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「その名はキャプテン52-2」(2008/02/10 (日) 22:36:43) の最新版変更点
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勝てない、何度やっても傷一つ負わせられない。
避けられているのか、受け止められているのか、それすら定かではない。
当たったという確かな感触を手に感じた瞬間、背後から蹴りを喰らう。
「スタミナは中々だが、実戦練習に入れる技量ではない。
大人しく石像造りに励んだ方が、後々楽になるぞ?」
斧を投げて牽制する、かわした時に体制を崩せばスタンの剣で死なない程度に・・・
そう思った矢先、指二本で斧を受け止められ、投げ返してきた。
間一髪、それを回避したホークだが背後の音がとても気になった。
ズドドドドドド・・・ボゴォ!
貫通する音と突き抜けた音だ、周りは岩壁。
安上がりな石斧で、屈強な岩をブチ抜いたのだった。
「化物め・・・小細工は通用しねぇってことか。」
「それと手加減もだ。」
言うが早いか動くが早いか、その区別をつける余裕もなかった。
「北斗八悶九断!」
ボボッ、という拳の加速音が聞こえる。
横に跳んでそれを避けると背後の岩は粉々に砕け散ってしまった。
「また質問なんだが・・・今の当たってたらどうなった?」
「肉体にショック死しない程度に八回激痛を与え悶え苦しませていた。
本来ならば、その後は九つの肉片にする技だが勿論、手は抜いた。」
諦めるしかないようだ・・・
ホークの地獄の特訓、ようやくスタート。
「槍ってのは一発で決めないと間合いに入られちまう、そんなスットロいと相手に返されちまうぞ!」
ゲラ=ハの指南を務めるベア、槍の技は扱えないが『見切り』を体得しており、
実際に剣で受け止めると何所がダメか分かるらしい。
「もっと引きつければ威力は上がる、射程に入れても最大威力を出せるギリギリまで相手に突っ込め!」
しかし、ゲッコ族ってのは馬鹿力なんだな・・・。
コイツの場合は知性も優れてるし、覚えも速い。
不器用なせいか、コツを掴むのが遅いが経験だな。
そんなことを考えている内に、正しく教えに従った一撃が迫る。
パリィで槍を弾くには遅い、ゲラ=ハも一瞬戸惑ったが減速するにも遅かった。
身体を後ろに引きながらスピンさせる、鎧を一瞬かすったが怪我はなかった。
「フゥ・・・今のが『見切り』だ。身体で技を覚えちまえばいい。
しかし教えられたのは『チャージ』だけか、まぁその技は応用が効く。」
チャージ、槍を構えたまま敵に向かって突撃する。
それだけの技ではあるが、本人のパワーと突くタイミング。
純粋に力の強いゲラ=ハには相性のいい技である。
「特殊な回避術ですね、リスキーですがすぐ行動に移れる利点もあります。」
「縦薙ぎ、横薙ぎ、突き、投げ、大体の攻撃を回転の力で威力を相殺しながらかわせる。
だが、ミスったら元も子もないからな・・・やるなら、格下相手か逆転狙いの時だけにしとけ。
俺みたいに完全に『見切り』を身につけたなら話は別だがな・・・。」
少し得意気になるベアの足下を、柄の部分で突く。
「痛ってぇ!こ・・・小指を・・・・・っ!」
「足下をお留守にするのが悪いのです、さっさと宿に戻りましょう。」
「わ・・・我ながら・・・・会心の出来だ・・ぜ・・・。」
その言葉を最後に、ホークは倒れた。
拳の肉がズタズタに裂け、真赤に染まった手が夕日の下に照らされる。
やりとげた漢の顔、滴る血、そして今にも沈もうとしている夕焼け。
倒れたホークの先には、悪鬼羅刹の面持ちをした一体の像。
ホークの拳から噴き出た血が、見事に名も無き羅刹を彩っていた。
「ホーク、見事だ・・・それでは、10分休んだら次の像に移る。」
やりとげた漢の顔が、目の前の像と同じく悪鬼の形相へと変わる。
「休憩なんかいらないさ、ケン・・・実戦の練習に付き合えェーー!」
トマホークを連続で投げつける、数だけではない。
威力、スピード、全てにおいて、今までのホークの最高の技。
加撃、『ヨーヨー』その名の元は平民の遊具だが、
その威力は、決して侮れるものではない。
「むっ、短時間でここまで成長したか。ならば像の大きさを倍に・・・」
「ケェェ―――――ン! テメェーは死んでろォォォ!」
水術を使って傷を癒す、石像トレーニングの成果だろうか。
一度の詠唱しかしていないのに、いつもより治るのが速い。
「拳に水術をかけながら岩壁を湿らせ、和らげることで負担を減らしていたのか。
インチキではあるが、魔力向上に高い効果があったようだな。」
「それだけじゃ済まさねぇ・・・魔具を使えば相反する術だって思うがままよ!」
本来ならば、相反する属性の術を同時に覚えた場合には、どちらか封印しなければならない。
だが、魔法によって作られた武器を使えば封印されていても思うままに使用できる。
「セルフバーニング!」
炎の盾を自分に纏う、相手の火術や攻撃を反射する魔法盾。
物理攻撃、つまり殴る蹴るしかできないケンシロウには対処する術はない。
勝利を確信したホークは今、自分にできる最強の攻撃を仕掛ける。
拳を削り出し、返り血で染まった己の手で編み出した新たなる技。
「ジャ――――ックゥゥ・ハマ――――!」
ジャック・ハマー、通称はバック・スープレックス。
相手を両腕ごとガッチリと抱え込み、ブリッジする様に体を反らして脳天を地面に叩きつける。
通常打撃力や基礎筋力を高めるトレーニングをしていたホークだが、
何故、あえてこの技だったのだろうか、それは誰にも分からない。
「そんなもん・・・投げ技が男のロマンだからに決まってんだろうがァァ――――!」
誰に向かって叫んでいるのか、サッパリ解らないケンシロウ。
だが、技のタイミングや自分をホールドしているホークの腕力。
修行の成果は出ている、これならば確かに実戦練習を続けてもいいだろう。
ロックされた両腕、動かせるのは肘から先のみ。
構え、呼吸、精神力、『闘気』を生むにはこれ等の要素が必要。
この場合、構えが取れないので手に微弱な気を生み出す事しか出来なかったが、
ジャック・ハマーのタイミングをずらし、威力を半減させることは出来るだろう。
それに、ケンシロウは気付いていなかったが飛び道具なので、セルフバーニングに反射されない
ズゴォアッ!
破壊音と共に陥没する地面、周囲にヒビまで入っている。
ケンシロウを地面に埋めて、ようやく冷静になるホーク。
「ハァハァ・・・これ・・・・・俺がやったのか?」
地面に埋まった上半身を引っこ抜いて、地上に顔を出すケンシロウ。
今吹き飛ばしたばかりの地形、ヨーヨーによってスライスチーズのように輪切りになった岩。
「よくやったな、ホーク・・・次からは斧を投げずに使え。
ゲラ=ハ達は明日に備えて休んでいるだろう、行くぞ。」
全員で晩飯を食い終わり、部屋へと戻る。
当然、男四人で一つ屋根の下である。
個室を取る余裕なんてある筈がない。
「あぁ・・・傷は治せるのは便利だが、疲れも取れれば最高の術なんだがなぁ。」
上半身をツイストさせると、バキバキと小気味良い音が鳴る。
さっさと寝たいが、今後のことについて色々と話を進めたいのでベッドに飛び込みはしない。
眠気を覚ます為、風呂に入ることにする。
「あーめんどくせぇ、服と一緒に入れば洗濯も済ませられるな。」
目茶苦茶な発想だが忠告する者は居ない、服を着たまま風呂へ浸かる。
だが脱がなければ絞れないことに気づき、ダラダラしながら帯を緩める。
脱ぎ終わる頃には、熱で眠気も覚め、ゆっくり立ち上がるホーク。
服を真一文字にして絞る、船旅で染み付いた塩と泥が音を立てて流れ落ちる。
風呂場には換気の為に窓がついていたので、そこに服を押し込んでおく。
夜風にさらされていれば、すぐ乾くだろう。
入浴を終え、タオルで体を拭きながら服へ手を伸ばす。
ひんやりと夜風に冷やされてはいたが、水気は絞りとっておいたので乾いていた。
火照った肉体に、服の心地よい冷たさを感じながら風呂場を出る。
部屋を見ると、テーブルを囲うようにして3人がカードで暇を潰していた。
「ようやく出たか、話すことがあるっていうから集まったのによぉ。」
「集まるのが遅ぇんだよ、なんだ?ポーカーか、久々にやるか。」
4人部屋とは伝えていたので、椅子もちゃんと4つある。
「さて、これからどうするんだ?」
「フルハウス。」
「ケンシロウさん、空気読んでください。」
「どうするも何も、パブか騎士宿舎に寄って事件とかないか聞く。
そいつを解決すれば帝国技師の造り上げる最強の海賊船ができるんだぜ?」
チップは現金のようだ、自分の小遣いをかけているようだ。
ベアは正式に船の一員になった訳ではないので完全に自費。
ケンシロウとゲラ=ハが白熱しているようだ、漁夫の利を狙いたい。
「おいおい、俺は海賊になる為にお前の仲間になったんじゃねぇよ。」
「ん、なんか目的があって俺たちに近づいたのか?」
カードが全員に行き渡る、小遣いより大事な話になりそうなだ。
集中力を使うインチキ技は自重して、二人を見守りながらベアと話そう。
「それを話すつもりだったからな、俺の身内に信頼できる預言者がいてな。
お前がこの世界を救う鍵だって話だ。運命石、持ってるんだろ?」
「・・・そりゃ御伽話だ。」
「スリーカード。」
「私はAのスリーカード、残念でしたね。」
・・・ベアと話していたら取られてしまった。
レートはそこまで高くないようだ、気にしないでおこう。
「持ってるのはアメジスト、幻の運命石だったな。隠しても無駄だぜ。」
「ほぉ・・・腕のいい預言者だな。」
「おいおい、武器を取らなくてもいいだろ・・・邪神の回し者じゃあない。」
少しベアを不審に思うが、剣はベッドの横。
抵抗するつもりは無いらしい、武器を椅子の横に置く。
「まぁ、邪神じゃなくて帝国の回し者だ。メルビルじゃなくてアバロンだがな。」
「聞いたことの無い国だな、まさかお前・・・。」
「ご名答、別の世界から・・・この世界を救うためやってきたのよ。
何の為に?って聞きたそうだから答えてやると、帝国の不祥事の後始末って奴だ。」
「不祥事ぃ?おいおい、サルーインが復活したのって・・・」
「そこまでヤバいことしちゃいない、考えようによってはもっとマズいけどな。」
カードが再び配られる、一息つける為にグラスに酒を注ぐベア。
「七英雄、英雄って名乗っちゃいるが過去の話、今は邪悪な化物の集団だ。
帝国は過去に、そいつ等を封印したんだが奴等は滅んでなかった。
こっちの世界に逃げ延びて傷を癒し、魔物を取り込んで更に力をつける気だ。」
捨て札が溜まっていく、ここ等でシャッフルする頃合いだろう。
一戦毎にシャッフルしないのは、捨て札を覚えておき不可能な役を頭に入れる為。
白熱するゲラ=ハとケンシロウ、互いの知力と運をぶつけ合っている。
「ここの世界の情報を集めてるのは、ついで、って奴さ。
デスティニィストーンも持って帰りたいんだがダメか?」
「好きにしろよ、だが俺は邪神となんか戦わねぇ。
封印から千年後のこの世界なんてどうでもいい。」
「フォーカード。」
「おい、引きが良すぎるんじゃあないか?」
盛り上がる二人の間に割って入りたい気持ちを抑える。
いい手札だったのに・・・・・。
「そうか、だが本気でそう思ってるならこの前の竜騎士に手渡したろ?」
「馬鹿いうんじゃねぇ、世界が滅びたのが俺のせいだ、なんて神様に文句言われたらどうする。
冗談じゃねぇぞ、海神ウコムが巻き起こす嵐なんて帝国新造の戦艦だって耐えられるもんじゃない。
どこぞの強ーいお方に渡してスタコラサッサ・・・」
そこまで言葉を口にしたところで左右を見てみる。
ドラゴンの攻撃に真正面から耐えられ、その上光速で剣を振り回すことの出来る達人。
拳一つでそのドラゴンを追い返し、更に船の銛で海の地形を変える男。
「決まったな、俺等でやるぞ。」
「おいおい、お前等が神を倒せるってのは思い上がりすぎじゃ…。」
「少なくとも、俺達以上の達人ってのは余りゴロゴロしてるもんじゃないな。」
「ゲラ=ハ、袖になんか見えたぞ。」
「ケン、リストバンドが膨れ上がってますよ。」
「さっきは『さん』で呼んでなかったか?」
「さぁ・・・どうでしょうね。」
このトカゲ・・・引きがいいと思ったらふざけた真似を・・・。
この裸ジャケット・・・真面目そうな面して舐めた真似を・・・。
二人がそんな視線を感じ取っていた頃、ホークは渋い顔でベアと睨めっこしていた。
「なぁ、何も5人でやろう、って訳じゃねぇ。
俺の仲間が2人、ルビーとジェイムズって奴が仲間を探してる。
そして海賊船、お前のことだ、小型船だろう?
こんな少人数で旅してるんだからな、小型船なら10人くらいか。
七英雄もとんでもないバケモンだったが5人で倒せた、いけるさ。」
ハァ、とため息をつくホークだったがスリルが欲しくて海賊をやっていたということもある。
スリルと言うよりは生活の方が強かったが、リオレウスを追い払った時の充実感。
あれを味わえるなら悪くはない、リスキーではあるがつまらない生き方をするよりいい。
実際、近年の海賊はブッチャーのこともあって腐っている。
世界を平和にしてから、というのも悪くはないか。
「分かったよ・・・だが、無理だと感じたら逃げさせてもらうぜ。」
「へっ、そんなヤワな根性してねぇ癖に・・・。」
「Qのフォーカードです、私の勝ちですね。」
「俺もQのフォーカードだ、貴様イカサマをしたな?」
「アナタがしたんじゃないですか?」
緊迫する空気、ベアがふと自分の手札へ視線を送る。
「あっ、俺ロイヤルストレートフラッシュじゃん。」
「「空気を読め!」」
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