のび太は静かな口調で言った。しかし江田島の怒りは収まらない。
「貴様はこの半荘、なーんもできんかっただろうが! 偉そうにすんなボケ!」
「座りなさい!」
のび太はもう一度、少し厳しい口調で言った。アカギとドラえもんも黙って江田
島を見ている。江田島はなんだかいたたまれなくなって、おとなしく席に座った。
「江田島さん、100万点あるから少しぐらいふっても大丈夫とか思ってたでしょ」
「おす」
江田島はしょげかえってうなずいた。蚊の鳴くようなか細い声だった。
「ズルしてこの程度しか勝てないのって、すごく恥ずかしいでしょ」
「おす」
「最初からちゃんとした点数で打ってたら、油断しないから勝ってたかもよ」
「おす」
のび太の説教に、江田島は返す言葉もなかった。アカギが江田島の肩を叩いて優
しく言った。
「正々堂々とやろう」
「おす! わし正々堂々とやる!」
「よし。この半荘はなかったことにして、最初からやり直そう」
「おす! わし正々堂々とやる!」
仕切り直しの東1局、起家はアカギ。点棒はみんなキッチリ25,000点で、のび太だ
け万点棒が500本多い。
「いやいやいやいやのび太さん」
江田島は笑いながらのび太の万点棒をへし追ってゴミ箱に捨てた。ドラえもんは
変なサングラスをかけている。
「いやいやいやいやドラえもんさん」
江田島は笑いながらサングラスをひったくって、自分でかけた。麻雀牌が透けて
見える未来のサングラスだった。アカギの手を見るとすでに国士無双をアガってい
る。
「ククク……」
「いやいやいやいやアカギさん。クククじゃなくて」
江田島は笑いながらサングラスをひねり潰して窓から捨てて、アカギの手牌を頭
突きでこっぱみじんに砕いた。
「さあみんな! 正々堂々と闘おう!」
「いえー!」
答え。ムリです。
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