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「その名はキャプテン 53-3」(2008/02/10 (日) 23:48:14) の最新版変更点
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着地したシンの背後から伸びる、二本の逞しい腕。
胴体を背後から締め付け、そのまま身体を仰け反らせながら持ち上げる。
「くらぇええええい!ジャァァァック・ハマァ―――!」
シンの目に天井が映し出された瞬間、目に映る全ての物がブレ出した。
そして逆さまの世界へと突入し、頭部へ強い衝撃が走り地面が崩れる音が聞こえた。
そのままバネのように宙へ跳ねっ返り、しばらく放心状態が続いたが肉体は自然と着地態勢を取っていた。
だが、着地するとはいっても足に力が入らず、手をついて四つん這いの形になってしまった。
「こ・・・・・・んな・・・下等・・・な・・技に・・・・!」
頭が沸騰するように熱い、血がダラダラと視界を覆う。
頭から血が抜け、大きなショックを受けている今のシンに考える余裕はなかった。
追撃すれば勝機がある筈のホークが、術を詠唱しているのを見過ごしてしまった。
南斗に伝わる呼吸法で全身に酸素を送り込み、脳に考える余裕を取り戻す。
だが怒りに捉われたシンは、思考を停止させ、感情に身を任せ、デスが与えた力を最大限に引き出した。
噴き出す闘気が冷気や刃物のように鋭い物から、ドス黒い不純物の様な物へ変わっていく。
「貴様ッ・・・殺してやるぞ・・・・・キャプテン・ホーク!」
南斗弧鷲拳奥義、南斗千首龍撃。
強靭な脚力によって凄まじいスピードで接近しながら、凶悪な突きを無数に放つ。
千ある拳の全てに、竜のアギトの如き力が宿っていると言われている。
この奥義は伝承のみが残っている、目にした者は南斗の同門で無ければ息絶えるのみ。
バウッという風の裂ける音と同時に、シンが猛然と突っ込んでくる。
空手の達人は正拳で風を切る音を発生させるが、シンの移動するスピードはそれを上回っている。
そして元々かけ離れていた闘気の差も、更に広がっている。
完璧な加速、完璧な踏み込み、圧倒的な闘気、急所に一撃でも当たれば、死は免れない。
「死にやがれェ――――――――ッ!」
「どんなに強くてもよぉ、冷静になれない奴ぁー駄目だな。
詠唱は終わった、術を知らないアンタじゃ2回、俺に術を唱える時間を与えたのを理解できてねぇだろうな。」
「何をしたというんだぁ!?どう足掻こうとも、鷹如きが鷲に勝つことはなぁい!」
ホークに手刀が当たる瞬間、またも『硬い』という感触に捉われた。
何故、剣は既に地面へ捨てられている。
次に感じるのは全身への熱風であった。
「セルフバーニング、本来、水と火の術は同時には覚えられないんだが剣の魔力の影響下なら使えるみてぇだ。
ところで、鷹狩って鳥を使う狩猟法があるんだがよぉ。
そいつを行う際は、鷹だけじゃなくコンビの人間も重要だぜ?」
目前にシンの蹴りが迫っているのに、微動だにしないホーク。
舐め切っている、『硬い』とはいっても、先程の剣程ではない。
時間をかけ、熱風に耐えれば破壊は十分可能である。
「うおおおおおおっ!」
「げぇっ!魔法盾にヒビがぁ!?」
急に慌てだすホーク、この防御術、時間が経てば弱くなるようだ。
さらに手へ闘気を送り込み、ラッシュを加えると炎の紋章を壁状にした魔法盾はバラバラに崩れてしまった。
だが、ホークに追撃を加えようとした瞬間に衝撃が走った。
「ケンシロウ・・・貴様・・・・・何故ッ!?」
「北斗・・・蛇雷咬!」
ホークの復活に捉われ、生死の確認を疎かにしたようだ。
体中から血を噴き出し、完全に治ったとは言い難いが動くことはできるらしい。
それに、倒れた場所から一気に跳躍までしている。
体を無理に動かしているとは思えない踏み込みと力。
完全にホークに目が行っていた、身体を包む闘気以外に身を守る物などない。
そして、ホークを守るべく拳を振るうケンシロウの闘気は先の攻防とは比較にならなかった。
ベキベキと木材をへし折ったような音が腹部に響き渡る。
肉体の状態、そしてもう一歩踏み込まれていれば完全に秘孔に入っただろう。
しかし、体の半分まで奴の闘気は入り込んでいる。
「ホーク・・・北斗神拳に、一対多数はない。
・・・ここから先は、俺に任せてくれ・・・・・。」
全身からダラダラと血を流しながらも、一人で戦おうとするケンシロウ。
その眼には、『覚悟』が、本物の闘志が宿っていた。
「そうかい、だがよぉ・・・フェアじゃねぇな。」
「ダメージは五分だ・・・やれる。」
「いや、さっきまでなら確かに五分だったな。」
立ち込める黒い霧、シンの目から血が流れ落ちていた。
鬼神の形相で立ち上がる男は、目から深紅の涙を流しているようにも見えた。
シンを中心に、地面に亀裂が走っていく。
柱は割れ、祭壇を粉々に打ち砕き、地割れが瓦礫を飲み込んでいく。
「ありゃ闘気なんかじゃねぇ!感じたことのねぇ魔力だ・・・闇か邪の術法か!?」
「どうなっている・・・シンはどうなっているんだ!」
「知らねぇよ・・・・・いいから逃げるぞ、この部屋は陥没する!」
誘拐された娘を抱え、入ってきた扉に向かって一目散に逃走するホーク。
ケンシロウは、シンへ一瞬だけ目を向け逃げるのを躊躇したが、止むを得ず走りだした。
部屋の外に出ると天井に幾つものヒビが入っていた。
急ぎ街へと戻る為、来た道を戻る。
道中で魔物の死体に寄りかかり、ゼェゼェと息を吐いている二人組を見つけた。
「ハァ・・・ハァ・・・まさか小型のドラゴンなんか用意されるとはなぁ。」
「ふぅ・・・でもキャプテン達が来ましたよ、もう終わった様で・・・・・。」
ホークとケンシロウは何故走っているのだろうか。
天井から落下する瓦礫が見えてしまった今、考える必要はないだろう。
「民衆の不満を解決する為にこの仕事を請け負った筈ですが・・・水路が破壊されたらどうなるんでしょうね?」
「そんなん知るかよぉ・・・走れえェェ――――ッ!」
水路の魔物もホーク達に構っている暇はなかった。
危険を感知し、更なる地下へ潜るか、通路を走るしかなかった。
「うおっ!?水の結晶体じゃねーか!」
「彼等も逃げるのに必死ですから攻撃はしてこないでしょう。」
「そうはいっても、今ウォーターガンなんか喰らったら死んじまうぞ!」
「しゃべってる暇なんかねぇ!出口だ!」
ホーク達より先に獣類の魔物が、逞しい脚力で飛び出す。
出口は狭くなっている、このまま他の魔物に先を越されるとまずい。
そう思い、脚に力を込めるがここで奇妙な事態が起きた。
多くの魔物の影で、出口から光が全く入ってこないのだが、急激に光が差し込んだ。
赤い光、その赤は一瞬で地に滴り落ち出口からは光が差し込んできた。
「な、なんだぁ!?」
「止まるな、ホーク。このまま行くぞ。」
奇怪なのは獣の死だけではなかった。
危険に敏感な不定形、スライムや魔力の塊、精霊の様な生き物はみんな立ち止まっている。
確かに彼らは実体を失っても、他の生物と比較すれば生き残る確率は高い。
だが、何故逃げないのか?それは出口に向かうより、落盤の中に居た方が安全という事ではないか?
やっとの思いで外へ出ると、そこでまた奇妙な事態を遭遇する。
「なんで・・・生きてるんだ、こいつ?」
「シン・・・!」
ホークの剣を手に、真紅に染まった殺意の眼差しを向けてきた。
地面に開いている穴、常に刀身から爆炎を放つ剣。
地面を溶かし、地中からここまで来たらしい。
「闇の中がこんなに気持ちいいとは・・・強さこそ正義!
もうプライドも何もいらん、お前の命だけが欲しい!」
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