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「その名はキャプテン52-5」(2008/02/10 (日) 22:51:08) の最新版変更点
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「さぁて・・・どう切り刻んで欲しい?」
女のように細く長い指をベロリと舐めながら、死神の形相で微笑んでいる。
しかし、それより気になるのは眼の前の男から感じる気迫だった。
善と悪、白と黒、表と裏、真逆というのはこういうことか。
男から感じる闘気は、ケンシロウと正反対であった。
噴き出す程に凄まじく洗練された闘気は圧力まで感じ取れる。
恐らく、ケンシロウと同レベルの格闘家。
「ん~迷う、迷うぞぉぉ~~!」
口ではそう言っても奴の目が全てを物語っていた。
苦痛を与え続ける為に急所に浅く、神経を深く貫く。
男が突然、走りだした。
何か危険な気がする、技の性質を見抜けないうちはガードに徹する。
小盾を構え攻撃に備える、一方的に攻められるのを防ぐため斧で反撃の構えだけは取っておく。
「南斗流羽矢弾!」
男が拳を振るい、闘気を生み出し発射する。
ケンシロウも同じように闘気を自在に操り、戦闘に使っていた。
盾で防ぎ、そのまま男を迎え撃つのがいいだろう。
衝撃に備えて踏ん張るホーク、だが衝撃はなかった。
闘気を受け止めた盾は一瞬でコマ切れにされてしまった。
「おやぁ~?防御を固めなくていいのか?」
相変わらずニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
余裕や油断ではない、遊んでいる。
こいつは、子供がアリを踏みつぶすのと同じ感覚で攻撃の手を加えている。
鉄屑となった盾で攻撃を逸らすべく、腕を払いのける。
だが、それも無駄だった。
指先を舐める仕草、構えから手刀が武器だと思ったがそれだけではない。
手先ではなく、腕に触れた瞬間に覆っている闘気だけで破壊したのだ。
砕け散った盾では軌道を逸らすことは不可能、ならば自分から回避するしかない。
分解された盾を見た感じ、四肢に闘気を纏わせ、突き破るようにして拳を打ち込む闘法のようだ。
拳や指先から相手の体に気を流し込み、内側から破壊するケンシロウとは逆の発想である。
「捉えたぞ!」
ボォウッ と、何かが破裂したかのような音と同時に第二撃が繰り出される。
速すぎる拳の圧力に、空気が爆発したかのような音をたてる。
迫りくる凶刃の如き拳に、ホークは身を屈めることでそれをかわそうとした。
「無駄よぉっ!」
外した手刀の勢いを殺さず、振り回すようにしてホークへ背を向けながらしゃがむ。
位置は勘で分かっているのか、姿勢の低くなったホークへ追撃の下段蹴りを入れる。
胴体か顔面辺りを貫く為、やや上向きに鋭い蹴りが放たれた。
ボォフゥ 聞こえたのはまたも空気を炸裂させた音だった。
地面にベッタリとへばり付くホーク。
無様だがこうしなければ殺されていただろう。
拳のスピードはかなりの物、ならば下手に下がるよりも前にでてかわす。
正面というよりは下面というべきか。
流石にシンも、顔面を地面に張り付けてまでかわすと予測しなかったのか一瞬だが硬直する。
ホークはその隙を逃さず、手の力で体を回転させて回し蹴りを放った。
伸びきっていたシンの脚は、闘気を纏ってはいたがスピードを乗せなければ意味がないらしく、
バチィ!と音をたてて弾かれてしまった。
だが、弾かれた勢いをホークと同じように体を回転させて立ち上がることに利用することでダメージは皆無。
それに帯びていた闘気も、攻撃に使えぬと判断してか肉体を硬化させるため内側へ移していた。
脛を蹴ったのだが表情一つ変えずに立っている、恐らく痺れや痛みは一切感じていないだろう。
「・・・貴様、今のは北斗の動きか?いや、そうだったら俺の経絡秘孔へ攻撃していた筈。
それにどこか独特で野蛮だ・・・面白い。今の防御を評価して少しだけ、俺の拳法について話してやろう。
南斗聖拳、百八の流派が存在する最強の暗殺拳・・・俺はその百八の中でも最強と謳われる南斗六聖の一人。」
「南斗聖拳はお前が体験した通り、闘気を以て相手を外部から破壊する拳法だ。
俺の南斗弧鷲拳は、貫通力を高めることで強靭な肉体であっても突き破ることが出来る。
お前は武器で闘う男、分かりやすく言ってやると俺の腕は拳の速さで振り回される槍と言った所か。」
「ご忠告どうも、だがアンタ、自分を過大評価しすぎなんじゃねぇか?」
減らず口を叩いてはみたが、実際は奴の言う通りだった。
槍にしたってゲラ=ハの使うような安物の石槍じゃあない。
鉄、それどころかドラゴンの鱗やレアメタルで作られた物にも見劣りしないだろう。
「クックック・・・見えるぞ、お前の生への『執念』が。
執念は人を強くする、絶望の淵から這い上がろうとする気力は『愛』なんぞとは比べ物にならん強さだ。
だぁがぁ~~~~~~~!足りん・・・足りんぞぉ!執念が足りぃぃん!」
助走なしに飛び上がるシン、とんでもない跳躍力で一気にホークの頭上へ迫る。
見た目こそ、ただの飛び蹴りだったがケンシロウのハードトレーニングの成果だろう。
見える、身体全体を鋭い闘気が覆っており、無数の足が残像を残しながらカマイタチを作り出している。
「今度はどうかなぁ~?南斗獄屠拳!」
攻防一体、足を一本に見せるようにフェイントをかけている。
だが、貫通力を主体とした拳法なら本命は一ヶ所の筈。
今度は何所に、どうやっても回避が間に合わない。
肌に空気で作られた刃が触れ始めた、多少のダメージを覚悟で本命だけを防ぐ。
咄嗟に斧でガードするが、莫大な闘気とスピードを乗せた一撃は、
石斧如き、枯れ木の小枝をプレスマシンに掛けるようにして粉微塵に砕いてしまった。
刃の面積が少なかったので四方に爆散したが、威力を周囲に拡散させない程に正確なシンの一撃は、
岩や壁だったらポッカリと、足跡を残して穴を掘ることも可能だっただろう。
「チッ、奇妙な感覚だ・・・俺の蹴りに耐える金属が存在するのか。」
蹴り飛ばしたホークを貫くことはできなかった。
修業時代、まだ未熟だった頃に物質に感じた『硬い』という感触。
恐らく、灰から蘇らせたジャギの肉体が完全に自分に馴染んでも破壊できないだろう。
「オエッ・・・ぷぅ・・なんて蹴りだ・・・。」
「妙な武器だ、だが武器に頼るというのは油断を生み隙を作る愚かな行為。
貴様、多少は見えていたようだな、面白い・・・クククっ・・・・・・。
だが、まぁだまだぁ!足りんなぁ・・・修練、そして何よりも執念が!」
こちらへ向かって猛スピードで走りだすシン、奴の一撃に力に加え体重が乗ることを考える。
背筋に走る寒気、無意識に下がる足、しかし壁を背にしたままどこへ逃げろというのか。
一か八か、訓練によって体得したにわか仕込みの格闘で対応する。
可能性は限りなく薄いが、虚を突けば勝機はある。
「でえやぁっ!」
シンの第一手は手刀、十分に練られた闘気が人の指先を鋼鉄の槍へと変える。
だが、確実な一撃を加える為か先程の攻防と違い腕部には気が見られない。
手が心臓を貫くより速く、右手で腕を払いのけシンの突っ込む勢いを体当たりで止める。
自分で一流の格闘家を自負するだけあって一瞬で体制を立て直し、顔面へ蹴りが飛んでくる。
体勢を立て直すための一瞬に生まれた余裕で蹴りを潜り抜けてかわすと、初めてシンの背後を取った。
「もらったぁ!」
背骨をへし折るべく、正拳突きの構えに入るホーク。
この状況なら反撃は間に合わない、そう思った時シンに違和感を感じ取る。
軸足を地面から離し胴体の位置を下げる。
外した蹴りは、上段から地面スレスレへと下がりながら膝を曲げて第二撃の準備にかかる。
地面を離れた軸足がホークへ向かって伸びる。
そして地面へ蹴りが放たれると、それが踏み込みとなって軸足は加速する。
「南斗旋脚葬・・・!こいつを受け流すとは、お前の評価を改めなければな。
この俺を相手に数分間、戦い抜いたのだ・・・。」
ワザと背を向け自分の不利を晒し出し、それを餌に相手に隙を作らせ地を滑って蹴り飛ばす。
バックステップで威力を軽減したが、骨が内臓に刺さったのだろう、妙に息苦しい。
軸足を下げる動作を見過ごしていたら死んでいただろう。
しかし、これから死ぬのだから同じことか・・・。
ホークが死を覚悟した瞬間、部屋へ足音が響いた。
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