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「その名はキャプテン 53-4」(2008/02/10 (日) 23:49:17) の最新版変更点
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ホークの剣、正確にはスタン・エルロンの持っていたソーディアンと呼ばれる古代兵器。
得体の知れない術法によって傷口を塞いだシンの手で、その力を解放していた。
脱出したのが廃墟付近で正解だった、もし町中に出てたらパニックでは済まない。
「ホーク、構えだけでもある程度なら流派や繰り出す技を特定することはできるな?」
「ああ?アイツはお前の知り合いだろ、南斗聖拳とやらについちゃ何一つ知らねぇ。」
「俺は幼少から南斗に修行に出された事もあって大体だが知っている、だが南斗にあんな構えはない。」
両腕で剣を持ち、腰を深く落とし不気味な目でこちらを見つめている。
よく見ればアサシンと呼ばれるクジャラートの隠密に伝わる構えに似ている。
両腕を脱力させた状態から、独特の足捌きで接近して変則的な攻撃を繰り出すと聞く。
だが、そういったトリッキーな戦術は複数の相手に対しては行い難い。
動きが制限される状況では、守りを固めるか圧倒的な攻撃力で敵の数を減らすか。
恐らく奇怪な戦術を取るフリをして、誰か一人を最初に片付けようとするだろう。
ダラリと下げた両腕を持ち上げ、剣を片手に持ちかえ後ろに引いた状態で水平にし、手を添える。
東洋剣技に伝わる突きの体制に似ている、一撃で始末する気だ
視線はハッキリとベアへと向いているが、剣技ならベアの方が上手の筈。
視線でゲラ=ハに合図を送り、シンの突撃した直後を叩く為にベアから離れた。
ベアはシンから一瞬たりとも目を離してはいなかったが、足音で意図は伝わったようだ。
完全に防御の構えに入っている、竜の尾さえ退けたパリィの構え。
そして、ついにシンが動いた。
だが、動かしたのは上半身だけだった。
水平にした剣を、まっ直ぐ突きだす。
ただ、それだけだった・・・それだけでベアは背後の廃屋へ突っ込んでいった。
「・・・何しやがった・・てめ・・・・。」
光が、剣から放たれた眩い光の腕がベアを貫いた。
光の腕、直線状に放たれる突きによる剣圧。
威力の高い剣技ではあるが、シンはソーディアンの炎を一緒に飛ばし更に攻撃力を上乗せした。
「ベアを一瞬で!?」
「下がれゲラ=ハ!」
その場から飛びのいたが遅かった、またしてもその場から動かずにゲラ=ハに向かって剣を振る。
するとどういうことか、ゲラ=ハの周囲を陽炎が包むかのように歪んでいく。
空中で静止するゲラ=ハは、ただ空間の歪みに取り込まれていくのを見ているしかなかった。
次元断、ホークもこの技と同レベルの技、夜叉横断を習得しているが攻撃力は次元断の方が上である。
「ゲラ=ハぁ!」
「遅かったようです・・・炎で動きを封じながらの次元断、これは強敵ですね・・・。」
脇腹がパックリと抉り取られ、地面に倒れ込むゲラ=ハ。
出血がひどく、このままでは死を待つしかない。
「中々・・・腕の立つトカゲだな、次元の割れ目が心臓に向かうようにしたのだが。」
「てめェェェェ!」
武器を持たないホーク、無力だと分かってはいても立ち向かわずにはいられなかった。
ゲラ=ハは一番の相棒だった、苦楽を共にした戦友を失って黙っている訳にはいかない。
ドスッ、シンの間合いに踏み込む直前に鈍い音が響く。
「け、ケンシロウ・・・!?」
「秘孔、新胆中。俺の声が掛からない限りお前は一歩も動くことはできない。」
かつて、兄であるトキが使ったこの秘孔。
今、同じことを自分もしようとしている。
己の命を捨て、未来を託すための秘孔。
「ホーク、術は唱えられるか・・・?ゲラ=ハを任せた。」
「クックック、いい眼だぞケンシロウ。怒りに満ち足りている・・・俺を殺した時の顔だ。」
剣を地面に突き立てるシン、確かに威力ならば剣を持っていた方が当然上である。
だがシンが徒手を選択し、修業してきた理由は、達人同士の戦闘で攻めに遅れをとれば死しか残されないからだ。
迎え撃つのならば剣で問題はないが、こちらから攻めるにはコンマ1秒のタイムラグも許されない。
二人とも自分から攻める動きを見せず、お互いに相手を軸に円を描くようにして周る。
「ほぉ、さっきと違って中々隙を見せないな。」
「シン、感謝するぞ。」
こんな時に何を言い始めるんだ?
そう思ったが、一応話を聞いてやることにした。
「ユリアをラオウから救ってくれた。」
「チッ、つまらん事を言う暇があったらさっさと仕掛けてこい!
俺は下らん情愛は冥府に捨て去ったのだ・・・貴様を殺す為に!」
苛立っていた、戦いの最中に相手に礼を言うなどという腑抜けた行為に対して。
だが注意深くケンシロウを見てやると、さっきまでサザンクロスで自分を殺した時と同じ眼だったのが、
ユリアの死を伝えた、あの時の眼・・・『哀しみ』を宿した眼へと変わっていく。
あの時、生きている事を伝えたらユリアは南斗を抜け、ケンシロウと共に民を救う旅に出ただろう。
しかし、今になっては道端の犬のクソよりどうでもいいことだ。
「情愛を捨てた・・・ではなく封じたのだろう?」
「なにぃ・・・?」
「人の心は表裏一体、怒りがあれば喜びがあり、憎しみがあれば優しさがある。」
「バカが・・・では俺の拳に優しさがあるか試してみるがいい!!」
先に攻めたのはシンだった、数発の手刀をケンシロウに放つ。
それを全て捌くと反撃のハイキックを撃ちこむ。
鍛錬を怠ったジャギの肉体は、鍛え抜かれたケンシロウの攻撃に防御能力を示す事はできなかった。
シンが闘気を巧みに操り、身体能力を底上げしていなければ砕け散っていただろう。
「南斗迫破ざ・・・っ!」
「それがお前の怒りならば、やはり俺に勝つことはできん。」
南斗迫破斬、振り抜かれた拳をかわしても真空の爪が襲いかかる二段構えの技。
さっきまでのケンシロウの動きならば、避けるしかなかった筈。
それが技を出す前に腕を掴み取り、その上攻撃する隙も見せない。
一瞬、鎧男とトカゲを始末したその一瞬で何が起きたというのか。
ケンシロウの手に力が込められると、シンの腕はミシミシと音をたて始めた。
蹴りに意識を向けさせ、難を逃れるべく足払いを仕掛ける。
しかし、今のケンシロウには一分の隙もなかった。
蹴り足を先読みし、シンのつま先を避け、脛を蹴って防ぐ。
貫通力を重視する南斗弧鷲拳では四肢の先端が最たる驚異。
そこ以外の強度は六聖以外の南斗聖拳と大差はない。
「おおぉ・・・あああああああたたぁ!」
シンの手を離すと同時に拳による連撃を入れる。
胸から腹部へ、左胸から右胸へ。
十字の形に拳の跡が刻まれていく。
北斗十字斬、かつてケンシロウがシンを屠った拳。
「こぉ・・こんな・・・俺は全てを捨て去り最強の男になった筈!」
「シン、闇に捉われ全てを捨てるというのはそういうことだ。
力が湧き上がる様に感じても、力の源・・・情愛なくして真の強さは得られない。」
シンの傷は黒い霧に包まれ、瞬く間に塞がっていく。
だが精神に負ったダメージは相当な物だった。
蘇って手に入れたこの力、今の腑抜けたケンシロウに負ける筈がない。
「ケンシロウ・・・貴様、まさか・・・・・!」
「そう、刹活孔・・・・・ホークの動きを止める前に既に突いておいた。」
刹活孔、己の命を縮める代わりに天をも揺るがす剛拳を手にする秘孔。
絶対に倒れる訳にはいかないという決意の証し。
「フッ・・ハハ・・・ハァハハハハハ!気でも違ったか?
そこまでして、そんなクズを守って何になる!」
バカな事を、シンの笑いはそう言ってるようにしか聞こえなかった。
すると、ケンシロウは震える拳を握りしめてシンの問いかけに答えた。
「ホーク達を守るためだけではない、お前の目も覚まして見せる!」
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