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「その名はキャプテン 53-2」(2008/02/10 (日) 23:34:25) の最新版変更点
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五分と掛からない戦いだったが、傷はすっかり塞がっていた。
一分一秒が生死を分ける戦いでは、五分も掛けて傷を治しては本末転倒である。
だが、戦いの中でなければ便利ではある。
上手の敵と遭遇すれば相打ちになることもある、勝負がついた後に息があれば復帰が可能だ。
敗北し、止めを刺されかけた筈のホークがこうして立ちあがったように。
「戦いの真っ最中だったとはいえ、この俺に気取られずに傷を癒すとは。
中々のしたたかさだ、だが貴様は武器に加えて術などと小細工にまで頼った。
そんな未熟な腕で、この俺に敵うものかな・・・ククク。」
剣を手に取るホーク、中国拳法は武器にも通じている。
南斗聖拳も北斗神拳も中国拳法をベースとしている。
ホークの構えが、斧を持っていた時と違い不自然で慣れていない感じがある。
だが、感じる闘気は遥かに洗練された物になった。
ケンシロウの死を眼にして闘争心に火をつけたのだろうか。
最大の目的を早々に達成し、することもない今、眼の前の新しい敵を排除するとしよう。
「でえりゃあ!」
「アホがぁ!適当に振り回すだけで、俺に当たるものか!」
並の剣ならば、最も鋭いとされる切先であっても蹴りで砕くことが出来る。
しかし、強度は高いが脆く、折れやすくなっている刃身の横の部分。
樋、フラーと呼ばれる部分へ蹴りを入れたが折る事は不可能だった。
剣を破壊することが不可能ならば攻撃可能な箇所は、樋、柄、鍔、握り、といった所か。
しかし、それも本体に隙があれば攻撃する必要はなく構わず攻撃しようとしたが・・・。
大きく振りかぶり、繰り出された袈裟切りをスウェイバックで回避すると、二の太刀がシンを襲う。
かすみ二段、最初の太刀をワザと回避させ、次の達への複線を作り出し確実に当てる技術。
如何なる達人であっても、この技を反応してかわすのは不可能である。
事前に防御するか、この技が出る瞬間に生じる奇妙な旋風を読むしかない。
「・・・ッ適当では無かったようだな。」
スウェイで袈裟切りをかわした所で、鍔に蹴りを入れて剣を吹き飛ばそうとした。
狙ったのはその時の脚、刃を避けて蹴ろうとすれば脚の型が限られてくる。
そういった物を予測して斬りかかるのが、今の技の特徴だろう。
膝の部分の服がスッパリ切りとられ、かすり傷程度だが血が出ていた。
見くびっていた、先程とは別人のように強い。
闘気は研ぎ澄まされているが、自分を脅かすほどではないと思っていた。
だが、コイツは自分から闘気を抑えていただけなのだ。
激しい怒りに身を任せず、冷静に相手を見据え、戦いを組み立てる。
闘気の解放は、その戦いの最中で行う。
「面白い・・・剣の構えは素人同然だが、命のやり取りは心得ているな。
しかし、今の技はお世辞にも強力な一撃とは言えぬ低俗な剣技。
こちらの型に合わせて斬る為、回避は困難だが合わせて斬るなら剣の軌道も限られてくる。
二度は無い、そして未熟な貴様が一撃で俺を倒せる技を持っているとも思えんなぁ。」
見事に言い当てられてしまった、格闘家、というよりは武芸家、武道家といった方が正しい様だ。
武器全般に精通したうえで、己の肉体を上回る物など存在しないという確固たる自信を持っている。
このシンという男、歳は下だが戦いの経験も知識も遙か上に居る。
このガキに一杯喰わせるにはどうしたらいいだろうか。
「フン・・・攻めないか、武器を所持することによる油断は俺の技量を見て捨て去っている、当然の判断だ。
だが、この圧倒的な実力差をどうやって埋めるというんだ?ええ?」
「へっ、教えてやるかよ!」
相手に向かって走り、勢いをつけながら剣を横に薙ぎ払うようにして振り抜く。
払い抜け、単純な技ではあるが、かわされても身の捌き次第で隙をどうにでも出来る。
空を斬る音が耳に入る、回避されるのは承知の上。
次の一撃を叩きこむべく、剣を握り直し、相手を見据える。
だが、そこに見据えるべき相手はいなかった。
「南斗白燕転翔・・・俺は暗殺者、貴様の様なボンクラに気取られる訳がなかろう。」
南斗白燕転翔、空を切り裂く程の鋭い闘気によって、周囲の空気を切り裂いて薄くしてから空へ飛ぶ。
移動する前に空気を薄くすることで、相手へ空気の流れを読まれにくくしておくのだ。
「もっとも、貴様なんぞが空気の流れを読めるとは思わんがな・・・でえりゃあ!」
空中から無数の手刀が襲いかかってくる、回避は不可能、剣を振り上げ対応する。
だが、攻撃の為ではなく自衛の為に咄嗟に振り回した剣、勢いもスピードも死んでいる。
シンはこれを狙っていたのだ、空中でガッチリと剣を手に取ったまま静止している。
不思議なことに重さを全く感じない、奇妙な身のこなしだ。
「こいつはまいったな・・・動けそうにねぇ。」
「分かっているじゃないか、俺を振り落とせば手刀でも蹴りでも、
頭でも首でも、お望みの場所に希望する方法で穴を開けてやろう・・・。」
この状態から姿勢を変化させ、絶妙な体重のコントロールを行う。
段々と切先に感じる重量に痺れを切らしたとき、振り抜く筈だ。
「いいぜ、頭を手刀でブチ抜いてみな。」
「強がりはよせ・・・っと、男らしく死ぬのを希望だったのか?それはすまなかったな・・・ククク。」
「いいから頭だよ、頭。なぁに、来る場所さえ分かれば避けてやるよ、お望みの場所に一発くれるんだろ?」
この状況、かわせないことは感じている筈。
単なる強がりかと思ったが、違う。
顔には自信が満ちている、剣を振ればその勢いを利用した一撃を何所へでも加えられる。
絶対的有利な状況を作り出した、これを打破できるというのか?
「・・・・面白い、貴様は何所にでもいそうな一人の弱小海賊。
手の内は見せてもらったが、そこに転がってる腑抜けのケンシロウにも遠く及ばないだろう。
だが、何か俺を期待させるものがある・・・雑魚を痛めつけて楽しむのは自尊心が傷つくがな。」
「いいからやってみな、段々と剣に重量がついてきてるってことは俺が動かなくっちゃ何もできねぇんだろ?」
「そう、そして貴様程度の腕力では重さに耐えかねて動かすしかなくなる。」
「いいな、五秒したら振る・・・頭を手刀でブチ抜け。」
(この男、とんでもねぇバトルマニアだな・・・上手くいくかぁ?)
ホークにはこの状況を打ち破る自信があったが、シンの笑みに不安を覚える。
先程まで狩る側にいたシンの笑みは、凍りつきそうな程冷たい目をしていた。
それは獲物を追い詰めた魔物の目、人間がこんな目つきをするとは思わなかったが、
普段から見慣れている目だ、腹を据えてかかればどうってことは無かった。
だが、剣の上で逆立ちしているこの男の目。
まるでお気に入りの玩具で遊ぶ子供のように輝く瞳。
純粋に、心の奥底から戦闘を楽しんでいる。
こんなタイプの敵とは闘ったことがない、自分の危険までも戦闘の楽しみにするとは。
(ムッ、剣から一瞬力が抜けた・・・握りを直したな、五秒ではなく四秒の時点で剣を振る気か。
チッ・・・つまらん事をする、そんなことで動揺する程アホではないわ、こいつも期待外れだな。)
ケンシロウがあの程度なのだ、どこの馬の骨とも知れぬ奴に期待したのが間違いだった。
この男が剣を振れば反動を利用して、飛ぶ。
剣から飛んだら、俺の落下しながらの攻撃を予測して次の構えに移る筈。
だが、その構えを与える間もなく殺す・・・質量を持った闘気によって空中に地面を造り出す。
そうすれば落下を待つよりも速く、剣から飛ぶ反動と闘気を蹴る反動で十分な加速がつく。
そして四秒が経過、ホークの指に動きが現れた。
「なにぃ!?」
「かかったなアホが!」
ホークは剣を振るのではなく、手を離し地面へと捨てた。
それでは勢いはつかず、自然落下するのみだった。
しかし、南斗六聖の拳に鳥の名が冠せられる理由はここにある
空中での姿勢制御、空気の抵抗や流れを肌で感じ取ることに掛けて北斗神拳以上に敏感である。
ホークの頭上付近に掲げられた剣が、地面へと落ちるその僅かな間に絶妙な体捌きで姿勢を整える。
そして、着地へ成功すると同時にホークの足を奪いこれから行われる攻撃の威力を半減させるべく蹴りを放つ。
だが、シンの蹴りが削り取ったのはホークの足ではなく、地面だけだった。
「頭にくれるんじゃなかったのか?嘘を吐く子にゃあ、飛びっきりのお仕置きをくれてやんねぇとな!」
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