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第九十九話「エピローグ」
―――メカトピア。平和になった機械と人間が共存する惑星。
無事に帰り着いたアスランたちは、畑を耕していた。
「―――って、いきなり何故に農業に精を出さなきゃならんのだ!?」
鍬を振り下ろしながら、イザークがアスランを怒鳴りつける。アスランは平然と答えた。
「俺は悟ったんだ。人間は自然と共にあるもの―――自然の恩恵なくしては生きてはいけない。だから野良仕事を
バリバリこなすしかないじゃないか!」
分かったような分からないような理屈だった。
「それはいいが、なんで農耕用機械があるのに鍬なんぞ使わなきゃならんのだ!」
「バカ野郎!己の手で作り上げる野菜だからこそ美味いんだ!何故きみはそれが分からない!」
「分かってたまるか!」
「戦火で花が吹き飛ばされても、ぼくたちはまた種を植える・・・それが俺たちの戦いだ!」
「むしろお前は吹き飛ばす側だ!しかも今植えてるのは花じゃなくて野菜だ!」
「まあまあ、二人とも・・・いいじゃない。こういうのも楽しいよ」
せっせと野菜の種を植えていたキラが二人を諌める。その時、遠くの方から巨大なロボットが近づいてきた。
それは今やメカトピアの守護神とすら称されているダイザンダー。その手には二人の人間を乗せている。
「あれは・・・リルルとニコルだ!おーい!」
キラが手を振ると、向こうも手を振り返す。地上に降りてきた二人は何やら本のようなものを持っていた。
「それは?」
「ああ。来年度の歴史の教科書ですよ。僕たちのことも載ってるから、アスランが見たがるかと思ったんで」
「こうして急いで持ってきたってわけ」
それを聞いたアスランはくっはー!と鼻息を荒くした。
「なんと!ついに俺も歴史上の偉人デビューか!ならば見るしかないじゃないか!」
アスランはニコルから引っ手繰るように教科書を受け取り、マジマジと凝視した。そして・・・
「む、これか!メカトピア歴30001年、大解放戦争・・・ふむ、こんな名前が付いたんだな・・・ん?ん!?
ば・・・バカな!なんてことだ!?」
「どうしたアスラン。お前の顔に落書きでもされてたか?」
イザークがニヤニヤ笑いながらアスランの顔を覗きこんだ。
「そうじゃない!こんな・・・確かに終戦の功労者として俺の名前は出てるけど、太字じゃないじゃないか!ん?
あっ!のび太とかドラえもんは太字だし、顔写真まで付いてる!何故!?」
「そりゃ、あの二人が主人公だもの」
「ガーン!何てこった・・・所詮このSSはドラSSだったということか・・・」
しょげるアスラン、笑いの発作を堪えるイザーク、そしてやれやれとばかりに二人を見守るキラ、リルル、ニコル。
「あれ?ディアッカはどうしたの?」
「ああ。彼なら最近開いた炒飯専門店が忙しいそうよ」
「<ここまで来たら、最後まで炒飯ネタで引っ張ってやる>ということだそうです。けど、手頃な価格とそれなりの味、
それにディアッカのキャラで随分繁盛してるそうですよ」
リルルとニコルの説明に、キラは納得したように頷いた。
「なるほど・・・ディアッカも頑張ってるんだね」
なら僕たちも頑張ろう。そう言いかけたところで、キラは気付いた。
畑の一部分。以前に種を蒔いた場所から、小さな小さな芽が出ていた。
「あ・・・」
自然と笑みが零れた。ちっぽけな芽だというのに―――それはまるで、命そのものの象徴のようだ。
失ったものは元には戻らないけど、また生まれてくるものもあるのだ。
そう思い知らされるように、その小さな芽は眩かった。
リルルはそんな彼らを見つめ、微笑む。
「ジュド」
そして傍らの大きな親友に語りかけた。
「これがわたしたちが、そしてのび太くんたちが守ったものよ・・・ふふ、少しくらい自慢しても、バチは当たらない
わよね?」
果たして彼は、その通りとばかりに、その機械の瞳に優しい光を宿すのだった。
―――神族と魔族、そして人間。ちゃんぽんみたいなごちゃ混ぜの世界。
「稟お兄ちゃん、おきろー!」
「りん・・・おきる」
「むぎゅう・・・!」
フー子とプリムラが布団の上に乗っかってきた。二人とも小柄とはいえ、二人分の重量は流石にきつい。
あの戦いから既に一ヶ月余り。もはや朝の恒例行事だ。
「分かった・・・起きる・・・起きるから、どいてくれよ、全く・・・」
<へっ。毎朝同じことばっか繰り返して飽きねえな、お前も>
「うっさい。黙れ脳内居候」
マサキのあしらい方も随分うまくなったと我ながら思った。
「稟くーん。朝御飯できてますよー。早く降りてきてくださーい!」
階下から楓の呼ぶ声。これもまた、いつも通りだ。
「ああ。今行く!」
ドタドタと階段を下りていく。今日もまた、騒がしい一日の始まりのようだった。
そして、学校も終わり、放課後。
「よーっす!稟ちゃんにマサキくん、元気してる!?」
亜沙、襲来。相変わらずテンションが高い。
<俺はまあまあだな。稟は・・・まあ、いつも通り、三大プリンセスの親衛隊に追い回されてこの通りだ>
「ぜえっ・・・ぜえっ・・・あ、あいつら・・・もしも今悪の宇宙人がやってきたとして、サイバスターに乗ったとして、
サイフラッシュを撃ったとしたら、あいつらを敵と認識する自信があるぞ・・・!」
「あっはははは!でも、流石にもう二度とああいう戦いってごめんだよ」
亜沙はふうっと溜息をついた。
「正義のバトルヒロインってのもいいけど、実際やるもんじゃないよあれって。ほんっと大変だもん」
「そうですよね・・・もう、ああいうことに首を突っ込むのは真っ平ですよ。よくぞ今生きてられるもんだ」
<けどよ、俺はまたどっかで今回みたいなことに巻き込まれそうな気がするぜ>
「何だよ。不吉なこと言うなよ」
マサキのセリフに口を尖らす稟だが、マサキは続ける。
<だってお前ら、のび太たちとこれからも付き合ってくんだろ?あいつら、言っちゃ悪いがトラブルを引き寄せちまう
タイプの人間だからな。それも、特上級だ。また妙な事件に関わっちまうかもしれねえ>
「・・・・・・」
<お前らの性格じゃ、そん時には、また助けちまうだろ?>
「・・・まあな。けど、それでいいよ」
稟はそう答えた。
<そうか?>
「ああ。そうだよ。だってさ―――」
稟は、にかっと笑った。暗さのない、爽やかな笑顔だ。
「友達って―――そういうもんだろ!」
「そうそう。稟ちゃん、いいこと言う!」
亜沙も合いの手を入れる。
<・・・へへっ。そうか>
「その通り・・・」
「そのとーりっ!」
「うわっ!?」「わあっ!?」<うおっ!?>
いつの間にかプリムラとフー子が目の前にいて、三人は驚いてひっくり返りそうになった。
「お前ら、なんでここにいるんだっ!?」
「・・・このお話の最後の出番があれだけなんて、ないと思ったから、ご都合主義的に・・・」
それだけのために出てきたのかよ。稟は呆れた。
「そーだそーだ!おれたちだってのび太と一緒に戦った、のび太のともだちだもん!」
「・・・はは・・・そうだな・・・全く・・・」
全く―――自分の周りには、平穏なんて望めそうもない!
土見稟の騒がしい日々は、まだまだ終わらないのであった。
―――犬の王国。そこに向かう途中、アヌビスのコクピット。
「USDマン・・・何故君もここにいる?」
「あ?まあいいじゃねーか。今んとこ行く場所もないしな。とりあえずご厄介になろうかと・・・」
「意外と図々しい奴だな、君は・・・」
<ふふ。まあそれくらいの甲斐性は見せてやれ、主よ>
憤然とするペコを、アヌビスが笑いの口調で抑えた。
「かかか。王国の連中、こいつを見たら驚くぜ。石像が巨大ロボに変わっちまってんだからな」
「おまけに敵だった君を連れてるんだからね」
「お、中々皮肉を言うようになったじゃねえか」
ひひひ、とUSDマンが笑う。ペコはふうっと息をつき―――同じように笑った。
「ありがとう、二人とも」
「あ?なんだよ、急に改まっちまって」
「・・・ぼくだけじゃ、今回の戦いでのび太さんを助けることはできなかった。アヌビスと、それに・・・USDマン。
君たちがいたから・・・」
「けっ!よせよせ!あんたがさっき言ったように俺様は元々敵だったんだぜ?」
「けど今は、仲間だろう?」
「む・・・」
USDマンはプイっとそっぽを向いた。柄にもなく照れているのかもしれない。
「アヌビスも・・・ありがとう。ぼくなんかより、実際に戦う君の方が、よっぽど大変だったはずだ」
<言うな、主よ。それが私の造られた理由だ>
「そうか・・・でも、もう一度言わせてくれ。本当に―――ありがとう!」
<・・・>
アヌビスは返事をしなかった。彼も照れているのかもしれない。ペコは苦笑した。
どいつもこいつも―――本当に、ぼくは仲間に恵まれすぎてるくらいだ。
そして、再びペコは王としての暮らしに戻った。後に彼は犬の王国史上最高の繁栄をもたらした偉大な王として、王国の
創始者であるバウワンコ一世さえも越えるほどの名声を得ることとなる―――
―――ドグラ星。
「いいか王子。俺の目が黒いうちは、もはや悪巧みなどさせんぞ!」
「分かってる。分かってるよクラフト。僕も懲りた。だからこうして始末書だって書いてるじゃないか」
神王と魔王の最強合体攻撃からも無事に生き延びたバカ王子は、王宮の一室に閉じ込められ、山盛りの原稿用紙を前に
ゲンナリした表情を隠そうともせずに言った。
「しかし、始末書を400字詰原稿用紙百万枚とはやりすぎだ!しかも手書きだと!?ワープロくらい用意せんかい!
文明の利器すら使わせないとはあまりにも酷いぞ!」
「それくらいせんと貴様が反省するとも思えんわい!」
クラフトは取り付く島もない。
「いいな!それを書き終えるまでは、この部屋からは出さんぞ!言っとくがこの部屋には貴様の逃亡を防ぐためにありと
あらゆるトラップが仕掛けられている!絶対に!出られんからな!」
クラフトは出て行った。それを見届けたバカ王子は、にやりと笑う。
―――5分後。
「何ィーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!王子が脱走したぁーーーーーーーーーー!!!???」
そして、当のバカ王子は。
「ふふふふふ・・・少年たちよ。今回は引き下がろう。だが!僕は負けたわけではないぞ!必ずや地球へと舞い戻り、
その暁には僕の頭脳の全てを駆使した嫌がらせをもってすっごい嫌な思いをさせてその顔を携帯の待ち受け画面に設定
してやる!楽しみに待っているがいい!わーーーーーーーーーーはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!
皆様、次回作での僕の活躍をお楽しみに!・・・え?次回作に僕の出番はない?ドヒャ~ン!」
―――やはり、全く懲りていなかった。
未来世界―――タイムパトロール本部。
ムウ・ラ・フラガは今回の一件の報告のため、そこで一人の男と向かい合っていた。
「ふむ・・・よく分かったよ。何かと大変だったようだね」
柔和な顔に気遣わしげな表情を浮かべ、彼はムウを労った。
長く伸ばした柔らかな黒髪に、優しげに整った顔に微笑を絶やさぬ口元。
彼の名は、ギルバート・デュランダル。タイムパトロールの方針から運営まで、全てを決定する機関、評議会。
その評議会議長こそが、彼、デュランダルだった。
つまりムウはタイムパトロール最高権力者と向かい合っているということだ。並の隊員ならば、それだけで萎縮して
しまうだろう場面だったが、ムウはいつも通りの飄々とした態度を崩さずに報告を行っていた。
「しかし、わざわざ呼びつけたりして・・・よほど今回の任務はヤバイものだったってことですかね?」
「そうだね。何せ超特A級の時間犯罪者が分かっているだけで三人も関わっているほどの事件だ。直接の報告も欲しく
なるというものだよ。疲れているところに、申し訳なかった」
「それはいいんですけどね・・・自分は一つ、気になっていることがあります。お答え願えますか?」
「ふむ。何かね?」
そしてムウは己の疑問をぶつけた。それは以前問い合わせて、結局答えのなかった質問だ。
「そんなヤバイ事件に派遣したのが―――何故に、俺みたいな平隊員たった一人なんです?」
「・・・・・・」
「最後まで気付かなかった俺も間抜けですがね・・・本来ならこれは、、数十人単位でかかったっておかしくないような
事件だ・・・なのに、何故です?お答え―――」
「ムウ隊員」
冷たい声が背後から響き、背中に何かが押し当てられた。
(銃―――!?)
上半身だけ動かして、突然の襲撃者の正体を確認する。
それは、まるで人形のように美しい少年だった。ウェーブのかかった金髪を長く肩に垂らしている。
服はムウと同じ、タイムパトロールの制服だった。しかし、それは真っ赤だ。まるで、血の色のように。
そして胸元には、燦然と輝くバッジ。それは、タイムパトロールにおいても一部にしか支給されないものだ。
「―――<フェイス>か・・・!」
<フェイス>。それはタイムパトロール評議会議長によって選ばれ、特別な権限を与えられた<特務隊>の通称。
時に議長の飼い犬とも揶揄される彼らだが、その実力もまた一般の隊員とは一線を画している。
その証の赤い服と、バッジ。
しかし、ムウを驚かせたのはそれだけではない。目の前のこの少年は―――驚くほど雰囲気が似ていた。
ラウ・ル・クルーゼに―――!
そんなムウの機微を知ってか知らずか、少年は非情に告げる。
「ムウ隊員・・・喋りすぎは命に関わりますよ」
「へっ・・・そういうことですか、議長!都合の悪いことには答えない。そういうことですか!」
ムウの罵声にも、デュランダルは動じない。ただ、静かに佇むだけだ。
「ムウ隊員・・・今回の君の功績を考慮し、先程までの問題発言は聞かなかったことにする。下がりたまえ。
レイも銃を仕舞いなさい。そんなものをこんなところで出すものじゃないよ」
「はっ。申し訳ありません、議長」
レイ、と呼ばれた少年は、打って変わったように従順に銃を降ろした。本当に飼い犬だな、とムウは毒づいた。
「・・・言われなくてもスタコラサッサだぜ・・・ってね。失礼します」
「うむ。今後も君の活躍に期待しているよ」
空虚にすら聞こえる言葉を背に、ムウは議長室を後にした。
「・・・ギル。申し訳ありません。勝手なことをしました」
ムウが出て行った後、レイは深々と頭を下げた。<ギル>というどこか親しげな呼び方といい、態度といい、まるで肉親に
叱られるのを恐れる子供のようだ。先程の人形のような冷たい態度も随分と薄れている。
彼にとって議長は、単なる上司以上の存在らしい。
「いいんだよ、レイ。私のためを思ってやったことだろう?行き過ぎではあるが、怒ってはいないよ」
デュランダルはにこりと笑った。
「そう言っていただければ、安心します」
レイも笑顔を見せた。そうして笑えば、彼も当たり前の少年にしか見えない。
「―――しかし、彼は・・・ムウ隊員の処遇は如何様に?放っておけば、悪影響が出ないとも・・・」
「それについては、また考えるさ・・・おいおい、そんなに怖い顔をしないでくれたまえ。まあ、仕方ないかな・・・
君にとっては、彼はまさに、<親の敵>というべきだからな・・・」
「そうですとも・・・」
レイはその顔に、激しい憎悪を垣間見せた。
「奴は・・・ラウの敵だ!」
ぎりっと唇を噛み締めた。そんなレイを、デュランダルは痛ましそうに見つめる。
「クルーゼのことについては、私も遺憾に思っているよ。彼は犯罪者だったが・・・私の友人でもあったからね」
―――恐ろしい事実を、さらりと口にしてのけた。タイムパトロール最高権力者が、名高い時間犯罪者を、友人と言って
のけたのだ。
クルーゼは自分に言っていたものだ。
<もしも私を追うような任務を負わせるならば、ムウ・ラ・フラガにしてくれ。奴と決着を付けたいからな・・・>
(こんなことを、ムウ隊員には言えるわけがないな・・・クルーゼとぶつけさせるために選んだなどと・・・クルーゼが
負けるというのが予想外だったがね・・・)
そんなことを思いながら、すっとレイに目線をやり、言った。
「君も下がりなさい。クルーゼのことがあってから、随分疲れているはずだ」
「・・・はい。失礼します」
レイもまた、出て行った。後には一人、デュランダル議長だけが残された。
底知れぬ微笑を漏らす、彼だけが。
「―――おい、レイ!」
部屋を出たところで、レイは声をかけられた。振り向くとそこにいたのは、赤目に黒髪の少年だった。
負けん気の強そうな幼い顔立ちだったが、その制服の色は赤。そして<特務隊>のバッジ。
「どうしたんだよ!?急に議長の部屋に入ってくなんて!叱られなかったか?」
「・・・大丈夫だ。心配するな、シン」
「だけどさ・・・」
シン、と呼ばれた少年は、納得していないのか眉を顰める。レイは笑って言ってやった。
「本当に大丈夫だから、心配するな。それより今日は早く帰るんじゃなかったのか?妹の誕生日を祝ってやるんだろ?」
「あっ!そうだった!やっべー!まだプレゼントも買ってないや!」
「じゃあ早く行ってやれ・・・」
レイは、少し顔を伏せた。
「大事な人がいるというのは・・・いいことだな」
「え?う、うん・・・じゃあな!」
「ああ」
軽く手を振って、慌ただしく駆けていく友人を見送り、レイは暗い表情を顕にした。
「俺にもいるよ・・・大事な人は。一人は議長・・・ギル。そして、もう一人・・・」
―――そのもう一人は、奪われた。
「ムウ・ラ・フラガ・・・そして・・・」
彼と共に、クルーゼを討った者たち。
「俺は・・・絶対に許さん・・・!」
噛み締めた唇から血が流れ出すのも構わず、彼は誓った。
必ず、クルーゼの敵を―――根絶やしにしてやる。
―――いくつかの火種を残しながら―――物語の締めは、主人公たる少年に任すとしよう。
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